実はBEV+FCEVレンジエクステンダーの提案なのでは!?
デザインにも特徴のあるN Vision 74 Conceptだが、もしかするとこのクルマは電動化時代における新しいZEV(ゼロ・エミッション・ビークル、CO2排出量ゼロのクルマ)の可能性を示しているかもしれない。
FCEVの割に大容量のバッテリーを搭載していることが気になったので、同じヒョンデのネッソ、トヨタ・ミライ、ホンダ・クラリティFUEL CELL(以下、クラリティ)というFCEVたちと主要数値を比較してみた。
ネッソ:
バッテリー1.56kWh、FCスタック出力95kW、モーター最高出力163ps、航続距離820km、水素タンク容量156.6L
ミライ:
バッテリー1.24kWh、FCスタック出力128kW、モーター最高出力182ps、航続距離850km、水素タンク容量141L(約5.6kg)
クラリティ:
バッテリー非公表、FCスタック出力103kW、モーター最高出力177ps、航続距離750km、水素タンク容量141L
N Vision 74 Concept:
バッテリー62kWh、FCスタック出力85kW、モーター最高出力680ps、航続距離600km、水素タンク容量(推定)約50L=2.1kg
※ミライは水素タンク容量141Lで重量は約5.6kgとなるため、N Vision 74 Conceptの水素重量2.1kgからタンク容量を約50Lと推定した。
クラリティのバッテリー容量は非公表なのだが、ネッソは1.56kWh、ミライは1.24kWhとなり、N Vision 74 Conceptの62kWhよりもかなり小さいことが分かる。これは本来のFCEVは、必要なパワーを燃料電池で常に水素から電気に変えて、モーターに供給しているため、バッテリーは一時的な余剰電気の貯蔵に徹している、つまりバッテリー容量はそこまで大きくなくてもよいということになる。
そしてN Vision 74 Conceptの水素タンクは2.1kgと他の3台の半分以下、かつFCスタックの出力も最小だ。つまりこのクルマは他の3台と異なり、主としてFCEVとして走るのではなく、BEVとして走るクルマとして開発されているように思える。そして万が一、電欠しそうな状況ではFCEVとして走れるというメリットが付加されているのではないだろうか。
そこから見えてくるのはレンジエクステンダーとしてFCEVを搭載したという新しい考え方だ。
これまでBEVのレンジエクステンダーとしては、BMW i3(バイク用のエンジンを搭載)と4月に日本でもお披露目となったマツダMX-30 e-SKYACTIV R-EV(ロータリーエンジンを搭載)のように、BEVとICEとの組み合わせだったが、ヒョンデはBEVにFCEVを組み合わせてきたということだ。
アイオニック5のベースグレードのバッテリー容量が58kWhで航続距離が498kmとほぼ500kmであることを踏まえると、N Vision 74 Conceptの航続距離である600kmは、62kWhのバッテリーでBEVとして約500kmを、FCEVとして100kmを走ることができれば達成できる。
水素ステーションはBEVの充電施設ほど整備が進まない状況ではあるが、FCEVの技術を持っているヒョンデとして、FCEVを活かすとても面白い組み合わせをしてきたと思う。
このN Vision 74 Conceptは、単なるデザインをリバイバルしたコンセプトカーではなく、新しい電動化時代の「解」を模索したモデルなのかもしれない。