イー・アクスルの小型化・軽量化に貢献
前後2モーター式AWDでシェア拡大の可能性
【THE 視点】ジェイテクトは5月9日、モーター一体型駆動装置(イー・アクスル)に対応したディファレンシャル・ギア装置「遊星減速キャリア一体ジェイテクト・ウルトラ・コンパクト・デフ(JUCD)」を発表した。EV市場、とりわけイー・アクスルの需要拡大を見据えて開発された製品である。
「遊星減速キャリア一体JUCD」は、「遊星減速ピニオンギヤ」と「遊星減速キャリア」「超小型デフ(JUCD)」を一体化したもの。イー・アクスルの小型軽量化をはじめ、EVの航続距離の延伸にも貢献できるという。
本製品を使用することで、よりコンパクトなイー・アクスルが設計できるという。現在は、モーターとデフがオフセットしている「3軸式」が一般的だが、コンパクトな「遊星減速キャリア一体JUCD」を組み込むことで、それらを同軸上に配置でき装置全体を小型化できるとのこと。
具体的には、出力150kW級のイー・アクスル向けデフ単体としては、「JUCD」により約25mmのデフ幅の短縮効果がある。さらに遊星減速キャリアと「JUCD」を融合させることで、通常のデフと組み合わせた遊星減速キャリアに対して、約50mmの幅寸法の短縮と全体の小型化・軽量化を可能とした。
また、デフ・ハウジングを円筒形としてキャリア部と一体化し、トルク伝達時のハウジングの変形とバラツキを抑制することで、複数ある遊星減速ギアの歯当たりのバラツキをも改善し、減速機のノイズや振動の低減の面でも有利だという。
世界でEV化が進むと同時に、イー・アクスルのシェアも急拡大している。より優れたEVを開発するためには、優れたイー・アクスルが必要であろう。装置を小型・軽量化できる「遊星減速キャリア一体JUCD」は、激化するイー・アクスル市場において存在感を出せるはず。特に前後2モーター式のAWDでは、イー・アクスルの小型化は必須で、シェアは確実に拡大すると思われる。
ちなみにジェイテクトグループは、2021年にギアイノベーションセンターを開設している。今回の発表は、その成果のひとつと思われる。
(福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)
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