発電機能は先代比8倍で航続距離も伸びた新型
電動キックボードをはじめとした、コンパクトかつ機動性の高いパーソナルモビリティは、2023年7月の特定小型原動機付自転車(以下、特定原付)に関する交通ルールの改正により、若者を中心に急速な利用拡大をみせた。繁華街を中心にいたるところで目にする機会も増えたが、そのほとんどがEVであるがゆえにバッテリー残量は常に気になるところだ。
そこへ登場したのが自転車タイプの特定原付ENNEのT250で、簡単にいってしまえば走行中にペダルを漕ぐことで発電ができてしまう優れものだ。クルマに例えるならば日産e-powerのようなシリーズハイブリッド方式を採用していて、さしずめ自転車にまたがる人間はエンジンだ。特定原付の性質上、ペダルは車軸と直結させてはならないため、あくまでもこのペダルは発電機構をまわすため付いているものだから、電動アシスト付き自転車とは似て非なる乗りものであると理解いただきたい。
特定原付に使用されるモーターでも回生ブレーキを搭載することは不可能ではないようだが、電力を発生させるためには、特定原付の上限速度である時速20km/hを上まわる、時速25km/h以上で走行しなければならないほか、内部構造の複雑化により故障リスクが大きく跳ね上がるのだという。そのため、ENNEは特定原付における航続距離向上にもっとも適した形は、「発電ユニットの搭載である」という結論にたどりつき、その発電機構の特許まで取得している。
ENNEのT250は2023年6月の発売以来、累計1万台以上の販売実績をもつが、2024年3月1日からはその後継機種であるENNE T350 Proの先行予約販売が開始される。同機はT250に搭載していた発電機能を8倍にまで高め、同じバッテリー容量の他の特定原付に比べて約2倍の航続距離を実現したという。また、モーターも250Wから350Wへパワーアップをされている。
ENNE T350 Proはリヤキャリアに本機専用のコンバーターキットを搭載していて、1分間に50rpmから100rpm程度のケイデンス(1分間のペダルの回転数)でペダルを漕いで発電機をまわすと、バッテリーと同程度の電圧が生成できる。50rpmから100rpmという回転数を示されてもピンと来ないかもしれないが、ENNEによればゆっくり自転車を漕ぐくらいのスピードに相当するそうだ。ペダルの重さは必要な電力により変化はするものの、ギヤなしの自転車を平坦な場所で漕ぐくらいの負荷で済むという。
むろん特定小型EVなので常にペダルを漕ぐ必要はなく、手元のアクセル操作だけで電動バイクのように乗ることも可能だ。
したがって、使い方としては普段はアクセル操作で走行しつつ、バッテリー残量が減ってきたときや、充電する時間を確保できない場合に、ペダルを漕いで足りない分を発電して補う走り方が理想的かと思われる。むろん、バッテリー切れという最悪の事態も起こりえない。このような芸当は他の特定原付ではできないため、それだけでこのENNE T350 Proを選ぶ価値があるといえるだろう。
ファッション感覚で特定原付EVをデザインを優先して選ぶのもいいが、こうした機構の違いによる差は、日常シーンで大きな違いとなって現れるかもしれない。
また、いわずもがなだが、特定原付の使用にあたっては自賠責保険への加入とナンバープレートの取得、ならびに交通ルールをよく理解したうえで、いまのところ努力義務に留まるがヘルメットを着用してその利便性を存分に暮らしに役立てていただきたいと思う。
ENNE T350 proスペック
速度モード:6km/h、20km/h
重量:18kg
組み立て時サイズ(mm):L1360×W570×H1040
折り畳み時サイズ(mm):L750×W500×H600
タイヤサイズ(インチ):14×1.95
純電気航続距離:50-70km
最大航続距離:100-140km
車体最大荷重:150 kg
適用身⻑:140-210 cm
定格出力:350W
瞬間最大電力:700W
先代日定格出力:350W
バッテリー:Panasonic等/14Ah/10.4Ah
フレーム素材:アルミニウム合金
防水レベル:IP54
車体色:ホワイト/ブラック/ベージュ/ブルー
ブレーキタイプ:ディスクブレーキ
灯火類:LED