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TEXT:御堀 直嗣
上限85万円の補助金を受けられる電気自動車はどのモデル?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第13回

型式指定が関わる国のEV補助金 電気自動車(EV)の新車を購入する際に適用される補助金は、今年、令和5年度4月1日以降の支給金額が確定している。一般社団法人次世代自動車振興センターによって、車種ごとの補助金額が公開されている。 現在の補助金支給額は上限が85万円となっており、各車種の支給金額の判定には条件が設けられている。 ひとつは、型式指定された車種であるかどうか。もうひとつは、給電機能を持つかどうかである。 型式指定について、日本では、新車を販売するに際し、あらかじめ保安基準に適合していることを国土交通省へ申請し、審査を受ける必要がある。そのうえで、新車登録の際に現物のクルマを1台ずつ検査しなくても同一の品質を備えていると認めることを、型式指定制度という。型式指定された新車を販売し、登録する際に、書類上の手続きで済ませることができる。大量生産されるクルマが対象だ。さらに、新型届け出制度と呼ばれる仕組みがあり、これは仕様が多様な大型トラックやバスなどに適用される。 そして前者の型式指定制度を受けたEVが補助金対象になる。 給電機能とは、ヴィークル・トゥ・ホーム(VtoH、以下V2H)によるEVから自宅への給電機能を備えているかどうか。あるいは、100Vのコンセントを車内に設置してあり、車外の家電製品などへ電気を供給できるようになっていれば、こちらも対象になる。 上記2つの条件の如何によって、補助金額に差が出ている。 V2Hの有無が生み出した補助金の差 日本車は、型式指定を受けて国内で販売されるし、CHAdeMOによる充電を前提として、車両側にV2H機能を持たせている場合が多いため、補助金額は登録車の場合85万円の最高額が設定されている例が多い。 一方、輸入車の場合は、そもそもV2Hへの対応をしていないEVが多く、たとえば2200万円以上となる「ポルシェ・タイカン」の「ターボS」でも42.6万円の支給額だ。一方、1000万円を超えるメルセデス・ベンツの「EQS」や「EQE」もV2Hに対応しているので、68万円の支給額となっている。高額車両についてはV2Hあり:68万円、V2Hなし:52万円となる。ちなみに、V2Hを当初より設定しながら、これまで65万円の支給額だった中国製の「BYDアット3」は、型式認定を受けたことによって上限の85万円の支給対象になった。 軽自動車のEVについて、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」は、55万円の支給額である。軽商用バンの「三菱ミニキャブミーブ」は、41~49万円だ。 欧米市場では、充電方式について欧州のCCS(コンバインド・チャージング・システム)の普及や、米国のテスラ方式へのGMやフォードの追従といった情報が流れている。それらの充電方式ではV2Hへの対応が進んでおらず、単にEVへの充電効率だけを追求する欧米の姿勢は、今後いずれかの段階で見直しが行われるかもしれない。ちなみに中国は、CHAdeMOを基にしたGB/T方式を採っている。 充電方式の違いに話がそれたが…、日本のEV補助金制度は、EVを地域の蓄電池として、統合的な電力運用や災害対応などへも役立てていきたいという広範な視点に立った普及制度にもなっていることを知っていて欲しい。

TAG: #EV知識・基礎の基礎 #御堀 直嗣 #補助金
TEXT:生方 聡
続・お得な充電カードを探せ [ID.4をチャージせよ!:その17]

ID.4 プロ・ローンチエディションの無料充電特典がまもなく終わるということで、次に加入する充電カードを再検討してみることにしました。 e-Mobility PowerとZESP3を比較 私が愛用するID.4 プロ・ローンチエディションには、「フォルクスワーゲン充電カード 普通・急速充電器併用プラン」(以下VW充電カード)の月会費、「プレミアムチャージングアライアンス(PCA)」の月会費、さらにフォルクスワーゲンディーラーでの60分までの急速充電がすべて1年間無料になる特典がついています。 このうち、VW充電カードは「e-Mobility Power」(以下e-MP)ネットワークの充電ステーションがカードをかざすだけで利用できるだけに、自宅に充電器のない私には頼みの綱ともいえるサービスです。ただ、無料特典がなくなる2023年12月以降は、VW充電カードは割高なうえに、2024年12月末でVW充電カードのサービス自体が終了することに。そこで、e-MPネットワークが利用できる充電カードのプランを、最新の情報をもとに比較してみることにしました。 比較するのは、e-MPが自前で用意している「急速・普通併用プラン」と、2023年9月に値上げが実施される「日産ゼロ・エミッションサポートプログラム3(ZESP3)」。ここで注意しなければならないのが、ZESP3はこれまで日産車オーナー以外でも加入が可能でしたが、2023年9月からは日産車オーナーしか加入できなくなることです。

TAG: #ID.4 #VW
TEXT:生方 聡
超急速充電の実力は? 「Hypercharger」を試してみた! [ID.4をチャージせよ!:その16]

もうすぐ本格運用が始まるパワーエックスの蓄電池型超急速EV充電器「Hypercharger」で、ひとあし先に愛車の「ID.4」を充電してみました。その速さに驚き! ※特別な許可を得て取材・撮影しています 90kWオーバーの超急速充電 先日のニュースで、パワーエックスの急速充電器「Hypercharger」がCHAdeMO 2.0.1認証を取得したことをお知らせしましたが、その後、「ID.4で試してみませんか?」というお誘いがあり、東京・青山にある試験運用中の施設を訪ねました。 駐車場の一郭につくられた充電ステーションは、スタイリッシュな充電設備を2台分の駐車枠で挟むように設置され、「Battery Capacity 358kWh」「Charging Speed 〜240kW」の文字が目に飛び込んで来ました。 充電ポートがあるディスペンサーユニットにはタッチパネルの類いはなく、操作はすべてスマートフォンのアプリで行います。利用前にスマホで予約を入れ、現地に到着したらスマホのQRコードをかざし、あとは画面に指示にしたがって充電プラグをID.4の急速充電ポートにセット。さっそく充電を開始します。 充電開始時点のSOC(バッテリー残量)は31%でしたが、気温が35℃を超える状況で、どこまで充電出力が上がるのか、少し心配でした。しかし、スマホの画面に表示された充電出力は90kW超え! 日本に導入されているID.4は最高94kWの急速充電に対応しており、ほぼ最高速で充電が行われているということになります。 その後も90kW充電は続き、約10分が過ぎ、SOCが50%を超えたあたりから80kW台〜70kW台〜60kW台と出力が落ちていきました。念のため80%で充電を止めましたが、30分弱でバッテリーの約半分の容量が充電できました。その優れたパフォーマンスに感激です!

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TEXT:烏山 大輔
一気に遠出は無理だけど、高速走行は不得意ではない!三菱ekクロスEV THE EV TIMES流・電費ガチ計測

THE EV TIMES流電費計測の4回目を、7月に三菱ekクロスEVで実施した。ekクロスEV(と日産サクラ)は、高速道路でのロングドライブにむきにくいクルマであることはもちろん理解しているが、この電費計測は読者の皆さんの参考になる電費を公道走行で導き出したいという趣旨であるため、この記事を見て、やはり高速走行には向かないな、もっと悪い電費になるかと思った、などとご笑覧頂けると幸いである。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 80km/hでのんびりがベスト ekクロスEVのカタログ上の一充電走行距離は180km(WLTC)で、電池容量は20kWhだ。カタログ記載の一充電走行距離の180kmを実現するには、電費が9.00km/kWh(目標電費)を上回る必要がある。 ※電費についてはテスラなどで表示されるWh/km単位の数値も併記している。 各区間の計測結果は下記表の通り。9.00km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまで電費計測を実施したiX1、EQEセダン、EQS SUVが目標電費の倍以上の数値を記録していた100km/h走行のD往路(標高差316mの下り坂)で、かろうじて目標電費を上回ったところからも、電費の面では高速走行が不向きなことがうかがえる。 80km/h巡航でギリギリ180kmの航続距離 各巡航速度の平均電費は下記の表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は180kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。80km/hだけ9km/kWhを超えるが、100km/hになると一気に6km/kWh台に落ちる。120km/hはなんとか100kmを走れそうなレベルだ。 操縦性においていえば、120km/h巡航が「不得意」だとは感じなかった。それは正直街乗りだと固いなと感じる足回りがこの速度域では、バッテリーの低重心も手伝って、ビシッと安定した走りをみせるからだ。1,655mmもの全高も全く感じさせず、まるで背の低いセダンのような走りで頼もしかった。 各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると27%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.79倍の航続距離の伸長が期待できる。

TAG: #eKクロスEV #三菱 #電費計測
TEXT:烏山 大輔
高速で航続距離500km以下になるのはまれ!? メルセデス・ベンツEQS450 4MATIC SUV THE EV TIMES流・電費ガチ計測

THE EV TIMES流電費計測の第3回は、6月にメルセデス・ベンツ EQS450 4MATIC SUVで実施した。これまで同様、エアコンは23℃で常時オン、速度は一定速を保って走行する。前回のEQE 350+よりも1,725mmと全高が高く、Cd値も0.26と0.04大きく、510kg重いため、当然数値は低下したが、バッテリー容量が17.2kWhも大きい利点を活かし、EQE 350+と遜色ない十分な航続距離を実現できそうだ。 計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 80km/hキープなら680km走れるかも EQS450 4MATIC SUVの一充電走行距離は593km(WLTC)で、電池容量は107.8kWhだ。カタログ記載の一充電走行距離である593kmを実現するには、電費が5.50km/kWhを上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.50km/kWhを上回った場合、赤字にしている。当然のことながら上り勾配の区間では下りの同区間よりも電費が悪くなった(同一値だったA区間を除く)。 120km/h巡航は一気に電費が悪くなる反面、乗り心地が一番良いように思えた。エアサスペンションの最も得意とする速度域のようで、段差によるボディの揺すられ具合が断然少なかった。 500kmくらいが現実的な航続距離か 各巡航速度の平均電費は下記の表の通り。航続可能距離は電費にバッテリー総容量をかけたもの、一充電走行距離との比率とは、カタログデータである593kmに対して、どれほど良いのか、悪いのかだ。 各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.64倍の航続距離の伸長が期待できる。

TAG: #EQS SUV #EQS450 #メルセデスベンツ #電費計測
TEXT:烏山 大輔
満充電なら500kmは固そう!メルセデス・ベンツEQE 350+ THE EV TIMES流・電費ガチ計測

THE EV TIMES流電費計測の2回目は、6月にメルセデス・ベンツ EQE 350+で実施した。試乗記でお伝えしたように、郊外の一般道では予想以上の良い電費を記録した、果たして高速道路ではどうだったのか、その詳細をお伝えする。計測方法についてはこちらを参照されたい。 600km以上走れるのは80km/hだけ EQE 350+の一充電走行距離は624km(WLTCモード)で、電池容量は90.6kWhだ。この2つの数値から、電費6.89km/kWhを上回れば、カタログ記載の一充電走行距離の624kmを実現できる。 各区間の計測結果は下記表の通り。6.89km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 100km/h巡航のまま500kmは走れそうだ 各巡航速度の電費は下記の表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」はカタログデータである624kmに対して、どれほど良いのか、悪いのかだ。 各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると18%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.46倍の航続距離の伸長が期待できる。

TAG: #EQE #メルセデスベンツ #電費計測
TEXT:岡崎 宏司
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第16回:新型「プジョー E-208」の印象

新型へ、気持ち揺れ動く 去る7月6日、ステランティスは、欧州でプジョー208のマイナーチェンジを発表した。 エクステリアが中心のマイナーチェンジだが、強いインパクトがある。僕は現行E-208のオーナーだが、新しいデザインにひと目で惹かれた。 現行プジョーE-208はデビューして3年だが、生産台数はすでに100万台を突破。2021年と2022年には、欧州でのベストセラー車になっている。 長年独占し続けてきたVWゴルフの王座を奪ったということだから、これは「ちょっとしたニュース!」と言えるだろう。 僕は2021年1月から、BEVの「E-208GT」を愛用しているが、とても気に入っている。Bセグメントのサイズもいいし、フランス生まれならではの粋なルックス、そして素直で心地よい走り味にも……。 だから、車検を受けて乗り続けようと思っていた……のだが、新型E-208の写真を見たとたん、気持ちは揺れ動いた。 際立つ印象に、惹き込まれる 現行モデルでも旧さはまるで感じず、まだまだ時代を先取りしていると思っていた。ところが……マイナーチェンジされた新型は、そんな僕の気持ちをぐらつかせたのだ。 デザインのイメージは同一線上にあるし、奇をてらっているわけでもない。現行モデルとマイナーチェンジしたモデルが、「プジョー208」であることは誰もがひと目でわかる。 現行モデルの顔を初めて見た時の印象は鮮烈だった。一瞬で惹き込まれた。そして今、僕は新たな顔に再び鮮烈な印象を受け、強い引力で惹き込まれていることになる。 女性に例えるなら、目と頬と唇の化粧を、よりインパクトのある、より個性の際立つものにしたとでも言えばいいのか。 現行208も際立った個性をもつ顔立ちだが、新型208はさらに際立っている。エキゾチックで美しい顔立ちを持つ女性アスリートを目の前にしたようだ。 迫力ある口、小さいながら爛々とした目、そして3本の鋭い爪は、より個性を増し、洗練を増したライオンのエンブレムに相応しい。 鋭さと洗練という点ではテールランプも軌を一にしている。このテールランプにも僕は一目惚れした。 そして、17インチホイールのデザインもまた、「さすがプジョー!」と言えるアートライクな姿に進化している。 新型208のイメージカラーは「アゲダ イエロー」と呼ばれる明るい黄緑色。これがまたいい。僕は今まで、イエローもグリーンも着たことがない。 でも、さらに華やかなアゲダ イエローにはなぜか強く惹かれている。思い切って「着てみようかな!」と思い始めている。 「これに上等なコーティング仕上げを加えたら、絶対に素敵だよな!!」……と、楽しい妄想を巡らせている。

TAG: #208 #e-208 #EVは楽しい! #プジョー #岡﨑 宏司
TEXT:烏山 大輔
電費もちょうどいい感じ!BMW iX1 xDrive30 M Sport THE EV TIMES流・電費ガチ計測

エアコンは23℃で常時オン、定速走行によるTHE EV TIMES流電費計測を、6月某日にBMW iX1 xDrive30 M Sport(以下、iX1)で実施したので、その詳細を報告したい。試乗記でもお伝えしたように、取り回しや居住性、動力性能などを高次元でバランスさせたiX1は電費もほど良い結果を残した。 ※計測方法などについてはこちらをご覧ください。 100km/hでも420km走行できそう iX1の一充電走行距離は465km(WLTC)で、電池容量は66.5kWhだ。一充電走行距離の465kmを実現するには、電費が6.99km/kWh(目標電費)を上回る必要がある。 ※電費についてはテスラなどで表示されるWh/km単位の数値も併記している。 各区間の計測結果は下記表の通り。6.99km/kWhを上回った場合、赤字にしている。全ての区間で勾配の登りよりも下りの方が良い電費が出て、勾配に素直な結果となった。 80km/h巡航のBとC区間は両方とも復路が下り勾配で、特にC区間の復路は20.4km/kWhと20の大台を超えた。しかし347mを登る往路が足を引っ張り、区間平均ではより平坦なB区間(9.06)に届かなかったが、目標電費を超える8.54km/kWhを記録した。 標高差が25mとわずかなA区間(100km/h巡航)は、往路と復路の差も少なく平均では6.55km/kWhと目標電費にわずかに届かなかった。 同じ100km/h巡航で316mもの標高差があるD区間では、勾配を下る往路で14.5km/kWhと目標を大きく超えたが、復路が4.0km/kWhとなんと120km/h区間よりも悪くなり、区間平均も6.27km/kWhとA区間よりも悪くなった。やはりなるべく平坦な方が電費は良くなるようだ。 120km/h巡航のE区間は標高差こそ67mと比較的小さいが、速度上昇により電費が悪化した。下り勾配の往路が復路より0.2km/kWh良い電費だったが、平均では5.10km/kWhだった。 80km/h巡航なら東京から兵庫県や岩手県に到達できそうだ 各巡航速度の平均電費は下記の表の通りとなる。「航続可能距離」は電費にバッテリー容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は465kmに対して、どれほど良いのか、悪いのかだ。80km/h巡航のみが一充電走行距離を超える結果となった ※電費は小数点第二位を四捨五入して表示しているため、実際の計算とは多少のずれが生じる。 80km/h巡航は、一充電走行距離(カタログ値)の1.24倍となる578kmを走行できる計算になる。これは東名高速道路の東京IC(東京都世田谷区)を出発した場合、大阪府を通りすぎ、兵庫県南西部に位置する山陽自動車道の龍野IC(568km、兵庫県たつの市)に数字上は辿り着ける。東北自動車道の場合は、川口JCT(埼玉県川口市)から岩手県北西部の安代IC(565km、岩手県八幡平市)までの走行が望めるレベルだ。 100km/h巡航の場合は、一充電走行距離(カタログ値)を8%だけ割り込み、426kmとなった。東京ICからだと愛知県と三重県を通り越して、琵琶湖のほとりの名神高速道路、瀬田東IC(423km、滋賀県大津市)まで走行できそうだ。東北自動車道の場合は、宮城県を通過し、岩手県に入った最初のICである一関IC(422km、岩手県一関市)に到達できる見込みだ。 80km/hでも100km/hでもクルマよりも人間の方が先にトイレや食事などの休憩が必要になるであろうから、そのタイミングで充電が可能であれば、上記のようなロングドライブも十分可能だろうと考える。 120km/h巡航でも339km走行できる。現在、制限速度120km/h区間は新東名高速道路の静岡県内(御殿場JCTー浜松いなさJCT)が最長の145kmなので、十分な能力を持っている。 急ぎの場合は途中で充電しても飛ばした方が早く着く 各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると26%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.71倍の航続距離の伸長が期待できる。 仮に80km/h巡航で充電無しで走行できる587kmを100km/hや120km/hで走行した場合、途中で充電しても早く到着できるのかを計算してみると以下の結果となった。 80km/h 7時間14分 100km/h 6時間12分(80km/hより1時間2分早い、25分の充電※1を含む) 120km/h 5時間34分(80km/hより1時間40分早い、40分の充電※1を含む) ※現状、日本では120km/hでこれほどの長距離を走行できるところはないのであくまで仮定の話です。

TAG: #BMW #iX1 #電費計測
TEXT:生方 聡
夏にご用心! 充電が厳しいのは冬だけじゃなかった [ID.4をチャージせよ!:その15]

ここ東京でも最高気温が30℃を超える日が続いていますが、この暑さがこたえているのは人間だけではなく、ウチのID.4にも猛暑の影響が出ています。 90kW急速充電は要注意 日本に導入されている「ID.4」は最高94kWの急速充電(CHAdeMO)に対応しています。実際、90kW急速充電器では74kW程度、150kW急速充電器では90kW強の電力で充電できることを確認しています。 ただし、はじめて過ごした冬には、90kW急速充電器を使っても、条件によっては充電電力が40kW止まりということも少なくなく、気温やバッテリー温度が急速充電に大きく影響していることがわかりました。一方、50kW急速充電器では、ほぼ40kW台で充電を行うことができ、90kW器に比べて気温の影響は受けにくいようでした。 春になると、90kW急速充電器で70kW台が安定して出るようになり、充電に対する不安はすっかり薄らいでいました。ところが、気温34℃という炎天下のもと、常磐自動車道の友部サービスエリア下りにある“マルチタイプ急速充電器”にID.4 Proをつないで充電を始めたところ、充電電力は40kW台前半から上がりませんでした。 このマルチタイプ急速充電器では、充電開始から15分までは「ブースト機能」が働き90kW、その後は50kWで急速充電ができます。いつもなら30分で30kWh近く充電できるのですが、この日は23.4kWhと少なめ。これだと、50kW急速充電器を使うのとあまり変わりません。

TAG: #ID.4 #VW
TEXT:烏山 大輔
エコランではなくガチ計測!THE EV TIMES流の電費計測を開始

BEV(バッテリー電気自動車)を購入するにあたり、不安な点と言えば充電環境に加えて、まだまだ不充分とされる航続距離だ。 カタログには一充電走行距離の値を明示してある。しかしEVが実際に使われる現場は、そうした値が記録される平坦で一定なテストコースではなく、勾配もカーブもある。 そこでTHE EV TIMESでは、試乗や撮影で広報車を借り出す機会に乗じて、公道の高速道路で「生きた」電費を計り、読者の皆さんの参考になる電費を導き出したいと考えた。 計測方法 高速道路をACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を使用し、80km/h、100km/h、120km/hの各速度で巡航した電費を計測する。ACCを使用することで、誰でも一定速走行を実現できるので、読者の皆さんの再現性も高いものとなる。 なお、同じ区間の往路と復路を同じ速度で走行することにより、勾配(標高差)を平準化しており、往復距離を往復で消費した電力で割って区間電費としている。同じ速度の別区間(AとD、BとC)との平均電費も走行距離を消費電力で割って算出している。 計測区間に入ったらすぐにACCを巡航速度に合わせ、電費をリセットし計測区間終了直前の電費を記録する。 なお、車両のメーター速度表示と実際の速度には差があるため、GPSで実速度を確認しACC設定速度を調整、正確に各巡航速度で走行できるようにする。こうすることでメーター80km/h巡航においてA車は実速度78km/h、B車は実速度が75km/hで、実はB車の方が有利だったという不公平をなくす。 そして計測は、交通量が少なく渋滞が発生する可能性の低い深夜に実施する。 計測区間 120km/hの電費を計測するため、現状では国内で最も制限速度120km/h区間の長い新東名高速道路(以下、新東名)を利用するため、東名高速道路(以下、東名)と新東名を使用することにした。 実際の制限速度を踏まえ、かつ各速度で往復の走行距離を約100kmに合わせるため、下記の5区間を設定した。 A区間: 東名川崎IC(標高47m)ー厚木IC(標高22m) 100km/h、距離27.4km、標高差25m   B区間: 厚木IC(標高22m)ー秦野中井IC(標高107m) 80km/h、距離15.1km、標高差85m   C区間: 秦野中井IC(標高107m)ー御殿場IC(標高454m) 80km/h、距離33.6km、標高差347m D区間: 御殿場IC(標高454m)ー駿河湾沼津SA(標高138m) 100km/h、距離23.3km、標高差316m E区間: 駿河湾沼津SA(標高138m)ー新静岡IC(標高71m) 120km/h、距離47.8km、標高差67m 80km/h巡航区間距離:片道48.7km、往復97.4km 100km/h巡航区間距離:片道50.7km、往復101.4km 120km/h巡航区間距離:片道47.8km、往復95.6km 標高差の多寡による電費の差を確認するため、80km/h区間はあえてB区間(標高差85m)とC区間(標高差347m)に分けている。 100km/h巡航もA区間は標高差25mとほぼ平坦だが、D区間は316mもあり、この2区間の差にも注目だ。 120km/h巡航は確実に電費が悪くなることが考えられるが、各自動車メーカーはBEV化にあたり、ドアハンドルをグリップ式からフラップ式や格納式にしたり、メルセデスはEQシリーズにワンボウ・デザインを採用するなど空力性能を突き詰めており、EQSセダンに至っては量産車世界初のCd値0.20を達成している。 さらに欧州では120km/h以上の速度域での移動の場面も実際に考えられるので、欧州車、中でも特にアウトバーンのあるドイツ車が120km/h電費の「落ち度」が少ないかどうかなど、何か見えてくるものがあるかもしれないと思い、120km/hの電費計測にも臨む。  

TAG: #航続距離 #電費 #電費計測
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VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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