コラム
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岡崎宏司の「EVは楽しい!」第12回:EVは、軽自動車へステータスをあたえた!


TEXT:岡崎 宏司
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軽EVのサクラとeKクロス EVには、軽乗用車の印象を変えるステータスのようなものを感じると岡崎さんは語ります。ミニマムで、仕立てよく、そしてEVの気持ちよさから期待大です。

海外エンジニアが評価する軽乗用車

軽EVの「日産サクラ」と「三菱eKクロス EV」は共に魅力的。前者は大人の雰囲気を、後者は若々しい雰囲気を纏う。基本は同じ両車だが、巧みな棲み分けをしている。

僕が試乗したのは日産サクラ。デビューしてすぐだったが、その姿を一目見て頷き、ちょっと走っただけで気に入った。直感的に「売れる!」と思った。

現在の軽はよくできているし、よく走りもする。限られたあれこれの中での、各メーカーの競い合いは素晴らしいのひとことだ。

少し前のことだが、欧州有力メーカーの技術系トップと食事をした。その時、僕は、「日本車でいちばん高く評価しているクルマはなにか?」と質問をした。

答えは「軽乗用車」。「厳しい条件下で、ユーザーの求めに、あれほど高いレベルで応えているクルマは他にない」との答えだった。

僕はハッとした。ずっと身近で発展成長してきた軽だけに、そうした視点での見方が甘かったことに気づかされたのだ。

この方はすでに引退されている。でも、軽EVにはきっとお乗りになっているはず。そして、間接的ではあろうが、後輩エンジニアに、あれこれ印象を、意見を、述べられているだろうと想像している。

「EV」は、付加価値があるもの

話をサクラに戻そう。

その走り味乗り味については、すでに多くの記事が出ているし、読まれているだろう。なので繰り返すことはやめる。

サクラに乗ったとき、「売れる!」と思ったことは上記の通りだが、売れ先として直感的に頭に浮かんだひとつが、旧い高級住宅街。

親しい友人が住んでいる、東横線沿線の伝統ある高級住宅街だ。

風格ある、あるいは瀟洒な佇まいの家が立ち並んでいる。……でも、その街を抜ける通りは狭い。駐車車両は明らかな障害になるし、Lクラスのクルマや、大型SUV辺りは明らかに過剰を感じる。

そう……そんな街に、「サクラはピッタリじゃないか!」と閃いたのだ。そして、試乗でも「旧い街」を走ってみた。それも、坂のある込み入った街を……。

軽は狭い道は得意だが、登り勾配は得意ではない。過給機付きでトルクのある軽はよく走る。……でも、タイトな角の先が上り坂といった条件ではスイスイとはいかない。

しかし、サクラは、そんな条件下でも、ほんとうに気持ちよく、文字通り「スイスイ」走り抜けてくれる。

とはいえ、「べつにEVでなくてもいいのでは?」という疑問も出るだろう。「気持ちよくスイスイとはいかなくても、実用には十分でしょ!」と……。答えは「その通り」だ。

しかし、高級住宅地に住むような豊かな人たちにとっては、たとえ便利でも、「普通の軽」に乗るのは抵抗があるかもしれない。

メルセデス、BMW、アウディ、ジャガー……といったクルマを愛車とする人たちのセカンドカーとしては、なにか、ステータスになるようなプラスアルファがほしい。

そう……サクラにはそれがあるということ。軽ではあっても、新しい時代を象徴するサンプルのひとつとも言える「EV=電気自動車」に乗っているというステータスだ。

日本ならではのEVに期待!

それに、実際に運転しても、静かで、滑らかで、ピックアップがよくて……と、日々乗っているプレミアムセグメントのクルマとの、感覚的乖離が少ない。気持ちよく走れる。

上記した東横線沿線の高級住宅地に住む友人によると、僕の予測は「当たり!」らしい。

サクラはどんどん増えていて、同じ街に住む彼の妹さんも買ったという。そして、「日々の近場の買い物が、ほんとうに楽になった!」と喜んでいるそうだ。

加えて、「電気自動車がこんなに楽で、気持ちのいいものとは思わなかった。もう手放せないわ!」とも。道路の狭さに加えて、坂も多い街なので、とくにそう感じるのだろう。

日産サクラと三菱eKクロス EVのデビューは、軽の世界を大きく拡げてくれた。とともにEVの世界をも拡げてくれた。この2車への追従モデルがどんな形で、どんなレベルで出てくるのか……大いに楽しみだ。

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