コラム 記事一覧

コラム コラム
TEXT:桃田健史
中国のEVバブルは終了! 雨後の筍のごとく登場したEVベンチャーは淘汰され「ホンモノ」だけが残る

EVメーカーの競争が激化 中国のEVといえば、BYDを筆頭として日本ではあまり馴染みのないさまざまなEVブランドが混在している。だが、そうした新興EVメーカーの栄枯盛衰はあまりにも早い。少し前まで人気を誇っていたはずなのに、いつの間にかブランド自体が消滅したり、またメーカーそのものが経営破綻するケースもある。 背景にあるのは、過剰な競争環境だ。 時計の針を少し戻すと、中国でのEV市場が産声を上げたのは、いまから15年ほど前だ。2000年代後半から2010年代にかけて、中国政府はEV事業の推進を国家戦略として打ち出した。 最初は、3つの国際行事をターゲットとした。2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博、そして同年に広州で開催されたアジア競技大会だ。 これら3大行事では、都市部でのEVバスやEVタクシー、さらに会場内での小型EVなどを導入。中国の自動車産業が新世代に移行するという印象を、中国の国内外に向けて強く発信した。 これを土台として、続く2011〜2015年に国家戦略「第12次5ヵ年計画」の中核に、EVの開発と普及を掲げた。 その実現に向けては、海外メーカーとの合弁企業におけるEV共同開発を中国政府として後押ししたり、そこで集積した技術を国家機関のなかで分析・解析した。そのほか、中国の国家自動車研究所である中国自動車技術研究センター(CATARC)などが、グローバルEV市場の状況を把握しながら、独自にEV研究開発を進めた。 そうしたなかから、乗用車向けのEVベンチャーになるような技術の芽が育ち始めた。また、中国におけるEV市場の将来性を見込んで、欧米メーカーのEV研究開発者らが中国系の投資家などから資金を調達して、EVベンチャーを設立する動きも加速した。 こうして中国におけるEVベンチャーが活躍するステージが整い始めたころ、欧州を起点とするESG投資に起因するEVシフトの大波がグローバルで一気に広がった。 ESG投資とは、従来のような財務情報だけではなく、環境(エンバイロメント)、社会性(ソーシャル)、そしてガバナンスを考慮した投資のことだ。 このESG投資バブルが中国EV市場にも大きな影響を与えたのが、2010年代後半から2020年初頭にかけてだ。 だが、ESG投資バブルが弾けるのと時を同じくして、中国の国内経済が低調となり、結果的に中国のEVベンチャーの淘汰が進んだといえよう。 中国EVベンチャー乱立時代は終止符を打ち、真の技術力と経営能力、さらに政治力をもつブランドのみが生き延びている。

TAG: #メーカー #中国
TEXT:山本晋也
まだCO2うんぬんじゃない80年前にEVが走っていた! 日産リーフのご先祖「たま」が想像よりスゴイクルマだった

日産のEVのルーツ「たま」 EVシフトの減速がメディアで報じられることもある昨今ですが、世界的なカーボンニュートラルトレンドが進んでいく限り、モビリティのゼロエミッション化は避けられないものであり、世界は確実にEVシフトを受け入れ、進めていくであろうというのが中長期的な見方なのは変わりません。 カーボンニュートラルが求められるのは地球温暖化・気候変動の対策において人間社会ができる有効かつほとんど唯一の方法がCO2排出量削減であるからですが、それとは別の視点でEVのニーズが高まった時代もありました。 それが第二次世界大戦後の日本です。 1945年の終戦からしばらく、日本では占領軍による軍需物資統制が敷かれていました。そのなかには原油も含まれていましたから、深刻な石油不足に陥ることになります。 一方、山の多い日本では水力発電によって電力供給をすることは可能です。そこで小さなモビリティとしてEVが解決策として求められたのです。 その時代に生まれたEVの代表作といえるのが「たま」です。製造したのは「東京電気自動車」で、のちに日産自動車に吸収合併されるプリンス自動車の前身となる会社です。つまり、リーフやアリアなど、日産EVのルーツは「たま」にあるともいえるのです。 多摩地区に工場があったから「たま」という名前にしたというエピソードも微笑ましいところですが、後ろヒンジのドア、丸目ヘッドライト、幅の狭いタイヤといった要素からなる丸っこいフォルムは、令和の感覚でみると可愛いもので新鮮に思えるかもしれません。

TAG: #たま #たま電気自動車 #日産
TEXT:高橋 優
テスラ・モデルYをいま買うと5年間充電無料!? MC前の在庫限りだけど計算してみたら驚くほどお得だった!

2025年3月までの納車でスーパーチャージャーが5年間無料 テスラジャパンがモデルYの在庫車両に対して5年間のスーパーチャージャー無料特典を付与しました。このキャンペーン内容の詳細について、2025年3月31日までに納車を完了できる場合に限り、現在ラインアップされているモデルYの在庫車両に対して、納車後5年間のスーパーチャージャーの無料充電特典が付与されます。 ここでキャンペーンによってどれほどお得に運用できるのかを実際に計算してみましょう。 まず月間走行距離が1500km(年換算で1.8万km)の場合、 ・モデルYの平均電費は、冬における電費悪化や乗る前エアコンやセントリーモードを使用すると仮定して、年間平均で5km/kWh程度 ・充電ロスを考慮に入れると、実際に課金される電力量は約330kWh程度 ・電気料金は自宅充電の場合1kWhあたりおおむね30円 ・月間の電力料金は約9900円(年間でおおよそ12万円) ・スーパーチャージャーの無料充電特典の期間が5年間 となります。 よって仮にすべての充電をスーパーチャージャーのみで運用することになった場合、5年間でおよそ60万円もの充電料金を節約することが可能となります。 次に、この電力料金の節約がガソリン車に換算するとどれほどのインパクトになるのかを計算していきましょう。今回比較対象にしたのがトヨタのミッドサイズSUVであるRAV4です。とくに燃費性能で優れるRAV4のハイブリッド車の場合、 ・EPA基準における燃費性能は39MPG。およそ17km/Lと換算可能 ・2025年1月のレギュラーガソリン価格は平均165円程度 ・年間走行距離が1.8万kmの場合、年間のガソリン代はおよそ17.5万円 となります。 よって5年間におけるガソリン代は87.4万円が必要となります。 もちろん、この計算方法の場合、RAV4では冬における燃費性能の悪化を考慮しておらず、さらに乗る前エアコンに代替する乗る前アイドリングの使用は想定せず、しかもテスラのセントリーモードに代わる機能は実装されていないという点は押さえておく必要があります。そしてその場合、5年間で車両を動かすのに必要なエネルギーコストの差が、無料充電特典を有するモデルYとRAV4で最大150万円程度つくことになるわけです。 モデルYはRAV4ハイブリッドと比較して圧倒的に航続距離が短いという点は挙げられるものの、 ・車両サイズがひとまわり大きく居住空間や収納スペースがより広く確保できている ・動力性能でさらに優れている ・内燃エンジンが搭載されていないことで車内の振動対策や静粛性が優れている ・音響システムやレベル2ADAS性能をはじめとして標準装備内容が充実している ・OTAアップデートに対応しているため、インフォテインメントまわりのUIや車両制御に関連するファームウェアを常に最新の状態にキープすることが可能 などの長所があります。 これらの観点で、モデルYはRAV4よりもユーティリティに優れており、その上で5年間所有した際のエネルギー補充代だけで150万円差がつくとイメージしてみれば、まさに今回のモデルYの在庫車両のコスト競争力の高さを容易にイメージすることができるでしょう。

TAG: #スーパーチャージャー #モデルY
TEXT:琴條孝詩
「30分で80%」って聞いてたのに半分しか充電されない……は普通に起こりうる! EVの急速充電の真実とは

EVの充電速度は条件によって変わる 電気自動車(EV)の普及が進んでいる。ガソリン車に比べて環境に優しく、ランニングコストも低いEVは、まさに次世代のクルマのスタンダードとなりつつある。 そんなEVを選ぶうえで、多くの人が気にするポイントのひとつが「充電時間」だろう。ガソリン車であれば、ガス欠寸前でも数分の給油で再び走り出すことができる。しかし、EVの場合は、充電に少なからず時間がかかってしまうのが現状だ。 EVには“普通充電”と“急速充電がある。一般的に、EVでは「30分で80%まで充電可能」といった謳い文句を目にする機会も多い。 これは“急速充電”の場合だ。しかし、これには注意が必要だ。じつは、メーカーが提示する急速充電時間は、あくまで「理想的な条件下」での数値なのである。今回は、その背景にある技術的な要素と、ユーザーが知っておくべきポイントを解説しよう。 <「30分で80%」は最良の条件下での数値> EVの急速充電において、メーカーが公表する充電時間は、もっとも理想的な条件下での値である。具体的には、以下の条件が整った状況での測定値となる。 まず、バッテリーの温度が最適範囲内ということ。実際のEVでは、バッテリー管理システム(BMS)が搭載されており、バッテリーの温度を監視し、必要に応じて冷却または加熱を行うことで最適な温度を維持する。しかし、寒い地域の早朝などは外気温が低すぎて、理想的なバッテリー温度になりきらないこともある。 次に、充電開始時のバッテリー残量。「30分で80%」は概ね20%前後から充電した場合だ。ほぼ0%に近い充電残量だと当然30分で80%まで充電できないことが多くなる。また、急速充電器が最大出力で作動していることも重要ポイントだ。真夏の暑い日は出力制限をかけて出力を落としている急速充電器もある。 これらの条件が揃わない場合、充電時間は大幅に延びる可能性がある。また、バッテリー残量が80%を超えると、バッテリー保護のため充電速度が自動的に低下する仕組みとなっている。とくに90%以上になると、充電スピードは大幅に遅くなるので、急速充電で100%にしようなどとは思わないほうがいい。時間とお金の無駄である。通常100%にするのは、自宅での普通充電か、そうでなければショッピングモールの無料の普通充電で行ったほうがいい。

TAG: #充電 #充電速度
TEXT:桃田健史
EVの先行きはわからないが気がつけば選び放題! いまの日本は輸入車だけで7ブランド136車種ものEVが買える!!

輸入電動車は現在7ブランド・136モデル 最近、日本でもEVラインアップが一気に増えた。そう感じている人が少なくないだろう。とくに、輸入車でのモデル拡充が目立つ。 たとえば、11月中旬にはJR東京駅周辺に輸入車ブランドのEVや燃料電池車など数多く展示されたり、また筆者もドライバーとして参加したユーザー向けの公道試乗会が実施された。これは、輸入車関連企業がつくる業界団体、日本自動車輸入組合(JAIA)が実施した「JAIAカーボンニュートラル促進イベント in 東京」だ。 その際、JAIAが提示したデータが興味深い。同イベントが開催された約4年前の2020年10月に電動車は、JAIA登録ブランドのうち10ブランドで20モデル。それが、2024年6月末時点で7ブランド・136モデルと急激に拡大している。 そうしたモデルは、コンパクトカーから大型SUV、さらに超高価格のスポーツカー、さらに二輪車など多種多様だ。 また、JAIAの上野金太郎会長によれば、「2024年上半期でJAIAの電動車販売台数が初めて1万台の大台を超えた」という。シェアで見ると16.7%。ただし、ブランド別で、しかもEVに限定した販売比率についてはJAIAとして公開していない。 また、グローバルにおけるEVシェアはどうなっているのだろうか。 これについても、メーカーやブランドによって、それぞれで電動車の定義が若干違うこともあり、EVに限定したシェアを抽出することは現時点で難しい。 そこで、市場全体での状況についてデータを紹介しておく。 欧州オーストリアの自動車関連大手のAVLが、日本国内で9月に実施したシンポジウムで公開したデータがある。 それによれば、7月時点でグローバルでのEV(及び燃料電池車、レンジエクスタンダー)の販売比率は14.4%だ。エリア別で見ると、やはりもっとも販売比率が大きいのは中国だ。中国で言うNEV(新エネルギー車)の販売比率は23.6%に及ぶ。 2010年代に世界一の自動車生産・販売国となった中国では、政府主導のNEV政策を推進してきた効果が大きい。 次いで、欧州が11.1%。ただし、欧州連合の執務機関である欧州委員会がこれまで推進してきた欧州グリーンディール政策における電動化関連法案が宙に浮いている状態であり、こうした販売比率が今後、さらに減少する可能性も否定できない。 メルセデス・ベンツやボルボなど、自社のEVシフト戦略を見直す動きもあるなか、メーカー各社の今後のEV販売比率の変化を予想することは難しい。

TAG: #EVシフト #普及
TEXT:御堀直嗣
クルマの屋根をソーラーパネルにしたらタダでずっと走れるEVができるんじゃ……が現実的じゃない理由

プリウスPHEVやbZ4Xに採用されている 再生可能エネルギーの普及へ向け、ソーラーパネル(太陽電池)への期待は大きい。最近は、ペロブスカイト太陽電池の話題が出て、日本政府は、2040年までに原子力発電20基分相当の普及を目指すと表明した。 一方、たとえば屋根に装備したソーラーパネルでクルマが走れるようになるかというと、簡単ではない。それでも事例はあって、現行プリウスPHEVやトヨタの電気自動車(EV)bZ4Xは、ソーラーパネルを屋根に装備した仕様を設けている。 プリウスPHEVは1日の発電で6.1km走行でき、bZ4Xの場合は、年間で1800km走行できる電力を発電できるとする。たとえば1年365日で割ると、1日4.9km平均走れることになる。そのために投じる注文装備価格は、どちらも28万円だ。 一般に、ソーラーパネルの発電効率は約20%とされてきた。これに対し、ペロブスカイト太陽電池は最高で33%以上ともいわれる。時代とともに、素材の新たな研究などで性能が高まるとともに原価低減への動きも実用化へ向けた重要課題である。 ペロブスカイトに期待が集まる理由のひとつが、素材が柔らかく曲げやすいため、これまでのソーラーパネルのように硬い板状でなくても使え、さまざまな形状の表面に適用すると、いろいろな場所で発電できるようになることだ。当然ながら、曲面で構成されるクルマの屋根や、車体側面などにも適応できる可能性はあるだろう。 とはいえ、発電効率を最大にできるのは、太陽の光が直接あたる部分の話であり、太陽光が斜めに当たるとか、影になる面は発電効率が落ち、また発電しない状況もあり得る。 さらに、晴天の日中であれば発電できるだろうが、曇り空になったら発電量は落ち、夜はどうするのか? クルマの利用は、天気のよい日の日中だけに限らない。また、梅雨の季節や秋の長雨、冬の降雪時期はどうするのか? ソーラーカーレースに出場する車両が、畳のような表面の屋根にソーラーパネルを張り巡らせ、乗れるのはひとりといった姿で、自転車のような細いタイヤであるのは、ソーラーパネルが発電できる電力に制約があるからだ。それを4~5人乗りの乗用車や、屋根が平らとはいえパネルトラックなどにソーラーパネルを用い、その電力のみで移動するのは容易でない。 それより、建物の屋根はもちろん、あらゆる建造物に適応できるペロブスカイト太陽電池が普及する折に、それで発電した電気をEVに充電して走らせるほうがより現実的ではないだろうか。 たとえば、ドイツのアウディの急速充電設備であるチャージングハブでは、設備の屋根に太陽光発電を用い、系統電力に加えて充電の電力を補っている。 EVに象徴される電気の時代は、一個の製品だけで課題を解決するのではなく、適材適所、周辺のインフラストラクチャー(社会基盤)を含めた設備の総合的な活用で利便性を高め、適正価格で快適な暮らしや移動ができる道を探るべきではないだろうか。

TAG: #ソーラー #ルーフ #充電
TEXT:高橋 優
急速充電器使用時の充電性能はやや不満! ヒョンデIONIQ 5 Nをガチで使い倒してわかったマルとバツ

IONIQ 5 Nの性能を全方位チェック! 韓国ヒョンデのハイパフォーマンスEVであるIONIQ 5 Nで恒例の航続距離テストと充電性能テストを行いました。通常のIONIQ 5と比較してどれほどのEV性能を実現することができたのか。リアルワールドにおける航続距離や充電スピードを詳細リポートします。 *航続距離テスト まず、航続距離テストの前提条件は以下のとおりです。 ・GPSスピードの平均車速が時速100kmになるように調整 ・途中ノンストップ ・充電残量100%までサービスエリア下り線で充電したあと、途中のインターで折り返して、同じサービスエリア上り線まで戻ってくる。充電残量は10%以下まで減らし切る ・車内の空調システムは基本的に21℃オート。一部車種で温度調整あり(今回のIONIQ 5 Nの場合は22℃オートに設定) ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のIONIQ 5 N・21インチ純正タイヤ装着の場合はGPS距離比で1.7%の下振れ) 結果:駿河湾沼津SA下り→大府IC→清水PA上り ・走行距離:387.4km ・消費電力量:100%→6% ・平均電費:5.19km/kWh(192.8Wh/km) ・外気温:23℃〜25℃ 航続距離テストの結果から、充電残量100%状態からSOC0%になるまで、412kmを走破可能であることが確認できました。 *ハイスピードテスト 次に、ハイスピードテストの前提条件は以下のとおりです。 ・GPSスピードの平均車速が時速120kmになるように調整 ・途中ノンストップ ・車内の空調システムは基本的に21℃オート。一部車種で温度調整あり(今回のIONIQ 5 Nの場合は22℃オートに設定) ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のIONIQ 5 N・21インチ純正タイヤ装着の場合はGPS距離比で1.7%の下振れ) 結果:駿河湾沼津SA下り→新静岡IC→駿河湾沼津SA上り ・走行距離:96.3km ・消費電力量:90%→65.5% ・平均電費:3.97km/kWh(252Wh/km) ・外気温:23℃〜23℃ ハイスピードテストの結果から、充電残量100%状態から空になるまで、310kmを走破可能であることが確認できました。

TAG: #充電 #長距離
TEXT:すぎもと たかよし
同じ中身とは思えない見た目! 日産サクラと三菱eKクロスEVをデザインのプロが比較分析した

両社の「らしさ」を組み合わせたeKクロスEV ガソリン仕様の軽自動車ではボディを共有する日産と三菱ですが、好評の軽EVではサクラに対してeKクロスEVと独自の展開を図っています。その走りの違いも気になりますが、デザインの違いも興味のあるところ。そこで、今回はグループ内2台の軽EVのエクステリアの違いに迫ってみたいと思います。 まずはeKクロスから。eKワゴンをSUVテイストのクロスオーバーモデルに仕立てた同車ですが、ご存じのとおり、そのeKワゴンは先代の3代目から日産との合弁会社であるNMKVで企画・開発、日産では初代デイズとしてラインアップされています。 それまでバッジエンジニアリングに徹していた日産ですが、いよいよ本格的に軽の開発を行うに当たって提示したのは「普通車」のようなエクステリアデザイン。とりわけ、ボディサイドのキャラクターラインは従来の軽では見られなかった「深さ」をもち、強い躍動感を表現しました。 2019年に発売された現行型は、プラットフォームやエンジン、CVTなど主要コンポーネントを刷新した意欲作ですが、デイズ(2代目)、eKワゴン(4代目)とも基本的なスタイリングは先代を引き継いでいます。 たとえば、eKワゴンのデザインコンセプトは「THE CUTE CHIC(キュート・シック)」で、大らかで張りのある曲面に活き活きとした躍動感を与えたもの。新型でも流れるようなキャラクターラインが大きな役割を果たしています。 そして、SUVテイストであるeKクロスのデザインコンセプトは「THE CUTE BEAST(キュート・ビースト)」。可愛らしさと野生という相反した要素を両立させるのが、三菱自慢のデザインフィロソフィ「ダイナミックシールド」です。垂直のメッキバーや上下2段構造のランプなどの迫力ある造形は「クロス」独自の顔を作り出しました。 つまり、EVを含めたeKクロスは、日産らしい普通車感と三菱らしい力強さが融合したエクステリアといえるのです。

TAG: #デザイン #新車 #軽EV
TEXT:桃田健史
日本はクリーンな「再生可能エネルギー」による発電を倍増の予定! できればスゴイことだが世間は受け入れるか?

温室効果ガスの大幅削減は実現するのか? 再生可能エネルギーは、社会にとって重要だ。世間でそういわれるようになって久しい。EVなど次世代電動車についても、再生可能エネルギーを活用することで、地球温暖化の抑制など地球環境にプラス効果があるとされている。 ところが、日本ではこれまで、再生可能エネルギーの拡大スピードがけっして早くなかった。たとえば、再生可能エネルギーの代表格とされる太陽光発電については、日本で2009年11月に「余剰電力買取制度」が始まった。その後、一般的にFIT制度と呼ばれることが多い「固定価格買取制度」に事実上、移行したという経緯がある。 これに伴い、一般家屋で屋根に太陽光パネルを設置したり、空いた土地に太陽光パネルがずらりと並ぶ風景が当たり前という感覚をもつ人が着実に増えた。 だが、買取価格が段階的に下がり、買取期間の満了によって、いわゆる「卒FIT」が増えたことで、再生可能エネルギーに対する世間の見方も沈静化した印象がある。 また、一部地域の大手電力会社では、太陽光や風力など再生可能エネルギーで発電した電力に対する系統連系の度合いを大幅に制限する、といった経営方針を打ち出す場合もある。 一方で、岸田政権下での国会の議論では、日本では今後、生成AIなどの技術進化によってデータセンターの増大における電力需要拡大などを理由として、原子力発電を含めて電力量全体の拡大が必要という議論があった。 そうした考え方が、2021年10月に閣議決定された第六次エネルギー基本計画に盛り込まれた。 ところが、それ以降から現在(2024年末)にかけて、グローバルでは地域紛争や大国での政権交代などさまざまな要因から、エネルギー安全保障や地球環境対策に関する議論に変化が生じている。 これを受けて、2024年12月に公表された、第七次エネルギー基本計画(素案)では、総論として、今後の電力需要増加に伴い、日本経済の成長機会を失うことはあってはならないとし、そのためには、再生可能エネルギーか原子力かといった二項対立的な議論は避けるべきと記載されている。その上で、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底することを目指すとした。 同素案の参考資料として、2040年度におけるエネルギー受給の見通しを示している。それによれば、日本のエネルギー自給率は、2023年度(速報値)で15.2%で、これを2040年度には3〜4割まで引き上げる。電源構成としては、再生可能エネルギーを22.9%から4〜5割への倍増。原子力についても増加し、8.5%から2割程度へ。 一方で、火力は68.6%から3〜4割への縮小させる計画だ。 これにより、CO2を中心とする温室効果ガス削減割合が大きく変化する。具体的には、2013年比で2022年度実績は22.9%だったが、2040年度には73%と高まることを目指す。 こうした国の政策が予定通り実現すれば、再生可能エネルギーの活用は拡大することにはなるが……。果たして、実社会における受け止めはこれからどうなるのだろうか?

TAG: #C02 #再生可能エネルギー
TEXT:山本晋也
EVには見たことがないヒューズが使われている! プロ以外交換御法度なEV用ヒューズとは

電装系トラブルの拡大を防ぐパーツ EVに限らず、従来からのエンジン車に乗っているユーザーにとっても「ヒューズ」という部品は馴染みがあるのではないだろうか。 基本的な理解としては、特定の電気回路が短絡(ショート)したときや過電流(オーバーカレント)が流れたときに回路を守り、全体としての大きなトラブルを防ぐべく、電流を遮断する役割を持ったパーツだと認識しておけばいいだろう。 昨今のクルマでよく見るのは赤・青・黄色などの板状になっている「平型ヒューズ」だ。エンジンルームやインパネ裏などのヒューズボックス内には、回路ごとにわけられたヒューズが刺さっており、電装系が作動しないなどのトラブル時には、該当するヒューズを確認するのがトラブルシュートの基本となっている。 ヒューズは過電流によってエレメントが溶けることで電流を遮断する仕組みになっているため、ヒューズを外してみれば、“切れている”かどうかが目視できる。ちなみに、突発的な過電流などでヒューズが切れたときには、ヒューズを交換することで電装系の機能は復活するが、ヒューズを交換しても直後にまた切れてしまうことが多い。後者の場合は電気回路のどこかでショートしている可能性が高く、それ自体を修理する必要があると判断できる。 さて、そうした12V電装系向けのヒューズが色分けされているのは、電気回路によって要求される容量が異なるからだ。たとえば赤は10A対応で、青は15A、黄色は20Aとなっている。回路ごとに適切なヒューズが使われているため、色(容量)を変えることはご法度であることも、ご存じだろう。

TAG: #ヒューズ #部品
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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