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TEXT:高橋 優
ソニーホンダのEV「アフィーラ1」は値段とスペックを見ると厳しくない!? テスラやライバルとの単純比較ではぶっちゃけ不安

2種類のグレードを用意 ソニーホンダが初の量産車であるアフィーラ1を正式発表しました。そしてアフィーラ1のEV性能から判明した日本メーカーの現状を分析します。 まず、ソニーとホンダが合弁して立ち上げたソニーホンダモビリティは、すでにアフィーラと名付けられたコンセプトモデルのEVを発表しています。テスラの充電規格であるNACS規格を採用するなど、市販車バージョンのEV性能に注目が集まっていました。 そして、1月のCESにおいて正式発表されたアフィーラ1について、車両サイズや主要EV性能、そしてソニーが手がける自動運転システムやソフトウェアの一部機能が公開されました。競争力を競合のEVと徹底比較していきましょう。 まず、アフィーラ1は、エントリーグレードのOriginと上級グレードのSignatureという2グレード展開となります。Signatureグレードでは専用の内外装カラーを選択できたり、21インチホイールや後席用12.9インチタッチスクリーンがふたつ搭載されるなど、装備内容がより充実しています。 また、納車が優先されるのはSignatureであり、北米においては2026年中旬に納車がスタート。日本国内でも2026年末までに納車がスタートします。対するOriginの納車スタートは2027年にずれ込んでしまいます。 さらに、北米市場でアフィーラ1を購入できるのは、当初カリフォルニア州に在住しているユーザーに限定されることも発表されました。順次それ以外の州でも発売を予定していると発表されたものの、実際の反響であったり需要を見極めてからという流れになりそうです。 次に、EV性能について、91kWhのバッテリーを搭載して前後にそれぞれモーターを搭載したAWDグレードを標準設定。そして、EPA基準で航続距離483kmを確保しました。また、充電性能は最大150kW級の急速充電に対応し、北米仕様・日本仕様ともにテスラのNACS規格を採用することで、テスラスーパーチャージャーを充電アダプターなしに使用可能となります。 それでは、このアフィーラ1の直接の競合車種となるであろうテスラ・モデルSおよびエグゼクティブセダンとして競合関係となるLucid Airとを詳細に比較分析していきたいと思います。 まずバッテリー容量について、アフィーラ1の91kWhというバッテリー容量はいたって標準的なバッテリー容量です。Lucid Air Touringは92kWhとほぼ同等のバッテリー容量であり、テスラ・モデルSにも100kWhが搭載されています。 そして、航続距離と電費性能という点について、Air Touringの場合、92kWhバッテリーでEPA基準653kmを確保しています。つまり、アフィーラ1はAirとほとんど同じような電池容量を搭載しているにもかかわらず、EPA基準で170kmも航続距離が短く、電費性能でまったく勝負になっていないのです。 さらに懸念するべきは充電性能です。確かにNACS規格を採用しているという点は、北米と日本でEVを販売する上で重要であるものの、その充電出力は最高でも150kWと、モデルSやAir Touringの250kWと比較すると劣ります。 おそらくアフィーラ1に採用されるプラットフォームやバッテリー、BMS、およびパワートレインの多くが、アキュラZDXと共有しているのではないかと推測しています。というのも、ZDXには102kWhというバッテリー容量が採用されており、ホンダのオハイオ工場で生産されることを加味すると、バッテリーに関連するプラットフォームはZDXなどと共通化し、そのバッテリーセルの数を調整しているだけなのではないかと考えられるからです。 さらに、ZDXのAWDグレードでは、前後モーターによって得られる最高出力は360kWと、じつはアフィーラ1とまったく同じスペックです。よってアフィーラ1は、EVの主要コンポーネントを、GMと共同開発したアキュラZDXと多くを共有しているのではないかと推測可能なわけです。

TAG: #AFEELA 1 #ソニーホンダ
TEXT:山本晋也
ユーザーには見えないクルマがほとんど! EVの「バッテリー劣化度合い」を示す「SOH」ってなに?

重要なのは「SOC」ではなく「SOH」 EVについては、自動車好きの間でも賛否両論といった状況なのは、ご存じのとおり。そして、EVが批判される要因のほとんどは、バッテリーに充電した電力によって走るという基本的な部分に起因するものが多い。EVに対するネガティブな評価をまとめると「バッテリーが問題だ」といえるだろう。 たとえば、エンジン車や水素燃料電池車の燃料補給に比べて、EVは充電時間が長いといった意見は、現状のバッテリー性能に対する批判ともいえる。 また、ハイブリッドカー(HEV)が普及したてのころから、よくいわれてきた電動車に対する不満として、「バッテリーが劣化する」といったものがある。バッテリーが劣化すると本来の性能(航続距離や最高出力)が出ないばかりか、そのリペアには多大な費用がかかる。そのため、トータルでみると電動車は経済的でないといった批判は、ある意味で定番だ。 たしかに「HEVのバッテリーを交換したら50万円以上かかった」、「EVのバッテリーは200万円以上するから長く乗れない」といった都市伝説的ウワサを見かけることは多い。ただし、実際に何十万円、何百万円も出してバッテリーを修理したというオーナーの不満を目にすることは、ウワサを見かけるほどは多くないのも事実。 なぜなら、電動車のバッテリーは、自動車メーカーの長期保証対象となっているからだ。 メーカーや車種によって保証期間は異なるため、ご自身の愛車の保証内容については各自で確認してほしいところだが、概ね「8年・16万km・70%」というのがバッテリー保証の基準となっている。 保証期間は新車販売から8年以内、走行距離は16万km以下、そしてバッテリー容量が70%を切ると保証の対象になるというのが、多くのEVにおける保証内容となっている。 ここで覚えておきたいのは「70%」という数値が示すものだ。 日常的にEVを使っているときにパーセントで表現するのは充電率であることが多い。これは現在のバッテリー能力に対して、どれだけ充電しているかを示すもので、業界的には「State of Charge」の略称で「SOC」と表現されることが多い。 しかし、SOCの数値ではバッテリーの劣化を知ることはできない。SOCの数値は、バッテリーの電力残量を実効電力量で割ったものであり、劣化によって使える能力が落ちたことは基本的に考慮しないからだ。極論すると、劣化によってバッテリーの能力が半減した状態でも、普通充電をつないでじっくりと充電すればメーター表示のSOCにおいては100%まで充電できる。しかし、それは新車時の100%と同じ電力量が入っているという意味ではない。 そして、バッテリーの劣化度を示す基準となるのが「State of Health」の略称「SOH」である。英単語の意味からも想像できるように、SOHとはバッテリーの健全度を示すもの。その基準は、単純に満充電でどれだけ入れられるかにある。たとえば、新車時に100kWhほど充電できるバッテリーが使っていくうちにSOC100%の状態でも70kWhしか入らないようになれば、「このバッテリーのSOHは70%だね」ということができる。 メーカー保証でいうところの「70%」という数字は、保証期間や走行距離の間にSOHが70%を切るほど劣化したら、保証対応として修理しますということを意味している。 70%の性能を残しているのであれば、それなりの機能を維持しているように思えるかもしれない。しかしながら、「SOH=70%」というのは、結構なバッテリー劣化を実感できるレベルともいえる。新車時に満充電で400km走れるEVを想定したとき「SOHが70%になっても満充電で280km走れるじゃん」と思うかもしれないが、多くのEVにおいてSOCが20%を切ったあたりから走りを抑える制御が入り始める。それはSOCが低い状態でフル加速などの性能を引き出す走りをする(バッテリー的には高出力の状態)と、劣化しやすい傾向にあるからだ。 上記の例において、SOC20%以下では走行しない前提で単純計算すると、バッテリー新品時の実走行可能距離は320kmで、SOHが70%まで劣化した状態では同224kmとなる。新車時からの実際に“走れる”距離が100kmも短くなってしまったら、オーナーは劣化を実感するだろう。さらに、カタログでの航続距離スペックが180km程度のコンパクトなEVで同様の計算をすると、SOH70%では実際の使える領域では100km程度の航続性能になってしまう。ご承知のとおりカタログスペックは空調を使わず、上手に理想的な運転をしたときの航続距離であるから、リアルワールドではもっと厳しい数字になることは自明だ。

TAG: #バッテリー #交換
TEXT:桃田健史
日本のEV普及も「トランプ次第」か? 世界的に「政治利用」されるEVの未来

イーロン・マスクが政府効率化省のトップに 多くの日本人にとっては想像できなかった「まさか!」のトランプ第二次政権が2025年、ついに動き出す。 そうなると、「EVはどうなるの?」と思う人がいるかもしれない。なにせ、バイデン政権下で全米各地で政治活動を続けてきたトランプ氏は、EV普及に対して否定的な発言が目立ったからだ。 一方で、大統領選挙期間中にテスラのイーロン・マスク氏と急接近。マスク氏はトランプ氏の選挙活動資金として巨額の寄付をしたとされている。そのため、トランプ氏のEVに対する考え方は変化するのではないか、と思った人も少なくないだろう。 それどころか、驚くことに2者の関係は、マスク氏の政権入りにまで及んだ。役職は、デパートメント・オブ・ガバメント・エフィシェンシー(政府効率化省)のトップである。 マスク氏(長官)の立場から見れば、連邦政府関連の機関で、自身のビジネスとは、DOT(デパートメント・オブ・トランスポーテーション:運輸省)、EPA(エンバイロメンタル・プロテクション・エージェンシー:環境保護局)、NHTSA(ナショナル・ハイウェイ・トラフィック・セイフティ・アドミニストレーション:運輸省道路交通安全局)、DOE(デパートメント・オブ・エネルギー:エネルギー省)、そしてスペースXとの関係があるFAA(フェデラル・エヴィエーション・アドミニストレーション:連邦航空局)などとの関係がある。 こうした各方面に対して、トランプ大統領の意向として、マスク氏が政策や規制に大ナタを振ることも十分考えられる。ただし、あまりにも露骨な方法を取ると、まさに公私混同であり、テスラやスペースXへの利益誘導と世間からいわれかねない。 それでも、マスク氏が政権入りすること自体が、日本人の想像を超えるものであり、これがアメリカの現状だといわざるを得ない。つまり、トランプ第二次政権において、EVの行方を予想することは極めて難しい。 たとえば、燃費規制についてだ。トランプ第一次政権では、EPAが全米50州を燃費規制を統一し、EV普及の主導的立場を取ってきたカリフォルニア州を牽制したが、第二次政権で同じ策を講じるのか? CAFE(企業別平均燃費)をどう扱うのか? また、EVなど電動車普及率について、バイデン政権が掲げた数値をどう変えるのか? そして、電動車のアメリカ国内生産を基本とし、関連部品の輸入についてはアメリカとの同盟関係国との関係を考慮するという、IRA(インフレ抑制法)をどうするのか? IRAは実質的な対中政策であるため、中国に対して強固な姿勢を示すトランプ第二次政権にとっては維持するべきか、一部改良するのか、それとも新法に切り替えるのか? EVの普及のカギといえば、一般的には、生産コスト、航続距離、そして充電インフラが3本柱といわれる。 だが、現実は違う。2020年代の世界の動きを見れば、アメリカと中国の政治的な動きに、欧州が挟まれるような格好のなかで、EVは次世代の経済政策としての「ひとつのコマに過ぎない」という印象があるからだ。 はたして、トランプ第二次政権は外交の場で、EVをどう使うのか? それにより、アメリカ、欧州、中国、そして日本でのEV普及に影響が及ぶことになりそうだ。

TAG: #アメリカ #トランプ
TEXT:高橋 優
テスラ・モデルYのマイナーチェンジがかなりスゴイ! ライバルEVとの比較でお買い得度を探ってみた

ライト形状を変更し直線のイメージに テスラがモデルYのフェイスリフトを実施しました。果たして、モデルYジュニパーは現行モデルと比較して何が変わったのか。そして2025年に日本で購入できる電動SUVたちと比較してどれほどの競争力を有しているのかを解説します。 今回、正式発売がスタートした新型モデルY、通称ジュニパーについて、現行モデルと比較してどこが変更されたのかを確認しましょう。 まず、エクステリアデザインについて、フロントとリヤのライト形状が大幅に変更。いままでの丸みを帯びたデザインからサイバーキャブでも採用された直線のイメージへと変更されています。 また現在、新型モデルYを注文すると初回生産限定グレードである「Launch Series」となります。ホイールは20インチのHelix 2.0ホイールのみ選択可能です。ちなみに中国市場では19インチのCrossflowホイールも選択可能であり、今後に導入される通常グレードにおいて選択可能になるはずです。 インテリアデザインは、新型モデル3における変更点の多くが踏襲されました。後席にもタッチスクリーンを追加しながら、センタースクリーンは15.4インチOLEDディスプレイにアップグレードされ、さらにヌルサクともいうべき滑らかな操作性を実現。車両全体を取り巻く256色ものアンビエントライトや、さらにLaunch Seriesの場合は、専用ロゴマークをリヤテールゲートバッジやキッキングプレート、ワイヤレス充電器、プロジェクションライトにそれぞれ搭載されます。 その一方で、注意するべき点もいくつか存在します。まず、音響システムについて、旧型では全グレード標準で14スピーカーシステムでしたが、新型ではロングレンジグレードのみ16スピーカーにアップグレード。一方でRWDグレードは9スピーカーと減っています。RWDグレードにはサブウーファーが搭載されないことから、音響体験という点でマイナス材料になりそうです。 また、新型モデル3とは異なり、左側のウインカー機能のみウインカーレバーを復活させてきました。新型モデル3の操作性における最大の問題点が、ステアリングにウインカーボタンを内蔵してレバーを廃止してしまった点です。これは、日本国内でも操作性が悪いときがあり、ラウンドアバウトが存在する海外ではとくに不評でした。他方で、ギヤシフトとオートパイロット起動を操作する右側のレバーは廃止されました。

TAG: #ジュニパー #モデルY
TEXT:すぎもと たかよし
四つ輪のないアウディが爆誕! 中国の「AUDI」のデザインをプロが斬る!!

アウディブランドとは異なる佇まい 2024年11月7日、アウディは広州モーターショーにて新ブランドである「AUDI」およびコンセプトカーの「AUDI E」を発表しました。中国市場向けとして上海汽車集団との合弁により開発された同車は、たしかにアウディブランドとは異なる佇まいを見せます。では、そのデザインの特徴はどこにあるのか? さっそく公開された写真からチェックしてみたいと思います。 ドイツ本国とは異なるデザインアプローチ なにしろ市場を限定した新規ブランドですから、当然のことドイツ本国とは異なるスタイルを目指すワケですが、しかし少なくとも今回のコンセプトカーの基本はアウディお得意のスポーツバック風に見えます。ここは難しい理由ではなく、SUV的な要素をもつこのスタイルがいまの「売れ線」であり、中国の若い富裕層向けとしても最適ということでしょう。 その上でどのような個性を与えるかですが、アウディブランドのエッジの効いたシャープな造形に対し、全身を曲面基調の柔らかな面で構成する手法を選んだようです。 各部を見てみると、まずフロントでは前面を覆う巨大なパネルが大きな特徴。グリル部にこうした広いパネルを置くのは近年のEVでよく見られる手法ですが、パネル面積をより大きくして「押し出し」感を上げている点は、市場の特性を反映させた点だと思えます。 また、単にグリル面を覆うだけでなく、このパネルがボディのコア部として外に露出したようにも見えます。さらに、このコアを後方へ抜いてみせたのはトヨタのクラウン クロスオーバーに似た表現ですが、EVとしての先進感だけでなく、高出力による力強さも狙いということでしょう。 側面を見ると、A7スポーツバックより100mm短い全長に対し、25mm長いホイールベースとショートノーズがEVらしいプロポーション。この伸びやかさを強調するのが長くフラットなルーフラインで、フローティングデザインも新ブランドを特徴付けています。 さらに、ショルダーラインとホイールアーチの大きな張り出しも特徴で、とりわけリヤフェンダーの豊かさと、絞られたキャビンとの対比は迫力を感じさせるほどです。 新ブランドとしての独自性を育てる 一方、リヤビューでは短いながらもフラットなリヤデッキとエクストラウインドウ? が注目点です。特段バッテリーの排熱口などは見えないので、たとえばシトロエンC6のように、ある種新ブランドのアクセントポイントなのかもしれません。 もうひとつ、雪の結晶のように輝くアルミホイールも見所のようです。こうしたデザイン自体は最近の流行ですが、写真を見る限り、映り込みの美しい磨き込みに新しさがあるようです。 さて、こうしてAUDI Eのスタイリングをチェックすると、たしかにドイツ本国とは明らかに異なる方向性が感じられます。しかも曲面で構成されたボディは非常にシンプルであり、中国向けといってもゴテゴテと盛るようなカタチではありません。 その点で非常に好感の持てるスタイリングですが、ではこれが「AUDI」ブランドならではの独自性といえるのかは未だ不明です。同ブランドは2025年にBおよびCセグメントで3モデルを発表する予定ですが、たとえばよりコンパクトなBセグにこのデザインがどのように織り込まれるのか。それを見ればデザインの狙いがよりハッキリするかもしれませんね。

TAG: #AUDI #AUDI E #デザイン
TEXT:御堀直嗣
ヒョンデもまた「水素」の可能性を探るメーカーのひとつ! ミライ・CR-Vと並ぶFCVの1台「NEXO」とは?

満充填からの走行可能距離は820km! 現代(ヒョンデ)自動車のNEXO(ネッソ)は、燃料電池車(FCV)である。電気自動車(EV)のIONIQ 5(アイオニック・ファイブ)とともに、日本で販売されている。 ヒョンデは、起亜(KIA=キア)を傘下に置く企業グループとして、トヨタ、フォルクスワーゲンに次いで、世界3位の自動車メーカーだ。そして、2022年に日本市場へ再参入する際、電動車両に的を絞り、EVとFCVを導入した。現在、EVではIONIQ 5に加え、KONA(コナ)を追加している。 ネッソは2018年に韓国で発売された。3本の高圧水素タンクを搭載し、満充填からの走行可能距離は820kmである。日本では、トヨタMIRAI(ミライ)がFCVの代表格といえ、その走行距離も約820kmとしている。今年発売を開始したホンダCR-V e:FCEVは、約621kmである。ただし、CR-V e:FCEVは、車載バッテリーを外部から充電でき、その一充電走行距離は約61kmなので、これを足すと合計682kmになる。 車載の高圧水素を使って燃料電池スタックで発電し、モーターを駆動して走るのがFCVだ。各車モーターの最高出力は、ネッソが120kWであるのに対し、ミライは134kW、CR-V e:FCEVは130kWと、ネッソは10kWほど低い。 一方、車両重量は、ネッソが1870kgであるのに対し、ミライが1920kg以上(グレードにより差がある)、CR-V e:FCEVは2トン以上で、ネッソは少なくとも50kgは軽い。その分、パワー・ウエイト・レシオではCR-V e:FCEVと遜色なく、ミライはより高性能となるが、優劣を問うほどの差ではない印象がある。実際、ネッソを試乗すると、走りに不満はない。 車格としては、CR-V e:FCEVの全長がネッソに比べやや長いが、車幅は同等で、同じくSUV(スポーツ多目的車)であるので、全高もほぼ差はなく、競合といえる車体寸法になる。ミライは、初代から4ドアセダンであるため、車種違いとなり、現行の2代目は、ヒョンデとホンダの2車に比べやや大柄になる。

TAG: #FCV #燃料電池車
TEXT:桃田健史
小型車最強のスズキがEVを発表! フロンクス同様にインド生産の「e ビターラ」は期待の1台!!

EVでもスズキらしい走りを実現 ついに、スズキがバッテリーEVの量産モデルを公開した。モデル名称は「e VITARA(ビターラ)」。初お披露目の場は、ファッションやデザインの領域で世界最先端の場のひとつとされる、イタリア・ミラノであった。 実車は欧州向けで、そのボディ寸法は全長4275mmx全幅1800mmx全高1635mm、ホイールベースは2700mm。電池容量は49kWhと61kWhの2種類。49kWh版は2WDのみで、フロントモーター出力は106kW。61kWh版は2WDが128kW、4WDがリヤ48kWを加えた300kWとなる。バッテリーはコストと生産性を考慮した、リン酸鉄リチウムイオンを採用する。 また、プラットフォームは、軽自動車から乗用車での知見を積み上げた「HEARTET」をEV向けとして新開発した「HEARTECT-e」を名乗る。 4WDについては、これもスズキの知見を駆使した「ALLGRIP」を「ALLCRIP-e」とした。モーターとデファレンシャルギヤを一体化させたeアクスルを前後それぞれに採用する。これにより、悪路で片輪が浮いた状態でも、LSD機能で駆動を制御するTrailモードを設定し、スズキらしい走りを実現しているという。

TAG: #e VITARA #新型車
TEXT:藤田竜太
簡単そうに言われるけど実際そうでもないぞ……旧車のエンジン車をEV化して蘇らせる「コンバートEV」の現実

メーカーからもコンバートEVが登場! 日産が東京オートサロン2025に「R32EV」を出展すると発表したり、トヨタがAE86をコンバートEVした「AE86 BEV Concept」(東京オートサロン2023で発表)を製作したりと、コンバートEVの注目が高まってきている。 このコンバートEVとは、簡単にいえばガソリン車などの内燃機関自動車を改造して電気自動車(EV)に転換したクルマのこと。 エンジン本体や吸気系、エキゾースト系などの補器類、燃料タンクなどの部品を取り外し、その代わりに動力用のモーターやバッテリー、モーターコントローラーなどの部品にconvert(入れ換える、変換する)することを意味している。 車種によっては150万円ぐらいでコンバートEVのキットが発売されているが、それらをインストールするためには、1台1台、ワンオフで取り付け部品を製作したり、バッテリーの認証を受けたり、ナンバーを取得したりとかなりの手間がかかるので、ガソリン車、とくに古いクルマ、ビンテージカーをベースにコンバートEV化を考えるなら、その費用は500万円以下には収まらないと考えたほうが妥当だろう。 一方で、コンバートEVは(エンジン関係の)部品が欠品して走れなくなってしまったクルマや、排ガスの問題がクリアできないクルマ、エコカー減税の対象外で維持費が高いクルマなどを、電動化することで現役復帰させ、蘇らせる方法として期待されている面もある。 ビンテージカーの場合、EV化以前にボディなどレストアしなければならない部分もあるし、珍しいクルマほどワンオフで製作しなければならないパーツも増えるので費用は高額になる傾向だが、旧車特有の故障の心配から解放されたり、パワステやエアコンなどを追加し、アップデートすることができたり、排ガスのニオイから解放されて、静粛性も手に入るなど、EVならではのメリットも享受できるのは大きな魅力。 国産車をベースにコンバートEV化するのはこの先も当面まれかもしれないが、古い欧州車やアメ車などをコンバートEVで蘇らせる流れはすでにできつつある。 これまでのカスタマイズとは毛色が違うが、魅力あるクルマを現役として延命させる方法として、徐々に認知され、需要が増していくことだろうし、普及することでコストも下がり、バッテリーなどの高性能化も進むことが期待されている。

TAG: #コンバートEV #レストア #旧車
TEXT:高橋 優
イーロン・マスクの目は「EV販売台数」から「自動運転普及」へ! BYDとの販売台数争いは眼中なしか

2024年の販売台数は178万9226台 テスラの2024年シーズンの納車台数が速報され、アナリストの予測を大きく下まわる結果に留りました。年間EV王者対決として注目されていた中国BYDとどれほどの販売台数の差がついたのか。2025年シーズンにおける展望も含めて解説します。 まず、2024年Q4におけるグローバル全体の納車台数は49万5570台と、2023年Q4と比較して2.28%のプラス成長となりました。その一方で、2024年シーズン全体の販売台数は178万9226台と、1.07%のマイナス成長と前年割れという結果に留まりました。 車種別の販売台数を確認してみると、まずモデル3とモデルYの販売台数の合計は47万1930台と、Q4単体では前年比超えを実現したものの、2024年通しではモデル3とモデルYという主力車種の販売台数は前年割れとなりました。 また、モデルS、モデルX、そしてサイバートラックの販売台数の合計はQ4単体で2万3640台と史上最高を更新しながら、2024年シーズン全体の販売台数という観点でも前年超えを達成。サイバートラックの販売台数が伸びたぶんだけ販売ボリュームが増加していると推測できます。 ところが、今回のQ4における最大の問題点は、主力車種であるモデル3とモデルYではなく、サイバートラックにあると思います。というのも、モデルS、モデルX、そしてサイバートラックの合計販売台数の伸びはたったの700台弱です。次にサイバートラックは、2023年Q4以降に生産体制を拡張することで、すでに年産12.5万台のペースに到達済みであると公式に発表。つまり、四半期ペースで3万台の生産能力を有しているということを意味します。 サイバートラックの生産ラインの稼働が一時的に停止したという情報や、さらに予約台数が200万台以上も存在するはずのサイバートラックが、2024年末には即納状態であることを示すタイムラインがテスラのホームページ上で表示されていましたが、やはり販売台数という観点からも、残念ながらサイバートラックの需要は想定を遥かに下まわっているのが現状であると推測できるのです。 テスラは2025年中にも、サイバートラックのエントリーグレードであるRWDを追加設定しながら、さらにベッド部分に追加バッテリーを搭載するというレンジエクステンダー仕様を追加予定。そのうえ2025年以降に登録された車両に対しては、連邦政府からの7500ドルの税額控除が追加で適用可能になったという点は好材料です。とはいうものの、トランプ政権下では税額控除が廃止される可能性が高いという点をはじめとして、サイバートラックの需要が大きく伸びるとも考えづらい状況です。 このサイバートラックの生産ラインの稼働率低下問題が、テスラ全体にどれほどの影響を与えるのかは決算内容に注視する必要がありそうです。 また、テスラは地域別の販売台数を公開していないものの、主力マーケットである中国市場の販売台数は2024年シーズン65.7万台と、前年比8.8%の成長を実現しています。よって、テスラが中国国内だけで販売した割合はQ4単体で4割程度という水準です。つまり、テスラは中国国内でさらに販売台数を伸ばすことに成功したものの、ホームマーケットである北米市場、そして欧州市場での販売がマイナス成長だったことにより、中国市場での成長分が相殺されてしまった格好なのです。

TAG: #2024年 #販売台数
TEXT:石橋 寛
ただガワだけR32のEVじゃない! 日産が作った「R32 EV」は「R32GT-Rの走り」の忠実再現を目指した壮大な計画だった

単なるEVコンバートじゃない! 日産が最先端EV技術を投入して、初代GT-R(R32)をEVコンバートしたニュースは早くからSNS上で拡散され、ついには富士スピードウェイにて実車のアンヴェールも行われた。しかし、前評判は悲喜こもごもであり、日産にとって大切な資産である名車のEV化には逆風が吹き荒れたことも記憶に新しい。 が、プロジェクトを牽引したエンジニアから知らされた「真の目標」は、単純なEVショーケースにすることなく、未来永劫R32の乗り味を正確に再現することだった。 R32 EVについて日産のステートメントは、「EVならではのワクワクする運転体験や魅力をお伝えしたい」と語っているが、このセンテンスだけでは今回のプロジェクトのキモを伝えきれていない。付け加えるなら、「EVならではの技術を使い」「R32のワクワクする乗り味を再現し」「30年前に完成された運転体験や魅力を伝えたい」となるはずだ。 つまり、単なるEVコンバートではなく、R32の乗り味、フィーリング、あるいは馬力やトルクの感覚までをEV技術でもって忠実に再現する、というのが真の目標にほかならない。したがって、他社が行った過去の名車をEVコンバートしたことに刺激を受けてのプロジェクトといった指摘はまったく当てはまらないのである。 さて、プロジェクトの進行はSNS上でもざっくりと伝えられていたものの、実際の製作は意外なほど難航していたようだ。たとえば、R32開発当時にはCAD(コンピュータ支援デザイン)システムがなく、デジタルデータはおろか、紙の設計図すら数えるほどしか残っていなかったという。すなわち、R32の車体にモーターやバッテリーを搭載しようにも基本的な寸法すら測りなおす必要にかられるわけで、「まずはR32を完全に解体して、採寸することから始まりました」と、プロジェクトの牽引役、日産の平工さんがコメントしてくれた。

TAG: #GT-R #R32 #コンバート
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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