ワンペダル操作のコツとは
回生によって、電気エネルギーが回収できると話した。では、なぜ減速効果もあるのか。理由は、モーターも発電機も、磁力を使って働くからだ。
モーターは、磁石の同じ極同士の反発力で回転力を出すと説明した。発電機はその逆の作用で電気を生み出すわけだが、そもそも磁力は抵抗でもあるので、ローターの回転を下げようとする。それが減速効果を生み出すのである。
磁力の強弱は、アクセルペダルの操作で調整できる。少し戻すだけなら磁力は弱く、ペダルを戻し切るほどであれば、最大の磁力を発揮する。アクセルペダルの操作による磁力の大小の調節が、いわゆるワンペダル操作に通じる。
ワンペダル操作については、走りがぎくしゃくして扱いにくいとの評価もある。だが、それはエンジン車と同じアクセルペダルの操作をするからであって、EVにはワンペダル操作に適した操作方法がある。
あまり速度を下げたくなければ少しだけペダルを戻し、赤信号などで停止したいほど積極的に減速するならより多くペダルを戻せばよい。加速も減速も、運転者が望む速度に最適に調節できるよう、アクセルペダルを微妙に操作するのが、ワンペダルを上手に使いこなすコツだ。
アクセルペダルをパッと早く戻してしまいがちになるのは、エンジン車での運転が身についているからである。マニュアルシフトでは、変速のときクラッチ操作をするためアクセルは素早く戻す癖がついている。それがエンジン車での運転の基本だ。
オートマチック車でも、トルクコンバーター方式は元々燃費がよくなかったので、より減速度の低い歯車のかみ合いへシフトアップしていくため、アクセルペダルを戻した際のエンジンブレーキ効果が少ない。そこでブレーキを多用した運転になる。
しかしEVはそもそも変速しないので、アクセルペダルを素早く戻す必要がない。それでも、エンジン車と同じ操作をしてしまい、ワンペダルは扱いにくいと思ってしまうのだ。つまり、機構の良し悪しではなく、操作の仕方の問題である。
回生ブレーキをうまく使うのがEV運転の醍醐味
このようにEVでは、強めの回生制御を選び、微妙なアクセルペダル操作を身につければ、わずかな速度調節でも電力を回収しやすくなる。その分、より多くの電気をバッテリーに貯えられるので、走行距離の延長に役立つ。EVで一充電走行距離に差が出やすいのは、回生をいかにうまく使えているかどうかによる。
回生はしかし、交通状況や道の登りくだりといった走行条件によって効果が違ってくる。それでもEVはアクセルを戻せば電力回収できるのだから、たとえば、買い物をしてポイントを貯める感覚でアクセル操作し、バッテリーへの電力回収を心がけると、走行距離を伸ばせるというおまけがつく。そんな気持ちでEVを運転すれば、単に速く走るだけでない、EVならではの面白みを実感できるのではないか。