トヨタ 記事一覧

TEXT:烏山 大輔
トヨタ製電気自動車の試金石!? モビリティショーに出展するコンセプトカー2台を発表

トヨタは、10月26日(木)から開催されるジャパンモビリティショー2023に、2台のBEV(バッテリーEV)のコンセプトカーをを出展すると発表した。 これぞ電動化の真骨頂 1台目は「FT-3e」でSUV的スタイルのクルマだ。もう1台は「FT-Se」で、電動スポーツカーだ。 プレスリリースの記述で一番感銘を受けたのは「この2台は基本コンポーネントを共有している」の部分だ。 おそらくプラットフォーム、モーター、バッテリーのことだと思うが、クルマが「走る」ための要素を共用し、SUVもスポーツカーも作れてしまうのが、BEVの面白さであり、利点ではないだろうか。 例えばICE(内燃機関)に置き換えると、ハリアーとスープラのベースを一緒にするのはかなりの難題だ。フロントにエンジンを搭載していることだけは共通だが、搭載の仕方が横置きと縦置きで異なるし、駆動方式ももちろん違う。 こういったBEVの「上屋ボディ作り分け」に関する技術力が高まり、ノウハウも蓄積されれば、ICEの時代には想像もできなかった自由なデザインが可能になるだろう。 そうすれば今回のコンセプトカーのようにベースは一緒にもかかわらず、SUVやスポーツカーに加えて、セダンやミニバンだって作れるようになるかもしれない。 それはトヨタに限らずBEVを開発しているメーカー全てに言えることだ。だからこそ競合他社を凌ぐ価値を生み出そうとしている。この2車においては次のような点だと思う。

TAG: #コンセプトカー #ジャパンモビリティショー #トヨタ
TEXT:桃田 健史
「トヨタ×出光」会見から見えてきた全固体電池を搭載するEVの未来。どんなクルマが登場する?

トヨタと出光興産は2023年10月12日に共同記者会見を開き「バッテリーEV用全固体電池の量産実現に向けた協業を開始する」と発表した。 3つのフェーズで協業進める 共同会見の柱は、量産に向けたロードマップだった。 協業内容については、量産実証、初期量産、そして本格量産の検討という3つのフェーズを示した。 フェーズ1では、硫化物固体電解質について、品質・コスト・納期に検証する。 続くフェーズ2では、出光興産による量産実証を通じて、硫化物固体電解質の製造と量産化を推進。 これと並行してトヨタは、この硫化物固体電解質を使う全固体電池を搭載したバッテリーEVを開発し、2027年から2028年の市場導入を目指す。 これまでトヨタは、同年6月に同社東富士研究所(静岡県裾野市)で報道陣向けに実施した「トヨタテクニカルワークショップ2023」で全固体電池を2027年から2028年に実用化すると発表。 これを受けて、同年9月には愛知県内のトヨタ貞宝(ていほう)工場で、全固体電池の製造ラインの一部も初公開している。 その際は、板上になった電池部材が流れる上下二つのコンベアが同期して、電池部材は速く、また正確に積層される様子を見た。 だが、全固体電池の技術のキモとなる、固体電解質についてや、正極および負極に関する技術的な情報開示はなかった。 そしてフェーズ3では、本格量産による量産効果と事業性を追求する、とした。 トヨタの電動化方針は、あくまでもマルチパスウェイを維持 会見の中で、トヨタの佐藤恒治社長は、全固体電池のバッテリーEVに与えるメリットについて、①充電時間の短縮、②航続距離の拡大、③高出力化、④液状電解質のように温度の影響を受けにくいため高温・高電圧に強く電池としての安定性が高い、という4点を挙げた。 その上で、全固体電池を搭載したバッテリーEVの種類の可能性についても示唆した。 ひとつは、高い動力性能を実現するため高出力モーターを必要とするスポーツカー。 もうひとつは、毎日のオペレーションの中で急速充電の頻度が高くなる傾向の商用車だ。 さらに、エネルギー密度が高いことで、比較的容量が大きな電池でも小型化が可能となるため、クルマのデザインの自由度が高まることも考えられるとも指摘している。 また、佐藤社長は日頃から「クルマ屋がつくるバッテリーEV」という表現を使い、トヨタらしいバッテリーEVの企画・開発・生産を強調している。それに関連して、全固体電池搭載バッテリーEVについても「トヨタらしさ」を追求するための自由度が広がるという見方も示した。

TAG: #トヨタ #全固体電池
コベルコのFCEVパワーショベル(photo=コベルコ建機)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
建機用水素充填インフラの構築を急げ……コベルコ、FCEVパワーショベルの稼働評価を開始[2023.10.12]

コマツも試作機を開発した中型クラスの電動パワーショベル 官民一体でFCEV建設機械の開発とインフラの構築を早急に 【THE 視点】コベルコ建機は、燃料電池式(FC)の電動ショベルの試作機(以下、FCEVパワーショベル)の稼働評価を開始した。 FCEVパワーショベルの実用化に向けた取り組みを2021年に開始し、2023年3月に試作機が完成した。中型の油圧ショベルにトヨタのFCユニットと水素タンクを搭載。パワーショベルに求められる基本動作に支障がないことを確認したという。 評価結果をまとめると以下となる。 ・エンジン搭載機と遜色がない動作速度 ・圧倒的な低騒音 ・エンジンによる振動がないため、車体への振動伝達が低減し搭乗時の快適性が向上 ・水素と空気中の酸素が結合した純水のみの排出なので、CO2がゼロ ・高温排気がないため、車体やその周辺への熱害がない 今後も、エンジン搭載機と同等の作業性能を実現するために試作機の検証と改善を進め、商品化を目指すという。ちなみにコベルコは、世界初の「ハイブリッドショベル」や「有線式電動ショベル」といった環境負荷低減に貢献する建設機械の開発と提供に努めている。2025年に、まずはEV建機のニーズが高い欧州に向けに「バッテリー式EVのミニショベル」と「小型重機ショベル」。さらに日本国内向けに「クローラークレーン」の有線電動仕様の導入を計画し、EV建機の普及を着々と進めている。 特注ではなく、トヨタの量産品のFCシステムを使用しているとすれば、信頼性が高い上にコストの低減が期待できる。同じ建機メーカーの小松製作所(コマツ)も、今年5月にトヨタのFCを使用したFCEVパワーショベルの開発と実証実験の開始を発表している[詳細はこちら<click>]。コベルコと同じ中型の油圧ショベルがベースなので、FCシステムも大きくは違わないだろう。逆に各メーカーは、どういった点でそれぞれの特徴を出していくのか、興味津々である。 一方、使われる環境が自動車のFCEVとは違うので、環境に合わせた信頼性や耐久性などの検証は今後も継続していく必要がある。 また、水素充填のインフラを建機に対応させるといった国が絡む法整備の問題もある。現状では自動車用の水素ステーションは法の縛りで建機では使えないと筆者は認識している。 政府は、FCEVの普及を目標に水素供給インフラの整備・強化も目標に掲げているが、建機に対するそれらの構築も具体的に検討を始めてほしい。騒音・排熱といった環境問題の対策に非常に有用なEV建機は、バッテリー式であれFC式であれ普及を加速させるべきだ。官民一体となって取り組んでほしい。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★テスラ、新型「モデル3」の展示会を開催 ……10月13日(金)より、「テスラ新宿」「テスラセンター板橋」「テスラセンター千葉稲毛」「テスラおおたかの森」「テスラ幕張新都心」「テスラ・ラゾーナ川崎プラザ」で、「ハイランド」と言われる改良新型「モデル3」の展示を行なうと発表した[関連記事はこちら<click>]。 ★★レクサス、EVスーパースポーツをJMSで発表か ……「ジャパン・モビリティ・ショー」(JMS)の出展概要を発表した。「バッテリーEVコンセプトカー」の出展予告とともにシルエットを公開した。スポーツ車を彷彿とさせる低いスタイルをとっている。 ★★スバル、EVスポーツをJMSで発表 ……「JMS」の出展概要を公表した。「スバル・スポーツ・モビリティ・コンセプト」を出展する。公開されたティーザー画像では、低く構えたクーペらしきスタイルが見て取れる。 ★★ボールねじのTHK、EVを開発 ……実走行が可能なコンセプトモデル「LSR-05」を開発した。「JMS」に出展するという。車両にはTHKの独自技術を満載。SUVクーペスタイルの4人乗りで観音開きドアを採用している。 ★★三菱、クロスオーバーMPVのEVコンセプトを開発 ……「JMS」に出展する。ティーザー画像では、「デリカ」のようなシルエットを確認することができる。また、バギースタイルの小型EV「Last 1 mile Mobility」も出展する。 ★ヤマハ、3ホイーラーのオープンEVを開発 ……前輪二輪のリバーストライク型のオープントップEVコンセプト「トライセラ」を開発した。「JMS」に出展するという。そのほか、コンセプトEVスクーター「イーラブ」や、スーパースポーツスタイルのEVバイクも出展する。 ★BMW、「iX2」の車両概要を公開 ……「ジャパン・モビリティ・ショー」でのワールドプレミアを前に車両概要を公表した。プレミアムコンパクトクラス初のスポーツ・アクティビティ・クーペ(SAC:いわゆるSUVクーペ)スタイルのモデルとなる。最高出力230kW(313ps)/最大トルク494Nm(50.4kgm)のデュアルモーター式AWDで、最大航続距離は449km(WLTP値)。 ★米新興アルファモーター、ピックアップEV「ナイトウォルフ」を発表 ……シングルキャビンのピックアップトラックとなる。駆動方式はRWDもしくはデュアルモーターのAWDを選択可能。最大航続距離は275マイル(435km)。 ★「フィアット 500e」「アバルト 500e」向けのオンデマンド充電サービスが開始 ……欧州の4ヵ国・13都市でサービスを開始した。スマホからの予約で充電機材を搭載した車両が駆けつけ充電を行なう。サービスはE-GAPが担当する[関連記事はこちら<click>]。 ★ステランティス、ドイツ国内のEVでトップシェア ……2023年9月のドイツ国内におけるEVの販売台数を公表した。「オペル・コルサ・エレクトリック」(2位:2,200台)、「フィアット・500e」(3位:1,800台)、「オペル・モッカ・エレクトリック」(4位:1,300台)となり、ドイツでのトップシェアを獲得したという。 ★ジェネシス、アメリカ33州でEVモデルを取り扱い ……ヒョンデの高級ブランドのジェネシスは、10月10日付で33州に販売網が拡大したと発表した。10の州へ販売を広げ、カリフォルニアとルイジアナには2つの独立ディーラーをオープンしたという。 ★東京都の公共駐車場で計52基の充電器が新規稼働 ……テラモーターズが展開する。木場/和田堀/石神井/中川/東綾瀬/宇喜田/武蔵野の森/小金井の各公園の駐車場に導入。 ★世田谷区の公共施設に充電器を設置 ……テラモーターズは、東京都世田谷区と充電インフラ整備に関して協定を締結した。区立教育総合センターと多摩川総合支所に、急速充電器を1基ずつ設置予定。 デイリーEVヘッドライン[2023.10.12]

TAG: #EV建機 #THE視点 #燃料電池(FC)
TEXT:桃田 健史
トヨタの全固体電池量産に向けた技術進化を実感。“夢の電池”ではなく、量産目前の現実味が。

トヨタが2027~28年頃を目途に量産する予定の全固体電池。愛知県内のトヨタ貞宝工場で、試作に向けた開発ラインを視察。想像していたことは少し違った印象を受けた。トヨタの真骨頂であるTPS(トヨタ生産方式)によるカラクリをじっくり見た。 化学の世界での最新技術を期待するも… トヨタが2023年9月中旬に愛知県豊田市とその周辺で、一部報道陣向け実施した「モノづくりワークショップ2023」。 その中で、注目の話題が全固体電池の開発ラインだ。 設置されているのは、貞宝(ていほう)工場。今回の視察では、同工場内で次世代電池普及版(バイポーラ型リチウムイオン電池)の開発ラインを見た後に、全固体電池の開発ラインを見るという順番だった。 現行のリチウムイオン電池(または次世代電池普及版等)が正極と負極がセパレーターを挟み、これらを液状の電解液で覆う構成であるのに対して、全固体電池は電解液の役割を固体で行うタイプの電池を指す。 一般的には、充放電の効率や、安全性が高まると言われてる。 今回の視察では、次世代電池普及版(バイポーラ型リチウムイオン電池)で、集電体に負極または正極を塗工する工程を見ており、「いかにも電池技術らしい化学の領域での最新技術」という印象があった。 そのため、視察のメインイベントというべき全固体電池の開発ラインでも、化学的な技術詳細が明らかになるのではないか。 そんな期待を抱いての視察だった。 だが、全固体電池の開発ラインはビニールの壁で覆われており、その内部に入ることはできなかった。 今回公開されたのは、加工された電池部品を組立てる工程のみだった。

TAG: #トヨタ #全固体電池
ギガキャストの試作品(写真右)。プレス工程と溶接工程を必要とする従来品(写真左)と比べて工程数は一気に減る。出典:トヨタ
TEXT:桃田 健史
トヨタ「ギガキャスト」の正体を初公開の明知工場で見た。これからのクルマ作りには必須技術か

本格的なBEV(バッテリー電気自動車)普及に向けて、自動車メーカー各社の技術開発競争が熱を帯びている。 その中で注目されるのが、ギガキャストと呼ばれる鋳造技術だ。トヨタは23年6月公開の試作品に続き、その製造現場の様子を公開した。 ギガキャストに定義はまだない 鋳造に関する新しい生産技術「ギガキャスト」という表現を、2020年代に入ってから自動車産業界でよく耳にするようになった。 情報の出所は、大きく2つ。 ひとつは、テスラだ。BEV専業メーカーであるテスラにとっては、内燃機関を主体とする一般的な自動車メーカーでは実現しないような、大胆な発想を数多く持っている。 そうした企業としての姿勢は、商品開発のみならず、生産技術についても同様だ。ギガキャストも、そのひとつだと言える。 もうひとつは、中国企業によるギガキャストの採用だ。中国では2010年代からEVベンチャーが数多く創業している。まったくゼロからのスタートであり、さらに中国国内のみならず、グローバルから積極的に資金調達を行うためには、斬新な設計思想と、それに伴う大胆な生産技術が必要だったと言えるだろう。 そこに、ギガキャストが採用されたのだ。 ただし、こうしたギガキャストには様々な手法があり、国や地域の自動車技術会などで明確に定義付けされているわけではない。 トヨタは2023年6月上旬に、静岡県裾野市で実施した「テクニカルワークショップ2023」でギガキャストによって製造した試作品を展示している。 さらに、トヨタは2023年9月中旬に豊田市とその周辺にある3つの工場を舞台として、一部報道陣向けに実施した「モノづくりワークショップ2023」で、トヨタでいうギガキャストの試作用設備を視察した。

TAG: #ギガキャスト #トヨタ
元町工場で様々なモデルが混流生産される様子。出典:トヨタ
TEXT:桃田 健史
トヨタの「からくり」やカイゼンに満ちたクルマづくりを、EVも混流生産する現場で見た

トヨタのマザー工場である元町工場。多様なモデルを同じ製造ラインでつくり分ける混流生産が行われている。BEV(バッテリー電気自動車)やFCEV(燃料電池車)も混流しているが、そうした製造方法の実態についてトヨタから詳しい話を聞いた。 混流、中量生産、少量生産が混在する環境 トヨタの主力工場のひとつ、愛知県豊田市の元町(もとまち)工場内部を2023年9月中旬、詳しく見た。 公開された資料によると、工場内には、プレス課、ボデー課、塗装課、第1組立課、第2組立課、第2機械課、第3組立課、第3機械課、成形課、検査課のほか、ノア・ヴォクシーボデー、GRボデーなどの製造エリアがある。 このうち、第1組立課は、9モデルを年産12万8000台規模で混流生産している。 具体的なモデルは「ノア」、「ヴォクシー」、「クラウン」、「bZ4X」、スバル「ソルテラ」、レクサス「RZ」、「パトカー」、「MIRAI」、そして計画中の「クラウンセダン」の9モデルだ。 第2組立課ではレクサス専用で中量(年産1万1000台規模)で「LC」と「LC-C(LCコンバーチブル)」。 そして第3組立課では専用ラインで「センチュリー(セダン)」と、小型BEV「C+pod」を生産している。 いわゆるサブラインとして、第2機械課でBEV電池パックを生産するほか、別の場所でC+pod用の超小型電池パックを組立ている。 そのほか、第1成形工場で、リハビリロボット「WelWalk」を生産するといった、多様なモビリティの生産拠点となっていることが分かる。

TAG: #クラウンセダン #トヨタ #ミライ
3つの車体モジュールで構成される次世代BEVの技術展示。出典:トヨタ
TEXT:桃田 健史
組み立て中のクルマが自動運転で走行!? トヨタ元町工場の「次世代BEV生産ライン」を見た

トヨタが豊田市の元町工場で次世代BEVのデモラインを初公開した。組立工程の中でクルマが自走する、国内自動車メーカーとして初めての試みを見た。どのような技術を用いているのか、トヨタ関係者から詳しい話を聞いた。 実用化に向けて着実に前進 トヨタが2023年9月中旬、地元豊田市とその周辺で一部報道陣向けに開催した「モノづくりワークショップ」。 その中で、元町工場内で研究開発が進んでいる、次世代BEVの組立工程に関するデモンストレーションラインを視察した。 まず、報道陣が注目したのが3分割された次世代BEVの車体構成だ。 展示されたモデルには、車体前部にモーターやインバータなどがあり、構成部品を見ると現行の生産方式であるプレス加工した部品を溶接した形だ。 車体中央部は駆動用の電池パック。近年量産されている一般的なBEVは、車体中央の床部に電池パックを搭載しているが、トヨタとしては当面、この方式を採用するようだ。 トヨタの次世代電池の研究開発は急ピッチで進んでおり、2028年までに合計5つの次世代電池の量産を目指すとしている。その上で、電池がかなり高いエネルギー密度を持ち、なおかつBEVの使用方法が上手くコントロールできる「サブスク」などのビジネスモデルが描ければ、電池パックの小型化が可能となり、BEVの車体中央部の構成部品や大きさも変わる可能性がある。 そして、車体後部は高圧鋳造のアルミダイキャストをさらに高圧化させた、いわゆるギガキャスト製法で一体成形した。 このように、現在のところ前・中央・後という三つの車体モジュールを想定し、これらを結合してクルマとして走れる状態とする。結合方法については様々な技術を研究開発中だという。

TAG: #bZ4X #トヨタ
トヨタ「モノづくりワークシップ」でプレゼンするCPO(チーフ・プロダクション・オフィサー)の新郷和晃氏。出典:トヨタ
TEXT:桃田 健史
トヨタが次世代電池の開発ラインを初公開。バイポーラ型LFP(リン酸鉄リチウム)の重要技術を見た

トヨタが、次世代BEVで重要な技術となる車載リチウムイオン電池について、その製造方法の一部を報道陣に公開した。その中で、トヨタが次世代電池普及版と称する、比較的価格を抑えることができるリン酸鉄リチウムを使った電池の製造工程の一部を見た。 最新モノづくり現場を紹介する異例イベント トヨタは2023年9月中旬、地元豊田市とその周辺で一部報道陣を対象とした「モノづくりワークショップ」を実施した。 2023年6月に静岡県裾野市にあるトヨタ東富士研究所で、先進技術を一挙公開した「テクニカルワークショップ」のフォローアップという位置付けだ。 モノづくりワークシップでは、テクニカルワークショップで見せた技術が実際、どのように考案され、議論され、そして生産技術に反映しているかを詳しく紹介するというわけだ。 これまでトヨタが報道陣を含めた外部関係者には非公開としてきた、貞宝工場や明知工場の内部を公開するなど、極めて珍しい内容であった。 CPO(チーフ・プロダクション・オフィサー)の新郷和晃氏は「人中心のモノづくりで、工場の景色を変え、クルマの未来を変えていく」と、トヨタの次世代事業における生産技術の重要性を強調した。

TAG: #トヨタ #リチウム電池
世界初公開された新モデル「センチュリー」。筆者撮影
TEXT:桃田 健史
トヨタ「センチュリー」のBEV化はありか?PHEVで登場も技術的にはFCV化も可能。

トヨタは2023年9月6日、都内で新型「センチュリー」を世界初公開した。従来のショーファーカーのイメージを刷新した。パワートレインはPHEV(プラグインハイブリッド)を採用。その意図と、今後のBEV(バッテリーEV)化・FCEV化の可能性は? 新モデルを追加という形 日本のショーファーカーの真骨頂であるトヨタ「センチュリー」に新モデルが追加された。 2018年に登場した三代目「センチュリー」は今後も、「センチュリー(セダン)」として継続して製造・販売される。 つまり、センチュリーがフルモデルチェンジしたのではなく、これまでとは別の顧客層に向けてセンチュリーの新たなる方向性を示した形だ。 パワートレーンは、シリーズパラレルプラグインハイブリッド(2GR-FXS 3.5リッター V型6気筒エンジン)を搭載し、エンジンまたはモーター動力で前輪を駆動、後輪を独立したモーターで駆動するE-Four Advanced(四輪駆動)とした。 車体構造はTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)のKプラットフォームを採用した。

TAG: #PHEV #センチュリー #トヨタ
トヨタ「クラウンセダンFCEV」日本仕様。筆者撮影
TEXT:桃田 健史
これで「水素欠」しても大丈夫?クラウンFCEV右ハンドル仕様が初お目見え。JAFの水素ロードサービストラックも同時に登場

国が6年ぶりに改定した水素戦略。これを受けて、日本国内では水素を活用した新しい動きがいろいろ出てきた。水素を使う自動車では、燃料電池車のほかに、内燃機関で水素を使う水素燃料車の開発も進む。そうした中、水素ロードサービスカーが登場だ。 クラウン・セダン右ハンドル仕様を初公開 今度は、右ハンドルの「クラウンセダンFCEV」が登場した。 スーパー耐久2023年シリーズ・第5戦もてぎスーパー耐久5時間レースでの出来事だ。 とはいっても、コース上で決勝レースに出場したのではなく、グランドスタンド裏のイベントスペースで展示された。 新型クラウン日本仕様は現在、クロスオーバーが先行発売されているが、車系としてはこの他、セダン、スポーツ、そしてエステートの存在が明らかになっている。 このうち、セダンは2023年5月のスーパー耐久・富士24時間レースで世界初公開された。今回の展示車もそれと同じ車両だと思ったが、なんと右ハンドルの日本仕様であり、トヨタ関係者によると公には初公開であるという。 未発売のクラウン・セダンが展示されたことで、興味深々で車両の中を覗き込む観客もいたが、実は今回の展示で最大の注目ポイントは、クラウン・セダンの隣に置かれたトラックの方だ。

TAG: #CJPT #JAF #クラウンセダンFCEV #トヨタ
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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