インタビュー
share:

iX5ハイドロジェンが示唆するBMWの「戦略」とは。オリバー・ツィプセ会長が明かした水素の可能性


TEXT:小川フミオ PHOTO:BMW AG
TAG:
BMW iX5 HYDROGENとBMWのオリバー・ツィプセ会長

BMWが、現行X5をベースに開発した燃料電池自動車「iX5 HYDROGEN(ハイドロジェン)」。2023年2月に、その国際試乗会がベルギーで実施された。本イベントに参加したジャーナリストの小川フミオが、オリバー・ツィプセ取締役会長に、彼らが燃料電池車を今このタイミングでリリースした背景を問うた。

「運転する歓びがなければ作る意味がない」

BMWが2023年2月に水素で走る「iX5」をジャーナリストに試乗させた。BEVに力を入れる同社が、なぜここで、水素で走る燃料電池車を作ったのか。

電気自動車の力強さと、エンジン車のような簡単な充填というメリットをもつ水素自動車。iX5は、水素を分解して電子を取り出し、それをバッテリーに貯蔵してモーターを回す燃料電池車。

いま世界で100台を走らせるという「パイロットフリート」のiX5に乗って、出来のよさに感心しつつ、BMWの戦略を、オリバー・ツィプセ取締役会会長に聞いた。

BMW iX5 HYDROGENのフロントビュー

−−アントワープ(ベルギー)を舞台にしたテストドライブで、iX5に乗って、そのナチュラルさとパワフルさに感心しました。

「私も何度も運転しました。気に入ってもらえて嬉しいです。重視したのは、BMW車が大事にしているドライビングプレジャーです。それがなければ作る意味はない、とまで開発陣は肝に銘じて、iX5を開発したのです。このクルマを通して、未来のために私たちがなにをしているか、理解していただけると幸いです。iX5は、運転する歓びを与えてくれるクルマですよね。ひょっとしたら、ICE(エンジン車)以上に」

−−BMWはそもそも代替燃料車で比較的長い歴史をもっていますね。とくにいまのBMW iにつながるバッテリー駆動の電気自動車では。

「最初が2009年にお披露目したMINI E(150kWの電気モーターを35kWhのバッテリーで駆動)ですね。ミニクーパーをベースに開発した車両で、500台を北米でプライベートユーザーにリース販売しました。そのあと2013年にi3をローンチさせました。今回のiX5は、北米とか日本でテストフリートを走らせるので、私は当時のことを思い出しています」

BEVのみの1本脚ではなく水素との2本脚へ

−−それにしても、なぜ水素なのでしょうか。これだけBMW iとしてBEVのラインナップが充実しているのに。

「未来へと歩みを進めるには、1本脚では歩行がむずかしい、と私は言っています。安定して先へと進むためには、もう1本脚があったほうがいいのです。それが水素燃料で走るクルマなのですね。主軸はBEVですが、それを水素でおぎなっていくのです」

−−BEVだけではなにかが足りないということでしょうか。

「たとえば、充電インフラです。このままBEVが増えていくと、それに合わせて充電ステーションを作っていかなくてはなりませんが、たとえば郊外などではペイにしくく、インフラのコストが負担となってのしかかってくることが予想されます。それを水素でおぎなえればというのが私たちの考えです。水素は液体のかたちで運搬可能ですし、化石燃料のように充填が早くできるメリットをもっています」

BMW iX5 HYDROGENの充填イメージ

−−ちょうど昨日(2023年2月14日)欧州委員会が、2035年に内燃機関搭載の乗用車の販売を禁止する法案を採択しました。水素自動車の開発も急務ということでしょうか。

「2026年をめどに欧州委員会は、(ユーロ7とも言われている)ICEの規制をかなり強めると発表したところです。すでに国によっては、BEVが新車販売の6割に達するところもあります。しかし、原料の稀少性とか、充電ステーションの整備とか、27年とか28年には不足の問題が出てくるんじゃないでしょうか。そこで水素です。利点は、稀少な原料をあまり使わないこと、大きなバッテリーを使わないこと、軽量化できることなど、いろいろあげられます」

−−川崎重工業が液体水素を豪州から運んでくる運搬船を手がけるなどしていますね。

「ここで考えるべきは、クルマだけでなく、もっと広い視野でのインフラです。電気の充電インフラは乗用車しか使えません。クルマだけなんです。船舶もトラックも航空機も使っていません。でも水素にはいろいろな業界が注目しています。たとえば、iX5の試乗会の舞台になったアントワープは港湾地区に水素の充填ステーションを持ち、水素で走る小型船も実用化されています」

「これからの20年から30年のあいだのエミッションフリーのために、充電と水素という、ふたつが必要になってくるのではないでしょうか。クルマだけでいえば、市街地なら充電ステーションでもいいでしょう。でも長距離走る場合は、行き先によっては水素のほうが便利ということにもなるかもしれません」

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
いすゞがピックアップトラック「D-MAX」にBEVを用意! バンコク国際モーターショーでワールドプレミア予定
BEV大国の中国で販売が失速! ここ数年でPHEVのシェアが伸びていた
中国市場でファーウェイのEVが爆発的人気! ライバルを凌ぐ激安っぷりと超豪華内装のAITO M9とは
more
ニュース
小型化・充電時間短縮・コスト削減を可能にする! 日産が建設中の全固体電池パイロット生産ラインを公開
レクサスが世界最大のデザインイベント「ミラノデザインウィーク2024」に出展! EVコンセプトカー「LF-ZC」にインスパイアされた2作品を展示
70.5kWhの高電圧バッテリー搭載で一充電走行距離は591kmに延長! メルセデス・ベンツが新型EQAを発売
more
コラム
イケイケだったテスラに何があった? イーロンマスクが1.5万人規模のリストラを発表!
固体電池を早くも実用化! 中国のEVセダンは競争激化で「価格も航続距離も性能も」驚異的な世界に突入していた
日産が発表した中期経営戦略! 2026年に100万台の販売増加を打ち出した「The Arc」に立ちはだかるハードル
more
インタビュー
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
災害に強いクルマは「PHEV+SUV+4WD」! 特務機関NERVがアウトランダーPHEVを選ぶ当然の理由
more
試乗
EV専業の「テスラ」とEVに力を入れる従来の自動車メーカー「ヒョンデ」! モデルYとコナを乗り比べるとまったく違う「乗りもの」だった
誰もが感じる「ポルシェに乗っている」という感覚! ポルシェはBEVでもやっぱりスポーツカーだった
佐川急便とASFが共同開発した軽商用EV「ASF2.0」に乗った! 走りは要改善も将来性を感じる中身
more
イベント
レース前に特別に潜入! フォーミュラEに参戦する日産チームのテント内は驚きと発見が詰まっていた
日産がフォーミュラE「Tokyo E-Prix」開催前スペシャルイベントを開催! 六本木ヒルズアリーナに1夜限りのサーキットが出現
全国約30カ所を巡る! BYDが展示&試乗イベント「Hello! BYD Caravan」を開催
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択