EVのインバーターが独特な音を発する
EV(モーターのみの走行時におけるHV)の走行音は、ガソリン/ディーゼルといった内燃機関車に比べるとかなり小さい。キャビン内も、当然、静粛になるのだが、機関から発生する音量レベルが下がることで、今度は別の音(ノイズ)が耳につくようになる。
もっとも気になるのは「ヒューン」という電気モーター周辺から発生する音(ノイズ?)だろう。同じ音でも、聞く人によってノイズ(騒音)か否かは違ってくるが、ノイズとは感じなくても、たとえば音楽(カーオーディオ)のような快適さ、心地よさとは受け止めていないだろう。要は、気になるかならないか、耳につくかつかないかで、極論すれば聞こえなくても影響のない音、といういい方もできるだろう。
EV(電気モーター車両)固有の「ヒューン」というノイズだが、これはインバーターが発する励磁音(れいじおん)と呼ばれるものだ。余談だが、磁励音という表現もあるが、この表現は技術用語として正しくなく、励磁音という表記が正解となる。この励磁音というのは、コイルの鉄芯などの磁性体が、流れた電流の大きさに応じて周辺に発生する磁界が共鳴し、その結果、わずかに膨張、収縮することにより、空気や冷却液を振動させて発生する音のことを指している。
さて、EVのおさらいだが、まず現在使われているモーターの大半が交流(AC)モーターであることを覚えておこう。モーターライズのプラモデルなどで使うモーターは、乾電池(直流)で動く直流(DC)モーターだが、大きな力を発生させるような場合(たとえば電車、EVなど)には、直流モーターより小型・軽量で大きな出力を発生する交流モーターが使われることになる。
しかし、EVの場合、動力電源となるバッテリーが直流であることから、交流モーターをまわすため、直流を交流に変換するインバーターが必要となる。インバーターは、スイッチング作用によって電流のON/OFFを高速で繰り返すが、周波数が低いと人間が聞きやすい帯域の音になり、自然と耳に届くことになる。