2023年5月
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
コマツ、燃料電池(FC)搭載の中型油圧ショベルを開発……デイリーEVヘッドライン[2023.05.23]

トヨタのFCを採用しエンジン同等のパワーを実現 成功事例を築きFC建機普及の足がかりに 【THE 視点】小松製作所(コマツ)は、水素燃料電池(FC)システムを搭載した中型油圧パワーショベルのコンセプトマシンを開発したと発表した。 建設現場のカーボンニュートラルの実現を見据え、2023年5月より実証実験を開始し、FCを搭載した中・大型建設機械の量産化の実現を目指す。 このFCパワーショベルは、トヨタ製のFCシステムと水素タンクを搭載。コマツが自社開発したキーコンポーネントとの組み合わせや制御技術により、内燃エンジン式と同等の力強い掘削性能と操作性を発揮しつつ、排出ガスはもちろん騒音・振動の大幅低減が可能になる。 中・大型の建設機械は、電動化で先行する小型の建設機械に比べて、よりエネルギー密度の高い動力源が必要となる。水素はエネルギー密度が高く短時間で充填が行えるため、中・大型の建設機械に有効として研究開発を推進している。 今回、コマツがFCパワーショベルを開発したが、建設現場は、熱・粉塵・振動といったFCにとって大敵となる場所で使われる。また、水素を充填するインフラも現場には基本的にない。 今後の開発は困難も予想されるが、移動式の水素充填設備等でインフラ問題を補完できれば、FC建設機械の普及・発展の可能性は高まる。やはりFCは充填時間の短さがメリットだと思うので、稼働の高い建設現場での成功事例を築ければ、他の建設機械への応用も広がるはずだ。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★フォルクスワーゲン、「ID.4」の日本向け生産を強化……今年夏以降順次納車、「ライト」と「プロ」の2グレード構成[詳細はこちら<click>] ★★三菱ふそう、EVトラックの「eキャンター」をヨーロッパで生産へ……ポルトガル・トラマガルの工場を使用 ★ボルボ、コンクリート製造の世界的大手ホルシムとEVトラックの大規模納入契約を締結……2030年までに1,000台、2024年までに130台を納入 ★メルセデス・ベンツ、FCEVの連接バス「eシターロ・フューエル・セル」を発表……航続距離350km、最大128人乗り ★日産、次世代EV向けパワートレイン「X-in-1」を「人とくるまのテクノロジー展」に出展……「アリア」のEV専用プラットロームも展示 ★市光工業、EVなど次世代自動車向けのライティング技術を「人とくるまのテクノロジー展」に出展……ドライバーの視界や被視認性を向上 ★ブレイズ、EVスクーターの2週間無料体験プランを開始……配送向けの三輪スクーター「EVデリバリー」を貸し出し、法人・個人で募集 ★テラモーターズ、京都・滋賀の賃貸大手の物件にEV充電インフラ「テラチャージ」を導入……長栄の管理物件に導入推進、初期費用・管理費用をテラモーターズが負担 ★日産、四日市市生活環境公社とEV活用で連携……災害発生時などにEVから電力供給など ※ 「人とくるまのテクノロジー展 2023 」……パシフィコ横浜(YOKOHAMA横浜市西区)にて5月24日(水)〜26日(金)に開催

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TEXT:TET 編集部
アルファードもビックリ!? メルセデスが今夏「Vクラス/EQV」を迫力顔に変身

独メルセデス・ベンツは、改良型「Vクラス」の予告画像を公開すると共に、同モデルの電気自動車版「EQV」にも改良を施すと明らかにした。 ボンネットマスコット付きの新顔に 2014年に登場した現行Vクラスに電動車(EV)のEQVが追加されたのは2020年。それから約3年となる今夏、大規模なマイナーチェンジが実施される。公開された画像は大型のフロントグリルが備わることから内燃機関車のものと思われるが、EQVも概ね同じデザインで登場する可能性が高そうだ。 それにしても驚かされるのはフロントマスクの大胆さ。これまでのスリーポインテッド・スターをフロントグリルにビルトインしたスタイルから一転して、「Sクラス」のようにボンネット上へ独立したマスコットを配している。そして、グリル自体はバンパー下部まで拡大され、メッキがきらめくダブルタイプの横ルーバーも5本に増加しているのだ。 しかも、ヘッドライト下からグリルを囲うように隈取りのようなアクセントが入っていることもうかがえ、「アルファード」もビックリの迫力顔をなりそうだ。電動モデルのEQVでは、この巨大なグリルがルーバーを廃した専用デザインになる可能性が高く、どのような顔立ちとなるのか楽しみだ。 こうした方向のデザインを採用する背景には、重要市場の中国における高級ミニバンのヒットが挙げられるだろう。彼の地では(日本も同じだが)、レクサス「LM」に代表されるようなド迫力顔が好まれ、メルセデスもその嗜好を無視できなくなったと考えられる。日本でも歓迎されるだろうから、アルファードでは物足りないというユーザーにとって、改良型Vクラスは格好の選択肢となりそうだ。 >>>次ページ EQV海外仕様の航続距離は約343km

TAG: #EQ #メルセデスベンツ #新型車
TEXT:烏山 大輔
新電元工業、6kWのEV用「見せない普通充電器」販売開始

新電元工業は、2023年5月19日よりEV用「見せない普通充電器」の受注を開始すると発表した。 この充電器は、新電元工業の電源技術をコアに、充電サービスや見せ方を自由にアレンジできる「見せない」という新しいコンセプトを元に設計されている。この製品には操作ボタンなどを搭載せず、「挿すだけ充電」や「無線コントロール」といった独自の充電機能やサービスを主体としたユーザー体験を提案する。 自由なレイアウトと保守サービス この充電器は、駐車場に設置する際にも非常にコンパクトであり、輪止めブロックよりも小さく、堅牢かつ完全防水のため地面にも設置することができる。例えば、自動車整備ピットでは、天井付近に本製品を設置し、充電コネクターをマテハンレール(機械などの移動用のレール)から吊り下げるなど自由なレイアウトで利用することができる。また、本体部はボルト4本で固定することができるため保守性にも優れている。 さらに、新電元工業は利用者の使い方をサポートするために「コールセンターサービス」や修理交換品の先出し発送が可能な「定額修理サービス」などのミニマルな保守サービスも提供する。導入後の運用コストを最小限に抑えたい利用者には買い切りでの導入も可能だ。 ミニマルデザインで基礎充電と目的地充電に対応 日常的な駐車場での「基礎充電」や旅行先の宿泊地などで利用する「目的地充電」には、長時間利用できる普通充電器の使用が推奨されている。普段使いのEV充電器には、特にアイコン性は求められない。この充電器は最小限の充電機能を備えており、そのまま設置することができる。使い方もシンプルで、充電器に接続するだけで簡単に充電が可能である。 アプリ&コントローラーの開発により、オリジナルの充電サービスも提供可能 無線でコントロールすることができる機能を搭載している。これにより、テレビのリモコンのように手軽に充電器を操作することができる。さらに、この機能を活用することで、決済認証や消費電力マネジメントなどの応用サービスの開発も可能ということだ。 例えば、無線通信プロトコルやクラウドサーバーの実装など、ITサービス開発に長けたシステム開発会社は、この充電器と連携させることで、独自のEV充電サービスに参入する際の障壁を大幅に下げることができるだろう(開発には新電元工業との契約が必要)。 超コンパクトかつ自由なレイアウトが可能な充電器 出力6kWのMODE3充電器(車両と通信しながら充電を制御する)でありながら、ケーブルやコネクターホルダーを自由にレイアウトし、地面、壁面、天井、斜面など、さまざまな場所に設置することができる。コンパクトなサイズであるため、限られたスペースでも効率的に充電器を配置することができ、また、ケースの中や梁の上、塀の裏側など、充電器が目立たない、見えない場所に設置可能だ。 さらに、この充電器は豪雨や浸水にも耐える完全防水仕様となっているため、屋外や湿気の多い場所に設置しても安心である。 新電元工業の「見せない普通充電器」は、普通充電では主流となりつつある6kWの出力を持つ。多くの壁掛け型やポール型の他社製品と異なり、あえて「見せない」ことをコンセプトとしていることが新しい。本体部分は車に踏まれても大丈夫なほどの堅牢性、豪雨による水没にも耐える防水性も持つ。価格(非公表)によっては、自宅や業務用途で大ヒットするかもしれない。 「見せない普通充電器」仕様 型式: PM-CS09-M-CG 定格電圧: 単相2線 200V 定格電流: 30A(6kW相当) 期待寿命: 10年(平均周囲温度25℃) 充電方式: Mode3(IEC61851-1e.d3.0) 通信方式: Bluetooth®5.0内蔵 ケーブル長: 標準6m 周囲温度: -20~55℃ 強度: 11kN(ビークルドライブオーバー試験) 環境: 重塩害対応 寸法: W84 × D400 × H80 mm 質量: 3.0kg(ケーブル・充電コネクタ含まず)  

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TEXT:福田 雅敏
FCEVは実用的だが一般普及はまだ早いか……現役EV開発エンジニアが「ホンダ・クラリティFUEL CELL」を愛用して実感した燃料電池の可能性(前編) [THE視点]

筆者は現役のEV開発エンジニアであるが、実はプライベートでは「ホンダ・クラリティ FUEL CELL」に乗るFCEVユーザーである。「クラリティ」に乗り始めてまだ日は浅いのだが、実際にFCEVに乗ることで見えてきた水素エネルギーの現実もある。今回はFCEVの利点と課題をユーザーの視点で話してみたい。 走り心地はEVそのもの 「ホンダ・クラリティ FUEL CELL」は、2016年に販売された。国内ではリース販売専用モデルだったこともあり、非常に希少なモデルと言われている。販売台数は、国内では500台程度で、海外も含めると1,900台程度と言われている。 筆者の場合、席を置く「東京R&D」がリースしている車両を使用している。筆者は2013年頃よりFCEVに興味を持ち始め、2018年からFCEVトラック・バスの開発にも携わり、FCEVの可能性を色々と学んできた。こうして日常の足として使用することで、ユーザーの立場からもFCEVについて理解を深めたいと考えている。ちなみに90年代にも「トヨタ RAV4EV」、初代「プリウス」を日常の足に使用し、新しいパワートレインの車を試してきた。 まず、クラリティのスペックを簡単に紹介する。全長4,915×全幅1,875×全高1,480mmで空車重量が1,890kg。最高出力130kW(177ps)/最大トルク300Nm(30.6kgm)のモーターに、最高出力103kWのFCスタックを搭載。141Lの水素用タンクを備え、航続距離は750km(JC08)となっている。 デザインは好みもあると思うが、かなり凝った造形で、特にフロントヘッドライト周りとリアサイドのスパッツ、室内とトランクとの間にガラス窓を設けるなど、内外ともにかなり作り込まれている。 走りはEVそのものであり、言われなければFCEVだとは誰も気づかないと思う。「クラリティ」の場合、最近のEVのように高出力のモーターによる発進加速を争うようなモデルでもないので、それほど強烈なEV感は味わえないが、SPORTモードを使えばそれなりに速く走れる。1,890kgもある車体だが重さは感じない。高速道路を多用する筆者だが、高速域での静粛性も高く快適である。 ただ、車格が少し大きいので取り回しが悪いのと、水素タンクがリアシート下とトランクに置かれているので、トランクの使い勝手が悪いのが難点である。そのほか装備面では、バッテリー式EVのように、FCから外部へ電気を供給できる可搬型外部給電機もあるのだが、120万円程度するので導入は見送った。

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TEXT:福田 雅敏、ABT werke
ホンダ、EVスクーター「EM1 e:」を発売……デイリーEVヘッドライン[2023.05.22]

ホンダ初の市販EVスクーターがいよいよ発売 着脱式バッテリーを採用した原付一種クラス 【THE 視点】本田技研工業は、EVスクーター「EM1 e:(イー・エム・ワン・イー)」を8月24日に発売すると発表した。 「EM1 e:(イー・エム・ワン・イー)」は、交換式バッテリー「ホンダ・モバイル・パワー・パックe:」(以下、MPP)を電源に採用。車両自体は、内燃エンジンの50cc未満に相当する原付一種の扱いとなる。 価格は29万9,200円で、内訳は「EM1 e:」の車両本体価格が15万6,200円。「MPP」が8万8,000円。MPP専用充電器の「ホンダ・パワー・パック・チャージャーe:」が5万5,000円(各税込み)。電源系が価格の半分を占めている。 「EM1 e:」は、今年3月に大阪と東京で開催された「モーターサイクルショー」にて展示はされていた。今回は発売日と価格が公表された形だ。 電源を含むパワートレインは、「MPP」1個をシート下に搭載。駆動は後輪の「インホイールモーター」(交流同期モーター)が行う。モーターの最高出力は1.7kW(2.3ps)で最大トルクは90Nm(9.2kgm)。 内燃機関車であるホンダの原付一種「ダンク」<3.3kW(4.5ps)/4.1Nm(0.42ps)>と比べて最高出力は劣るものの、最大トルクはなんと倍の数値を出している。なお、航続距離は53km(30km/h定地走行テスト値)。「USB Type-A」のソケットを搭載しているため、電子機器の充電も可能だ。 ホンダはこれまで、日本郵便などフリート向けにEVスクーターを販売していたが、ようやく一般向けEVバイクが市販化となった。大きな特徴は、交換式バッテリーの「MPP」を採用したことだろう。筆者もこれまで何度も「MPP」をレポートをしてきたが、「MPP」は汎用性が高く、バイク以外への活用も期待できる。万が一の際には非常用電源としても利用可能だろう。 また、「MPP」は、バッテリーのシェアリング事業を手がける「Gachaco」(ガチャコ)も導入している。サービスの整備が進めば、充電要らずのEVバイクという新しい市場が生まれてもおかしくはない。今後利便性もさらに向上すると思われるので期待したい。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ブリヂストン、アメリカでEV向けオールシーズン・タイヤ「トゥランザEV」を発表……「フォード・マスタング・マッハE」と「テスラ」の全モデルがターゲット ★★フォルクスワーゲン、「ID.7」のAWD長距離対応モデル「GTX」の登場を予告……2023年9月に発売予定[詳細はこちら<click>] ★★BYD、「アット3」がカーシェアサービス「エニカ」で利用可能に……全国のBYD正規ディーラーにて車両の受け渡し・返却が可能[詳細はこちら<click>] ★★BMW、新世代EV「ノイエ・クラッセ」を2026年から中国・瀋陽で生産……同車向けの高電圧バッテリーも中国で現地生産 ★★グッドイヤー、EV向けの新タイヤ「エレクトリックドライブGT」をアメリカで発表……メタンの熱分解で得られるカーボンを配合したオールシーズン型 ★ステランティス、ホットハッチ「アバルト500e」のメタバースストアをオープン……好みの仕様などを仮想空間上でオーダー ★パナソニック、EV事業で丸紅と合弁会社を設立……法人のEV導入・運用をサポート ★新電元、EV用小型充電器「見せない普通充電器」を発売……最高出力6kW、設置スペースの大幅な節約が可能[詳細はこちら<click>] ★トヨタ紡織、鞍ケ池公園<愛知県豊田市>にて低速電動モビリティを実証実験……場所に連動した施設情報などを、音などと合わせてエンターテイメント化し案内 ★フィスカー、家庭用EV充電器「フィスカー・パルサー・プラス」を発表……EV用小型充電器の「ウォールボックス」と提携 ★フォード、アメリカで充電インフラの業界団体「ナショナル・チャージング・エクスペリエンス・コンソーシアム」に参画 ★日産、沖縄県竹富町とEVの活用で連携……西表島ならではのEV活用を島民とともに検討 ★HKS、「人とくるまのテクノロジー展」に出展……EV用交換式バッテリーパックなど展示 ★日本特殊陶業、「人とくるまのテクノロジー展」に出展……絶縁性に優れたEVなど向けのセラミックスボールベアリングなど展示 ★「ジャパンEVラリー白馬 2023」、参加者募集中……7月22日(土)〜23日(日)に長野県白馬村にて開催 ※ 「人とくるまのテクノロジー展 2023 」……パシフィコ横浜(YOKOHAMA横浜市西区)にて5月24日(水)〜26日(金)に開催

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レンジローバーのグローバルマネージングディレクター、ジェラルディン・インガム氏
TEXT:小川フミオ
レンジローバーのBEVが間もなく誕生。ランドローバー新担当が語る「電動化の魅力」とは

ランドローバー・レンジローバーがピュアEVになって、2023年末に受注をスタートする。ラグジュアリーSUVの王者として君臨してきた同車の在り方は、電動化によりどう変わるのか、あるいは変わらないのか。英国本社でレンジローバーのグローバルマネージングディレクターに就任したばかりのジェラルディン・インガム氏に、自動車ジャーナリスト・小川フミオが訊いた。 Meta自動車部門も経験した新ディレクター ランドローバーは、2023年末よりピュア電動モデルの受注を開始するという。 2030年までには、ジャガー・ランドローバーブランドの全モデルにピュアEVの選択肢を設定することも発表されている。 そしてランドローバーが出す初のBEVは、レンジローバーなのだ。 レンジローバーといえば、誰もがすぐに、個性的なデザインの車体と、ぜいたくな内装と、大きなエンジンといったぐあいに、イメージが浮かぶ。電動化が進むと、いかなる変化があるのだろう。 その未来を尋ねるにふさわしい人物が、2023年5月中旬に、東京を訪れた。英国本社でレンジローバーのグローバルマネージングディレクターに就任したジェラルディン・インガム氏だ。 インガム氏は、英国出身で、これまで日産UK、ルノー本社、フォルクスワーゲンUK、さらに(なんと)Metaの自動車部門でディレクターとしての経歴を重ねてきたひと。 ランドローバーには、2023年4月に入社。仕事内容について「このアイコニックなブランドの電動化を先導し、モダンラグジュアリーのエキサイティングな新時代への道を切り開いています」とプレス資料で書かれる。 「レンジローバーはご存知のように、リダクショニズムというデザイン言語によるデザインをはじめ、モダンでラグジュリアスな内装など、成功要件をすべてそなえています」 インガム氏はそれら、レンジローバーの成功要件を「マジックフォーミュラ」(魅力的な方程式)と表現。これからもそれらを守っていく所存、とする。 「先進的技術によるイノベーション、オフロード走破性、車内のデジタル技術の数々……これらに加えて、今後、電動化技術を積極的に採り入れていきます」 インガム氏は、自信にみちた笑顔でそう答えた。 「変化のための変化は行わない」 「私たちは2023年末に、初のBEVの予注を受け付けます。そして24年にはデリバリーを開始します。いえることは、電動化しても、変化のための変化は行なわず、レンジローバーのDNAに忠実なモデルづくりを継続します」 強いて、電動化がもたらすメリットをあげるとしたら……インガム氏はつけ加えた。 「さらに静粛性が高くなるってことでしょうね。私はいま、会社のプロダクトをよく理解しなくてはならない立場なので、とっかえひっかえレンジローバーに乗って通勤しています」 自分の経験から言うと……とインガム氏。 「私は自宅と会社の往復に3時間かけています。その時間が期待以上に快適なんです。乗り心地もいいし、静かだし、好きな音楽を聴いていれば満ち足りています。電動化すると、さらに10時間ぐらいは平気でドライブしていられそう、と思っています」 電動化するレンジローバーを評価してほしい層は、どういうひとたちか。 「成功のシンボルとしてレンジローバーに憧れたかつての私のようなひとたちに加え、電動車にそろそろ乗ろうと考えていて、ならばぜいたくなSUVを、というひとたちが、すぐ思いつきます」 たしかに、そういうひとは、日本にも一定数いそうだ。ただし、現状では大型電動車には二律背反した問題がある。 長い距離走れる大きなバッテリーがあると便利だけれど、行く先によっては、性能のいい充電設備を探すのに苦労する。カリフォルニアなら、スーパーマーケットの駐車場にも充電設備があるのだけれど。 「聞いてみたところ、日本ではまだまだ充電インフラが整っていないと考えるユーザーのかたがたがいるようです。ただ、実際のデータとしては、8割がたのオーナーが自宅で充電して、それでなんの問題もなしとしているようです」 すでに日本発売されているプラグインハイブリッドモデルを例にとると、「InControlナビゲーションシステム」なる充電施設を探せるオンライン上のロケーターが機能している、とインガム氏は指摘。

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TEXT:岩尾 信哉
フォルクスワーゲン、電気自動車(EV)ID.7の上級モデル「GTX」をティザー公開、9月の独IAAモビリティで正式発表

フォルクスワーゲンのEV(電気自動車)ブランドであるIDシリーズでは、最新モデルとなる「ID.7」が、4月に開催された上海国際モーターショーにおいてワールドプレミアとして発表された、さらに5月上旬にフォルクスワーゲンは、IDシリーズの上級スポーツグレードである「GTX」を、アッパーミドルクラスのID.7に設定することをティザー公開して明らかにした。正式発表は来る9月に独ミュンヘンで開催される「IAAモビリティ2023」となる。 欧州での正式発表を控えるID.7 2022年6月にID.4/ID.5(ID.4のクーペSUV版)に設定された「GTX」グレードが、フォルクスワーゲンが“プレミアムリムジン”と表現するID.7にも設定されることとなった。詳細は明らかではないが、欧州での発表時には、ID.7の欧州仕様の基本スペックとともに公表されるはずだ。 ID.7の概要を確認しておくと、IDシリーズのトップモデルとなるID.7は約5mの全長を与えられ、フォルクスワーゲンの既存車種ではパサート・クラスとなるモデルである。一見すると“セダン”とも思える「ID.7」は、5ドアのボディに長く伸びたルーフなどエアロダイナミクスが煮詰められ、CD値は約0.23に抑えられている。 ID.7も他のIDモデルと同様に、フォルクスワーゲンのEV専用プラットフォームであるMEB(モジュラー・エレクトリック・ドライブ・マトリックス)を基本に、後輪を駆動する。 ID.7で注目すべきは、新設計の永久磁石式同期モーターを採用することだ。後軸用モーターは“APP550”と呼ばれ、技術面での新機軸が取り入れられている。 この新型モーターでは、巻き線の有効数を増加させ、断面の有効部を拡大したステーター(固定子)を採用。ローター(回転子)は、より高い負荷容量を持つ強力な永久磁石と高い負荷に耐えうるよう設計され、増加したトルクに対応したという。熱管理面でも、電動オイルポンプを省略するなどの効率化が図られた。 最高出力は210kW(286ps)、最大トルクは約550Nmを発生するとされ、ロングドライブを可能とするため、最大約200kWの充電施設に対応可能としつつ、WLTPモードで約700kmの一充電航続距離を実現したという。なお、車載バッテリーについては複数の仕様を用意するとしかコメントされていない。 インテリアではタッチ操作式の15インチ・ディスプレイを設定するなど、シンプルな仕立てとなっており、総じて快適性の確保と余裕のある長距離移動を実現したとされる。

TAG: #GTX #ID.7
TEXT:加納亨介
東京湾岸地区にヒョンデの新拠点がオープン―Hyundai Mobility Lounge 東京ベイ東雲―

ヒョンデはオートバックス・グループのフラッグシップ店舗「A PITオートバックス東雲」内に、同社のZEV※を体験できるスペース「Hyundai Mobility Lounge 東京ベイ東雲」を2023年5月20日(土)にオープンした。 ※ZEV(Zero Emission Vehicle):走行時に⼆酸化炭素等の排出ガスを出さない電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCEV)の総称 購入相談から納車、アフターサポートまで一貫体制 Hyundai Mobility Lounge 東京ベイ東雲では、ヒョンデが展開する電気自動車(EV)「IONIQ 5(アイオニック ファイブ)」を展示し、燃料電池自動車(FCEV)「NEXO(ネッソ)」を含めた同社製品の説明とオンライン購入に向けた相談サービスを受けることができる。期間限定だが試乗も可能で、納車用に専用デリバリースポットも用意される。 ヒョンデとA PITオートバックス東雲はZEV整備について技術提携を結んでおり、点検整備・保証整備等のメインテナンスを実施可能とすることで、顧客にアフターサポートを提供する体制を確立している。 A PITオートバックス東雲は一般的なカー用品の販売/取付に留まらず、アウトドアグッズやアパレル、書籍・雑貨などを有機的に融合させた店舗で、カーライフスタイルの新提案に注力したスペースを展開している。また、チューニングやセッティングなどでも定評があり、カーマニアの間でも一定の存在感を持つから、新たな客層へ向けたヒョンデ体験の場としても絶好の立地といえるのではないか。 なお、オープン記念として5月20日(土)、21日(日)に試乗会が開催される。同社のWEBで要予約。 拠点拡充へ邁進中 テスラなどと同様にヒョンデ車の購入はWEBで完結する。しかし自動車である以上メインテナンス拠点は欠かせないため、ヒョンデは直営の「ヒョンデ・カスタマー・エクスペリエンス・センター横浜」に加え、全国から選ばれた整備工場と協力関係を結んだ「協力整備拠点」を設定している。Hyundai Mobility Lounge 東京ベイ東雲はこの「協力整備拠点」にあたり、オートバックス・グループとの協業拠点としてはHyundai Mobility Lounge 京都四条に続く2店舗目となる。なお、ヒョンデの全整備拠点は同社のWEBで確認することができる。 他に都市型ショールームとして「ヒョンデ・シティストア」が名古屋と福岡に開設されており、販売促進に向けた拠点充実も進んでいる。 ヒョンデ × オートバックスに期待 EV進出を機に日本に参入したメーカーは、ヒョンデの他にテスラ、BYDなどがある。いずれもディーラー網を持っていないため、整備ネットワークの拡充が課題であった。この面で500店舗に迫るネットワークを持つオートバックスとの連携は有効な手段となりえる。ヒョンデは今後、全国のオートバックス店舗へ展開していくことを検討中という。ベンチャー系EVメーカーの参入は今後も続くだろうから、新しいモビリティ企業の発展に繋がるモデルケースになりそうだ。   <Hyundai Mobility Lounge 東京ベイ東雲について> 名称:Hyundai Mobility Lounge 東京ベイ東雲 住所地:東京都江東区東雲2-7-20(A PIT AUTOBACSKYOTOSHINONOME内)※駐車場あり 開店日:2023年5月20日(土) 営業時間:10時~20時 定休日: 不定休 運営会社:株式会社オートバックスセブン   <A PIT AUTOBACS SHINONOMEについて> […]

TEXT:小川 勤
バイクのEV化に対する海外と日本の温度差、欧州のショーで年々敷地面積を拡大するEVバイク[EICMA(ミラノモーターサイクルショー)レポート:その4]

自動車と同様にバイクも多様な電動車は欧米や中国のメーカーから続々と発表されているようだ。EICMA(ミラノモーターサイクルショー)でそれらを目の当たりにしたモーターサイクルジャーナリストの小川 勤さんにユニークなバイク達の印象を語ってもらった。 オリジナリティは高いが不安になるスペックが乱立するEVバイクも…… こ、これはどうなのだろう……。このダヴィンチという中国メーカーのバイクのスペックを見て驚愕した。興味のある方はメーカーのサイトに飛んでいただきたいが、最高時速は200km/h、最高出力は100kW(135ps)とあるが、少なくとも僕はこのディメンションや細部の作り込みでこの速度を出す気にはならなかった。 説明によると1000個以上のチップや200個以上の高性能センサーを採用しており、スマートフォンが鍵にも、メーターにもなるらしい。足まわりは本格的で倒立フォークにブレンボ製のキャリパーを装備。電子制御はヒル・スタート・アシスト・コントロール(坂道発進をサポート)やリバースアシスト(バック機能)、コンバインド・ブレーキ(ABS機能)、トラクション・コントロールも搭載している。 しかし、スポーツバイクに必要なホールド性の高いポジションは考慮されておらず、趣味のバイクに必要な美しさや機能美もない。価格は2万7500ドル(1ドル=135円の場合、約370万円)とかなり高めで、すでにアメリカでは発売されているらしい。少なくとも僕にこのEVバイクを受け入れる感性はなかった。 https://global.davincimotor.com/ 一方で気になったのはスウェーデンのCAKE(ケイク)だ。EICMA 2022で『Sustainable Exhibitor Award(持続可能な出展者賞)を受賞し、日本ではゴールドウインが代理店となって販売を進めていくメーカーだ。 2016年よりスタートしたケイクは、「エキサイティングなモビリティ体験」と「環境への責任」の両立を目指し、ゼロエミッション社会への移行を加速させることを使命として活動している。ケイクが考える持続可能性とは、人と自然の共生をよりスマートで、環境に優しく、健康的かつ平和的に実現することにある。そのためにケイク社は年齢や性別、サイズ、スタイルを問わず、誰しもが敬意をもって自然と都市を冒険できる製品を生み出している。 ケイクで森の中を鳥のさえずりを聞きながら駆け抜ける喜びは想像に難しくないが、価格は高めでオフロードイメージのバイクである「カルク」は247万5000円から。その喜びを堪能するのはかなりハードルが高そうだ。 https://goldwin.ridecake.jp/

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TEXT:福田 雅敏、ABT werke
ヤマト運輸など、FCEV大型トラックの実証実験を開始……デイリーEVヘッドライン[2023.05.19]

ヤマト運輸/アサヒグループ/ネクスト・ロジスティクス・ジャパン/西濃運輸の計4社が参画する大規模実証 短時間充填が可能な水素は物流に有効と判断 【THE 視点】ヤマト運輸/アサヒグループジャパン/西濃運輸/ネクスト・ロジスティクス・ジャパンの4社は5月17日、FCEV(燃料電池車)大型トラックの走行実証を開始すると発表した。FCEV大型トラックの走行は日本初だという。 本実証には、トヨタ自動車と日野自動車が共同開発した車両(「日野プロフィア」がベース)を使用する。各社の実際の輸送業務及びルートに使用し、水素燃料活用の可能性と実用性の検証を行う。 実証に用いるFCEV大型トラックの航続距離は約600km。トヨタの技術をベースに大型車用に最適化した燃料電池(FC)を2基搭載。高圧水素タンクも新開発のものを6本、さらに来年予定されている高速水素充填規格にも対応可能な水素充填口を装備している。 発表内容によれば、国内商用車全体の温室効果ガス排出量は、全体の約7割を大型トラックが占めているとのこと。特に幹線輸送に使われる大型トラックは、十分な航続距離と積載量、短時間での燃料供給が求められるため、エネルギー密度の高い水素を燃料とするFCが有効であると判断したようだ。 当初、この実証試験は2022年春に開始と発表されていたが、1年遅れての出発となった。時を合わせたかのように、いすゞとホンダもFCEV大型トラックの共同実証を先日発表している[詳細はこちら]。これで日本国内でのFCEV大型トラックの開発が一気に走り出した形だ。 今回の発表で目に止まったのは、「高速水素充填規格」に対応することだ。車両が大型になれば水素充填量も多くなり、充填に時間が掛かるようになる。どれほど高速化するかは不明だが、もしかしたら国内レースの「スーパー耐久シリーズ」に出場している水素エンジンの「GRカローラ」を通して開発された急速充填技術が応用されているのかもしれない。 FCEVに乗る筆者は水素充填の際に、先行するFCEVバスの充填完了を20分待ったことがある。それが緩和されるということで、FC界隈の技術開発の進化を実感した。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ヒョンデ、東京都江東区に納車拠点「Hyundai Mobility Lounge 東京ベイ東雲」をオープン……「A PIT オートバックス東雲」内に開設、試乗や購入相談も可能[詳細はこちら<click>] ★★ボードリー、自動運転レベル4(運転者を必要としない自動運転)対応のEV「ミカ」を国内導入……茨城県境町が2023年度中に導入、障害物回避機能も搭載 ★★東京R&D、FCEVスポーツコンセプトを「人とくるまのテクノロジー展」にて公開……「VEMAC RD200」の次期型を想定 ★ジヤトコ、トランスミッション付きのモーター一体型駆動装置(イー・アクスル)を「人とくるまのテクノロジー展」にて世界初公開……並行軸タイプのイー・アクスルも ★テラモーターズ、栃木県那須塩原市にEV充電器を大規模導入……市役所や黒磯公民館など公共施設を中心に計100基 ★ステランティス、空飛ぶクルマに出資……全電動垂直離着陸(eVTOL)機開発のアーチャー・アビエーションに最大1億5,000万ドル ★ボルボ、「EX30」の安全機能を一部公開……ドア開放時に警告音、後続の自転車とのドアの接触を防止 ★BMW、EV船「THE ICON」を「第76回カンヌ映画祭」にて発表……走行中は船体が浮き上がる水中翼船方式、最高速度は55km/h ★NITTOKU、モーター一体型駆動装置(イー・アクスル)用ヘアピンモーターの生産ラインを受注……中国のモーターメーカーより20億円分 ★ヒョンデ、「Hyundai Mobility Lounge 東京ベイ東雲」で試乗会を開催……5月20日(土)・21日(日)の2日間、「アイオニック 5 ラウンジAWD」と「同リミテッド・エディション」を用意 ★テスラ、軽井沢で試乗会を開催……5月27日(土)・28日(日)に「軽井沢・プロンスショッピングプラザ」<長野県軽井沢町>にて、「モデルY」「モデル3」を用意 ★アイシン、「イー・アクスル」や「回生協調ブレーキ」などを「人とくるまのテクノロジー展」に展示 ★ヤマハ、「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」を再現したレンタルサービスを実施……TV番組と同カラーリングの「E-ビーノ」とヘルメットを貸し出し、代官山エリアと伊豆大島で展開 ※ 「人とくるまのテクノロジー展 2023 YOKOHAMA」……パシフィコ横浜(横浜市西区)にて5月24日(水)〜26日(金)に開催

TAG: #THE視点 #商用EV #燃料電池車(FCEV)

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