ボルボ 記事一覧

TEXT:小川フミオ
ボルボEX30がついに上陸!日本を意識したコンパクト・モデルへの思いをプロダクト責任者に訊く

ボルボEX30の発表にはスウェーデン本社からプロダクトに関わる人物たちが出席。様々な部門からインタビューをとおして、コンパクトBEVを創り上げたスカンジナビアン流儀を深掘りしていく。 日本重視のEX30 ボルボ・カー・ジャパンが2023年8月24日に新型BEV「EX30」を日本で発表した。 東京・青山の「Volvo Studio Tokyo」にジャーナリストを集めて行われた発表会には、スウェーデン本社からも重要な関係者が何人も出席。 ボルボ本社が日本市場をいかに重要視しているか。それが、開発やデザインやマーケティングといった部門で重要なポジションに就くひとたちの顔ぶれからも知れる気がした。 日本でまず発表されたのが、NMCバッテリー+シングルモーターで、最大480kmの航続距離を持つ中間グレード。「Ultra Single Motor Extended Range」などとも呼ばれる。 本国のラインナップでは加えて、やや性能は劣るが廉価のLFPバッテリー+シングルモーター(リアモーターで後輪駆動)の「市街地向け」仕様がその下に。 上には、315kW(428ps)のハイパワーを持つNMCバッテリー+ツインモーターによる全輪駆動仕様で、スポーツカーなみに静止から時速100kmまで3.6秒しかかからない高性能仕様もある。 ボルボ・カー・ジャパンによると、2023年の導入にあたっては、NMCバッテリーとシングルモーターの中間グレード(サブスクキャンペーン対象車でもある)のみ展開。 「追って、ほかのモデルの導入も計画しています」(広報担当者)とのこと。導入モデルを決定した背景は、「とりあえず日本でもっともニーズが高そうなスペックスなので」(同氏)と説明された。 標準的な機械式立体駐車場に対応するサイズに加え、ボルボ車に期待される安全性、サステナビリティ、最先端のテクノロジー、さらに、こだわりのスカンジナビアンデザインなどが、ボルボ・カー・ジャパンが挙げるEX30の特徴。 NMCバッテリーとシングルモーター車のベース価格は559万円。「プレミアムな電気自動車のSUVを、内燃エンジン搭載車両とほぼ同等の価格帯でご購入いただけます」(ボルボ・カー・ジャパン)とのこと。 じっさいに自治体の補助金を受けられれば、400万円台で購入できる可能性もあり、競争力の高いモデルといえる。 ヘルマンソン氏が語るコンパクト・ボルボへの哲学 冒頭で触れたとおり、EX30とともに本社から来日したひとりが、ヨアキム・ヘルマンソン氏。EX30プロダクト全体の責任者である。 「小さいことには大きな哲学があると私たちは信じています」とするのは、ボルボカーズのジム・ローワンCEO。 はたして、EX30には、どんな開発哲学が背景にあったのか、ヘルマンソン氏に、一問一答形式のインタビューで語ってもらった。 −−プロダクトの開発において、もっともたいへんだったのはどんなところですか。 「すぐに思いつくのは、安全設計です。EX30は、いちばん小さなボルボのSUVですが、これまでのプロダクトで重視してきた安全性を、ここでも、妥協せず最適化していくことに努力しました。小さいからといって、何かが簡単になるわけではないのです。なにしろボルボ車といえば安全性というイメージが強いので、それを裏切ってはいけません」 ヨアキム・ヘルマンソン(Joachim Hermannsson)プロフィール ボルボ・カーズEX30プロダクト全体責任者。ボルボでインテリア・ビジネス、製品定義など、複数分野でのマネージャーやマテリアル・エキスパートとして23年の経験を持つ。ボルボが手がけるEX30のプロダクト全体責任者として、技術面、デザイン、品質、コストを総合的に優れた製品へと導く役職を担っている。 <Vol.2へ続く>

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TEXT:烏山 大輔
「ボルボ EX30」のデザインに、テスラの影がちらつく

8月24日にいよいよ日本で発表されたEX30のデザインを観察すると、テスラのような合理化が見えてきた。良い意味でのコストダウンにもなっているこのデザインの考え方のほとんどに賛成だ。 ある意味テスラ超えの部分も 「テスラ モデルY」の物理スイッチは、ステアリングホイールのスポークにある二つと頭上のハザードスイッチ、ドアにはパワーウィンドウスイッチとドアオープナースイッチくらいだ。 そして今回のEX30は、ドアにスイッチはない。あるのはインナーハンドルだけだ。それではパワーウィンドウのスイッチはというと、フロント用のそれはアームレストの先端にあり、リア用はセンターコンソールの後端にある。 こうすることでドアのスイッチを無くし、コストダウンとともにすっきりしたデザインと物入れスペースを実現した。ドアからスピーカーをなくし、ダッシュボード上部の左右に広がるそれに置き換えたのも、「ドアからなるべく電装品を取り除くため」と考えると合点がいく。BEV(バッテリー電気自動車)はICE(内燃機関)車と異なり、車体前部のダッシュボード空間に余裕があるし、ドアから電装品を取り除くことは余分な配線をなくし軽量化につながるからだ。 ドアのロック/アンロックスイッチは、フロントのアームレスト先端にまとめられている。ドアミラーの角度調整や格納は、センターディスプレイでの操作になっているのだろう。テスラでさえ物理スイッチとして残していたハザードスイッチもディスプレイの右下に“収納”された。 このスイッチの統合は良いと思う。しかし実際の使用を想定すると、一つだけ難点なのは後席乗員が窓を開閉する際に、上体を前に倒しスイッチまで手を伸ばさなければならないことだ。 フタ付きのアイデアが新しいセンターコンソールのデザイン ICE車とは異なり、BEVではプロペラシャフトやマフラーを通すことを考える必要がなくなり、自由度が格段に向上したセンターコンソールをどうするかが、デザイナーの腕の見せ所ではないかと思っている。 EX30の場合は、2台のスマホ置き場がある。無線充電ができて、画面はきちんと見えやすい角度に作られており、かつスマホを差し込む部分が柔らかいゴム製のレバーのような構造で、スマホが動きにくい設計になっている。   さらにその手前のバッグなどが置けるスペースは、実は観音開きのフタになっていて、ここを開けるとUSB-C端子が2つ備わる収納スペースが現れる。使用頻度が少ないものや車から離れる際に、人目につかないようにしておきたいものをしまうのに重宝するだろう。 そんなセンターコンソールの上に位置するアームレストには、可動式の2つ分のカップホルダーがある。この可動部にはダンパーがついていてゆっくり前に出てくる、かつしっかりした作りで全く「ちゃちさ」を感じさせない。こういうふうに、コストをかけるところとコストをかけずともデザインでカバーできるところを、しっかり分けているのが素晴らしい。 デザインにコストをかけているところをもう一つ。筆者が体験した最近のクルマには、多数の色の中から1色を選択できるアンビエントライト機能を備えるモデルがあった。EX30では、5つのテーマを持つ同機能が装備されているのだが、それはただ1色で光るだけではなく、グラデーションするのだ。 例えばスウェーデンブランドらしいノーザンライト(オーロラ)モードでは、緑から青や紫へと色が変わっていく。夜間に高速道路のサービスエリアで充電中に、この優しい光と、それぞれのテーマに合ったアンビエントサウンドの流れる車内にいたら、とてもリフレッシュできるのではないかと思う。光り方が気になる方はボルボのウェブサイトを確認して欲しい。

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TEXT:烏山 大輔
ボルボ、「EX30」を発表!272ps、559万円のRWDから発売開始。立体駐車場に入る全高1,550mm

ボルボ・カー・ジャパンは、8月24日に3番目のBEV(バッテリー電気自動車)となる「EX30」を発表した。月額95,000円のサブスクリプションは10月2日から受付、通常販売は11月中旬より開始予定。年内の納車開始を予定している。 AWDモデルはおあずけ これまでTHE EV TIMESでも注目してきたEX30がついに日本で発表された。SUVのボディスタイルにもかかわらず、全高が1,550mm、全幅も1,835mmに抑えられたため、都市部に多い立体駐車場にも入る大きさだ。全長も4,235mmなので狭い道での取り回しも良さそうだ。 この1,550mmの全高は日本市場用に調整や“車高短化”されたわけではなく、もともとのサイズ。日本の担当者も「まさに日本のためのサイズ!」と胸をはっていた。 EX30には、ボルボ史上最速である0-100km/h加速3.6秒のAWDモデルもあり、注目していたが、このタイミングでの日本導入には至らなかった。関係者に聞くと「今後の展開を楽しみにしてください」とのことなので、いずれ日本にも入ってくることは間違いなさそうだ。 最初に日本導入されるのはRWDの中でも航続距離が480km(欧州参考値)と長い、エクステンデッドレンジバッテリーモデルだ。このモデルのバッテリー総容量は69kWhで、最大153kWの急速充電に対応しており、26分で10%から80%まで充電できる。 本国のウェブサイトを確認すると、バッテリーが51kWhのモデルもあるので、よりリーズナブルであろう「ノーマルバッテリー」モデルの導入があるのか、今後の発表を待ちたい。 2ヶ月で2,000台の意欲的な受注目標 10月2日から受付が始まるサブスクリプションは、300台限定で用意される。その内訳はモスイエローのボディカラーが100台、10月16日から受付開始となるクラウドブルーが200台だ。 サブスクリプションは、申込金や頭金が不要で、任意保険や諸費用も含まれ、最長24ヶ月の契約期間となる。3ヶ月前からの申し出で、ペナルティ無しでの解約も可能だ。ライバル車にあったように、年数が固定のリースではないところが、契約のハードルを下げることにつながるだろう。 通常の販売も11月中旬から開始予定だ。「オンラインで入手可能」だった「XC40 Recharge」と「C40 Recharge」とは異なり、ディーラーでじっくり実車を確認し、内外装カラーやオプションなどを営業マンと相談したいユーザーにとってはありがたい。 このような販売方法により、ボルボ・カー・ジャパンは、サブスクリプションの300台を含め、年内に2,000台の受注目標を掲げた。 昨年1年間に日本で新車販売されたBEVが約31,000台(軽自動車は除く、普通乗用車のみ)だったことを考えると、もし仮にこのペースで1年間販売できるとすれば、3台に1台がEX30になってしまうのだからすごい。 国や自治体の補助金を使えば、車両本体への支払額が400万円台に抑えられる559万円という価格、フレキシブルでハードルの低いサブスクリプション、日本に適したサイズも相まって、どこまでEX30が人気を呼ぶかに注目だ。 ボルボ EX30 Ultra Single Motor Extended Range 全長:4,235mm 全幅:1,835mm 全高:1,550mm ホイールベース:2,650mm 車両重量:1,790kg 乗車定員:5名 一充電走行距離:480km(欧州参考値) 最高出力:200kW(272ps)/6,500-8,000rpm 最大トルク:343Nm(35.0kgm)/0-4,500rpm バッテリー総電力量:69kWh モーター数:後1基 トランスミッション:1速固定 駆動方式:RWD フロントサスペンション:マクファーソンストラット リアサスペンション:マルチリンク フロントブレーキ:ディスクブレーキ リアブレーキ:ディスクブレーキ タイヤサイズ:前後245/45R19 最小回転半径:5.4m 荷室容量:318L 車両本体価格:5,590,000円

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TEXT:生方 聡
進化は他にも!「最新が最良」のリチャージ シングルモーター [ボルボC40/XC40リチャージ試乗記]

モーターのレイアウト以外にもさまざまな部分に手が加えられた「ボルボC40/XC40リチャージ」。「最新が最良」という言葉は、このクルマにもあてはまるようだ。 One Pedal Driveが進化 C40/XC40リチャージでは、走行中にアクセルペダルを緩めたときに働く“回生ブレーキ”の度合いを、設定変更することが可能である。具体的には、ドライビング設定の「One Pedal Drive」メニューで好みの動きを選べるのだ。選択肢は、従来からの“On”、“Off”に加えて、この2024年モデルからは“Auto”が加わった。 まずはOnを選ぶと、いわゆる“ワンペダルドライブ”が利用できる。アクセルペダルを緩めると強めの回生ブレーキが利き、アクセルペダルに載せた右足の動きだけで、ほぼ速度調整が可能だ。アクセルペダルから足を完全に離せば、クルマは停止に至る。一方、Offでは、アクセルペダルを緩めても回生ブレーキは利かない。一方、停止した状態でブレーキペダルから足を離すと、ゆっくり動く“クリープ”があるため、車庫入れなどの場面ではこのほうが便利かもしれない。 Autoは、レーダーなどのセンサーにより先行車との距離を監視しながら、自動的に回生ブレーキの強さを調節してくれる優れた機能だ。とくに比較的交通量の多い高速道路などでは車間距離の調整が楽になるので重宝する。ただ、先行車がいない状況ではコースティング(惰力走行)するため、単独で走行中にコーナーで減速したいときや、一般道の赤信号で停まりたいときなどには注意が必要だ。個人的にはAutoとOnを切り替えて使うのが便利だと思うが、そのたびにドライビング設定画面を表示させるのは少し面倒である。

TEXT:生方 聡
性格変わった? [ボルボC40/XC40リチャージ試乗記]

「C40/XC40リチャージ」の2024年モデルは、見た目は変わらないのに、走りの印象が大きく変わっていた。 スタイリッシュなプレミアムコンパクトSUV 日本でも人気の高いコンパクトSUVの「XC40」。そのEV版である「XC40リチャージ」と、EV専用モデルの「C40リチャージ」は、フロントグリルにボディ同色カバーが施されることで、エンジン車との違いは一目瞭然だ。さらに、今回試乗したC40リチャージは、クーペスタイルのルーフラインや大きなルーフスポイラーなどにより、スポーティで個性的なデザインに仕上げられているのも魅力のひとつである。 室内に目を移すと、仕立ての良いコクピットや縦型のセンターディスプレイなど、基本的にはガソリンモデルのXC40と同様のデザインを採用し、プレミアムコンパクトと呼ぶにふさわしい心地よい空間。一方、ダッシュボードとフロントドアの装飾パネルは、バックライトにより等高線をイメージした模様が浮き上がって見える凝ったデザインが採用され、夜間のコックピットに花を添えてくれる。 レザーフリーのインテリアを採用するのは従来どおり。ステアリングホイールは人工皮革で覆われるが、知らなければそうとは気づかないくらい違和感がない。オレフォス社製クリスタイルシフトノブとウールブレンドシートはリチャージ アルティメットにセットオプションとして設定されており、C40リチャージの上質さを際だたせている。

TAG: #C40 #XC40 #ボルボ
TEXT:生方 聡
パワーも航続距離も前年比プラス! [ボルボC40/XC40リチャージ試乗記]

FWD(前輪駆動)からRWD(後輪駆動)に生まれ変わった2024年モデルのボルボC40/XC40リチャージ。気になるスペックも進化していた。 2024年モデルは2WDのみに ボルボのEVには、SUVクーペスタイルでEV専用モデルの「C40リチャージ」と、SUVらしいデザインの「XC40リチャージ」のふたつが現在販売されている。この2台は基本設計を共有し、グレード展開も同じである。 2023年モデルとしては、2モーターで4WDの「リチャージ・ツインモーター」と1モーターでFWDの「リチャージ・シングルモーター」の2タイプが販売されていたが、2024年モデルではRWDのリチャージ・シングルモーターだけになり、代わりに装備が違う「リチャージ プラス シングルモーター」と「リチャージ アルティメット シングルモーター」の2本立てに変わっている。後者は装備充実仕様で、ピクセルLEDヘッドライト、ハーマンカードン プレミアムサウンド、20インチアルミホイールなどが標準で装着される。 価格は次のとおり。 C40リチャージ プラス シングルモーター……699万円 C40リチャージ アルティメット シングルモーター……739万円 XC40リチャージ プラス シングルモーター……679万円 XC40リチャージ アルティメット シングルモーター……719万円 アルティメットはプラスの40万円高。C40はXC40の20万円高ということになる。 なお、4WDのリチャージ・ツインモーターはヨーロッパでは販売されているが、日本ではさしあたり需要の多い2WD(2輪駆動)モデルのみが販売される。ボルボ/カー・ジャパンとしては、市場の動きを見ながら日本への再導入を検討しているようだ。

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TEXT:生方 聡
FWDからRWDに変わるなんてある!? [ボルボC40/XC40リチャージ試乗記]

ついに日本に上陸した2024年モデルの「ボルボC40/XC40リチャージ」。見た目の印象は変わらないが、その中身は大きく変わっていた。 常識を超えた年次改良 ご存じのとおり、スウェーデンの自動車ブランドであるボルボは、2030年までにEV専業メーカーになることを目指している。直近の目標としては2025年までに販売台数の半数(日本は45%)をEVとしたい考えで、その第一歩として市場に投入されたが、コンパクトSUVのXC40をEVに仕立てた「C40リチャージ」と「XC40リチャージ」である。 XC40シリーズの日本での販売は好調で、ボルボ・カー・ジャパンによれば、2023年上半期のプレミアムSUVセグメントにおける販売台数はXC40が2位、C40が13位。一方、プレミアムEVセグメントではXC40リチャージが「テスラY」「テスラ3」に次ぐ3位。C40リチャージも9位と、ともにベスト10入りを果たす勢いである。 そんなC40/XC40リチャージの2024年モデルが日本に上陸。ヨーロッパやアメリカの自動車ブランドでは、いわゆるフルモデルチェンジやマイナーチェンジ以外のタイミングでも、年ごとに改良を加える“モデルイヤー制”を採用することが多く、ボルボも例外ではない。このC40/XC40リチャージの2024年モデルもあくまで年次改良版という位置づけなのだが、その変貌ぶりは耳を疑うレベルだ。なんと、2024年モデルではFWDがRWDに変更! エンジン車では、到底ありえない話だ。

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TEXT:岡崎 宏司
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第15回:これから増える選択肢、ますますEVは楽しい!

e-208GTを2年半以上愛用される岡崎さんは、これから登場するEVたちを加えて選べる喜びを感じています。「だから、ますますEVは楽しい!」と、期待感大にしてピックアップしています。 23年後半から、いろいろ選べそうだ 僕がプジョー e-208GTをピックアップした時のEVの選択肢、とくにコンパクトクラスの選択肢は限られていた。基本を同じくする「プジョー e-2008」と「シトロエン DS3 E-TENSE」、そして「ホンダe」くらいしか選択肢はなかった。 あれから2年半以上経った今でも、状況はさほど変わっていない。フィアット500eが加わったくらい。しかし、今年後半から1~2年内には、いろいろと選択肢は増えそうだ。 何がいつ頃日本で発売されるかはわからないが、希望をも込めて、早期の日本発売を期待したいコンパクトEVをピックアップする。 サンクが帰ってくる まず挙げたいのは、「ルノー5(サンク)EV」。この5月にプロトタイプが発表されたばかりだが、生産/販売は2024年に開始するとアナウンスされている。 かつてフランスで、欧州で、絶大な人気を獲得したルノー5だが、僕も強く惹かれ、家内用に5バカラを購入した。 そんな5がBEVとして戻ってくるというのだから、平静ではいられない。しかも、「カッコいい!!」ルックスを纏っている。黒のトップにイエローのボディ、そして鮮やかな赤のアクセントも刺激的だ。 かつて持っていた5バカラは艶やかな黒だったが……「5 EVも黒にしよう。赤のアクセントはそのままに……。ベージュの革張り内装のバカラ・モデルがあるといいなぁ!」と、すでに妄想は始まっている。 「走行距離は400km」程度とされるが、プジョー e-208とほぼ同等。とすれば、僕にはまったく問題ないし、多くの人にとっても同様だろう。 走りにしても、プジョー e-208とさほど遠くないレベルのものと思うが、ルノーHV車などの仕上がりのよさを考えると、かなりいいレベルの走り味を期待しても良さそうだ。 なぜ日本で販売されないのかが不思議なMINIクーパーSE 欧州市場では人気モデルになっている「MINIクーパー SE」だが、日本では販売されていない。コンバーチブル・モデルも「999台の欧州限定車」だ。 MINI EVが日本市場でなぜ販売されないのか理由はわからない。……が、多くの人にとっては魅力的な選択肢になるだろうし、そう遠くない販売開始を期待しよう。 モーターは135kW/270Nmの出力/トルクを引き出し、0-100km/hは7.3秒、最高速度は150km/hを発揮する。十分以上のパフォーマンスと言っていい。 航続距離は234kmと短めだが、欧州市場で販売されるMINIの5台に1台はEVモデルと聞く。つまり、この性能で、日常は十分カバーできる人は少なくないということである。 バッテリー容量は32.6kWhと小さい。だが、その分軽量になるし、重量配分のよさと重心の低さに、EVならではの瞬発力が加わる。なので、MINIならではの「ゴーカートフィールはさらに際立つ」ものになるのだろう。 導入が待たれるスマート・フォーツーEQ 欧州デビューしてから3年以上も経つのに、未だ日本上陸のない「スマート・フォーツーEQ」も気になって仕方がない。 とくに、カブリオモデルは、写真を見ているだけでワクワクしてくる。オープンにした状態で斜め後方から見た姿には強く惹かれる。 スマートブランドは2018年、内燃エンジンモデルを終了して、BEVモデルへの一本化を発表している。 そして発表された「フォーツーEQ カブリオ」は、17.6kWhのバッテリーを積み、走行距離は153km。実用走行距離を60~70%と見ても、セカンドカー、あるいはサードカーと考えれば、何の問題もない。 日本で高い人気を獲得している「日産サクラ」の走行距離は180kmだが、ユーザーから文句が出ているという話は聞いていない。 スタイリッシュなボルボEX30にも期待! 今夏にも販売開始されるとアナウンスされている「ボルボ EX30」も、気になっている。 エクステリア、インテリアともに、とてもスタイリッシュなところにまず惹かれる。趣味も仕立てもいい最新デザインのスーツ……そんなイメージが浮かび上がる。うまく着こなしたらかなりカッコいいこと間違いなしだ。 走行距離(480km)も含めて、パフォーマンス的にもかなり高いレベルにある。2030年にはEV専業メーカーになると宣言したボルボらしい、気合の入った仕上がりだ。 幅が1,800mmを超えている(1,837mm)のが唯一の引っかかる点だが、他のあれこれの魅力を考えると、妥協できるかもしれない。 来年か再来年辺りには、コンパクト系EVの選択肢はどんどん拡大するだろう。楽しみで仕方がない。

TAG: #e-208GT #EX30 #岡崎宏司
ボルボ EX30の発表会でプレゼンするボルボ カーズのジム・ローワンCEO
TEXT:小川フミオ
ボルボは熾烈な戦いをいかに制するか。彼らがEVメーカーに「変身」した理由をCEOに訊く

相次いで新型EVを投入するボルボ。今後も毎年のようにニューモデルをリリースしていく予定であるという。EV専業メーカーになる道を選んだボルボは、これまでとは大きく変わっていくのだろうか。だが、舵取り役のジム・ローワンCEOの言葉からは、今回の「変身」は、彼らが「らしく」いるための選択であったことが明らかになった。 グローバル生産する“効能” 小型SUVのBEV、EX30を発表・発売(欧州)したボルボ・カーズ。このクルマが代表する今後のボルボの“行き方”こそ、市場に評価されるものだと、ジム・ローワンCEOは自信を見せる。 EX30発表会におけるローワンCEOへのインタビューから、ここでは、技術と生産と、それらに密接なかたちで結びついた印象のマーケティングについて、注目すべき発言をまとめた。 −−EX30は、2023年の欧州に続いて、日本でも発表・発売を予定しているとか。 「日本市場には、EX30のサイズはぴったりだと思うんですが、どうでしょうか。実際、私が聞くところでは、日本の市場調査では、EX30に期待する声はたいへん大きいとか。私が見たかぎりにおいても、東京のような市街地で乗るには、最適なサイズのクルマです」 −−先んじて2022年11月に発表された大型SUVであるBEVのEX90は、期待できる内容だが発売は2024年に延期された。 「いまソフトウェアをすべて書き換えて、2024年後半の発売に備えていこうという状況です。クルマはいちおう出来てきたのですが、私としてはソフトウェアの完成度に不満があり、そこで、4〜5ヵ月発売を延期しても、完成度を上げるほうを当然選んだわけです」 −−ボルボ・カーズにとってあたらしい動きは、EX90もEX30もグローバル生産を選択したことだ。 「EX30は中国生産した車両を世界各地に輸出します。EX90については、中国の自社工場とともに、サウスカロライナ州チャールストンの自社工場で生産します。私たちが吉利汽車(ジーリーともギーリーとも欧米では呼ばれる)と(EX30の)プラットフォームをシェアする戦略を選択したことで、開発費削減という恩恵が得られます。このさきボルボ・カーズでは毎年のように新車を発表していきたいと思っていますから、開発提携は重要な課題です」 「若いひと」に支持されるボルボ −−吉利汽車といえば、英国の伝統的なスポーツカー、アストンマーティンの大株主であり、ロータスの親会社でもあるが、BEVについても知見は豊富だ。 「吉利汽車のエンジニアリングにおける知見と蓄積されてきた技術力は、私たちのプロダクト開発においてもおおいに役立ちます。優秀なエンジニアもたくさん協力してくれています。中国企業がもつBEVの開発能力はたいそう高いものです。それらを役立てることでボルボというブランドの商品力はいっそう強化されると私は思います。ボルボに期待される安全性やデザイン性、それにサステナビリティに関するコンセプトは守りつつ、価格競争力を持つことが出来るのです」 −−大きな中国企業と密接な協力関係をもつことで、将来そこに飲み込まれていく不安はないか。 「協力関係を拡大していくことで、キャラクターを喪失しないかと不安の声も耳にしますが、ボルボ・カーズがボルボのブランドのもとで発売するプロダクトは、ホロモゲーション、安全性テスト、内外装、素材、サプライチェーンなど、すべて独自のものを使います。共用するのは、バッテリーなどを含めたプラットフォームです」 −−これから熾烈化するBEV市場で生き残っていく施策は、ボルボらしさを見失わないということか。 「ボルボは量産ブランドではありません。プレミアムブランドという位置づけです。そのなかには生産台数も含まれます。乗用車の市場で、1%ぐらいのシェアを持っていて、それを2%まで拡大することは出来るでしょう。ユーザーはボルボというブランドを好いてくれていて、安全性やサステナビリティに関して、ブランドイメージを高く評価してくれています」 −−ボルボはプログレッシブなブランドとして評価されている。 「調査によると、いまボルボに注目してくれるユーザーのなかには、科学の分野に携わるひとや、ソフトウェアのエンジニアや、マーケティングを担当しているひとなどが目立つそうです。年齢も若いひとが多い。このひとたちにとってボルボは“プログレッシブ(先進的)”なブランドなのです。これからも、やや保守的なイメージのあるブランドから多くのユーザーが移行してくると信じています。それは、私たちが大事にしている価値を、若いひとたちがシェアしてくれるからです」 <完>

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ボルボ EX30の発表会でプレゼンするボルボ カーズのジム・ローワンCEO
TEXT:小川フミオ
ボルボが二兎を追わずに目指すものは何か。彼らがEVメーカーに「変身」した理由をCEOに訊く

ボルボにとって、電動化は氷山の一角。現在同社の舵取り役を務めるジム・ローワンCEOはそう語る。彼らは果たしてどこを目指しているのか。どうして内燃機関の開発を止めたのか。自動車ジャーナリスト・小川フミオがCEOインタビューを通して、ボルボが見ている明日の姿を浮き彫りにする。 ソフトウェアやマテリアルに注目すべし ボルボ・カーズのジム・ローワンCEOは、これからの生き残りにおいては、素材の開発とコアコンピューティングテクノロジーが大事になる、とする。 ミラノにおけるEX30の発表会場で行なったインタビューから、要点を紹介していこう。 −−電動化が進んでいくなかで、自動車メーカーは何をやるべきか。ボルボ・カーズの考えはいかなるものか。 「電動化は氷山の一角にすぎません。私たちがいま行なおうとしているのは“変革”であって、電動化自体が目的ではないのです。電気モーターか、内燃機関か。みんな議論をそこで終わらせてしまっています。いま起きつつあるのは、実際はもっと深いところでの変革なのです」 −−ボルボが起こそうとしているのは、クルマ自体の変革か。 「いま、電動化とともに注目すべきは、コアコンピューターテクノロジー、ソフトウェア、シリコンといった分野であり、そして、忘れてはならないのが素材です」 −−クルマにおける変革は、見えないところで起こるということか。 「モーターは同期型か非同期型かとか、インバーターモジュールはどうするかなどといった議論もあります。いまさかんに取り沙汰されている話題でいうと、窒化ガリウムを使ったインバーターとか、パワー半導体のシリコンカーバイド(SiC)とか。要するにマテリアルサイエンスともいうべき領域が、私たち企業の未来に大きくかかわってくるのです」 −−自動車メーカーはまったく新しい領域に足を踏み入れはじめている。 「いまや、私たちはどんどん極小な領域に足を踏み入れていっています。サブアトミック(原子核内部)のところまで分け入っているわけです。ナノテクノロジーの分野が、この先の開発において、どんどん重要になっていくと思っています」 “エンジン”の選択肢より、新技術へ −−2023年6月に発表したEX30ではLFPバッテリーとNMCバッテリーというふうに、クルマのユーザーが何を求めているかによって使い分けている。 「駆動用バッテリーにしても、リチウムイオンとひと言でくくれなくなっていますから。今回は、性能はまずまずのレベルですが比較的廉価で、都市で使うぶんにはなんの問題もないLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーも搭載しました。さらに、シリコン負極(アノード)の開発を進めたり、またソリッドステートタイプ(全個体電池)もそろそろ現実ものとなってきたりという具合ですね」 −−ボルボ・カーズは2021年6月に「ソフトウェアがクルマを定義する時代がくる」としていた。素材とともにコンピューティングも重要な要素になる。 「コアコンピューティングテクノロジーがクルマの“性能”を左右する時代です。ビジョン処理とAI、一般的なコンピューティング、それにインフォテインメントと、さまざまな機能において重要なのです。私たちは、このさきクルマはソフトウェアによってスペックスが決まってくると思っていて、これからのプロダクトをSoftware-Defined Carと定義しています」 −−自動車の作りかたが根本的に変わってくる。ボルボ・カーズはさまざまな企業と提携したりしながら、あたらしい道を開拓していく姿勢が明確だ。 「(先述の素材を含めて)すべてを同時に行なっていかなくてはいけないのです。そんな時代に、ICEもBEVもというのでは、私たちのような規模の企業にとって、負担が大きすぎます。そこで私たちは電動化を選んだのです。あたらしい技術にこれからも投資していきます」 Vol. 3へ続く

連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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