わが家にMINI Eがやってきた
前回は、主にスマートed のあれこれを書いたが、今回は「MINI E」について書く。
MINI Eとは、「EVの可能性や問題点を世界規模で掬い上げること」を目標に作られた実証実験車。アメリカ市場の450台を筆頭に、世界の市場に送られた。
日本での実証実験は、2011年の早い時期から始まったと記憶している。
ちょっと乗るだけの安易な試乗ではなく、一定期間続けて乗ってもらい、日常的な使用条件下での評価やデータを引き出す…といった、大規模で真剣な取り組みだった。
日本に何台来たのかは忘れたが、わが家には、たしか2週間ほど滞在したかと思う。
艶やかなチタングレーにライトイエローのアクセントが素敵
それより半年ほど前、MINI E は日本でお披露目された。東京ビッグサイトで開催された「BMW Group Mobility of the Future -Innovation Days in Japan 2010」がその舞台。
外見的にはMINIそのもの。だが、艶やかで深みのあるチタングレーのボディ、ライトイエローのルーフとドアミラーという装いは、とてもスタイリッシュ、かつ未来的に見えた。
ボディサイドの……これもライトイエローで描かれた「MINI+ 電気プラグを表すEmoji」もカッコよかった。
会場の照明は落とされ、舞台だけが、それもMINI E だけが、非日常的なインパクトで浮かび上がっていた。この演出とライティングは巧みだった。僕は完全に惹き込まれた。
もし、MINI Eが市販され、このデザインがカタログにあったら、僕は一も二もなく、これを選ぶだろうと思った。
印象的なライトイエローはインテリアにも使われていた。ダッシュボードとドアトリムに組み込まれたライトイエローのアクセントにも、僕はコロリとイカれてしまった。
基本的には市販モデルと同じインテリアなのに……僕には強烈なインパクトだった。まだ乗ってもいないのに、「僕の次のクルマはこれだ!」と心に決めた。
僕のクルマ選びに当たって、いちばん大事なのはデザイン、次に大事なのはブランドだが、どちらも文句なし。加えて、新たな時代を駆け巡ることになるだろうEVなのだから、これは買うしかない。そう思ったのだ。
2シーター、50:50、低重心、鋭い加速と強力な効きの回生ブレーキ……。楽しくて仕方がない
35kWhのリチウムイオン電池は後席部に搭載する。だから、MINI E は二人乗りだ。この潔さも僕は気に入った。「さすが、MINIのやることはカッコいい!」とさえ思った。
電池重量は260kgとされたが、現在の電池よりはるかに重い。ちなみに、僕のプジョー e-208GTは50kWhで235kg。これからも電池はどんどん進化してゆくだろう。
後席を潰して2座席化したが、重量配分はほぼ50:50にされ、当然重心も低い。
ルックスは一目惚れだったが、ステアリングを握って、その気持ちはさらに加速。それも猛烈に加速した。
発進する時、下手にアクセルを踏み込むと前輪は激しく空転。強いトルクステアもでた。でも、そんなヤンチャぶりにも惹かれた。
EVの楽しさは、アクセルを踏んだ時の鋭角なトルクの立ち上がり、加速のレスポンスにあるが、MINI Eはその見本のようだった。
もうひとつ、惹きつけられたのは「回生ブレーキ」。「こんなのあり!?」と思ってしまったほど強力な効きに、初めは戸惑った。でも、慣れるにつれて「楽しくて仕方がない」状態に引き込まれていった。
文字通り「アクセルペダルのコントロールだけ」で自在に走らせられた。縦横無尽に加減速をコントロールできた。僕は完全に依存症状態になってしまった。
一般論で言えば、明らかに過剰な設定だったとは思う。……が、僕は「このまま」市販してほしいと心から思った。
MINI Eの開発者たちは「EVの楽しさ」をフルに詰め込んだ。市販モデルには無理だとしても、実験車に触れる人たちには「EVって、こんなにドキドキ、ワクワクするんだよ!」と伝えたかったのだろう。
もし、MINI Eが、ほぼあのままで市販されていたら、僕の「EV第1号」になっていたのは間違いない。そして毎日、「走りたくてしょうがない症候群!?」にかかっていたのも間違いないだろう。