コラム 記事一覧

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TEXT:小川フミオ
スペクターの開発で、つねに念頭においてあったこととは何か。開発責任者が語る「ロールス・ロイスらしさ」

「すべてにおいて、クルマが揺れないこと」とドクター・ミヒア・アヨウビ氏は、BEVのスペクターで意図したロールス・ロイスらしさの一端をいう。その実現への要素を、自動車ジャーナリスト・小川フミオが訊いた。 V12とおなじように走ること。先ず、ホイールから ロールス・ロイス初の量産BEV「スペクター」のエンジニアリングを統括したドクター・ミヒア・アヨウビと、彼のチームが、開発中に、つねに念頭に置いていたのは、従来のV12気筒搭載のロールス・ロイス車とおなじように走ることだったという。 ーークルマの開発においては、「BMW i7」と歩調を同じくする必要があったのでしょうか。 「スペクターの発表いらい、よく質問されました。なかには”同じ中身なんですよね”という質問ありました。じっさいはまったく違います。スペクターのプラットフォームは、私たちがアーキテクチャー・オブ・ラジュアリーと名づけたアルミニウムの押出し材を使ったスペースフレームです」 ーー開発にあたって難しい部分はどんなところでしたか。 「いろいろありました。23インチの大径ホイールを履かせることになったので。ホイールは、とても重要なのです。クルマと道とのインターフェイスであり、ドライブトレイン、ステアリング、アクティブロールバー、エアサスペンション、アクティブダンパーといったスペクターの機能と、密接に結びついています。 ーーたしかにクルマの物理的な要素はすべて関連づいていますね。 「そこで私たちは、車輪からスペックを決めていくことにしました。まず最終減速比を決め、そこから戻っていって、モーターのトルクを決定していったのです。なぜかというと、スムーズなトルクで、私たちが“ワフタビリティ”(水の上を進んでいくように走るの意)と呼ぶ走行特性を実現するためです」 「私たちの“エフォートレス・ドライビング”」 ーートルクの設定でもロールス・ロイスらしさが大事だったということですね。 「トルクがたっぷりあるBEVのキックダウン(アクセルペダルを強く踏み込むこと)は、野生の馬みたいなかんじでしょう。ロールス・ロイス的ではないですね。ゴルフはプレーしますか? ゴルフでのベストショットって、クラブを一所懸命振る感覚がなく、すーっと無意識的に腕を振り抜くかんじでしょう。それと私たちの“エフォートレス・ドライビング”は近いものがあります」 ーーエフォートレスはロールス・ロイスが長いあいだ使ってきた単語ですね。 「とてもスムーズに走る印象を与えること。クルマの慣性質量を計算して、どの速度域でもそれを頭に入れながら適切なトルクをコントロールできるように設定しています。それが“ワフタブル”であること。船が水上をいくように。加速、コーナリング、ブレーキングすべてのおいて、クルマが揺れないことが重要です。たとえ車中で、シャンパーニュを満たしたグラスを手にしていても、なんの問題もなく走れる。私たちはこれをChampagne Stopと呼んでいます」 ーーたしかに、たとえワインディングロードを速いペースで走っても、強いGは感じられません。 「私たちは強すぎる加速は抑えたんです。もしそうすると、クルマはピッチングの挙動を生じます。そこで加速のときは慣性質量を感じさせないような動きを意識しました。乗っているひとにとって、車内はラグジュアリーなリビングルームなのです。なのでそれにふさわしい走りが体験できなくてはなりません」 Vol.4へ続く

TAG: #EV #スペクター #ロールス・ロイス
TEXT:桃田 健史
EV知能化時代、「イネーブラー」が本領発揮。カナダ「BlackBerry」が最新バージョン公開

車載OS(オペレーティングシステム)が今、大きく変化している。ADAS(先進運転支援システム)や自動運転技術、EV等の電動化、そしてAI(人工知能)による車載システムへの影響拡大などが大きな要因だ。そうした中、元祖イネーブラーのBlackBerryがさらなる進化を見せた。 車載OS、再定義の時代に突入か BlackBerry(本社:カナダ、オンタリオ州ウォータールー)がEVなど次世代車に対応する新しいソフトウエアの仕組みを公開した。 ベースとなるのは、最新の車載OS(オペレーティングシステム)であるQNX OSに対応する、ソフトウエア開発プラットフォーム(SDP)8.0だ。BlackBerryは2010年にソフトウエア開発企業のQNXを買収している。 会見でBlackBerry幹部は「自動車産業界ではいま、EVを筆頭とした電動化が加速し、それに伴うクルマの知能化が重要視されている」として、車載OSを再定義する必要があるとの見解を示した。 まずは、車載OSに関するこれまでの経緯について簡単に振り返っておく。 OSといえば、身近なところではスマートフォンで、アップルのiOSやグーグル(親会社はアルファベット)のアンドロイドOSがよく知られている。 一方で、車載OSの重要性が増してきたのは、いわゆるコネクテッドカーと呼ばれる、クルマが外部と通信によってデータ連携する時代に入ってからだと言えるだろう。 自動車には小型のCPUによって、車載機能それぞれを制御してきた。最初は、エンジンやトランスミッションの制御系が主流だった。それが、予防安全のための先進運転支援システム(アドバンスド・ドライバー・アシスタンス・システム:ADAS)や車内エンターテインメントなどが拡充してきたことで、スマートフォンやパーソナルコンピュータのように車載OSの重要性が増してきたという流れがある。

TAG: #BlackBerry #イネーブラー #車載OS
TEXT:小川フミオ
スペクターの開発責任者が語るロールス・ロイスにとっての「電気化」とは

BEVを作るのではなく、ロールス・ロイスを作る意識。スペクターの開発責任者のドクター・ミヒア・アヨウビ氏は語る。この理由を、自動車ジャーナリスト・小川フミオがインタビューを通して明らかにする。 それは1本の電話からはじまった ーー最初に、「ロールス・ロイスがBEVを作る」と、トルステン・ミュラー=エトベシュCEOから連絡があったのですね。 「はい、それは電話で、夜中の2時でした。“ミヒア、BEVを作ろう”と。私は即座に応えました。“ロールス・ロイスを作るんですね”と。エンジニアたちやデザイナーたちのあいだで、このことはマントラのように唱えられているんですが、では、ロールス・ロイスって何を意味しているのか。作るがわからすると、ロールス・ロイスのプロダクトは、すばらしいデザインと、みごとな技術とクラフツマンシップが融合したものです」 ーーもういちど確認させてください。そこにはBEVであることが重要な要素だったのですか。 「電気化をまっさきに強調する意味はないんです。電気化は、いってみれば、なんでもないのです。電気化されたドライブトレインは、たしかに現在最高レベルにあると自負しているものの、でも、スペクターという新型車を構成する、たんなる部品にすぎないのです」 エモーショナルなものに ーーV12気筒エンジンからの自然な置き換えなのですね。 「これまで私たちの顧客は、ロールス・ロイス車のV12の静粛性と、大きなトルクを使ってアクセルペダルを強く踏まなくても進んでいく独特な走り、そして変速ショックが感じられず、1段のギアだけしか使っていないようなスムーズさを愛していました。電動化は時代の趨勢という部分もありますが、それより、私たちにとっては、当然の移行という側面が強いのです」 ーーついにこのときが来た、ということですか。 「私たちは長いあいだ、BEVを研究してきました。その過程で、たとえば102EXと名付けたコンセプトモデルを公開しました」 ーー4ドアセダンである「ファントム」をベースにした電動車として、2011年のジュネーブ自動車ショーで公開されたモデルですね。エンジンルームに、モーター、インバーター、バッテリーを入れて、車体色は「アトランティッククローム」なる明るいブルーの車体色で、輝くスピリット・オブ・エクスタシーも印象的でした。 「いまを電気の時代というなら、このときにロールス・ロイスがBEVを出すなら、私たちにとって最初の量産BEVは、デザイン的にも、観たひとの気分を沸き立たせるようなエモーショナルなものであるべきです。そこでスペクターはクーペボディになりました。シルエットの美しさを実現するのは、デザインチームにとって、なかなかたいへんな作業だったようですが。サルーンやSUVを作るのも、私たちにとってはむずかしいことではありません」 Vol.3へ続く

TAG: #EV #スペクター #ロールス・ロイス
TEXT:烏山 大輔
一気に遠出は無理だけど、高速走行は不得意ではない!三菱ekクロスEV THE EV TIMES流・電費ガチ計測

THE EV TIMES流電費計測の4回目を、7月に三菱ekクロスEVで実施した。ekクロスEV(と日産サクラ)は、高速道路でのロングドライブにむきにくいクルマであることはもちろん理解しているが、この電費計測は読者の皆さんの参考になる電費を公道走行で導き出したいという趣旨であるため、この記事を見て、やはり高速走行には向かないな、もっと悪い電費になるかと思った、などとご笑覧頂けると幸いである。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 80km/hでのんびりがベスト ekクロスEVのカタログ上の一充電走行距離は180km(WLTC)で、電池容量は20kWhだ。カタログ記載の一充電走行距離の180kmを実現するには、電費が9.00km/kWh(目標電費)を上回る必要がある。 ※電費についてはテスラなどで表示されるWh/km単位の数値も併記している。 各区間の計測結果は下記表の通り。9.00km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまで電費計測を実施したiX1、EQEセダン、EQS SUVが目標電費の倍以上の数値を記録していた100km/h走行のD往路(標高差316mの下り坂)で、かろうじて目標電費を上回ったところからも、電費の面では高速走行が不向きなことがうかがえる。 80km/h巡航でギリギリ180kmの航続距離 各巡航速度の平均電費は下記の表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は180kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。80km/hだけ9km/kWhを超えるが、100km/hになると一気に6km/kWh台に落ちる。120km/hはなんとか100kmを走れそうなレベルだ。 操縦性においていえば、120km/h巡航が「不得意」だとは感じなかった。それは正直街乗りだと固いなと感じる足回りがこの速度域では、バッテリーの低重心も手伝って、ビシッと安定した走りをみせるからだ。1,655mmもの全高も全く感じさせず、まるで背の低いセダンのような走りで頼もしかった。 各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると27%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.79倍の航続距離の伸長が期待できる。

TAG: #eKクロスEV #三菱 #電費計測
カナダ・バンクーバー市内の風景(photo=福田 雅敏)
TEXT:福田 雅敏
カナダ・バンクーバーにEVが多い理由は公共交通の影響⁉︎……市の歴史が支えてきた電動モビリティ

バンクーバーはカナダの横浜・相模原・小田原⁉︎ 今年5月の大型連休を利用して訪れたカナダ・バンクーバー。市内では思いのほか多くのEVが走っており、さらに日本未導入の高性能EV「ルーシッド」のショールームを拝見したことは前編にて触れた。今回は後編として、バンクーバーはどんな街なのか、なぜEVが普及しているのかなど、考察を書いてみたい。 バンクーバー市というと、名前は知っていてもどの程度の規模を持つ都市なのか知らない人も多いだろう。バンクーバーは面積115km2で人口65万人を有する都市である。 ちなみに日本の都市で面積が近いのは神奈川県小田原市で、人口が近いのは相模原市になる。 街の雰囲気だが、豪華客船が寄港する港町であり、空港が近いほかコンベンション・センター/マリンスタジアム/中華街/多数の公園があり、横浜市に近いといった感じか。ちなみに街を走るバスはニューフライヤー社製のトロリーバスで、排ガス臭さがなく治安が良い。 外部給電式のEV「トロリーバス」は、1948年から市民のアシ バンクーバー市内にEVが多いことを考察してみると、トロリーバスの影響は少なからずあるかもしれない。トロリーバスは路面電車のバス版のようなもので、道路の上方に張り巡らせた架線から電源をとる外部電源式のEVと言える。 バンクーバー市内のトロリーバスは、1948年から運行されている歴史のある交通機関で立派なEVである。そのため、バンクーバー市民はEVに対するアレルギーが少ないのかもしれない。

TAG: #THE視点 #その他モビリティ #充電インフラ
カナダの風景(photo=福田 雅敏)
TEXT:福田 雅敏
ルーシッドのショールームにて実車を確認……カナダ・バンクーバーで体感したEV市場の“気温”

大型連休を利用しカナダ・バンクーバーへ 少し前のことになるが、2023年の5月初旬、大型連休を利用し、カナダ・バンクーバーへと旅行してきた。今回の旅行はプライベートなモノだったが、バンクーバー市内では多くのEVが走っており、EVエンジニアとしての視点がどうしても離れなかった。現場を歩いて見えたのは、EVの浸透具合の日本との大きな違いである。非常に興味深い風景だったので、レポートをしたい。 日本よりもEVが多いバンクーバー市内、目立つテスラ バンクーバー市内を走る自動車を見てまず感じたのは、「テスラ車が多い」ということである。大雑把な勘定では乗用車10台に1台が「テスラ」という体感だ。その中でも「モデル3」が最も多く、次いで「モデルY」という印象だ。正直なところ、カナダでもテスラが多く走っているとは思いもよらなかった。 さらにテスラ以外にもEVが多く走っていた。ざっと記憶にあるだけでも「ヒョンデ・アイオニック5」「同コナ」「フォード・マスタング・マッハ-E」「ポルシェ・タイカン」「キア・ソウル」「GMボルト」「日産アリア」「BMW i3」「BMW iX」「ジャガー i-ペイス」「フォルクスワーゲン ID.4」「ポールスター2」「トヨタbZ4X」「スバル・ソルテラ」などが見られた。 特にヒョンデは、「アイオニック5」や「コナ」の実車を見かけたし、TVでは日本未導入の「アイオニック6」のCMを頻繁に見かけた。

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TEXT:小川フミオ
ロールス・ロイスがBEVを手がけることとは。開発責任者が語る「スペクター」開発ストーリー

初のBEV「スペクター」を発表したロールス・ロイス。自動車ジャーナリスト・小川フミオが、同社のEVへの考えを、開発責任者ドクター・ミヒア・アヨウビ氏から訊き出す。 ロールス・ロイスのフィーリングを、最新のテクノロジーで ロールス・ロイスが初めて手がけた量産BEV「スペクター」。 開発の立役者といえば、ロールス・ロイス・モーターカーズ社でディレクター・オブ・エンジニアリングを務めるドクター・ミヒア・アヨウビだ。 「ロールス・ロイスにとって最も重要なのことは、どんなパワートレインだろうと”ロールス・ロイスらしさ”を保持すること。彼ならそれが何を意味しているかわかっています」 同社の、トルステン・ミュラー=エトベシュCEOのお墨付きを得ているのが、ドクター・アヨウビだ。 ドクター・アヨウビへのインタビューでおもしろかったのは、いっぷう変わった内容になったこと。 通常、新車発表の場だと、いかに新しいクルマを作ろうと思ったかが話の中心になる。それに対して、スペクターでは(上記のように)いかに従来のロールス・ロイスと同様のフィーリングを実現したかについてドクター・アヨウビは語った。 ーースペクターの特徴を、開発責任者の立場から解説していただけますか。 「スペクターを語るとき、私は数字を使わないんです。数字っていうのは、出力とかバッテリー容量とかですけれど。なぜかというと、ロールス・ロイスの特徴は数字で語れないからなのです」 ーーというと? 「私と私の開発チームがやった仕事は、ロールス・ロイスの哲学と、製品のもつ、いってみればフィーリングを、最新のテクノロジーで実現することでした。なので、スペクターについて語りたいのは、いかにしてそれを電気で実現したかということです」 「私が作ったのはBEVではないのです」 ーーミュラー=エトヴェシュCEOも、そもそもロールス・ロイスは電気と相性のいいクルマだったと言っていました。 「そうなんです。電気化はロールス・ロイスにとって新しいことではありません。創業当時に電気化のアイディアがありましたから。創業者のひとり、サー・ヘンリー・ロイスは機械エンジニアでなく電気エンジニアでした。彼の父も電気エンジニアでした」 ーーそれは歴史の本にも書いてある事実ですね。 「私が強く信じているのは、彼が12気筒エンジンを設計したとき、頭のなかにあったのは、電気モーターで走るようなエンジンを作りたいってことです。当時もエンジニアはみな、鉄道だって、電気になるだろうと信じていました。でもじっさいは技術的な問題から、蒸気機関でした。自動車に関しても同様だったのですが、動力源になりうる技術的な裏付けと、充電時間など、障壁がたちふさがっていたんですね」 ーーそして、ついにその時がきた、と。 「私たちは、電気モーターを動力源につかえるぐらい技術が発展するはずと予測していていましたし、このところ、私たちの顧客のなかから、ロールス・ロイスの電動化をポジティブに考える声が上がってきました。すべてのタイミングが合致して、私たちはこうしてEV化の考えをじっさいに実現することになったのです」 ドクター・ミヒア・アヨウビ(Dr. Mihiar Ayoubi氏)プロフィール BMWグループからロールス・ロイスに入社し、20年以上にわたって、コンセプト、アーキテクチャー、インテグレーション部門の責任者を務める。これまで音響・振動、ダイナミクス開発、シャシー制御システム、ドライブトレイン開発、全輪駆動、ドライバー・アシスタンス・システムなどの部門を統括。また、ニューファントムのエンジニアリング・コンセプトにも携わっており、ロールス・ロイスにも精通している。2018年3月1日付けで、ロールス・ロイス・モーター・カーズ社ディレクター・オブ・エンジニアリングに就任。ダルムシュタット工科大学で制御システム工学と応用人工知能の学位と博士号を取得。 Vol.2へ続く

TAG: #EV #スペクター #ロールス・ロイス
TEXT:烏山 大輔
蓄電池としてコスパに優れる電気自動車はどれ?一番は国産車ではなく輸入車だった!

BEV(バッテリー電気自動車)が搭載している大容量のバッテリーは、クルマを走らせるだけではなく、V2H(Vehicle to Home)を活用すると、BEVから家に給電もできる。ではBEVを蓄電池として考えるとコスパが良いのはどのモデルになのだろうか。家庭用蓄電池も合わせて考察してみる。 家庭用蓄電池は割高!? 家庭用蓄電池は、ウェブで調べてみるとバッテリー容量が4〜16kWhで100〜250万円ほどが相場のようだ。設置工事費込みの価格のため、蓄電池単体の価格は不明だが、工事費は30〜50万円ほどのようなので、蓄電池は1kWhあたり12.5〜17.5万円と試算できる。 また、アメリカのBEVメーカー「テスラ」もパワーウォールという蓄電池を販売している。バッテリー容量は13.5kWhで価格は110万円※と思われる。1kWhあたり8.15万円だ。パワーウォールは最大10台まで拡張して設置が可能という特徴もある。 ※以前はホームページに価格を掲載していたと記憶しているが、現在はなくなっており、テスラの認定販売施工会社への問い合わせフォームからしか価格を知る術はなさそうだ。 どれくらいの蓄電池容量があれば良いのか 一般的に4人家族が1日で消費する電力は10〜12kWhとされている。実際のご自身の使用量は、夏か冬の冷暖房を使用する時期が一番多いと思われるので、明細書やウェブで確認すると良いだろう。 自宅に蓄電池を設置すると、太陽光発電の電力を溜められることに加えて、災害による停電時に電気を使えることも大きいと思う。 日本での停電で思い出されるのは、2019年9月、千葉県に大きな被害をもたらした台風15号によるものだ。93万戸が停電し、その完全復旧には16日間もかかった。 さすがに16日は長すぎるとしても、例えば5日分の電力50kWhをパワーウォールで賄おうとすると、パワーウォールを4台設置する必要があり、それだけで少なくとも440万円、さらに工事費もかかる。 自宅に設置するだけの蓄電池に数百万円を使うのであれば、「動く蓄電池」であるBEVを買って、普段の生活の足にも使えた方が良いのでは。そうであればコスパとしてどのクルマが一番良いのだろうか。

TAG: #BEV #バッテリー #蓄電池
ルノー、日産、三菱が2023年2月に行った会見の様子。出典:日産
TEXT:桃田 健史
日産×ルノーのBEV開発企業「アンペア」がついに始動へ。欧州のみならず米中等でのBEV戦略の検討も考慮か?

日産がルノーとの出資比率を見直すなど、企業間での新しい契約について締結を完了した。その中には、ルノーが設立したBEV関連企業「アンペア」対する出資も含まれる。 グローバルでBEV市場環境が大きく変化する中、日産は「アンペア」と共にどう動くのか? 5か月越しでやっと締結完了 ルノーグループと日産は2023年7月26日、2023年2月6日に締結・公表された拘束力がある枠組み合意を踏まえた最終契約の締結を完了したと発表した。 その一環で、日産はルノーグループが設立するBEVとソフトウエア開発企業の「アンペア」に対して、日産から取締役を派遣し、最大6億ユーロ(1ユーロ156円換算で936億円)の出資を決めた。 日産の内田誠CEOはニュースリリースで、3社の協業が「次のフェーズに進む」ことを強調。また、「欧州での電動化の取り組みを補完・強化する」とコメントを発表している。 この発表と同じ日、日産は2023年度第1四半期決算を発表。その中で、内田CEOは記者からの質問に答える形で、アンペアへの出資について触れた。 それによると、日産のこれからの事業として、それぞれの市場で違った商品戦略や技術戦略が必要になってくるとの認識を示した。 こうした指摘をする背景には当然、欧州連合による欧州グリーンディール政策がある。 政策パッケージ「Fit for 55」による2035年時点において、欧州域内での乗用車と商用車のZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)へ転換が進む。 「Fit for 55」については当初、ZEVをBEVと燃料電池車のみと規定し、ZEV100%を明記していたが、ドイツからの提案によって再生可能エネルギー由来の合成燃料であるe-Fuelを含めるとの方針転換を行った。 いずれにしても、欧州での電動化へのシフトは今後、加速していくことは確実な情勢であり、ルノーと日産が電動化戦略で新たなステージでのチャレンジを進めていくことは、欧州で継続的に事業を行う自動車メーカーとしては必須条件であると、筆者は見る。

TAG: #アンペア #ルノー #日産
TEXT:烏山 大輔
水素が変える未来、BMWのFCEV開発者が語ったその詳細とは?

BMWはFCEV(燃料電池車)を、クルマの新たなパワートレインのひとつにするだけではなく、インフラとそのコスト、エネルギーを有効活用する手段としても考えていた。 FCEVは究極のエコカーと主張 FCEVは、水素と空気中の酸素を化学反応させ、発生した電気でモーターを回し、クルマを走らせる。排出するのは水だけなので「究極のエコカー」と言われている。 現在市販されているFCEVは、トヨタのミライとヒョンデのネッソの2車種だ。そしてBMWはiX5ハイドロジェンの開発と実証実験で得た知見を活かして、2020年代後半にFCEVを発売する予定だ。 7月25日に行われたiX5ハイドロジェンの日本での実証実験開始の会見において、BMWグループ 水素燃料電池テクノロジー・プロジェクト本部長のユルゲン・グルドナー氏の説明から、BMWの水素戦略をみていく。 BMWも他の欧米メーカーと同じようにBEV(バッテリー電気自動車)のラインナップを増やしており、現在日本ではiX、i7、i5、i4、iX3、iX1と6車種を展開している。 しかし、来たる電動化時代にはBEV100%では対応が厳しいとBMWは考えている。その理由の一つがインフラだ。全ての車両がBEVになったら、相当数の充電器が必要だ。そしてその充電器の設置にかかる費用も膨大なものになる。 グルドナー氏の説明によると、BEVとFCEVがそれぞれ500万台までのインフラコストではFCEVの方が高いが、1000万台になるとFCEVにBEVが追いついてきて、1500万台では逆転し、それ以上ではBEVの方が高くなっていることが分かる。 FCEVは充填速度が早いことを活かし、現状のガソリンスタンドのように短時間で多くのクルマを対応することができることをイメージすれば、このグラフを理解できる。 合わせてグルドナー氏は、BMWとしてもトラックやバスなどの大型車はほとんどFCEVに移行していくとの考えを示した。これまでTHE EV TIMESでもお伝えしてきたように、大型車は重いバッテリーを搭載する必要のあるBEVよりも、軽量な水素タンクにより積載空間や最大積載量、航続距離を確保できるFCEVの方が有利だ。 大型車がFCEV化してくれば、燃料の水素は、乗用のFCEVよりも多くの量が日々安定的に必要になるため、水素製造コストも下がる可能性も考えられる。

TAG: #BMW #iX5ハイドロジェン #燃料電池車(FCEV)
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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