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テスラ・モデル3新型(photo=テスラジャパン)
TEXT:福田 雅敏/磐城 蟻光
本当はEVが欲しい……TポイントのCCCMKによるアンケート調査で47%がEV購入意向[2023.11.02]

アンケート調査によりEV普及の問題点をあぶり出し まずは充電インフラの拡充が足枷を取り除く第一歩か 【THE 視点】「Tポイント」「Tカード」を運用するCCCMKホールディングスは、全国22~64歳の男女1万4,441名にインターネット上でEVに関するアンケートを実施し結果を公表した。EVの所有は1%にとどまるが、47%が「購入意向・関心あり」と回答を得られたという。 電気自動車(EV)に関するアンケート調査結果をまとめると以下となる。 ・「HV」の所有率は20.4%だが、PHV/PHEV/EVの所有率は1%にとどまる ・EV所有率は低いが、エコカーに関心が集まる ・EVを購入した・関心を持った理由の7割が「燃料代が節約できる」 ・EVの主な利用シーンは「日常使い」 ・ガソリン車の主な利用シーンは「旅行・レジャー」 ・軽自動車のEVに関心がある理由は「車に関してはできるだけコストをかけたくない」 ・購入に関心のあるクルマはHV(59.9%)、軽を除いたガソリン車(53.8%)に続いて、3位にEV(47.1%) この結果から、エコカーは所有率こそ低いものの、高い関心を集めていることが確認できた。EV保有者の利用シーンの「日常の買い物」に対して、非保有者では「日帰り旅行・レジャー」と使用シーンが分かれたことも面白い。何より興味深いのは、燃料代や車両代など車の価格やランニングコストに関心を持つユーザーが多いことである。 EVを普及させるためには、技術的課題もあろうがまずは「航続距離が短い」というイメージを払拭する必要があるだろう。「EVは(距離を)走らない」という声は多方面から聞こえるが、では、長い航続距離が必要なシーンはどれだけあるだろうか。長距離旅行に頻繁に出かけるだろうか。必要以上の性能を求めるあまり「航続距離が短い」というイメージが先行してはいないだろうか。 ちなみに先日、テスラジャパンは、新型「モデル3」のロングレンジAWDモデルの航続距離が706kmと公表した。冷暖房を使用すればその数値は出ないだろうが、それを鑑みて公表値の8割と見積もっても500kmは超える。十分な性能ではないだろうか。 逆にランニングコストの低さを売りにできるはずだ。なにせガソリン代もオイル代もいらないのだ。200Vの充電器を自宅に設置してしまえば、次の日の朝には“満タン”状態になる。安いガソリンを探して走り回る必要もない。 しかし車両金額の高さはネックであろう。そのため、国・自治体の補助金は継続してほしい。正直なところ、ガソリン代を下げる補助金があるのなら、少しでもEVに回してほしいと感じる。 「EVは日常利用、ガソリン車は旅行・レジャー」という使用シーンの違いは、インフラへの不安もあるかもしれない。ガソリンスタンドの数は3万店舗を切る一方、充電口数は3万を超えたと言われている。どちらも同じような数なのに、充電インフラに不安があると思われるのは、充電器の設置箇所に偏りがあるからだと思われる。実際に地方のメジャーな観光スポットでは、急速充電器が足りないと感じる。山の中の道の駅に1基ずつでは「充電インフラが足りない」と思われても仕方がない。地方の急速充電器の整備を急ぐべきであろう。 今回のアンケート結果は、EVを普及させる上で何が必要なのかを考えさせてくれる結果であった。今後もこういったアンケートは継続して行なってほしい。「充電の不安をなくすこと」。まずこれが普及への第一歩かもしれない。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★トヨタ、米国でのバッテリー生産に1兆2,000億円を追加投資 ……トヨタ自動車の北米統括会社トヨタモーターノースアメリカは、北米のバッテリー工場「トヨタバッテリーマニュファクチャリング,ノースカロライナ」に80億ドル(約1兆2,000億円)を追加投資すると発表した。新型の3列シートSUV型EVのバッテリーを生産する。 ★★プジョーの新型SUV「E-2008」が世界初公開 ……11月1日(水)〜5日(日)までスイスで開催される「チューリッヒモーターショー」で発表する。ステランティスのEV用プラットフォーム「STLA」を初採用したモデルとなる。航続距離は最大700km。 ★★EVへの充電が可能なポータブルバッテリー発売 ……モバイルバッテリーのアンカー・ジャパンは、大容量のポータブルバッテリー「アンカーソリックスF3800ポータブルパワーステーション」を11月21日に発売する。最大容量は3,840Whで200Vのコンセントを備えているのが特徴。EVの充電器を接続でき、1時間で約23km分のエネルギーを回復できるという。 ★京都市勧業館にパワーエックスの急速充電器が設置 ……京都市勧業館「みやこめっせ」<京都市左京区>に蓄電池型の超急速充電器「ハイパーチャージャー」を設置した。最高出力150kWの充電器で「PowerXアプリ」からの事前予約で利用が可能。なお今回の設置は、クラウド録画サービスのセーフィーと共同での実証実験も兼ねており、映像を通して利用状態を把握し、充電の需要予測に活用するという。 ★2023年冬の節電要請は回避 ……経済産業省は2023年度冬季の電力需給見通しを発表した。全エリアで安定供給に必要な予備率3%を確保できたという。ただし、発電設備の老朽化もあり、発電事業者には保安管理の徹底を促すという。 ★南紀白浜空港の点検に自動運転EV ……南紀白浜エアポート/マクニカ/NECが共同で実施する。南紀白浜空港(和歌山県)の滑走路にAI自動運転EVを走らせ、滑走路点検の自動化に向けた実証実験を行なう。車両はマクニカの「macniCAR-01」を使用し、NECが開発したAIがドラレコの画像を解析して破損箇所を発見するという。 ★ダイムラートラックの新ブランド「RIZON」が米国で販売開始 ……ダイムラーの九番目のブランドである「RIZON」が、米国で認可を受けた。カリフォルニア州の補助金の対象にも認定され、6万ドル(約900万円)の補助を受けられるという。 ★DMMの充電器の設置が都内で無料に ……DMM.comが展開する充電サービス「DMM EV CHARGE」が、東京都内の事業者向けに本体費用・工事費用が無料となる「急速EV充電器 0円キャンペーン」を実施する。期間は11月1日(水)〜12月31日(日)まで。 ★エネルギーのミツウロコがEV事業に進出 ……充電インフラのユアスタンドと資本業務提携に向けて基本合意書を締結した。ミツウロコが有する販売網を活用しユアスタンドの充電器販売体制を強化する。 ★自動運転EVバスでデジタルスタンプラリー ……マクニカ/三重交通などが三重県四日市市で自動運転EVバス「アルマ」の実証実験を行なう。実験は11月1日(水)〜19日(日)まで。「JR四日市駅目ロータリー」〜「近鉄四日市駅前ロータリー」を往復するルートで、平日は乗車自由、休日は事前予約制となる。本実証では、景品ありのデジタルスタンプラリーも実施する(要CTYコネクトアプリ)。 デイリーEVヘッドライン[2023.11.02]

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カワサキ・ニンジャe-1(photo=磐城 蟻光)
TEXT:磐城 蟻光
THE“ローコスト”ナナハンキラー……「カワサキ・ニンジャe-1」はサーキットでこそ輝く

カワサキはエコよりも趣味性 カワサキモータースジャパンは、「ジャパン・モビリティ・ショー2023」で2台のEVバイク「ニンジャe-1」「ニンジャ7ハイブリッド」を国内初公開した。 現在日本で普及しているEVバイクはスクーターが中心だと言ってよい。カワサキにも実は「J300」というスクーターモデルもあるのだが、そこには手を出さずにスポーツモデル「ニンジャ」のブランドで登場させた。 カワサキは、バイクは趣味のものとして割り切っている傾向が強い。カーボンニュートラルももちろん意識しているのだろうが、それよりも“面白いものをより面白く作る”というスタイルを優先しているように感じる。スーパーチャージドエンジンを積んだ「ニンジャH2」は最たる例だろう。 今回発表した2台のEVバイクも電動の面白さを優先したものだ。会場で2台のバイクを見ていると楽しい気持ちが生まれ、購入後のバイクライフが頭に浮かんできた。今回は「ニンジャe-1」が創り出すバイクライフを考察してみたい。 コンパクトな着脱式バッテリーの採用はスポーツへのこだわりからか 「ニンジャe-1」は、強力な加速性能と軽さからくる異次元の運動性を味わえるはずだ。航続距離はフル充電で72kmと一般的なガソリンモデルよりも短いが、軽量の市販EVスポーツバイクとしてみれば立派な数値と言える。もちろんパワーを抑えればこれ以上の航続距離も出せただろう。しかしそれではカワサキらしさが損なわれると設計陣は考えたのではないだろうか。 その代わり……と言えるかは微妙なところながら、バッテリーは着脱交換式を採用している。残念ながら「JMS」の会場では、バッテリーまわりはマル秘であったが、フランス・フォーシーパワー製のものを採用したことが明らかにされた。 着脱交換式といえばホンダが「モバイルパワーパックe:」を開発し、メーカーを超えて採用が進んでいるが、カワサキは独自にフォーシーパワー製を採用した。同社のバッテリーは薄型なので、ニンジャのスタイルを崩さずに搭載することが可能。この特徴が採用の決め手のひとつとなったのではないだろうか。詳細の正式発表が待たれる。

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カワサキ・ニンジャe-1(photo=磐城 蟻光)
TEXT:磐城 蟻光
漢の「ニンジャ」“エコで売らない”次世代の電動スポーツ登場……カワサキ、2台のEVバイクを日本公開

電動化でも漢の「ニンジャ」スタイル 硬派なバイクメーカーが電動化にシフトした。カワサキモータースジャパンは、「ジャパン・モビリティ・ショー2023」の会場において、2台のEVバイクを公開した。完全電動の「ニンジャe-1」とエンジン・モーターの両方を積んだ「ニンジャ7ハイブリッド」である。 両車はただ時代に合わせて電動化したモデルではない。硬派なスポーツモデルを作り続けるカワサキらしいスタイルが込められた新世代のスポーツバイクである。 250ccより軽く普通二輪No.1のトルク……「ニンジャe-1」 両車とも諸元が公開されていた。まず「ニンジャe-1」の値を確認してみよう。 ・パワートレイン:交流同期モーター ・最高出力9.0kW(12ps)/2,600〜4,000rpm ・最大トルク40.5Nm(4.1kgm)/0〜1,600rpm ・全長1,980×全幅690×全高1,105mm ・シート高785mm ・車重140kg 「e-1」はニンジャ250/400の車体をベースに電動化したものと考えて良い。最高出力こそエンジン車には及ばないが(ニンジャ250は35ps)、最大トルクは「ニンジャ400」の3.8kgm/8,000rpm以上どころか、カワサキの他のどの普通二輪(400cc以下)モデルよりも強力な数値である。そのうえ車重は「ニンジャ250」の166kgに対してかなり軽く作られている。 ただ、航続距離は72kmとエンジンモデルに比べると短い。しかし、バッテリーは着脱交換式を採用し、家庭のコンセントを使用して充電が可能とのこと。追加のバッテリーを手に入れれば充電を待たずに走ることも可能だろうが、車体価格が未発表なので、追加バッテリーもどれほどの値段がつくか気になるところだ。

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ヤンマーの水素燃料電池システムを搭載したハイブリッド旅客船「ハナリア」(photo=モテナシー)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
静かで快適なFC船が来年に運航……ヤンマー、船舶向けの水素燃料電池(FC)を初出荷[2023.10.31]

商船三井グループの電動旅客船「ハナリア」に搭載し来年4月から運航予定 バイオディーゼル発電機とFCを組み合わせた日本初のハイブリッド船 【THE 視点】ヤンマーホールディングスのグループ会社であるヤンマーパワーテクノロジー(以下、ヤンマーPT)は、船舶用水素燃料電池(FC)システムを初出荷したと発表した。このFCは2023年8月に商品化したもの[詳細はこちら<click>]。商船三井グループなどが出資するMOTENA-Sea(モテナシー)の旅客船「HANARIA(ハナリア)」が搭載する。 「ハナリア」は、FCとバイオディーゼルを使用する日本初のハイブリッド型旅客船で、両機関で発電した電気でスクリューを回す電動推進システムを採用している船となる。2基のFC/蓄電池/発電機関/電力制御/推進機器/遠隔監視など、ヤンマーPTが統合設計したパワートレインが搭載されている。 特にFCシステムを主とした運航では、ゼロエミッション化を実現するとともに、動力源からの振動や騒音を大幅に低減し、排気ガスの臭いも無い快適な船内環境の実現に貢献する。 推進はモーターの動力となるので、自動車でいうFCEVとシリーズハイブリッド両方の側面を持ったシステムと言える。どのような状態でFCとディーゼルが切り替わるのかは気になるところだが、ディーゼルは発電専用なので、それが動いていたとしても通常の船舶に比べて圧倒的に静粛性が高いのではないだろうか。 FCシステムは、定格出力240kWのものを2基搭載している。重量は2,400kg。自動車用のおよそ10倍はある大型のシステムだ。バイオディーゼルと推進用モーターの諸元は公表されていないが、船舶に使用する電気を発電し船を進めることを考えれば、相当な大きさのものだろう。 自動車と異なり、船の場合の水素の充填などには許認可の問題など課題は多いと認識しているが、実際に船が出来上がり稼働に漕ぎつけたことは大きな進歩である。今後も、自動車のみならず船や建機など様々なモビリティでFCの活用が進むことを期待する。 なお「ハナリア」は2024年3月に竣工し、同年4月より福岡県を中心に営業開始予定だ。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ヒョンデ、コンパクトSUV「コナ」を日本発売 ……11月1日(水)から販売開始する。ヒョンデとしては「アイオニック5」に続いて日本導入2機種目。4グレードが導入され、航続距離は541〜625km。価格は399万3,000円〜となる[詳細はこちら<click>]。 ★東京都住宅供給公社がEVイベント ……JKK東京(東京都住宅供給公社)は、「コーシャハイム向原ガーデンコート」<板橋区>でEV普及啓発イベントを開催する<11月18日(土)〜19日(日)>。イベントでは、EV展示・試乗会/ソーラーカー工作ワークショップ/EVを電源としたキッチンカーの出展などが行なわれる。 ★ヤマハ、ゴルフカーベースの自動運転EVを開発 ……屋内外対応自動搬送用EV「FG-01」を開発した。ゴルフカーをベースにしたことで、高い走破性と耐久性を有するとのこと。「2023国際ロボット展(iREX2023)」<東京ビッグサイト/11月29日(水)〜12月2日(土)>に出展する。 デイリーEVヘッドライン[2023.10.31]

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FOMM ONE(photo=福田 雅敏)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
出光、EV新興のFOMMとともにバッテリー交換式EVの事業化を検討[2023.10.30]

多角的に事業を展開することで次世代への対応を早める出光 バッテリー交換式はインフラのひとつとして普及する可能性 【THE 視点】出光興産と新興EVのFOMMは、EV事業の協業に関する覚書を締結した。出光のサービスステーション(SS)ネットワークを活用し、EVのメンテナンスや軽自動車向けEVコンバージョンサービス体制の構築などを検討する。 FOMMは、小型EVの企画・開発メーカー。同社が開発した軽自動車規格の4人乗り小型EV「FOMM ONE」の販売を2019年からタイで開始し、2021年からは日本において販売を開始している。今後、出光と協業するということは、FOMMの販売体制の強化も意味することになる。 協業検討項目をまとめると以下となる。 1  「FOMM ONE」のメンテナンス等のアフターサービス 2  FOMMのバッテリー交換式コンバージョンEV事業における販売/改造業務/アフターサービス 3  SSネットワークを活用したFOMMのバッテリー交換ステーション事業の展開に関する検討 4  FOMMが将来的に量産を計画する新型車両の展開における連携可能性の検討 出光は系列SSを通じて給油に留まらない車検や整備等のカーケアサービスを手掛けてきた。新車販売台数の半数以上が電動車(ハイブリッド車含む)となっている現在の環境を踏まえ、電動車のメンテナンスを含むアフターサービス需要が今後加速すると予測している。このような環境の変化に対して、出光はバッテリー交換式EVに関する技術と知見を有するFOMMと協力して、EVに関連する多様なサービスとネットワークの拡充を目指す。 出光は新事業の開拓を加速している。カーコーティングの専門店を開いたり[詳細はこちら<click>]、トヨタと全固体電池の開発で協業したり[詳細はこちら<click>]、双葉電子とともに国産ドローンの開発を行なったり[詳細はこちら<click>]と、EVを含めた新時代のモビリティに対応できるよう多角的に事業を計画・実行している。 今回の発表で気になった点は「バッテリー交換EV」の事業化である。現在開催中の「ジャパン・モビリティ・ショー2023」にFOMMが出展しており、「FOMM ONE」のバッテリー交換型が展示してあったのだ。リアバンパー中央の黒い部分にバッテリーを搭載しそこから交換するという仕組み。「FOMM ONE」は水に浮いて走る(推進する)EVとしても知られている。バッテリーの防水性にも自信があるのだろう。 また、三菱ふそうやいすゞが小型トラックでのバッテリー交換のデモを行なったほか、ホンダも自社の交換式バッテリーを搭載した車両を展示。カワサキやEVスクーターのベクトリクスなども電池交換式を展示していた。 筆者も十数年前にバッテリー交換式のEVタクシーの実証試験をした経験を持つ。当時と比較して、バッテリーの性能向上や充電設備の拡充といったEVを取り巻く環境変化があったにも関わらず、ここに来て大手各社がバッテリー交換式に手を出すということは、今後トレンドの一つになるということを示唆しているのではないか。 各メーカーが計画する交換システムも自社のみで開発を行なわず、専門業者などとの協業で事業化を目指しているところも興味深い点だ。バッテリー交換というビジネスモデルが出来つつあると言える。数年後には、充電インフラのひとつのカタチとして認識されているかもしれない。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★パワーエックス、超急速充電サービスが稼働 ……最高出力150kWの公共急速充電サービスを開始した。10月26日より「シェアグリーン南青山」<港区青山1−12−32>と、「目黒セントラルスクエア」<品川区大崎3-1-1>が稼働している。2023年末までに、「新丸の内ビルディング」<千代田区丸の内1-5-1>と、「成田空港第1ターミナル」<P1駐車場1階>も稼働予定。10分の接続で約130km分の電力を充電できる充電サービスとなる。 ★★ルノー、次世代のモーターを採用へ ……仏自動車部品メーカーのヴァレオと共同開発した次世代モーター「E7A」を発表した。2027年より導入する。「E7A」は巻線ローターを使用したレアアースフリーのモーターで、現在のものよりも30%コンパクトだという。 ★ヤマダ電機の住宅ローンでEVの購入が可能に ……ヤマダデジタル会員向けのネット銀行「ヤマダ NEOBANK」の「ヤマダ NEOBANK住宅ローン」にEVやV2H機器の組み込みが可能となった。住宅からEVまでワンパッケージで購入できることとなる。 ★超急速充電サービスにグリーン電力 ……最高出力150kWの急速充電サービスを開始したパワーエックスは、クリーンエナジーコネクトと「バーチャルPPAサービス」の契約を結んだ。クリーンエナジーコネクトがパワーエックス専用に太陽光発電システムを構築し、充電サービスにグリーン電力を供給する。 ★会津若松市の循環バスがEVに ……福島県会津地方でバス事業を展開する会津乗合自動車(会津バス)は、会津若松市内を走るまちなか周遊バス「あかべぇ」に2台のEVバスを導入した。車両は「BYD・J6」。JR会津若松駅〜鶴ヶ城〜七日町といった主要観光スポットを通る。 ★パナソニック、千葉県市川市で充電インフラの整備を促進 ……「日常生活圏のどこでもEV充電ができる」をコンセプトに展開しているEV充電器のシェアリングサービス「エブリワ・チャージャー・シェア」のモデル地域を市川市に選定した。まずは、市の公共施設にEV用充電器を設置する。 ★アクスル、フォロフライのEVを導入 ……社用車として「フォロフライF1バン」を10月から1台導入した。国内初の1トンクラスのEVバンとなる。アクスルは配送車のEV化を進めているが、フォロフライの導入は初。今後積極的な導入に向けて検討するとのこと。 ★チューリング、自動運転EVのコンセプトカーを発表 ……完全自動運転EVへのマイルストーンとして、コンセプトカー「チューリング・マシン・アルファ」を「ジャパン・モビリティ・ショー2023」で公開した。オープントップでバギースタイルをとっている。 ★太陽光発電システムが車両化 ……ポータブルのリチウムイオンバッテリー製品を展開するジャックリーは、太陽光発電のコンセプトマシン「ジャックリー・ソーラーマーズボット」を公開した。小型の自動運転EVの上部にソーラーを備えた車両で、自動で太陽光を追跡し発電する。 デイリーEVヘッドライン[2023.10.30]

TAG: #THE視点 #充電インフラ #国内ビジネス
コンバージョンEVランドクルーザー60(photo=フレックス・トノックス)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
クロカンの王者もついにEV化……新旧の「ランクルEV」が「JMS」でお目見えだ[2023.10.24]

思い出と共に末長く乗り続けるためのコンバージョンEVプロジェクト トヨタもEVの「ランクル」を発表し時代と共に進化する姿を提示 【THE 視点】「ランドクルーザー」と「ハイエース」を専門販売するフレックスと、車体製造・特装車架装のトノックスは、「60系ランドクルーザー」(ランクル60)のコンバージョンEVを共同開発した。「ジャパン・モビリティ・ショー2023」(JMS)に出展する。 トノックスは、軽自動車からトラック・バスといった大型車両まで幅広い車種の車体製造と特装車架装を手掛け、年間3,000台を生産している改造のスペシャリストである。光岡自動車が「トヨタ・RAV4」をベースに開発したアメリカンテイストのSUV「バディ」の生産を請け負っているのも、実はトノックスである。 EVシフトが進む中、その生産・開発能力を組み合わせて特装車架装事業をさらに切り開くため、「ランドクルーザー」と「ハイエース」を専門販売するフレックスと「ランクル60コンバージョンEVプロジェクト」を2023年3月23日に発足した。 ユーザーのかけがえのない思い出の詰まった「ランクル60」をEVに生まれ変わらせることができれば、子・孫へと次の世代へ思い出ごと受け継いでいくことができる。また、人が実際にクルマに触れ言葉を交わしながらプロジェクトを進め、人とクルマの新しい関係性を模索することも、本プロジェクトのテーマだという。 種車となった「ランクル60」はボディが朽ちていた状態で、まずはレストアから開始された。その後エンジンを下ろしてEV化し、仕上げに塗装するといった作業工程だったようだ。 筆者もこれまでに古くなったトラックやバスの中古をEVにコンバージョンした経験を持つ。都市部では排ガス規制があり走行距離が少なくても走れなくなるため、EVに生まれ変わらせ使用するのだ。 この「ランクル60」は改造理由は少し異なるが、古い車をEV化して長生きさせようとする考えは一緒だ。一度キットを開発すれば、その後は同じ車型なら改造作業を効率化できるようになり応用も効く。 「ランクル60」ユーザーの中には、エンジンなどの老朽化に悩む人もいるかもしれない。エンジンごと延命できればそれに越したことはないだろうが、EV化して長生きさせるという選択肢もこれからは必要となってくる。 さらに「ランクルEV」といえば、トヨタも「JMS」で公式にEV「ランドクルーザーSe」(コンセプトモデル)を出展すると発表した。これで新旧の「ランクルEV」が会場に揃うこととなる。 「ランクル」は、新型が納期問題で入手が非常に困難であったり、70系がリバイバルしたりと話題には事欠かない。そんな中ついにEVの発表で注目度は抜群だ。トヨタのラインアップの中でも有数のロングセラーは、時代の変化に合わせながら未来を見据えている。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★MINI、「カントリーマン」を欧州で発表 ……SUVの新型EV「カントリーマンSE・オール4」を発表した。前後2モーター式のAWDで、最高出力230kW(313ps)/最大トルク494Nmを発生する。航続距離は433km(WLTP値)となる。 ★ボルボ、スウェーデンにソフトウエア・テストセンターを開設 ……約3億スウェーデン・クローナ(約41億円)を投資し新設した。センターの規模は2万2,000m2となる。EVの要となるソフトウェア開発能力を強化する。 ★エネチェンジ、設置口数が国内1位に ……ゴーゴーラボの調査により、国内の認証アプリ対応の普通充電の設置口数が1位となったと発表した。合計口数は発表していないが、2023年夏以降の1ヶ月で500口以上の充電器を設置したとのこと。 ★「BYD AUTO 水戸」が10月27日(金)オープン ……日本で15店舗目の正規ディーラーとなる(茨城県水戸市若宮1-3)。運営はARCが担当する。 ★日産、西宮市と連携協定 ……兵庫県西宮市/日産自動車/兵庫日産自動車/日産大阪販売の4者は連携協定を結んだ。災害時にEVを電源として活用するなど防災を強化する。 デイリーEVヘッドライン[2023.10.24]

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「テクノフロンティア2023」より(photo=福田 雅敏)
TEXT:福田 雅敏
軽でも特定原付でもない「パーソナルEV」を……電動がゆえに可能な進化を止めるな

夏真っ只中の7月26日〜28日、東京ビッグサイト<東京都江東区>において、ものづくり関連の展示会「テクノフロンティア2023」「インダストリーフロンティア2023」「メンテナンス・レジリエンスTOKYO2023」が開催された。前回までは展示されたEVを中心に紹介したが、それ以外にもユニークなコンテンツや併催イベントが行われていたので、最後編としてまとめて紹介する。 高性能軽自動車はシニア層の救いになっているか 筆者が訪問した26日には、主催者特別企画「パーソナルEVの可能性」というトークセッションが行われた。 登壇者は、モデレーターとして「EVsmartブログ」の寄本編集長、車両バラシ・ティアダウンの第一人者である名古屋大学の山本教授、アパテックモーターズの孫社長、そしてKGモーターズの楠社長。それぞれがパーソナルEVについて熱く語られていた。特に「シトロエン・アミ」を題材に、それぞれの登壇者が小型EVのコスト面について語ってたのが印象的だった。 筆者が感じたのは、やはり日本でもパーソナルEV(小型EV)が必要であるということ。楠社長の話では、パーソナルEVの一日の走行距離は多くても2km程度とのことで、少し遠出をしても数十km走れる性能があれば事足りる。 さらに言えば、地方では整備が行き届いていない軽自動車をシニア層が運転している姿を目にする。タイヤの空気圧が足りていなかったり、エンジンから異音を響かせていたり、エンジンオイルが足りないのか白煙を上げて走っていたりするのだ。 なので再三述べるが、ボディが規格いっぱいのサイズで高性能で安全運転支援機能をてんこ盛りにした軽自動車ではなく、メンテナンスフリーで維持費も安く、家で手軽に充電できる「シトロエン・アミ」ような小型EVの認可が日本で必要だろう。 今年の「テクノフロンティア2023」「インダストリーフロンティア2023展」は、非常に情報量の多い展示会であった。自動車に限った展示会ではないが、主催者による自動車関連の展示を見るだけでも大変参考になる展示会である。是非とも次回、読者の方にも参加してほしいものである。行って損はありませんよ!

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コベルコのFCEVパワーショベル(photo=コベルコ建機)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
建機用水素充填インフラの構築を急げ……コベルコ、FCEVパワーショベルの稼働評価を開始[2023.10.12]

コマツも試作機を開発した中型クラスの電動パワーショベル 官民一体でFCEV建設機械の開発とインフラの構築を早急に 【THE 視点】コベルコ建機は、燃料電池式(FC)の電動ショベルの試作機(以下、FCEVパワーショベル)の稼働評価を開始した。 FCEVパワーショベルの実用化に向けた取り組みを2021年に開始し、2023年3月に試作機が完成した。中型の油圧ショベルにトヨタのFCユニットと水素タンクを搭載。パワーショベルに求められる基本動作に支障がないことを確認したという。 評価結果をまとめると以下となる。 ・エンジン搭載機と遜色がない動作速度 ・圧倒的な低騒音 ・エンジンによる振動がないため、車体への振動伝達が低減し搭乗時の快適性が向上 ・水素と空気中の酸素が結合した純水のみの排出なので、CO2がゼロ ・高温排気がないため、車体やその周辺への熱害がない 今後も、エンジン搭載機と同等の作業性能を実現するために試作機の検証と改善を進め、商品化を目指すという。ちなみにコベルコは、世界初の「ハイブリッドショベル」や「有線式電動ショベル」といった環境負荷低減に貢献する建設機械の開発と提供に努めている。2025年に、まずはEV建機のニーズが高い欧州に向けに「バッテリー式EVのミニショベル」と「小型重機ショベル」。さらに日本国内向けに「クローラークレーン」の有線電動仕様の導入を計画し、EV建機の普及を着々と進めている。 特注ではなく、トヨタの量産品のFCシステムを使用しているとすれば、信頼性が高い上にコストの低減が期待できる。同じ建機メーカーの小松製作所(コマツ)も、今年5月にトヨタのFCを使用したFCEVパワーショベルの開発と実証実験の開始を発表している[詳細はこちら<click>]。コベルコと同じ中型の油圧ショベルがベースなので、FCシステムも大きくは違わないだろう。逆に各メーカーは、どういった点でそれぞれの特徴を出していくのか、興味津々である。 一方、使われる環境が自動車のFCEVとは違うので、環境に合わせた信頼性や耐久性などの検証は今後も継続していく必要がある。 また、水素充填のインフラを建機に対応させるといった国が絡む法整備の問題もある。現状では自動車用の水素ステーションは法の縛りで建機では使えないと筆者は認識している。 政府は、FCEVの普及を目標に水素供給インフラの整備・強化も目標に掲げているが、建機に対するそれらの構築も具体的に検討を始めてほしい。騒音・排熱といった環境問題の対策に非常に有用なEV建機は、バッテリー式であれFC式であれ普及を加速させるべきだ。官民一体となって取り組んでほしい。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★テスラ、新型「モデル3」の展示会を開催 ……10月13日(金)より、「テスラ新宿」「テスラセンター板橋」「テスラセンター千葉稲毛」「テスラおおたかの森」「テスラ幕張新都心」「テスラ・ラゾーナ川崎プラザ」で、「ハイランド」と言われる改良新型「モデル3」の展示を行なうと発表した[関連記事はこちら<click>]。 ★★レクサス、EVスーパースポーツをJMSで発表か ……「ジャパン・モビリティ・ショー」(JMS)の出展概要を発表した。「バッテリーEVコンセプトカー」の出展予告とともにシルエットを公開した。スポーツ車を彷彿とさせる低いスタイルをとっている。 ★★スバル、EVスポーツをJMSで発表 ……「JMS」の出展概要を公表した。「スバル・スポーツ・モビリティ・コンセプト」を出展する。公開されたティーザー画像では、低く構えたクーペらしきスタイルが見て取れる。 ★★ボールねじのTHK、EVを開発 ……実走行が可能なコンセプトモデル「LSR-05」を開発した。「JMS」に出展するという。車両にはTHKの独自技術を満載。SUVクーペスタイルの4人乗りで観音開きドアを採用している。 ★★三菱、クロスオーバーMPVのEVコンセプトを開発 ……「JMS」に出展する。ティーザー画像では、「デリカ」のようなシルエットを確認することができる。また、バギースタイルの小型EV「Last 1 mile Mobility」も出展する。 ★ヤマハ、3ホイーラーのオープンEVを開発 ……前輪二輪のリバーストライク型のオープントップEVコンセプト「トライセラ」を開発した。「JMS」に出展するという。そのほか、コンセプトEVスクーター「イーラブ」や、スーパースポーツスタイルのEVバイクも出展する。 ★BMW、「iX2」の車両概要を公開 ……「ジャパン・モビリティ・ショー」でのワールドプレミアを前に車両概要を公表した。プレミアムコンパクトクラス初のスポーツ・アクティビティ・クーペ(SAC:いわゆるSUVクーペ)スタイルのモデルとなる。最高出力230kW(313ps)/最大トルク494Nm(50.4kgm)のデュアルモーター式AWDで、最大航続距離は449km(WLTP値)。 ★米新興アルファモーター、ピックアップEV「ナイトウォルフ」を発表 ……シングルキャビンのピックアップトラックとなる。駆動方式はRWDもしくはデュアルモーターのAWDを選択可能。最大航続距離は275マイル(435km)。 ★「フィアット 500e」「アバルト 500e」向けのオンデマンド充電サービスが開始 ……欧州の4ヵ国・13都市でサービスを開始した。スマホからの予約で充電機材を搭載した車両が駆けつけ充電を行なう。サービスはE-GAPが担当する[関連記事はこちら<click>]。 ★ステランティス、ドイツ国内のEVでトップシェア ……2023年9月のドイツ国内におけるEVの販売台数を公表した。「オペル・コルサ・エレクトリック」(2位:2,200台)、「フィアット・500e」(3位:1,800台)、「オペル・モッカ・エレクトリック」(4位:1,300台)となり、ドイツでのトップシェアを獲得したという。 ★ジェネシス、アメリカ33州でEVモデルを取り扱い ……ヒョンデの高級ブランドのジェネシスは、10月10日付で33州に販売網が拡大したと発表した。10の州へ販売を広げ、カリフォルニアとルイジアナには2つの独立ディーラーをオープンしたという。 ★東京都の公共駐車場で計52基の充電器が新規稼働 ……テラモーターズが展開する。木場/和田堀/石神井/中川/東綾瀬/宇喜田/武蔵野の森/小金井の各公園の駐車場に導入。 ★世田谷区の公共施設に充電器を設置 ……テラモーターズは、東京都世田谷区と充電インフラ整備に関して協定を締結した。区立教育総合センターと多摩川総合支所に、急速充電器を1基ずつ設置予定。 デイリーEVヘッドライン[2023.10.12]

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コマツ・PC05E-1(Photo=福田 雅敏)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
交換式バッテリーのEV建機……コマツ・ホンダ共同開発の電動パワーショベルが発売[2023.10.11]

2023年は“静かな”建設現場実現に向けての元年と定義 EV建機は運転中でも人の声が届き安全を確保できる 【THE 視点】小松製作所(コマツ)は、本田技研工業(ホンダ)と共同開発した電動マイクロショベル「PC05E-1」を10月より国内発売する。 2022年3月より国内に導入している超小型電動パワーショベル「PC01E-1」の系列拡大機種となる。コマツの建設機械の中でも、小規模な土木・建築工事・ガス・電気・配管工事などの現場で利用されることの多いタイプで、「PC01E-1」と同様に、動力源にホンダの電動パワーユニット「eGX」と交換式のリチウムイオンバッテリー「ホンダ・モバイルパワーパックe:」(MPP)を採用していることが特徴だ。 主な仕様は、バケット容量0.011m3/機械質量520kg/モーター出力3.3kW(4.5ps)。公表価格は310万円(工場裸渡し消費税抜き)となる。 さらにコマツは、リチウムイオンバッテリーを搭載した3トン・クラスの新型電動ミニショベル「PC30E-6」を、欧州市場に続き10月より国内発売するとも発表した。 2020年に国内市場にレンタル機として導入した3トンクラス「PC30E-5」のフルモデルチェンジ機となる。鉛のバッテリーに替わりリチウムイオンバッテリーを搭載することで急速充電に対応し、稼働時間の延長および車両のコンパクト化と軽量化を実現したという。 主な仕様は、バケット容量0.08m3/機械質量3,580kg/モーター出力17.4kW(23.7ps)。公表価格は1,200万円(工場裸渡し消費税抜き)となる。 コマツは2023年度を電動化建機の市場導入元年と位置付け、電動化市場がまだ形成されていない国内に多様な機種を投入することで、2050年のカーボンニュートラル実現へ向けた早期の市場形成を目指すという。 「PC05E-1」は、「スマートエネルギーWeek 春」のレポート[詳細はこちら<click>]などでお伝えした機種だ。発売されることを楽しみにしていた。電動なので、騒音や振動も少なく排気ガスも出ない点にメリットがあるのはもちろんだが、最も大きな特徴はホンダの「MPP」(モバイル・パワー・パック)を採用していることだろう。「MPP」を多めに用意し充電を済ませておけば、電池交換のみで連続稼働が可能になり待機時間が少なくて済む。 「建機展」のレポート[詳細はこちら<click>]でもお伝えしているが、「MPP」は、酒井重工業の「ハンドガイドローラー」などにも採用されている。「MPP」ファミリーには、数十個の「MPP」を一気に充電できるバッテリー交換ステーション「パワーパック・エクスチェンジャーe:」がある。都内などでは、「MPP」を使用したEVバイク「ベンリィe:」などに向けたバッテリー交換のシェアリングサービスが始まっている(法人向け)。この充電機器は、工事現場にも使用することができるはずだ。「MPP」を採用した建機は、充電待機なしで稼動することができるようになる。 さらに、大型の3トン・クラスの新型電動ミニショベルも「建機展」のレポートで紹介したものだ。建機が大型になっても、騒音などが大きく低減され環境が改善される。 加えて言えば、建機が電動化されることで出てくる隠れた効果は「人の声が聞こえる」ことだろう。万が一の場合は叫べば操縦手に直接警告できるのだ。整備コストが削減でき騒音も少なく安全性も高いのであれば、EV建機を導入するメリットは高い。 コマツはこれを機に、EV建機の普及に一層力を入れてほしい。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★日産、コンセプトモデル「ハイパーアドベンチャー」を発表 ……本格的なアウトドアに対応できるSUV型のEV。駆動方式はAWD。V2Xや給電機能を標準装備している。「ジャパン・モビリティ・ショー」でワールドプレミアする。 ★★メルセデス・ベンツ・トラック、「eアクトロス600」を正式発表 ……EVのトラクター・ヘッドとなる。搭載バッテリーの容量は600kWh。1充電あたり500kmを走行可能で、法規で規定されている1回の休憩時に充電を組み合わせれば、1日1,000km以上を走行できるという。ディーゼル車と比較して80%以上のCO2を削減できるとのこと。 ★★ホンダ、自動運転対応のEV芝刈り機を開発 ……自社製品初となるEVの芝刈り機のプロトタイプ「ホンダ・オートノマス・ワーク・モーア(AWM)」を発表した。手動と自動の運転モードが選択でき、手動の場合は操縦手の作業パターンを学習し自動モードに反映するという。 ★BMW、2023年6月〜9月期のEV販売台数が79.6%増 ……第3四半期のBMWとMINIのEVモデルの販売台数は9万3,931台で前年同期比79.6%増となった。BMWブランド単体としては8万3,200台で前年同期比100.3%となった。 ★メルセデス・ベンツ、2023年6月〜9月期のEV販売台数が66%増 ……第3四半期のEVモデルの販売台数が6万1,600台となった。そのうち「EQS SUV」の販売は66%増となり、EVモデルの販売台数の増加を支えた形となった。また、EVバンの販売も6,300台となり、前年同期比105%の数値となった。 ★ボードリ、自動運転EVバスがレベル4相当での運行に成功 ……神戸市からの委託事業で運行している須磨海岸周辺ルートにおいて、レベル4(機械主導)の自動運転に成功したという。使用車両はエストニアのオーブ・テック製の「ミカ」。9月23日〜29日に一般市民向け試乗会が行われた。障害物も自動で回避したという。 ★KGモーターズ、1.5億円を資金調達 ……ベンチャーキャピタルや事業会社を引受先とするJ-KISS型新株予約権を発行した。調達資金は試作車の開発や人材の獲得にあてるという。 ★日立アステモ、ミラノショーに二輪向けのEV技術を出展 ……11月7日〜12日にイタリア・ミラノで開催されるモーターサイクルショー「エイクマ2023(ミラノショー)」に出展する。ブース内では、二輪向けに開発したインバーターとモーター一体型の駆動装置「e-アクスル」を展示する。 ★DS、「フォーミュラE」次シーズン向けのマシンを公開 ……フォーミュラEのチーム「DSペンスキー」は、次のシーズンに使用するマシンを公開した。カラーリングが変更となっており、従来のゴールドとブラックの塗装を反転させ、よりゴールドが強調された車体となった。 デイリーEVヘッドライン[2023.10.11]

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「マルチポートEVチャージャ」(photo=日立インダストリアルプロダクツ)
TEXT:福田 雅敏/ABT werke
日立が発売「魔法のようなマルチ充電器」1基で数十台の充電に対応が可能、出力も自在[2023.10.02]

普通充電であれば数十台のEVを同時に接続・充電が可能 通勤車にEVを勧める企業のマスト機器となるか 【THE 視点】日立インダストリアルプロダクツは、複数台のEVの同時急速充電を可能にする大容量「マルチポートEVチャージャ」を2023年10月に製品化する。 同時充電の台数を増加できるのが大きな特徴。充放電制御技術により系統増強工事を必要としない系統混雑の緩和や、再生可能エネルギー電源接続量の増加、電圧制御の安定化も可能。高効率電力変換技術により、EVが持つ分散型エネルギーリソースの価値を最大化できる。 同社はチャデモ協議会の実証プロジェクトに参画しており、「マルチポートEVチャージャ」を使用して日中次世代充電規格「CHAdeMO3.0(ChaoJi2)」の検証や同規格の普及のため、大みか事業所(茨城県日立市)に国内唯一の次世代EV充電規格実証拠点を構築し、国内外の車両に対し実証サイトとして開放予定(2023年10月から2年間)である。 さらに通勤車を活用したCO2削減の取り組みとして、土浦事業所(茨城県土浦市)の駐車場に同機器を設置する。勤務中のEV充電を可能にすることで従業員のEV導入を促し、通勤車におけるCO2削減を実現する実証サイトも計画している(2024年4月~)。 機器の主な特徴をまとめると以下となる。 1、拡張性……最高出力500kWの範囲内で、90kW×5口、25kW×20口など出力調整・同時充電が可能 2、大容量……最高出力250kW・同500kWの2機種を準備しており、グローバルで本格化する高出力充電(超急速充電、大型EV充電)のニーズに対応可能 3、V2X……EVを電力リソースとした電力デマンドコントロールに活用可能 同時に充電できる台数を、事業所のEVの台数に応じて変えられることが利点だ。出力調整が可能なので、大容量のバッテリーを搭載したEVと、搭載電池量の少ない軽自動車などを雑多に一つの機器で同時充電・管理ができる。充電時間の効率化と充電渋滞の解消にもつながるだろう。 無論、充電口数が多いに越したことはない。例えば事業所に導入し社員に解放するような場合、勤務時間内にバッテリーの電力が回復できていれば良い。勤務時間が8時間としてその間繋ぎっぱなしになるのであれば、出力を3kWに設定してもバッテリーの80%までの回復は可能である。 V2Xにも対応しているので、導入した事業所が停電に遭ったような場合は、EVから電力を取り出して設備の運用が可能になる。電気がストップし帰宅困難者が出たような場合、事業所の明かりが点いて冷蔵庫なども動かせれば、臨時の避難所として機能させることもできるだろう。 日中次世代充電規格「CHAdeMO3.0(ChaoJi2)」の検証や普及のために、「大みか事業所」を実証サイトとして開放するというのも大きなニュースである。世界の充電規格戦争の中で苦戦を強いられている「CHAdeMO」であるが、これを機に中国側を取り込みたいものである。 (福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ホンダ、新型SUV「プロローグ」を発表 ……アメリカン・ホンダモーターが発表した。2024年初頭に北米に導入する予定。米ゼネラルモーターズのバッテリー「アルティウム」を搭載。前輪駆動とデュアルモーターのAWDを設定。バッテリー容量は85kWhで、航続距離482km以上を目指すという。 ★★出光興産、国富町役場で空調も含めたV2X制御を実施 ……宮崎県国富町役場で、EV・バッテリーの充放電と空調出力を連携制御する実証実験を開始した。電力需要のピーク時にEVやバッテリーの電力を使用しているが、その電力を空調機器にも活用し統合制御するという。 ★ホンダ、北米最大の充電ネットワークの利用が可能に ……テスラ方式の充電規格「NACS」を採用する北米のEVgoとエレクトリファイ・アメリカと契約した。「NACS」を採用する新型EV「プロローグ」と「アキュラ・ZDX」が、ネットワークにある「NACS」の充電器を利用可能になる。 ★建設機械のコベルコ、FCパワーショベルが試作機が完成 ……燃料電池(FC)をエネルギー源とした電動パワーショベルを開発した。トヨタのFCおよび水素タンクを使用しているという。試験ではエンジン式と遜色のない動作速度を実現できたようだ。 ★BMW、ドイツ・ワッカースドルフ工場にバッテリーテストセンターを開設 ……2026年までに開設する。早ければ2024年半ばより稼働できるという。設備内では、振動・衝撃・耐久・複雑な充放電サイクルなどを検証可能とのこと。 ★軽井沢・プリンスショッピングプラザの充電器が18口に ……西武リアルティソリューションズは、運営するリゾート型ショッピングモールである同施設の充電設備を増設した。設置機器は以下となる  ・テスラ・スーパーチャージャー(軽井沢発)……4口  ・テスラ専用普通充電機……2口  ・汎用型急速充電機……2口  ・汎用型普通充電機……10口 ★東光高岳・ミントウェーブ・みずほリース、3社合同でEVの定額利用サービスを構築へ ……3社連携で「EVワンストップサービス」を立ち上げ、2024年3月からの開始を目指す。EV・充電インフラ・保守・点検までを初期費用なしで利用可能となる。 ★出光興産、新業態のサービスステーションをオープン ……洗車とカーコーティング専門店「アポロワン」を立ち上げた。その1号店「apolloONE江東東陽町」<東京都江東区>を10月7日にオープンする。新業態の店舗はカーシェアやレンタカー、板金のステーションとしても活用するという。今回は明言されていないが、充電器を設置するなどEVへの対応も期待したい。 ★電動トゥクトゥクのエモビ、1億円を資金調達 ……事業を全国に拡大するために調達した。観光地での新たな移動サービスの拡充を目指すという。 ★フォーミュラE、ABTクプラがルーカス・ディ・グラッシを起用 ……2024年シーズンのレギュラー・ドライバーとなる。ディ・グラッシは39歳のベテランで、フォーミュラEでは13勝を挙げている。 デイリーEVヘッドライン[2023.10.02]

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連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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