2023年1月
TEXT:嶋田 智之
[ヒョンデ IONIQ5 試乗記]いつの間に!? ヒョンデの高い実力 その4

ストレスフリーの運転感覚 アイオニック5の日本に導入されているグレードは4つ。バッテリー容量が58.0kWhの後輪駆動、同じく72.6kWhの後輪駆動が装備違いで2つ、そして72.6kWhの四輪駆動となる。58.0kWhのベーシックモデルは125kW(170ps)と350Nm、72.6kWhの中間グレードと上級グレードが160kW(217ps)と350Nm、同じく72.6kWhのAWDがシステム合計で225kW(305ps)と605Nmだ。僕が試乗できたのは、72.6kWhの後輪駆動の上級グレードである「ラウンジ」と、72.6kWhの後輪駆動の「ラウンジAWD」だった。 まずは後輪駆動のモデルに乗り込んで駐車場から一般道に左折すべくウィンカーレバーを操作したら、メーターパネルの表示が変化した。パネルの左側にポッカリと丸く、ボディ左サイドの死角になっている部分が映し出されたのだ。次の交差点で右折をしようとしたら、右側に円形の死角映像が表示される。これは車線変更などのときにも同様で、そのたびにウィンカーと連動して死角を映し出してくれる。もちろんそれだけ注視していれば安全というわけではないけれど、大いに助けになることはたしかだ。ほかのデジタル仕掛けのクルマたちもこうしたらいいのに、と思った。 メーターパネルそのものも、情報量はそれなり多いが、シンプルに整理されて表示されているから、欲しい情報を瞬時につかみやすい。くわえてフロントウィンドーに投影されるヘッドアップディスプレイが備わっているので、走行中に本当に必要な情報をチェックするのも容易だ。視界はいいし車体の四隅もつかみやすい部類だから、それらが走らせやすさにつながっている。

TAG: #アイオニック #ヒョンデ
TEXT:TET編集部
「メルセデス・マイバッハ EQS SUV」を今年上半期に発売へ……デイリーEVヘッドライン[2023.01.23]

  メルセデス・マイバッハ、ブランド初のEV「EQS SUV」を2023年上半期に発売 【THE 視点】 メルセデス・ベンツグループは1月10日、ハイラグジュアリーブランド「マイバッハ」において、EVモデル「メルセデス・マイバッハ EQS SUV」を2023年上半期に発売すると発表した。まずは中国から納入を開始するという。  メルセデス・ベンツは2021年9月に「メルセデス・マイバッハ EQS」のコンセプトモデルを発表している。コンセプトモデルは「EQS」をベースに、インテリアを大幅にアップグレード。白を基調とした室内に、同じくホワイトの専用シートを奢り、インフォテイメントシステムを充実させるなど、富裕層が乗るにふさわしいショーファードリブン性を極限まで高めている。  もちろんエクステリアにおいても「メルセデス・マイバッハ」のアイデンティティである縦ラインのグリルをあしらうなど、ベースの「EQS」よりも豪華さを際立たせている。  2021年9月の発表からここまで時間がかかったのは、半導体不足の影響のようだ。2022年は「メルセデス・マイバッハ」としても前年比37%増の売り上げを記録しており、「メルセデス・マイバッハ EQS」が発売されれば瞬く間に受注が増えるのではないだろうか。  また「メルセデス・マイバッハ EQS SUV」の性能も楽しみである。 現行の最高グレード「EQS 580 4MATIC」は最高出力400kW(544ps)、最大トルク858Nm(87.5kgm)のパワーユニットを搭載し、航続距離は最大613km(WLTPモード)となっている。この値が「マイバッハ」でどこまで強化されるか注目である。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★アウディ、EVモデル販売店「e-tron店」の充電ネットワークを拡大……150kW充電器を全国合計102基に拡充、50〜90kW基を置き換え→[詳細はこちら<click>] ★日産、EVのある暮らしをメタバースで再現……自然エネルギーで「アリア」を充電するゲーム型コンテンツを公開[詳細はこちら<click>] ・パワーエックス、アウディジャパンと事業提携……「e-トロン店」への240kWの急速充電器「ハイパーチャージャー」の導入など→[詳細はこちら<click>] ・日産、「ブルー・スイッチ」の取り組み数が200件を達成……災害時に給電するなど、EVを活用した地域課題解決の取り組み ・日産、社債「サステナビリティボンド」2,000億円の発行に向け条件決定……資金はEVや自動運転開発などに充当 ・日立、英国での商用EVの実証実験「オプティマス・プライム」を終了……コストやエネルギー需要などの障壁をデジタル化と新製品の提供で克服可能と結論、商用EVの大量導入に期待 ・大同特殊鋼、磁気ノイズを抑制する素材「パーマロイ箔」を販売開始……EVや自動運転に使用される機器の軽量化・薄型化に寄与 ・東北大と名古屋工大、脱レアメタルかつ高エネルギー密度のリチウムイオン・バッテリー正極材を開発……資源リスクを回避でき低コスト化に貢献 ・アウディ、故ケン・ブロック氏がドライブしたEVレーサー「S1 e-tronクワトロ・フーニトロン」を展示……1月21日「六本木ヒルズ」を皮切りに東京3ヵ所を順次[詳細はこちら<click>] ・エネチェンジ、ミライト・モバイル・イースト/ウエストと協業し「EV充電エネチェンジ」の設置拡大……充電設備の設置費用と月額費用が0円のサービス

TAG: #THE視点 #デイリーEVヘッドライン #メルセデスベンツ #メルセデスマイバッハ #福田雅敏
TEXT:岩尾 信哉
ポルシェ・マカンEV仕様の開発進行中。基本仕様はこうなる!

ポルシェは1月11日、EV仕様の新型マカンの開発状況を、雪上でのテスト風景などとともに明らかにした。ポルシェは2025年までに販売モデルの半数以上をEVもしくはプラグインハイブリッド・モデルとし、2030年までに80%以上の販売車種をEVとする目標を掲げている。ポルシェでは初めて新たなEV用プラットフォームを採用車種として現れる次期型マカンについて、限られた情報を確認しておく。 新プラットフォームが生み出す「電動マカン」 フォルクスワーゲン・グループ内で、アウディとポルシェはBEV(バッテリー電気自動車)用プラットフォームの開発を共同で進めており、新プラットフォームはPPE(Premium Platform Electric :プレミアム・プラットフォーム・エレクトリック)と呼ばれている。  フォルクスワーゲン・グループのEV用プラットフォームを確認しておくと、現状ではフォルクスワーゲンでは「ID.シリーズ」やアウディのコンパクトモデルである「Q4 e-tron」などには、中小型車用のMEB(モジュラー・エレクトリックドライブ・マトリックス)が使われている。「アウディe-tron GT」や「ポルシェ・タイカン」といったラージクラス用としては「J1パフォーマンスプラットフォーム」が存在する。グループ内のランボルギーニやベントレーといったプレミアム・ブランドへの採用も視野に入れたものだ。これらに加わるのが「PPE」となる。将来はフォルクスワーゲン・グループ内において、J1に代わって上級モデルの主力プラットフォームとして利用される予定だ。 新型マカンのEV仕様について明らかにされた内容を、電動パワートレインから追っていこう。永久磁石同期モーターを利用する駆動システムは、ポルシェが採用する800V高電圧システムと組み合わされ、約450kW(約610ps)の出力と、1,000Nmを超えるトルクに対応すべく開発されている。充電時間に関しては、80%を5~25分以下で充電可能という。フロア下部に搭載される総容量100kWhのリチウムイオン・バッテリーは12個のモジュールで構成。充電施設が400V対応の場合にも、バッテリー機能を2分割して切り替え可能とするなど、利便性に配慮した仕様となる予定だ。

TAG: #ポルシェ #マカン
TEXT:田中 誠司
アウディと組んだ「パワーエックス」の野望

1月20日に実施されたアウディジャパンの2023年年頭記者会見において、同ブランドの高速充電設備に関する株式会社パワーエックスとの事業提携が発表された。両企業はアウディ・ディーラーにおける蓄電池搭載型超急速EV充電器「ハイパーチャージャー」の導入と、いわば現在のガソリンスタンドに代わって充電の拠点となる「チャージングハブ」の共同運営について協業の検討を開始する。 株式会社パワーエックスとはどんな会社なのだろう。多くの人にとって聞き慣れない名前なのは当然で、2021年3月に設立されたばかりの若い会社だ。しかしすでに資金調達総額は99億円におよぶという。 出資元のリストには三菱UFJ銀行などのメガバンク、三井物産や伊藤忠商事などの総合商社、森トラストなどの不動産会社、今治造船や日本郵船といった船舶関連会社、四国電力、関西電力グループ、J-POWERなどの電力会社を含む錚々たる大企業が並ぶ。 EV急速充電は再生エネルギー活用のひとつの手段に過ぎない 今回発表されたのは電気自動車の高速充電に関する事業だが、パワーエックスの事業の核となるのは大容量の蓄電池を利用した、再生可能エネルギーの有効活用だ。 2021年の時点において日本における発電量に占める再生可能エネルギーの割合は19%と、いわゆる先進国の中で高いレベルではない。しかしそこからおよそ10年を経た2030年には、その割合はほぼ倍の37%まで増加すると見込まれている。火力発電と比較した場合の発電コストも技術の進歩に伴い低下すると目されている。 再生可能エネルギーは太陽光、風力、地熱など地球が生み出すエネルギーを利用するのでほとんどCO2を排出せず、カーボンニュートラルに大きく貢献する。しかし問題は、それらを生み出す場所が電力の大量消費地である都市部から離れた地域にあるケースが多く送電にコストや損失を伴うこと、そして日本において今後さらに成長が見込まれる太陽光発電は昼間にしか発電できないため、そのままでは夜間の電力需要に対応できないことだ。 パワーエックスはEV用高速充電設備「パワーエックス・ハイパーチャージャー」では300kWh、定置用蓄電池「パワーエックス・メガパワー」(下写真)では3000kWhにおよぶ、大容量のリン酸鉄バッテリーを用いて再生可能エネルギーの課題を解決しようと取り組んでいる。 一般的なEV用高速充電設備においては、高圧線から6,600Vで送電を受ける契約を電力会社と結び、「キュービクル」という変電設備によって200〜400Vに落としたうえで直接、自動車に充電する。パワーエックス・ハイパーチャージャーの場合は50kW以下の商用低圧契約でバッテリーを充電しておき、そこから最大240kWの超急速充電を行なうことができる。 低圧電力で常に電力を貯めておき、必要なときに一気に出力することで再生可能エネルギーを有効活用する。大容量のバッテリーを要するので通常の急速充電器より若干、初期投資は嵩むが、ランニングコストが低いため長期的に回収が可能だという。

TAG: #アウディ #パワーエックス
TEXT:嶋田 智之
[ヒョンデ IONIQ5 試乗記]いつの間に!? ヒョンデの高い実力 その3

広く快適な室内 サイドから見たときのビックリするくらいのホイールベースの長さは、いうまでもなく室内のスペースを広くとることに貢献している。アイオニック5のドライバーズシートに座って自分のドライビングポジションを作り、ふとルームミラーを見てみると、リアシートがずいぶん遠くにある。そのままリアシートに移ってみると、足が組めるくらいのゆとりがある。車体がワイドな分だけ横方向にも窮屈さはまったくなく、どのシートに座っても快適だ。シートの座り心地も、リアルレザーシート、フェイクレザーシートともに良好だ。 フロントシートにはちょっとした仕掛けがあって、電動で後ろにリクライニングさせていくと、背もたれが倒れるとともにヒップポイントが沈み、いい具合にリラックスした姿勢で休むことができる。しかも運転席にも助手席にもオットマンが備わっている。そのうえ上級グレードには「ビジョンルーフ」と呼ばれるガラスルーフが全面に広がっていて空を眺めることができるし、電動式のルーフブラインドを閉めて光を遮ることもできる。つまり充電の待ち時間にゆったりと身体と心を休められるように、ということだ。もちろんサービスエリアで仮眠、なんていうときにもありがたい。充電インフラが今ひとつ整っていない現在は、充電の待ち時間だけじゃなく、場合によっては充電できるポジションに繰り上がるまでの待ち時間というのもあるわけで、嬉しい限りだ。グローブボックスが大容量の引き出し式になっていたり、メーターパネルの右端にマグネットで何かを留められるようになっていたりするのも、待ち時間を楽しく過ごすために考え出されたんじゃないかと思えてくる。 そうした心配りともいえる仕掛けはほかにもある。たとえば左右のフロントシートの間にあるセンターコンソールは前後に140mmスライドさせることができるから、リアシートから物入れやUSBポートなどにアクセスしやすい。さらにシフトのセレクターがコンソールに配されていないため、最も後方に動かしておけば左右間を行き来するのも容易いから、片側のドアが壁などに阻まれて開けられないときでも、逆側のドアからアクロバティックな動きなしに乗り降りすることができる。どうでもいいようなことと思われるかもしれないが、住環境によっては、これはとても便利なのだ。

TAG: #アイオニック #ヒョンデ
TEXT:嶋田 智之
[ヒョンデ IONIQ5 試乗記]いつの間に!? ヒョンデの高い実力 その2

アイオニック5は大小とりまぜていろいろとトピックの多いクルマなのだが、まずはプラットフォームについて触れることからはじめよう。E-GMPと呼ばれるヒョンデのEV専用プラットフォームで、EV専用であることは今どき珍しくもないのだけれど、ヒョンデのそれはリアアクスルに一体型のモーターを配置した後輪駆動が基本とされている。基本というのは、フロントアクスルにも一体型モーターを配した四輪駆動のモデルもラインナップされているからだ。 車格や価格などを考えると、トヨタbZ4X/スバル・ソルテラ、日産アリア、そしてフォルクスワーゲンID.4あたりが日本におけるライバルというか近似値にあるといえるが、日本勢はすべて前輪駆動とそれをベースにした四輪駆動。ヒョンデとフォルクスワーゲンは後輪駆動とそれをベースにした四輪駆動。ヒョンデもジェネシス・ブランドが後輪駆動であることを除けば前輪駆動ベースのクルマばかりだし、フォルクスワーゲンにいたってはすべてが前輪駆動ベースだ。なのにEVということになると、どちらも後輪駆動ベースを採っているところが興味深い。 写真で見るより大きい 車体のサイズは全長4,635mm、全幅1,890mm、全高1,645mm。わかりやすそうなところで比較してみるなら、bZ4Xよりも60mm短く、40mm幅広く、10mm低い数値だ。まだbZ4Xを街で見かけることはほとんどないだろうからわかりやすいともいえないのだが、サイズとしては小さめのDセグメントといったところ。いずれにしても写真などで見かけるイメージほど小さいクルマではない、ということだ。 実際に走らせてみても、アイオニック5のほうが少しワイドだが感覚的にはトヨタ・ハリアーとかマツダCX-5をドライブしているときに近い。街中の細い裏路地やタイトなワインディングロードでは、持て余すとまではいかないものの、気持ちがやや引き締まる感じだ。にも関わらずアイオニック5がコンパクトに見えるのは、ほかのライバルたちがSUVスタイルを採用しているのに対し、ハッチバックのようなスタイリングデザインとされているからにほかならないだろう。ヒョンデはこれをCUV(Crossover Utility Vehicle)スタイルとカタログの中で謳っているが、これはクロスオーバーなどではなく、どう見ても5ドアのハッチバックだ。それも──まぁ好みはあるだろうけれど──かなり見栄えのいいハッチバックだと思う。

TAG: #アイオニック #ヒョンデ
TEXT:生方 聡
アウディ ジャパン、2023年はEV戦略を加速

アウディジャパンは、1月20日、年頭記者会見「Audi New Year Press Conference 2023」を東京都内で開催し、2023年も引き続き充電ネットワークの拡充に努め、EVの販売比率を2022年の約3倍となる12%まで増やしたい考えであることを明らかにした。 会場には「アウディS1 e-tron クワトロ・フーニトロン」も 会場となった都内のホテルには、開場前から多くのメディア関係者が詰めかけた。記者会見場に入ると、アウディジャパンが現在販売している「e-tron」と呼ばれるEVが展示され、その中心にはアウディのアンバサダーを務めたプロドライバーのケン・ブロック氏と共同開発した「アウディS1 e-tron クワトロ・フーニトロン」が据えられていた。この車両は翌1月21日から2月5日まで都内3ヵ所で特別展示が予定されているもの。それにしても、会場内の展示がすべてe-tronとは思い切ったものだ。 記者会見の冒頭には、1月2日に不慮の事故で急逝したケン・ブロック氏に触れ、彼の死を悼むとともに、彼がS1 e-tron クワトロ・フーニトロンを米国ラスベガスで操る映像が披露された。 これに続き、アウディジャパンでブランドディレクターを務めるマティアス・シェーパース氏が、2022年の業績を振り返るとともに、2023年の展望を語った。 2022年のアウディの新車登録台数は20,750台と、前年の92.1%に留まった。世界的な半導体不足により新車の生産が遅れ、日本市場もその影響を受けたかたちだ。その一方で、e-tronの販売は808台を記録し、全体に占めるEVの比率は約3.9%と、前年の約1.5%を大きく上回る結果になった。これには従来から販売されている「e-tron/e-tronスポーツバック」、「e-tron GTクワトロ/RS e-tron GT」に加えて、スポーツモデルの「e-tron S/e-tron Sスポーツバック」や、今後主力となるコンパクトSUV型EVの「Q4 e-tron/Q4スポーツバックe-tron」の投入が貢献している。 Q4 e-tron/Q4スポーツバックe-tronには約2,000台の受注があり、2023年生産分はすでに完売している状況だという。アウディジャパンとしては、2023年はQ4 e-tronシリーズの未納車分に加えて、これまで供給が滞っていたe-tron GTシリーズも輸入台数が拡大するとの見通しや、フェイスリフトによりe-tronシリーズから生まれ変わる「Q8 e-tron」の導入などにより、全販売台数に占めるEVの比率を2022年に約3倍となる12%まで引き上げたい考えだ。

TAG: #アウディ #生方 聡
TEXT:御堀 直嗣
知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀直嗣 第3回:バッテリーを活かす制御

バッテリー使用の適正温度とは 寒い冬を迎えると、バッテリーの容量が足りないと実感することがあるかもしれない。電気自動車(EV)で駆動用に車載されるリチウムイオン・バッテリーも同様だ。 バッテリーの出力や充電の性能は、電流と内部抵抗の掛け算によって算出される。内部抵抗とはいわば損失で、温度が下がると電解液の性状やリチウムイオンの移動が低下する特性がある。このため、寒い時期には充電しにくくなったり、あるいは温かな季節にはもっと走行距離を延ばせていた充電残量でも、どんどん電力が減って早めに充電しなければならなくなったりする。 エンジン車でも、たとえば軽油を使うディーゼル車は、寒冷地仕様の燃料でないと冬場に始動できなくなる場合があり、特性を知ったうえで利用することが望まれる。 リチウムイオン・バッテリーに話を戻せば、逆に高温になり過ぎても、熱暴走などといわれる異常な発熱や発火の恐れがある。そこで車載バッテリーを冷却したり、出力を抑えることで温度上昇を防いだりする必要がある。高速道路を走ったあと、急速充電をしようとしてもなかなか充電できないといった事例があるが、これは熱暴走を起こさせないための制御が働くためだ。 一般的に、バッテリーは人が快適に暮らせる温度が適しているともいわれ、昨今のEVは冷却や暖房機能を備えることで、適正温度の範囲で使えるような対策が施されている。ことに液体冷却を採用すると、温度を管理しやすくなる。 三元系リチウムイオン・バッテリーの特徴 初代の日産リーフは空冷によって冷やしながら、正極にマンガン酸リチウムを採用することで熱暴走を防ぐ対策が行われていた。空冷であることによって、廃車後のリチウムイオン・バッテリー再利用のための分解作業がしやすい利点もあった。液体冷却のような強制冷却でなくても、車載バッテリー容量が多くなかったので、走行風を利用することで適性に冷却できた。そのうえ、正極のマンガン酸リチウムはスピネル構造と呼ばれる金属結晶構造を持ち、万一の過充電になっても結晶構造が崩れにくく、短絡(ショート)しにくいので、熱暴走が起きにくかった。リーフが発売されてから、深刻なバッテリー事故が一件も起きていない背景に、こうした慎重なバッテリー採用が機能していた。 一方、スピネル構造は結晶が崩れにくい反面、リチウムイオンを蓄える容量が少なくなる。このため、現在のリーフを含め多くのEVが三元系と呼ばれ、マンガンのほかにコバルトとニッケルという3つの元素をあわせた正極とすることで、容量を増やし、より長い走行距離を実現できるようになった。 層状構造と呼ばれ、リチウムイオンを含む量の多いコバルトは、万一リチウムイオンが抜けきってしまうと結晶構造が崩れてしまいかねない。そこで、リチウムイオンが正極から抜けきってしまうことを防ぐため、充放電の制御をクルマが行うことも重要だ。 EVは充放電の状況を常に監視し、これを製造した自動車メーカーが通信を利用して一台ずつ把握している。したがってEV販売台数の多い自動車メーカーほど、市場でリチウムイオン・バッテリーがどのように充放電されているかの知見を豊富に持つことができる。その実績を基に、どこまで電力を使ってよいのか? 充電ではどこまで負極にリチウムイオンを移動させてよいかを、危険が生じないぎりぎりまで攻め込んだ制御プログラムをつくることができるようになる。いくら机上で計算しても、消費者が市場でどのように使っているかを知らなければ、最大の性能は引き出せない。

TAG: #EV知識・基礎の基礎 #御堀 直嗣
TEXT:嶋田 智之
[ヒョンデ IONIQ5 試乗記]いつの間に!? ヒョンデの高い実力 その1

史上初のインポート・カー・オブ・ザ・イヤー受賞EV 2022年の自動車業界にまつわる代表的なトピックのひとつは、「2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー」と「2022-2023 インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」の受賞車がどちらもBEVだった、ということだろう。EVとしては2011年に日産リーフがイヤーカーを受賞していてこれが2度目となるが、インポート部門でEVが受賞したのは初めてのことだった。 ちなみに今回は、全エントリー49車種のうち11車種が、EV“専用”モデルだった。リーフが受賞した年は55車種中1車種のみ、以降、2014年が38車種中1車種、2015年が45車種中1車種、2019年が35車種中2車種、2020年が33車種中2車種、2021年が29車種中2車種、といった具合。それ以外にも既存モデルに内燃機関搭載車と並行して設定されたEVもあるわけだが、そんなところからもここにきてEV「専用」モデルが急速に増えてきたことが判る。今やそういう時代なのだな、とあらためて思わせられたものだ。 話をもとに戻すと、「2022-2023 インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」を勝ち得たのは、ヒョンデ・アイオニック5だった。その受賞理由を、日本カー・オブ・ザ・イヤーの公式ウェブサイトではこう記している。 「革新的なエクステリア/インテリアデザインとともにバッテリーEVとして、498km~618km(WLTCモード)という実用的な航続距離や卓越した動力性能のほか、充実した快適装備や安全装備、V2Hや室内/外V2Lにも対応している点などが評価された。さらに、ステアリングのパドルシフトレバーで回生制動量を変更できる点も、走りの楽しさを高めてくれるポイントとして指摘する声が多かった」 捲土重来 ヒョンデが最初に日本市場へ参入したのは2001年のこと。当時は「ヒュンダイ」を名乗っていた。1967年に創立され、1975年に韓国初のいわゆる国産車をデビューさせたヒュンダイは、1980年代半ばから1990年代にかけてカナダや北米などでコストパフォーマンスに優れるという点から評価が高く、売れ行きも好調で、満を持しての日本上陸だった。 が、そう上手くはいかなかった。日本には数多くの自動車メーカーが存在し、この国の地の利も活かしたコストパフォーマンスに優れたクルマは山ほどあって、サービス網も整備されている。輸入車ということでは古くから参入している欧米のメーカーたちが根ざしていて、バブル期にさらに深く広く浸透して地位を固めた直後のことだった。難問が山積みだったのだ。結局、販売が思わしくなかったうえに原材料高騰などに起因する値上げがさらに脚を引っ張るかたちになり……という悪循環から脱することができず、2008年に日本市場での販売をやめることが発表され、2010年をもって乗用車の日本での販売から完全に撤退、となった。 と、あまり歴史的な事柄に関心のない人にとってはどうでもいいかもしれない話を連ねたのだが、それには僕なりの理由がある。

TAG: #アイオニック #ヒョンデ
TEXT:TET編集部
中国のZ世代に向けた電動二輪車の新ブランド「ホンダ e:」を発表……デイリーEVヘッドライン[2023.01.20]

  ホンダ、「カブ」「ダックス」「ズーマー」を電動化し中国で発売 【THE 視点】ホンダは、上海で開催されたオンライン発表会において、中国国内のZ世代に向けた電動二輪車の新ブランド「ホンダ e:」を発表した。今回発表されたEB(エレクトリック・バイシクル)は、日本でも馴染みのある車名を与えられた「 カブ e:」「ダックス e:」「ズーマー e:」の3車種。  中国のZ世代にとって、EBは単なる移動手段ではなくライフスタイルを表現するモビリティとなっており、より魅力的で付加価値の高いモデルが求められている。  今回は人気車種のデザインをモチーフに、先進的な機能・装備などを加えることで若年層の興味を引く狙い。  またこの3車種は、2025年までに電動二輪車を合計10モデル以上グローバルで投入する計画の先駆けだという。  ホンダは電動二輪車時代においても「自由に移動する喜び」を追求するとともに、電動化・知能化分野の技術向上とイノベーションにより新たな付加価値を持つ製品を提供するとしている。  日本での発売も期待したが、残念なことに国内への導入予定はないという。  余談だが、筆者は20年ほど前の前職時代に、ホンダから正式に「ズーマー」のエンジンレスの車体の供給を受けてその電動版を開発し、100台ほど製造した。  その一部は環境省の事業として「日本郵便」「佐川急便」等にも実証実験で使用して頂いた。  当時は電池が初代プリウス用のニッケル水素バッテリーで、「ズーマー」のステップの一部を盛り上げて搭載した。今のリチウムイオン・バッテリーを使えば、ステップが平らでもっとスタイリッシュな電動版「ズーマー」ができたはずで、技術の進化を感じた。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★ポルシェ、EV「マカン」の一部情報を公開……アウディと共同開発のシャシーを使用、最高出力約450kW(612ps)・最大トルク1000Nm(102kgm)のパワートレイン搭載、バッテリーの5〜80%を25分以内に充電[詳細はこちら<click>] ・アウディ、2022年のEV販売台数を公表……前年比44%増の11万8,196台を販売 ・オークネット、デリバリー配達員に電動バイクをリース販売……フードデリバリー「ウォルト」向けに1月19日から ・日産、神奈川県とEVを活用した災害対策で連携……災害停電時に日産が貸与した「リーフ」等を各避難所に電源車として配備 ・東京ガス、充電サービス「イーブレスト(EVrest)」を機械式駐車装置に初導入……傘下の不動産業の賃貸物件に導入、スマホアプリで充電を操作 ・レゾナック、パワーモジュール用材料の研究・開発拠点が本格稼働……放熱や天気的損失を減らし、EVの燃費向上などに寄与する材料の開発を強化 ・積水化学の子会社積水ポリマテック、アメリカに生産拠点を新設……EV向けリチウムイオン・バッテリーの放熱材料を生産 ・武蔵精密工業、イスラエルのSIXAIへ出資……Eモビリティの普及加速でパートナーシップ ・ステランティス、フィンランドの金属メーカーTerrafameと低炭素のバッテリー用材料の供給を契約……2025年から5年間「硫酸ニッケル」の供給を受ける

TAG: #THE視点 #カブ #ズーマー #ダックス #デイリーEVヘッドライン #ホンダ #福田雅敏

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