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TEXT:岡崎 宏司
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第15回:これから増える選択肢、ますますEVは楽しい!

e-208GTを2年半以上愛用される岡崎さんは、これから登場するEVたちを加えて選べる喜びを感じています。「だから、ますますEVは楽しい!」と、期待感大にしてピックアップしています。 23年後半から、いろいろ選べそうだ 僕がプジョー e-208GTをピックアップした時のEVの選択肢、とくにコンパクトクラスの選択肢は限られていた。基本を同じくする「プジョー e-2008」と「シトロエン DS3 E-TENSE」、そして「ホンダe」くらいしか選択肢はなかった。 あれから2年半以上経った今でも、状況はさほど変わっていない。フィアット500eが加わったくらい。しかし、今年後半から1~2年内には、いろいろと選択肢は増えそうだ。 何がいつ頃日本で発売されるかはわからないが、希望をも込めて、早期の日本発売を期待したいコンパクトEVをピックアップする。 サンクが帰ってくる まず挙げたいのは、「ルノー5(サンク)EV」。この5月にプロトタイプが発表されたばかりだが、生産/販売は2024年に開始するとアナウンスされている。 かつてフランスで、欧州で、絶大な人気を獲得したルノー5だが、僕も強く惹かれ、家内用に5バカラを購入した。 そんな5がBEVとして戻ってくるというのだから、平静ではいられない。しかも、「カッコいい!!」ルックスを纏っている。黒のトップにイエローのボディ、そして鮮やかな赤のアクセントも刺激的だ。 かつて持っていた5バカラは艶やかな黒だったが……「5 EVも黒にしよう。赤のアクセントはそのままに……。ベージュの革張り内装のバカラ・モデルがあるといいなぁ!」と、すでに妄想は始まっている。 「走行距離は400km」程度とされるが、プジョー e-208とほぼ同等。とすれば、僕にはまったく問題ないし、多くの人にとっても同様だろう。 走りにしても、プジョー e-208とさほど遠くないレベルのものと思うが、ルノーHV車などの仕上がりのよさを考えると、かなりいいレベルの走り味を期待しても良さそうだ。 なぜ日本で販売されないのかが不思議なMINIクーパーSE 欧州市場では人気モデルになっている「MINIクーパー SE」だが、日本では販売されていない。コンバーチブル・モデルも「999台の欧州限定車」だ。 MINI EVが日本市場でなぜ販売されないのか理由はわからない。……が、多くの人にとっては魅力的な選択肢になるだろうし、そう遠くない販売開始を期待しよう。 モーターは135kW/270Nmの出力/トルクを引き出し、0-100km/hは7.3秒、最高速度は150km/hを発揮する。十分以上のパフォーマンスと言っていい。 航続距離は234kmと短めだが、欧州市場で販売されるMINIの5台に1台はEVモデルと聞く。つまり、この性能で、日常は十分カバーできる人は少なくないということである。 バッテリー容量は32.6kWhと小さい。だが、その分軽量になるし、重量配分のよさと重心の低さに、EVならではの瞬発力が加わる。なので、MINIならではの「ゴーカートフィールはさらに際立つ」ものになるのだろう。 導入が待たれるスマート・フォーツーEQ 欧州デビューしてから3年以上も経つのに、未だ日本上陸のない「スマート・フォーツーEQ」も気になって仕方がない。 とくに、カブリオモデルは、写真を見ているだけでワクワクしてくる。オープンにした状態で斜め後方から見た姿には強く惹かれる。 スマートブランドは2018年、内燃エンジンモデルを終了して、BEVモデルへの一本化を発表している。 そして発表された「フォーツーEQ カブリオ」は、17.6kWhのバッテリーを積み、走行距離は153km。実用走行距離を60~70%と見ても、セカンドカー、あるいはサードカーと考えれば、何の問題もない。 日本で高い人気を獲得している「日産サクラ」の走行距離は180kmだが、ユーザーから文句が出ているという話は聞いていない。 スタイリッシュなボルボEX30にも期待! 今夏にも販売開始されるとアナウンスされている「ボルボ EX30」も、気になっている。 エクステリア、インテリアともに、とてもスタイリッシュなところにまず惹かれる。趣味も仕立てもいい最新デザインのスーツ……そんなイメージが浮かび上がる。うまく着こなしたらかなりカッコいいこと間違いなしだ。 走行距離(480km)も含めて、パフォーマンス的にもかなり高いレベルにある。2030年にはEV専業メーカーになると宣言したボルボらしい、気合の入った仕上がりだ。 幅が1,800mmを超えている(1,837mm)のが唯一の引っかかる点だが、他のあれこれの魅力を考えると、妥協できるかもしれない。 来年か再来年辺りには、コンパクト系EVの選択肢はどんどん拡大するだろう。楽しみで仕方がない。

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TEXT:御堀 直嗣
EVの価格が下がり続ける理由は、バッテリーにあり!:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第12回

電気自動車(EV)の技術について、いまさら聞きにくい基本的なことから詳しく丁寧に説明していく本コラム。今回は高いと言われるEVの新車価格について、その理由を解説する。 半分になった軽自動車EVの新車価格 電気自動車(EV)の新車価格は、エンジン車に比べれば、なお高い傾向にある。それでも、次第に下がりはじめているのも事実だ。 2009年に量産市販EVとして初めて売り出された三菱「i-MiEV」は、消費税5%込みで当時459.9万円だった。昨年発売された三菱「eKクロスEV」は、消費税10%込みで239.8~293.26万円である。消費税額をそれぞれ引いた車両本体価格で比較すると約46%の値下がりで、13年で軽EVの値段が半額近くになったことになる。 2010年に発売された初代日産「リーフ」は、当時376.425~406.035万円だった。現在の2代目リーフは408.1~444.84万円で、ニスモやオーテックの仕様になるとさらに高額になる。初代リーフ時代の消費税は5%で、現在は10%なので、消費税額を引いた車両本体価格で比較すると、廉価車種のX同士で28万円ほど現行リーフが割高な計算になる。 ただし、初代リーフの前期型は、リチウムイオン・バッテリー(以下、LiB)搭載容量が24kWhであるのに対し、現行リーフは40kWhなので1.6倍になり、これによって一充電走行距離が初代リーフ時代のJC08モード比較で2倍に伸びている。車載バッテリー容量の増加だけでなく、LiB自体も、正極(+)材料が、初代はマンガン酸リチウムであったが、現行車は三元系と呼ばれる、コバルト/ニッケル/マンガンの元素を組み合わせた高性能仕様となっている。このことが車載バッテリーの容量増大だけでなく、一充電走行距離を2倍に伸ばした背景になる。 バッテリーの進化については、三菱の「i-MiEV」と「eKクロスEV」の例でも同様で、バッテリーの正極材料がいまは新しくなっている。 リチウムイオン・バッテリーをいかに安く入手するか EVの新車価格は、製造原価の多くを占めるLiBに左右されるといわれている。車両原価の約20%がバッテリー代だとの話もあり、駆動用のバッテリーをいかに安く調達できるかによって、EV価格は左右される傾向が強い。 まず思い浮かぶのは、安い材料を電極に使うバッテリー材料の開拓だ。そのひとつが、三元系と呼ばれるバッテリー素材の燐酸鉄への切り替えや、ほかにナトリウムイオン・バッテリーの模索という将来構想もある。 もうひとつは、eKクロスEVがi-MiEVより大幅に安くなった背景に、三元系のLiBを使いながら、リーフと同じバッテリーを流用しているので、日産「サクラ」を含めた大量生産の効果も効いてくることがある。世界的に“ギガファクトリー”と呼ばれ、LiBを大量生産する工場建設が進んでいるのも、原価が高いとされるLiBをいかに安く手に入れるかという戦略における投資だ。LiB自体の原価も、高価な材料を使いながら量産効果などもあって、2010年からの6年間で一気に1/4に下がったとの報告も出ている。 加えて、生産工場が世界的に広がることにより、製造されたバッテリーの輸送費を抑えられるようになったことも理由のひとつといえるのではないか。 2021年に、米国テスラが「モデル3」の価格を廉価車種で約82万円安くし、500万円を切る429万円になって、日本での販売台数を急速に増やしたことがある。値下げの理由は、中国の上海にギガファクトリーが完成し、そこから日本へ完成車両を輸出したため、米国からの輸出に比べ輸送費が大幅に減ったと説明している。逆に、中国から遠い米国に出荷されたモデル3は、値上がりになったという話だ。

TAG: #EV知識・基礎の基礎 #バッテリー #御堀 直嗣
TEXT:岡崎 宏司
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第14回:フィアット 500eは気になる存在です

フィアット 500eのドライブでは『ローマの休日』へ岡崎さんは思いを馳せたそう。上質で知的な印象の一台に、そうとう心が動かされたご様子です。 e-208GTに満足する一方で 何度も繰り返しているが、現在の愛車、プジョー e-208GTには満足している。 デザイン、ブランド、サイズ、走り味……みんな気に入っている。不満があるのは不整路面での乗り心地くらいのもの。 わが家に来てから2年半経つが、他車に買い替えたいと思ったことはない。車検を取って乗り続けようとさえ思っている。 けっこう移り気!?で、車検を取って乗り続けるなど滅多にない僕には、かなり珍しいこと……なのだが、どうもそうなりそうだ。 まぁ、今までのところ、コンパクトサイズBEVの選択肢が少ないこともあるのだが。 500eには、心動かされる その少ない選択肢の中で、心を動かされたクルマが1台だけある。僕の好みを知る人なら、たぶん言い当てるだろうが……そう、フィアット 500eには心を動かされた。 ちょっぴりヤンチャでチャーミングな500のルックスは基本的に受け継ぎ、サイズを一回り大きくして、上質さ、プレミアム度をグンと高めたデザインは見事だ。 そう……上質さ、プレミアム度という点では、わがプジョー e-208GTを大きく上回っている。内外装ともに……。 「電動開閉式ソフトトップ」があることにも心を動かされた。全開にすると、ほとんどフルオープンに近い開放感が得られる。 それでいながら、すべてを周囲に晒してしまうことがない。スモークの入った窓ガラスを閉めれば、ほぼプライバシーは保たれる。 風の巻き込みもよく抑えられている。少なくとも80km/h 辺りまでなら、「髪の乱れ」も気にならない。女性には喜ばれるはずだ。 走行中のソフトトップからの音も低い。精度の高い造り込みの証といっていい。 そんなことで、フィアット500e コンバーチブルの日常性は非常に高い。大きなチャームポイントのひとつといっていい。

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TEXT:生方 聡
夏の暑さに悲鳴! その対策は? [ID.4をチャージせよ!:その14]

ID.4 Proにはパノラマガラスルーフが標準装着されています。高い開放感が魅力ですが、日差しが強い時期には悩ましいことも。 予想以上に暑い フォルクスワーゲンID.4には、搭載するバッテリーの量が異なる2つのグレードが用意されています。52kWhの「ID.4 Lite」と77kWhの「ID.4 Pro」です。両者の違いはバッテリーの量だけでなく、ID.4 Proでは装備が充実しているのも見逃せないポイントです。 ID.4 Liteには設定のないパノラマガラスルーフが標準装着されるのもそのひとつ。このクルマには、ほぼルーフ全体を覆う大きなガラスルーフが備わり、開放的なキャビンをつくりあげています。ガラス部分の開閉はできないものの、とくに後席からの眺めは爽快で、ID.4 Proでのドライブをさらに楽しく演出してくれます。 ただ、これだけ大きなガラスルーフだと、日差しの強い時期の暑さが心配でした。そして悪い予感は的中! 春先以降、晴れた日の昼間は、覚悟していた以上に暑くなるのです。さいわい、直射日光を遮る電動サンシェードはついていますが、それを閉めても頭上には暑さが籠もりますし、せっかくの眺めも台無しです。また、これだけキャビンが広いとエアコンを入れても温度が下がるまでに時間がかかるうえに、ダッシュボードの低い位置にエアベントがあるID.4では、首から上の部分がなかなか冷えません。 ちなみに、このパノラマガラスルーフはUVカット機能を備えているので日焼けの心配はありません。そこで、熱をカットするフィルムをパノラマガラスルーフの内側に貼ることにしました。

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TEXT:御堀 直嗣
開発競争が激烈! 電気自動車用リチウムイオン・バッテリー:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第11回

進化を続けるリチウムイオン・バッテリー 電気自動車(EV)の技術について、いまさら聞きにくい基本的なことから詳しく丁寧に説明していく本コラム。今回はリチウムイオン・バッテリーを題材とする。 電気自動車への懸念として、いまだにバッテリー火災などの不安を訴える声がある。一方で、ガソリンエンジン車も、故障や事故などで燃えるということは起きており、いずれにしても危険性への正しい理解が必要だ。 多くのEVの動力源であるリチウムイオン・バッテリーの正極(+)材料は活物質と呼ばれ、量産化でまず使われたのは、コバルト酸リチウムだ。その結晶構造は層状になっており、リチウムイオンを多く含むことができる。つまり充電容量が大きいということだ。 しかしながら弱点もある。充電の際にはリチウムイオンが負極(-)へ移動するので、コバルト酸リチウムの結晶構造からリチウムイオンが抜けていく。ここで、過充電してしまうと、コバルト酸リチウムの結晶からリチウムイオンがすべて抜け出てしまうので、結晶構造が崩れやすくなる。これによって短絡(ショート)が起き、発熱や発火が起きてしまうのだ。それが、携帯電話やパーソナルコンピューターの火災事故などにつながった。 そこで、過充電にならないよう充電することが求められ、たとえば100%まで充電しないようにするとか、充電器に過充電を予防する制御を織り込むなどによって、安全を保とうとしてきた。しかし、満充電にしてこそ、その電気機器の性能を長時間、存分に使えるのであって、少なめの充電に抑えては、使い勝手を悪くする。そこは電気自動車(EV)でも同様で、一充電走行距離が短くなってしまう。 そこで、「三菱i-MiEV」や初代「日産リーフ」は、正極(+)にマンガン酸リチウムを用いた。この結晶構造は“スピネル”と呼ばれ、マンガンの結晶構造に崩れにくい柱が備わっている。その安全性については、本コラム第3回で説明した。 かつて、EVの走行距離に不満が指摘された背景に、より安全を重視したリチウムイオン・バッテリー電極の採用があったのだ。 安全を保ちながら、より長い一充電走行距離の実現のため現在使われているのが、三元系と呼ばれる正極(+)材料だ。“三元”とは3つの元素を指す。コバルト、ニッケル、マンガンの3種の元素を組み合わせている。コバルトはリチウムイオンを多く含み、ニッケルはエネルギー密度が高く、マンガンはスピネル構造によって安全性が高い。それぞれの元素の特徴を活かし、より高性能でありながら安全性を確保したリチウムイオン・バッテリーができあがった。 中国産リン酸鉄リチウムイオンの登場 しかし、コバルトは資源量に限りがあり、ニッケルも材料費が高騰しはじめている。資源をより安定的に、かつ安価な素材で電極を構成することがEV普及の鍵となりはじめた。 そこに登場したのが、リン酸鉄リチウムを正極(+)に用いるリチウムイオン・バッテリーだ。オリビン構造と呼ばれる強固な結晶構造を持ち、常温で塑性変形しにくく、熱安定性も高いため、安全性に優れるとされている。一方、三元系に比べ1セル(バッテリーの最小単位)の電圧がやや低く、充電容量が少ないともいわれる。 中国のBYDは、“ブレードバッテリー”と呼ぶ長細い電極形状で、容量の確保に一手を打った。小分けされたバッテリーを何個も組み合わせるよりも、電極を細長くし面積を稼いだバッテリーのほうが1枚の電極面積を大きく取れる。一方で組み合わせによって生じるセル間の配線を減らすことができる。このため、バッテリーケース内の空間を有効活用することで容量不足を補える。 米国のテスラも、「モデル3」の量販にあわせるようにリン酸鉄のリチウムイオン・バッテリーの採用に踏み切り、こちらはCATL(中国)の箱型バッテリーを、モジュールに組むことなしにセルを並べることで、車載量を稼いでいるのではないかとみられる。 いずれに場合も実用上の難点はとくにみられていない。リン酸鉄の正極は素材の希少性に左右されにくく、毒性もないなどの特徴があるが、バッテリー製造に手間がかかるともいわれる。

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TEXT:岡崎 宏司
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第13回:もし、ドイツやアメリカに住んでいたら

道路事情や駐車環境は国によって様々。プジョー 「e-208GT」は、日本ではジャストサイズで愛用される岡崎さんですが、時には「ドイツやアメリカだったら」と思いを巡らします。 日本ではコンパクト。ドイツやアメリカだったら……。 僕は常々「コンパクト系が好き!」と言っている。だが、これは、あくまでも日本でのこと。日本の道路や駐車場を中心にした使用環境下ではコンパクト系がいいということだ。 だから、僕がこれまでに所有したLクラス車は3台。テールフィン全盛期のアメリカン2ドアハードトップ……、「デソート・ファイアスイープ」、そして、5.3L V型12気筒を積んだ「デイムラー・ダブルシックス」が2台の、計3台だけだ。 それ以外は、数台のDセグメントを除けば、すべてCセグメント以下。でも、ドイツやアメリカに住んでいたら……車歴はまったく変わっていただろう。 僕の現在の愛車は、プジョー e-208GT。Bセグメントサイズの使い勝手の良さは、大いに気に入っている。 ドイツに住んでいたら、と思えば―e-tron GT ……が、もしも、サイズのことなど考えず、ストレートに「ほしいEV」を選んでいたとしたら……「アウディ e-tron GT」か、「GT RS」が愛車になっていたはず。 つまり、僕が、道路環境も駐車環境もいいドイツに住んでいたら、迷わず「いちばんほしいEVをゲット」していたということ。 アウディ e-tron GTでアウトバーンを……いったいどんな気分なのだろうか。 ヒューンという微かなモーターの唸り、抑制の効いたロードノイズと風音……「素晴らしく心地よくもインテリジェンスなハイスピード クルージング」……といったところが、僕の描くイメージだ。 さらに、ドイツは充電環境の整備も進んでいる。これも、大型で高性能なEVをゲットする垣根を低くする。 充電環境といえば、同じ欧州でも、イタリアなどは遅れている。かつて、ガソリンが無鉛化されたタイミングで、ミュンヘン~シエナを往復する家族旅行をしたが、イタリアでの無鉛ガソリンの供給遅れには困惑した。 ドイツで手に入れた「無鉛ガソリン供給スタンド マップ」では、イタリアでも難なく無鉛ガソリンは給油できるはずだった。だが、現実はまるで違った。多くの丸印付きスタンドでの給油は叶わなかったのだ。 クルマのレンタル先(ドイツ)に電話を入れ、有鉛ガソリン使用の許可を得て旅を続けることはできたが、冷や汗ものだった。

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TEXT:福田 雅敏
変速機付きイー・アクスル増加の予感……「人テク展」を写真で振り返る[THE視点]

5月24日〜26日まで開催された「人とくるまのテクノロジー展 2023 YOKOHAMA」<パシフィコ横浜(横浜市みなとみらい地区)>。 自動車メーカーとサプライヤーが最新技術を持ち寄るこの展示イベントは、今年は前回以上の来場者数と出展者数を記録した(来場6万3,810人/出展484社)。 前回[詳細はこちら<click>]のレポートはメーカーを中心に紹介したが、今回は中編として、サプライヤー系から昨今の注目パーツであるモーター一体型駆動装置(イー・アクスル)を紹介する。 TOP……小型EV対応のイー・アクスル TOP(タケフ・オリジナル・プロダクション)ブースには、小型EVとともに、イー・アクスル+減速機が展示されていた。 モーターは使用電圧48Vに対応した最高出力(定格)6.0kW(8.2ps)のもので、「モーターのみ」「モーター+インバーター」「モーター+インバーター+減速機」から選べるのが特徴。現在はGen1と呼ばれるものが主流だが、より小型化された、Gen2も展示されていた。 住友化学……軽量・高剛性の次世代プラスチック製イン・ホイール・モーターケース 住友化学のブースには、スーパーエンプラ(スーパー・エンジニアリング・プラスチックス)のPES(ポリ・エーテル・サルフォン)材を、イン・ホイール・モーターのケースに採用したものを展示。 アルミニウム製カバーに比べ約30%軽量化できるうえ、モーターに必要な放熱性も保持するという。 アイシン……電費が10%向上するイー・アクスル アイシンブースでは、イー・アクスルを展示。現在は第1世代のミディアムクラスの展示であったが、将来的(第2世代以降)には、スモール、ラージともラインナップを増やしていくという。このイー・アクスル化により、電費が10%向上するという。 デンソー……前・後輪搭載可能で電費が向上するインバーター(モックアップ) デンソーは、樹脂製のイー・アクスルのモックアップを展示し、その中にインバーターを組み込んだものを紹介していた。フロント用とリア用の2種類を展示。損失低減により、電費を向上、航続距離が延伸できるという。 マグナ・インターナショナル・ジャパン……商用車向けのイー・アクスル マグナでは、商用車向けイー・アクスルを展示。スペック等は明らかにされなかった。

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TEXT:生方 聡
悲報! 充電料金が大幅値上げに [ID.4をチャージせよ!:その13]

食料品や電気料金など物価上昇が止まらないなかで、ついに電気自動車の充電料金も値上げに。「ID.4 Pro」オーナーの私も、その影響をモロに受けそうです。 7月からe-Mobility Powerが値上げに ふだん私が利用しているのが、e-Mobility Power(イーモビリティパワー、以下eMP)ネットワークの急速充電器です。2023年3月現在、全国に約7,800口の急速充電器があり、日産や三菱、トヨタ、メルセデス・ベンツ、BMWといった自動車ディーラーをはじめ、高速道路のサービスエリア/パーキングエリア、道の駅、ショッピングモール、コンビニエンスストア、ガソリンスタンドなど、さまざまな場所にある急速充電器が、専用の充電カードをかざすだけで利用できます。 フォルクスワーゲン・ジャパンでも、ID.4や「eゴルフ」のオーナー向けに、eMPネットワークが利用できる「フォルクスワーゲン充電カード」(以下、VW充電カード)を用意しており、私も加入しています。 そのeMPが2023年7月1日から、eMP会員向けの料金改定を発表しました。「急速・普通併用プラン」の新旧料金は次のとおりです。   基本料金 急速充電料金 普通充電 旧 4,620円 16.5円/分 2.75円/分 新 4,180円 27.5円/分 3.85円/分 月額料金が4,620円から4,180円に値下がりする一方、充電時間に応じて支払う都度利用料金が大幅にアップ。急速充電では1分あたり16.5円から27.5円。67%の値上がりです。普通充電も1分あたり2.75円から3.85円と40%上昇します。30分急速充電した場合の料金は、これまでの495円が825円になりますから、今回の値上げ幅がかなり大きいことがわかります。

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TEXT:御堀 直嗣
知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第10回:自由自在な電気自動車の駆動方式

歴史が語る駆動方式の変遷 駆動方式について、永年にわたり後輪で駆動し、前輪で操舵する方式が、素直だとの認識が広まっている。たとえば、馬車の時代の馬は、駈足(かけあし)をする際に後ろ脚から走り出す。 後輪駆動(RWD)は、世界初のガソリン車であるカール・ベンツの「パテント・モトール・ヴァーゲン」がそうだった。ただしそれは馬車のようなフレームの後ろ側にエンジンを搭載し、ベルト駆動で後輪を回す仕組みだった。ミッドシップ的でもあり、リアエンジン・リアドライブ(RR)の形態ともいえる。今日のフロントエンジン・リアドライブ(FR)に通じるRWDは、フランスのパナール・エ・ルバッソールによってもたらされ、ドイツのダイムラーのメルセデスが、この手法を世界的に広めた。 前輪駆動(FWD)の歴史は実は古く、18世紀に蒸気機関で走るフランスのキュニョーという大砲を車載した車両があった。エンジン車のFWD誕生について乗用車として有名なのは、フランスのシトロエンの「トラクシオン・アヴァン」ではないか。のちに英国で生まれたミニもFWDの代表的車種であり、ドイツ車ではフォルクスワーゲンの初代「ゴルフ」が誕生すると、FWDの象徴的存在となった。FWDの価値は、駆動系の機器や装置を車体の前寄りに集中させ、後ろの空間を客室や荷室に有効に利用できるところにある。 四輪駆動(4WD)は、1903年にオランダのスパイカーによって世に出された。これはレーシングカーだったが、実用的な4WDとしては、ゴットリープ・ダイムラーの息子のパウル・ダイムラーが軍用車に適用した。米国でも、第一次世界大戦には4WDのトラックが活躍するなど、悪路走破の威力が4WDには求められた。そして「ジープ」が名を馳せる。舗装路での有用性は、日本のスバルやドイツのアウディによって示され、今日に至る。 電気自動車(EV)も、駆動方式による走りの得手不得手は基本的に同様ではある。そのうえで、エンジン車で4WDとなると燃費の悪化はやむを得ないが、EVではエンジン車の4WDで不可欠なトランスファーやセンターディファレンシャルといった装置を省けるので、それらに使われる歯車がなくなり摩擦損失がない。このため、モーター追加による重量増はあるが、電力消費にそれほど大きな差が出ず、目的に応じて駆動方式を選びやすくなる。 駆動方式を自由に選べるEV EVのプラットフォームを改めて見てみると、床下のほぼ一面にバッテリーが搭載され、その前後に、駆動用のモーターと制御機器、充電器などが配置されている。エンジン車と大きく異なるのは、バッテリーからの電気を配線でつなげば、モーター駆動では、エンジン車のようなプロペラシャフトや前後へトルクを分配するトランスファーといった伝達系部品を省略できる。変速機も不要だ。したがって、どの駆動方式も比較的簡単に設定できることになる。 EV専用車として開発された米国テスラは、RWDと4WD(AWD:オール・ホイール・ドライブと表現されることもある)の車種構成で売り出された。 日本の三菱「i-MiEV」はRWDだが、日産「リーフ」はFWDでの発売となった。「i-MiEV」は、リアエンジン車の「i(アイ)」が先に発売され、そのコンバートEVであったため、自動的にRWDを採用した。リーフはEV専用とはいえ、エンジン車の小型車を基にした開発によってFWDとなった。 ドイツのBMW i3は、EV専用車としてRWDで登場した。フォルクスワーゲンの「ゴルフe」は、エンジン車からのコンバートだったのでFWDだが、EV専用車のID.4はRWDと4WDである。 生産するうえで部品点数が少なくなるEVは、プラットフォームにバッテリーを搭載したあとは、基本的に前後の空間にモーターを設置するだけなので、製造工程を簡素化できるだろう。

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TEXT:岡崎 宏司
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第12回:EVは、軽自動車へステータスをあたえた!

軽EVのサクラとeKクロス EVには、軽乗用車の印象を変えるステータスのようなものを感じると岡崎さんは語ります。ミニマムで、仕立てよく、そしてEVの気持ちよさから期待大です。 海外エンジニアが評価する軽乗用車 軽EVの「日産サクラ」と「三菱eKクロス EV」は共に魅力的。前者は大人の雰囲気を、後者は若々しい雰囲気を纏う。基本は同じ両車だが、巧みな棲み分けをしている。 僕が試乗したのは日産サクラ。デビューしてすぐだったが、その姿を一目見て頷き、ちょっと走っただけで気に入った。直感的に「売れる!」と思った。 現在の軽はよくできているし、よく走りもする。限られたあれこれの中での、各メーカーの競い合いは素晴らしいのひとことだ。 少し前のことだが、欧州有力メーカーの技術系トップと食事をした。その時、僕は、「日本車でいちばん高く評価しているクルマはなにか?」と質問をした。 答えは「軽乗用車」。「厳しい条件下で、ユーザーの求めに、あれほど高いレベルで応えているクルマは他にない」との答えだった。 僕はハッとした。ずっと身近で発展成長してきた軽だけに、そうした視点での見方が甘かったことに気づかされたのだ。 この方はすでに引退されている。でも、軽EVにはきっとお乗りになっているはず。そして、間接的ではあろうが、後輩エンジニアに、あれこれ印象を、意見を、述べられているだろうと想像している。 「EV」は、付加価値があるもの 話をサクラに戻そう。 その走り味乗り味については、すでに多くの記事が出ているし、読まれているだろう。なので繰り返すことはやめる。 サクラに乗ったとき、「売れる!」と思ったことは上記の通りだが、売れ先として直感的に頭に浮かんだひとつが、旧い高級住宅街。 親しい友人が住んでいる、東横線沿線の伝統ある高級住宅街だ。 風格ある、あるいは瀟洒な佇まいの家が立ち並んでいる。……でも、その街を抜ける通りは狭い。駐車車両は明らかな障害になるし、Lクラスのクルマや、大型SUV辺りは明らかに過剰を感じる。 そう……そんな街に、「サクラはピッタリじゃないか!」と閃いたのだ。そして、試乗でも「旧い街」を走ってみた。それも、坂のある込み入った街を……。 軽は狭い道は得意だが、登り勾配は得意ではない。過給機付きでトルクのある軽はよく走る。……でも、タイトな角の先が上り坂といった条件ではスイスイとはいかない。 しかし、サクラは、そんな条件下でも、ほんとうに気持ちよく、文字通り「スイスイ」走り抜けてくれる。 とはいえ、「べつにEVでなくてもいいのでは?」という疑問も出るだろう。「気持ちよくスイスイとはいかなくても、実用には十分でしょ!」と……。答えは「その通り」だ。 しかし、高級住宅地に住むような豊かな人たちにとっては、たとえ便利でも、「普通の軽」に乗るのは抵抗があるかもしれない。 メルセデス、BMW、アウディ、ジャガー……といったクルマを愛車とする人たちのセカンドカーとしては、なにか、ステータスになるようなプラスアルファがほしい。 そう……サクラにはそれがあるということ。軽ではあっても、新しい時代を象徴するサンプルのひとつとも言える「EV=電気自動車」に乗っているというステータスだ。 日本ならではのEVに期待! それに、実際に運転しても、静かで、滑らかで、ピックアップがよくて……と、日々乗っているプレミアムセグメントのクルマとの、感覚的乖離が少ない。気持ちよく走れる。 上記した東横線沿線の高級住宅地に住む友人によると、僕の予測は「当たり!」らしい。 サクラはどんどん増えていて、同じ街に住む彼の妹さんも買ったという。そして、「日々の近場の買い物が、ほんとうに楽になった!」と喜んでいるそうだ。 加えて、「電気自動車がこんなに楽で、気持ちのいいものとは思わなかった。もう手放せないわ!」とも。道路の狭さに加えて、坂も多い街なので、とくにそう感じるのだろう。 日産サクラと三菱eKクロス EVのデビューは、軽の世界を大きく拡げてくれた。とともにEVの世界をも拡げてくれた。この2車への追従モデルがどんな形で、どんなレベルで出てくるのか……大いに楽しみだ。

TAG: #eKクロス EV #サクラ
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VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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