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TEXT:福田 雅敏
ホンダの電動戦略のカギは脱着式可搬バッテリーにあり……現役EV開発エンジニアによる「スマートエネルギーWeek 春」探訪前編[THE視点]

モバイルバッテリーからEVまで対応可能な「ホンダ・モバイル・パワー・パック e:」 「スマートエネルギーWeek 春」内「第13回 国際スマートグリッドEXPO春」が3月15~17日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された。出展社の中には本田技研工業(ホンダ)もあった。その展示内容がユニークだったのでレポートする。 今回の一番の特徴は、ホンダブース内の展示物全てが現在拡販を狙っている脱着式可搬バッテリー「ホンダ・モバイル・パワー・パック e:」(MPP)を電源とした製品を展示していること。その活用事例が今回の展示のコンセプトだ。 まずはその核となる「MPP」のスペックは、バッテリーパック1個あたり50.26Vを発生するリチウムイオン式で、容量1.314kWh/重量10.3kgとなっている。今回は価格も発表されており、8万8,000円(税込)/個となっている。ただしカタログには法人限定販売と書かれていた。理由はバッテリーリサイクルの社会的責任からだという。 そして今回の展示物の中でひときわ目立っていたのが、初公開となった「N-VAN」をベースとしたEVだ。ホンダは昨年12月、「2024年春に「N-VAN」ベースのEVを発売する」と発表していた。しかし今回展示されていた車両は正式版ではなくあくまでもコンセプトカーで「MEV VAN Concept」と名付けていた。 このコンセプトカーの特徴は、MPPを8個搭載しており、総容量は10.4kWhでEVとしては少ない。しかし交換できるのが特徴で、それに要する時間はわずか数分。そのため、交換用バッテリーの用意があればすぐに走り出せるので充電時間が省けるとし、「固定式バッテリーとは異なる魅力と価値の提供を検証する」としている。 クルマの仕様としては、出力14kWのモーターを前後に配置した4WDで、最高速度が70km/h以上、航続距離は75kmと発表されている。2024年春に発売が予定されている量産EVは、床下固定式とのことでバッテリー容量が多い実用的なものになるだろう。 そのほか、ホンダブース内に展示されていたものとしては以下のとおり。 ・MPPを24個同時充電できる充電設備「モバイル・パワー・パック・エクスチェンジャー e:」 ・MPP1個を充電できる専用充電器「パワー・パック・チャージャー e:」。 ・ポータブル電源「パワー・エクスポーター e:6000」とその小型版「パワー・ポッド e:」 ・三輪のEVスクーター「ジャイロ キャノピー e:」 ・電動パワーユニット「eGX」搭載の「レーシングカート」 ・「耕うん機」 ・「小型船舶向け電動推進機」 etc… ホンダのラインナップだけでもこれだけ多彩に展示されていた。 他社へも惜しみなく供給、犬猿の仲とも言われたヤマハ発動機にも 次に目を引くのが、ヤマハ発動機と協業して開発されたパーソナル低速モビリティの汎用プラットフォーム・コンセプト「ヤマハ・モーター・プラットフォーム・コンセプト」だ。なんとホンダのブースにヤマハ車の展示である。 そして建機の展示へと続く。3月14日のEVヘッドラインでも紹介したコマツの電動マイクロショベル「PC05E-1」[詳細はこちら]。これには「MPP」と同時に、ホンダの電動パワーユニット「eGX」も採用されている。 このほか「MPP」を活用した各社のさまざまなコラボレーションモデルが展示されていた。 ・電動バイブレーションローラーのコンセプトモデル(三笠産業) ・電動ハンドガイドローラーのコンセプトモデル(酒井重工業) ・スプリットライトLED投光機 PL-241SLB(デンヨー) ・秋田版スマート農業モデル創出事業「大玉トマト収穫ロボットコンセプト」(デンソー) ・DX-CELLコンセプト(デンソー) etc… あたかもホンダのブースだけで、電動モデルの見本市のようであった。 このMPPにより、建機などが大型の電動工具のようになることで、排ガス・騒音の問題をクリアでき屋内でも使用可能というケースも増えるかもしれない。振動も少ないことから身体への負担も軽減でき働き方改善にもつながる。 電動化により、これまで競合していた企業やホンダとも関わりのなかったであろう企業との間にイノベーションが生まれている。これからもより多くのモデルが、ホンダのMPPを活用して生まれることを願うばかりである。MPPに対する意気込みを非常に強く感じたホンダのブースであった。

TAG: #EV建機 #THE視点 #スマートエネルギーWeek
TEXT:西川昇吾
EVだってもっと自由に楽しめる! CUSCOブランドが提案するEVチューニングの世界

老舗による電動車のチューニング 2月10~12日にインテックス大阪で開催された「第26回大阪オートメッセ2023」の6A号館にはEVゾーンが設けられました。各メーカーのBEVを中心に様々な電動車が展示されていましたが、チューニングパーツメーカーの老舗であるキャロッセは、自社のパーツブランドであるCUSCOパーツを装着したテスラモデル3を展示。BEVとチューニングという珍しいと感じる組み合わせはどうして生まれたのか? 代表の長瀬氏に聞いてみました。 ──キャロッセさんはラリーなどの競技を中心としたチューニングパーツのイメージが強いですが、どうしてEV、またテスラを手掛けようとなったのですか? 長瀬:アメリカや中国、香港などから「テスラ用のパーツはないの?」といった問い合わせが多いんです。日本と違って台数が凄く多いので、そのなかからカスタマイズの需要が生まれているといった印象ですね。 ──サスペンションなどが中心となっていますが、セットアップの方向性などはありますか? ノーマル車でも同じですが、BEVは車重が重くてタイヤサイズも大きいため、硬めのセットアップになることは確かです。しかし、これまでのノウハウを生かして車高を下げつつも乗り心地を重視したセットアップにしています。また、剛性アップに関するパーツも装着していますがこちらは車重が重たい分、より効果が実感できますね。 ──ガソリン車と比べるとあえて変更している部分はありますか? 今のところそういったことはありません。これまでのノウハウを生かした延長線上で開発をしています。 ──パワートレインに関しても何かチューニングを施しているんですか? そこまではまだ……現状では足まわりやボディを中心にパーツを開発しています。 ──車高を変更すると運転支援システムなどが正常に機能するか気になるのですが… 現状エラーなどはまったく出ておりません。とくに問題はないと思います。ただ、このクルマはそこまで車高を落としていないというのもありますけどね。(展示車は15㎜ダウン)

TAG: #カスタム #チューニング #大阪オートメッセ
TEXT:栁 蒼太
電気自動車の商用車「フォロフライ」EV F1 VANを試乗

オートアフターマーケットの活性化を目的とした商談型の展示会「第20回国際オートアフターマーケットEXPO 2023」が、3月7〜9日の3日間、東京国際展示場(東京ビッグサイト)西3・4ホールにて開催された。 記念すべき20回目となる今回は、西4ホール横の屋上展示場にて、丸紅オートモーティブが販売するフォロフライ社製EV商用車「F1 Van」の無料試乗会が開催された。 フォロフライ社とは?丸紅オートモーティブとの関係性は フォロフライ社は、ラストマイル配送に特化した商用EVを開発、中国大手自動車OEMの1社である東風小康汽車に生産委託するファブレス生産し、大手物流会社を中心とした顧客への販売を行う電気自動車ベンチャーだ。資本提携する物流大手のSBSホールディングス(株)が同車両を1万台導入すると発表し注目を集めていた(2023年3月より本格導入の予定)。 また、丸紅オートモーティブは2022年にフォロフライが商用EVの販売を開始した当初より、国内法人顧客へのフォロフライの商用EV導入、充電インフラ提供、アフターサービス体制作りを支援していた。そして、2023年1月末に行われた資本業務提携により、丸紅オートモーティブが取扱う、先進運転支援システム(ADAS)、充電器、アフターマーケット部品といった関連商材と併せてEV導入のソリューションとして提供されている。 フォロフライ社製EV商用車「F1 Van」とは EV F1 VANは、ミニバンサイズの小型バンで積載量が950kgを誇る。LFPバッテリーの容量はおよそ40kWh。航続距離は300km。2023年4月以降、チャデモ規格が導入され急速充電にも対応する。なお、試乗した車両は、デモカーのため、欧州CCS規格のままであった。 デジタルとアナログが混在した操作系 乗ってみると、通常の乗用車と見慣れた運転席周りの光景が目に入ってくる。その一方で、ボタンやウインカー操作、ドアの開閉などをしてみると、全体的に作りが大雑把な感じがした。また、操作にデジタルとアナログが混在していることに慣れない感覚があった。具体的には、エンジン始動やサイドブレーキはアナログな方式にも関わらず、シフト選択は電子制御のダイヤル式になっていたことだ。そして、そのシフト選択には、パーキングレンジがなく、その点も腑に落ちなかった(パーキングレンジは、日本で導入モデルには搭載予定のようだ)。

TAG: #F1 Van
TEXT:栁蒼太
ブレンボ ビオンド EVキット(BREMBO BEYOND EV KIT)から学ぶ、EVに求められるブレーキとは

日本では新車全体の約4%を占めるようになったEV。まだまだ多くはないものの、確実に世の中の重要な役割を担っている。そんなEVが安全に「走る」ことはもちろん大事だが、それと並んで重要なのは確実に「止まる」ということだろう。 今回は、オートアフターエクスポ2023に出展をしていたブレンボ(Brembo)の会場で目にしたEV向けのブレーキを中心にEVのブレーキについて綴りたい。 いろいろな「クルマ」の、いろいろな「止まり方」 クルマの速度を下げる、あるいは止めるためには、ブレーキを使う。そのブレーキにもいくつか種類があり、フットブレーキ、エンジンブレーキ、回生ブレーキ、パーキングブレーキがある。 完全に停止するまでの手法を比べたい。ICEの場合、フットブレーキの要素が大きい。フットブレーキは、ブレーキペダルを踏む足の力をブレーキフルードの圧力に変え、車輪についているシリンダーを押し開き、ブレーキシューやブレーキパッドの摩擦によって制動力を発生させ、停止させる。 他方、EVの場合、ICEで大活躍のフットブレーキのみならず、電気モーターをブレーキとして使用する回生ブレーキが特徴的だ。そして、その回生ブレーキは、日産のe-pedalを筆頭に完全停止までアクセルのオンオフのみで行えるものまで存在する。結果として、運転中のブレーキング動作の多くは電気モーターが実行するというのがEVのブレーキングだ。見方を変えると、従来の油圧ブレーキシステムの使用が大幅に少ないのだ。

TAG: #ブレンボ
TEXT:田中 誠司
マンションの自分の駐車枠でも設置費用および月額費用ゼロ……エネチェンジが「マンション専用車室ゼロプラン」の提供を開始

ENECHANGE(エネチェンジ)株式会社は3月9日、国の補助金を活用した「マンション専用車室ゼロプラン」の提供を開始すると発表した。 居住者専用の駐車枠でも“ゼロプラン”活用可能に “専用車室”とは、マンションの住民等が専有する駐車場枠のこと。従来は来客用等マンションの共用部にあるスペース、つまり不特定多数が利用する可能性がある場所への設置のみ「ゼロプラン」の設定があったが、特定の契約者の駐車枠でも利用が可能になる。2022年11月に発表した、壁に直付けする方式でも設置可能なマンション向け6kW充電器「チャージ3」を利用する。 マンションへの充電器設置には、一般的なケースの場合、管理組合、管理会社、賃貸オーナーが機器費用、設置費用といった初期投資に加えて電気料金を負担しなければならない。「マンション専用車室ゼロプラン」の場合、利用者が1kWhあたり約36円(東京都の場合)の充電費用を支払い、その中から電気代が物件の所有者に還元される。 東京都内で都の助成金の要件を満たしたマンションにおいて本プログラムを利用した場合は、電気料金の基本料金も無料となる。つまりマンション管理サイドでは一切出費なく充電器を設置できることになる。

TAG: #エネチェンジ #充電 #補助金
TEXT:生方 聡
“電動ワーゲンバス”「ID.Buzz」の日本導入が決定

フォルクスワーゲン ジャパンは3月9日、“ワーゲンバス”のEV版である「ID.Buzz」を2024年末以降に日本市場に導入すると発表した。 仕様も価格も未定 フォルクスワーゲンでは、同グループが開発したEV専用プラットフォーム「MEB」を用いたEVを「ID.シリーズ」として展開している。2022年末に日本での販売がスタートしたSUVのID.4もID.シリーズの一員である。 今回、日本市場への導入が発表されたミニバンタイプのID.Buzzは、“ワーゲンバス”としていまなお人気を集めている「フォルクスワーゲン・タイプ2」の再来といわれ、乗用車版のID.Buzzと商用車版のID.Buzz カーゴの2タイプが用意される。ヨーロッパでは2022年11月に販売がスタートしているが、あまりの人気に納車まで長い日数を要している状況だ。 日本でも関心が高いこの注目のモデルを、フォルクスワーゲン ジャパンは2022年12月12日から期間限定で公開。その時点では、イベントの反響を見て導入するかどうかを決定するということだった。それからわずか3ヵ月で、ID.Buzzの日本導入が決定したことになる。 ただし、この日に発表されたのは日本導入が決定したことだけで、日本仕様の内容や価格については現時点では未定とのこと。ドイツでの価格が64,581.30ユーロ(=約930万円、付加価値税込)からとなるが、日本仕様がどのくらいの価格になるのか、大いに気になるところだ。

TAG: #ID.Buzz
TEXT:福田 雅敏
日本EVクラブが電気カート組立教室を開催

3月5日、一般社団法人 日本EVクラブ(代表:館内 端)主催による、子どもゆめ基金助成活動「自動車と地球温暖化の関係を学ぶ」電気カート組立教室が東京お台場の東京国際交流館で行われた。 地球温暖化を考える座学からスタート 4年目となるこの教室では、電気カートを組み立てることで電気自動車の仕組みについて理解し、自動車と地球温暖化の関係をみんなで学ぶことが趣旨となっている。対象者は、小学4年生~中学生となっていたが、小学2年生も参加しており、保護者同伴で、午前、午後の2部制で、合計12組の参加があった。 まずは「地球温暖化と電気自動車の話を聞こう!」という座学から始まる。講師は、日本EVクラブ代表で自動車評論家の館内 端氏である。自動車の出すCO2は、地球温暖化の大きな原因。この講義ではそもそもCO2とは何か?ということから、地球温暖化と自動車の関係を大人も子供も一緒に学ぶ。「子供たちが未来に自動車を使えるようにするにはどうしたらいいか」というテーマで、子供たちにもわかりやすいように30分間の講義が行われた。 いよいよ電気カートの組立へ! 次に、「電気カートの組立を体験しよう!」では、タイヤ、バンパー類、カウル、バッテリー配線(鉛バッテリー)などが事前にバラらされており、それらを組み立てる。まずは構造確認ということで、電気カートの主要部品について講師からそれぞれパーツの説明があり、モーター、バッテリー、モーターを制御するコントローラー、アクセルなどを現物で確認する。簡素な構造の電気カートに触り、パーツの形や重さを感じて、電気カートの原理をリアルに体感していた。 そのあとは、カートの組立の前に、実際の配線の製作作業を行う。今回の教材のバッテリーは鉛式で、カートの左右に2個ずつ計4個が搭載されている。その左右の2個のバッテリー同士をつなぐ配線を実際に作ってみる。まずは銅の配線を覆っている皮むきから。カッターで皮をむき、そこに端子を取り付ける。カシメ工具を使用し端子と配線をカシメて固定。カシメは結構力のいる作業のようで、必死になって行っていた。そして、端子のむき出し部分を絶縁テープで覆う作業まで一通りこなす。   そして、電気カートの組立。3グループずつに別れて、基本的に子供たちが作業する。まずは、外されていた前後のタイヤの空気入れから。空気を規定圧まで入れ、カートにタイヤを装着。工具を使用しナットを締める。次に先ほど製作した配線を2個のバッテリー間をつなぎボルトで留める。ここではバッテリーの端子を傷めないためにトルクレンチを使用する。これで電気が通電したはずだ。 最後に外されていた、サイドカウル、リアバンパー、リアカウルを取り付ける。ここで一通り作業が終わったので、「火」入れ式。講師指導のもと、初めにメインスイッチを入れ、次にサブスイッチを入れ、起動ランプの点灯を確認。そして、おっかなびっくりアクセルを踏んでみる。無事タイヤが回り、ブレーキを踏んでタイヤを止める。ここまでおよそ30分で作業は無事終了。子供たちは大喜びだった!

TEXT:栁 蒼太
MINI Concept Aceman(コンセプト エースマン)が日本初上陸、3月5日まで一般公開も実施

MINIは、3月2日の“ミニの日”に「MINI Concept Aceman」(コンセプト エースマン)を日本で初公開した。このモデルはミニの将来的な姿を示すコンセプトカーである。3日から5日は一般公開される。 MINIの将来を示すモデル 昨年7月に欧州で発表された「コンセプト エースマン」は、MINIシリーズで初となるクロスオーバー・タイプの電気自動車コンセプトカーだ。MINIが将来のブランド特有のドライビング・プレジャーの決め手となると考えているデザインと、技術革新にスポットライトが当てられた。 具体的には、明快で無駄のないデザイン言語「カリスマティック・シンプリシティ」、新しいデジタル・インテリア体験、レザーやクロームのエレメントをまったく使用しない素材を利用することで、新しいMINIの幕開けを告げるものとなっている。 なお、全長4.05m、全幅1.99m、全高1.59mという、ブランドに期待されるプロポーションを備え、空力性能にも長けたボディが将来のMINIを示している。 ドライバーを迎えてくれるフロントエンド 正面から見てみる。まず目につくのが、ヘッドライトとフロントパネル(ラジエター・グリル・エレメント)だ。ヘッドライトは従来の丸型から、独自の輪郭を持つようになった。パネルの周囲は明るい表面で囲まれ、従来の六角形の輪郭はさらに洗練の度を増して八角形とされ、ユニークで印象的な光をつくり出す。なお、パネルは完全に閉じられており、上部にはマトリクスLEDユニットが組み込まれている。 通常フォグランプが装備されるあたりに位置する、赤色のメッシュ時のパーツは、スピーカーとなっている。EVはパワーユニットからの音がわずかなため、安全性能の観点から擬似的に走行音を作り出すべく、車外向けスピーカーを搭載した車種はあったが、それら以外の利用も踏まえられている。 これらのフロントパネルとスピーカーは、車両に人が近づくと前方の光によって追跡したり、音量がクルマとユーザーとの距離に連動したインタラクティブなサウンドが流れるという、カミングホーム機能に利用されている。 モダンながらも60年代を感じさせるサイドビュー サイドのシルエットは、MINIの元祖である、オリジナル・ミニのデザインを尊重している。その一方でボディ下端のワイドなサラウンド、力強いシルエットのホイール・アーチ、大径ホイール、印象的なルーフ・ラック、 アンダーライド・プロテクションなどを備えており、市街地走行に適したクロスオーバー・タイプとして、堅実でオールラウンドな特徴が強調されている。 タイヤに関しては、前後ともにピレリ製のP ZERO 245/40R20 99Wを装着している。同社のMINI TIRE CATAROGUEを見る限り、コンセプトカーが装着していたタイヤは最大サイズのものとなっている。よく見ないと気づかないかもしれないが、ホイールのリム中央には、三角形の輪郭が表現されており、スポークに視覚的な深みとダイナミズムを持たせている。 自分らしさを表現できるリアエンド リアでは、印象的なテールライトに着目したい。ここにもフロントのラジエター・グリル・エレメントやヘッドライトの内側と同様、マトリクス LEDユニットが採用されており、状況に応じて異なる照明シナリオが可能となっている。これらのライトの点灯の仕方を制御することで、ブレーキランプをユニオン・ジャック模様に表示できる。MINIデザイン責任者オリバー・ハイルマーは、将来的にはドライバーが自身でテールランプの表示形式をカスタマイズすることが実現すると話していた。

TAG: #MINI #エースマン
TEXT:栁 蒼太
[大阪オートメッセ2023]エアコンついてます! 快適なミニマムモビリティ ―KGモーターズ―

「第26回大阪オートメッセ2023」(2月10~12日、大阪府・インテックス大阪)に設置された「EVゾーン」には多種多様なEVが集った。今回は、愛らしいルックス、これからの発展が楽しみなモビリティに注目したい。 小さな乗り物、大きな魅力 KGモーターズ株式会社 が開発している1人乗りの小型の電気自動車。丸目のレトロなフロントライト、前後対称のデザインなど、目を奪われるポイントが多い。 魅力あふれるのは見た目だけではなく、所有面にもある。車両規格が第一種原動機付自転車のため、車検不要、税金や保険も原付と同等の維持費で所有できる。また、充電は家庭用の100Vコンセントで可能で、5時間の充電で航続距離は100kmと、1人の近場のお出かけにぴったりな一台だ。 ユニークなコストカット 前後対称であることによって、部品のパーツを大幅に削減できるそうだ。例えば、ドアパネルはボディラインを左右で同じにすることによって、取手の切り抜きの場所を入れ替えるだけで対応することができる。 「快適さ」は、カットしません 開発を行っているKGは「1人で快適に安全に移動できる乗り物」の最小単位となるようなモビリティを作ろうとしている。最近ミニマムモビリティの界隈は動きが活発になっているものの、あくまで簡便に移動することのみにフィーチャーすることが多い。しかし、同社は「快適に」というのが重要なポイントとしている。そのため、「屋根、ドア、空調付き」というのは絶対に譲れない条件だそうだ。 小さめの荷物であれば、運転席の前後対称の空きスペースに載せることもできる。前部はエアコンの機材や各種の機器が埋まっているため、軽くて小さな荷物のみ載せられるが、頻繁に取り出す小物などを収納することも可能だ。また、センターポジションに運転席が備え付けられているため、独特の走る楽しみを体感することができる。 YouTuberから世界に通用する自動車メーカーに期待 開発を進めているのは、広島発のスタートアップである、KGモーターズだ。2022年3月ごろから開発を始め、10月ごろからプロトタイプの作成、といった非常に早いペースで開発を進めて、2025年の発売を予定している。 同社の開発の模様は、YouTube チャンネル「【KG Motors】くっすんガレージ モーターズ」で見ることができる。新しい乗り物を製作する様子が見られるのは、非常にワクワクするものだ。YouTuberが本気で作る次世代チョイ乗りモビリティに注目が集まる。 主要スペック 全長 2,450mm 全幅 1,090mm 全高 1,500mm 定格出力 0.59kW(0.8ps) 最高出力 5kW(6.8ps) 航続距離 約100km 充電時間(AC100W) 5時間 乗車定員 1名

TAG: #KGモータース #大阪オートメッセ2023
TEXT:栁 蒼太
[大阪オートメッセ2023]ブレイズ(BLAZE)の超小型モビリティ勢揃い!

大阪オートメッセの「CARトップ&THE EV TIMESゾーン」の一角に、株式会社ブレイズ(BLAZE)が超小型のEVモビリティを出展した。ブレイズは愛知県に本社を置く、EV開発を行う企業で、スマートなものから遊び心をくすぐるものまで、様々な公道走行ができるEVモビリティを手がけている。今回の展示では、小型折りたたみ電動バイクからワイルドな見た目のミニカーまでバラエティ豊かなラインナップを展示していた。 折りたたみもできる!電動バイク「ブレイズ スマートEV」 小型折りたたみ電動バイク。ものの数秒で折りたたむことができる。車両重量が18kgであるため、片手で軽々と持ち運ぶことはできないが、コンパクトに収納できるのは、非常に魅力的だ。なお、メーカーの想定する用途としては、街乗りでのラフな利用のほかに、車に積み込み、移動先で取り出してレジャーや観光に使うという利用も見込んでいる。まさに、それらのシーンには、バッチリ叶うだろう。 筆者は、大学の自動車部に所属している関係で頻繁にサーキットや走行場に行くことがあって、広い会場を移動する際に利用している人をよく見かける。その度に、颯爽と移動する姿を見て嫉妬している。ちなみに、この電動バイクの最高速度は30km/hだ。一見、遅く思えるが、実際に乗ってみるとそのスピード感は相当だという。 さらに、まだまだ魅力は止まらない。ユニークな装備も目白押しだ。任意のスピードで速度を維持するクルーズコントロール、盗難防止のセキュリティアラームが装備されている。また、Bluetoothスピーカーが搭載されており、スマホとの接続により音楽を楽しんだりナビの音声ガイドを聞くこともできる。また、USBポートも備えていて、スマホの充電も可能だ。 車両規格は原付一種で、公道を走る場合には原付免許とヘルメットの着用、自賠責保険への加入が必要となる。家庭用コンセントから約3.5時間で満充電となり、走行可能距離は約30km。価格は19万7,780円(消費税込)。

TAG: #ブレイズ #大阪オートメッセ2023
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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