#トポリーノ
TEXT:加納亨介
フィアットの新しい超小型EVシティコミューターは、その名も「トポリーノ」

フィアットは5月31日、超小型のEVシティコミューター「トポリーノ」を発表した。ハツカネズミを意味するこのネーミングは、初代フィアット500の愛称を継承したものだ。1936年から1955年まで販売された初代“トポリーノ”は、小さいながらも発売当時としては先進的なメカニズムを持ち、大きな商業的成功を収めたモデルだった。新しい超小型EVに与える名としてこれに勝るものもないだろう。 一方で顔つきは、今も世界中にファンの多い2代目フィアット500をオマージュしている。発売前から成功を約束された生まれつきといえる。 公式発表では触れられていないが、同じステランティスグループの一員であるシトロエンの「アミ」やオペルの「ロックスe」の兄弟車と思われる。参考までにアミのスペックを拾うと、全長2,410mm、全幅1,390mm、全高1,520mm、ホイールベース1,728mmで乗車定員は2名。日本の軽自動車と比べて全長で約1m短く、全幅も約10cm狭い(軽自動車規格:全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2.0m以下)。2人乗りシティコミューターとして思い出すスズキ・ツインと比べても30cm以上短い。 (シトロエン・アミ) 車量485kgを走らせるモーターは最高出力8.2hp、リチウムイオン・バッテリーの容量は5.5kWhで航続距離は75kmとされる。充電は交流の普通充電のみで、欧州規格の220Vのコンセントを用いてほぼ空の状態から約4時間で満充電となる。おそらくトポリーノもこれに準ずるはずだ。 欧州のクワドリシクル規格 石材主体の街並みは戦禍に強く、中世そのままのような細い街路が多く残ることと関係しているのだろう、欧州ではこうした超小型車のジャンルが確立されており「クワドリシクル」という規格も定められている。彼の地には小さなクルマを道路の進行方向と直角に駐車する習慣があるが、その主役たちである。クワドリシクルはフランスなら14歳以上、他のヨーロッパの多くの国でも16歳以上(77歳以下)であれば運転免許を必要としないない(講習は必要)。ただし最高速度は45km/h以下と規定され、高速道路を走ることはできない。必然的にこのジャンルのクルマは若者が主なターゲットとなり、シトロエン・アミでもスマートフォンとの連携が強化されている。 気になる価格は発表されていないが、ステランティス製クワドリシクル兄弟の価格はエントリーグレードでおおむね1万ユーロがスタートライン。昨今の円安のせいもあるが邦貨だと150万円に迫り、激安というわけではない。それでもアミは2020年4月の発売以来、欧州11ヵ国で販売されており、この3年ほどで3万5000台以上を販売しているという。 日本でも便利なはずだが…… フィアットはトポリーノについて「新鮮なモビリティ・ソリューションを求める人々に最適で、誰もが利用できる都市型の持続可能なモビリティ・ソリューションを提供する」と表現する。エアコン装着可否など懸念点はあるが、日本市場への導入も期待したいところだ。 最小回転半径3.6mの取り回し性は街中で魅力的だし、そもそも世の自動車の多くは1人で乗られ、平均乗車人数は2人に遠く及ばないという集計もある。2人乗り超小型シティコミューターは、地球環境保護が叫ばれる現代にとても有望なジャンルと思われる。 しかしこれが、日本においてはテイクオフしそうでしない。2003年に登場したスズキ・ツインは3年余りで約1万台の販売に留まり、後継モデルは出なかった。近年ではトヨタC+podがあるが、企業・自治体向け限定ということもあり見かけることは少ない。 規格体系のほうはすでに出来ている。国土交通省は「超小型モビリティ」の規格を制定済みで、少なくともサイズやパワー、最高速度の限りにおいてフィアット・トポリーノは合致している。果たしてその日は来るだろうか。やっぱり高速に乗れないとダメだろうか。

TAG: #コンパクトカー #トポリーノ

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
日本は3年連続「日産サクラ」がトップ! じゃあ中国・欧州・アメリカで一番売れてるEVってなにか調べてみた
電気自動車って「お金的に」得? エンジン車と諸々の費用を比べてみた
リーフのバッテリーパックをバラして積むって意外に大変! 初代フィアット・パンダのEV化に挑戦してみた【その5】
more
ニュース
トヨタの新型モビリティでお台場周辺が一気に便利になる! 「eパレット」と「C+walk」が街全体の活性化にも貢献
ホンダがカーボンニュートラル実現に向け二輪の電動化を加速中! 欧州でネイキッドモデル「WN7」を発表
新車価格約3000万円も補助金を使えば半額で買える! トヨタのカワイイ新世代モビリティ「eパレット」の販売がスタート
more
コラム
EV時代にゴロゴロ出てくる新興メーカー! 魅力はあるけど老舗ブランドにはない「危険性」もある!!
リチウムが入手困難ならナトリウム! いま注目を集める「ナトリウムイオン電池」ってどんなもの?
世界を驚かせた掃除機でお馴染みダイソンがEVに参入する計画! 撤退を決めた理由とは?
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
more
イベント
マンションでもEVが身近になる! 官⺠連携で既存マンション全274駐⾞区画にEV充電コンセントを導⼊した事例リポート
公道レース「フォーミュラE東京」が帰って来る! チケットを持っていなくとも無料で1日遊び尽くせる2日間
災害に備えて未来を楽しむ! 「AWAJI EV MEET 2025」の参加はまだまだ受付中
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択