コラム 記事一覧

コラム コラム
TEXT:高橋 優
中国の電気自動車「BYDシール」のリアルな航続距離と充電性能は? AWDモデルを長距離走行してテストした

BYDシールのEV性能をテスト! BYDのフラグシップセダンであるシールAWDで恒例の航続距離テストと充電性能テストを行いました。とくに真冬にどれほどのEV性能を実現することができたのか。リアルワールドにおける航続距離や充電スピードを詳細リポートします。 *主要スペック(※は推定値) ・搭載バッテリー容量(グロス/ネット):82.56/※80kWh ・日本WLTCモード(WLTCモードクラス2)航続距離:575km ・EPA航続距離:※450km ・最大充電出力/SOC 10-80%充電時間:105kW/非公表 *装着タイヤ ・235/45/R19 ・Nokian Hakkapeliitta R5(スタッドレスタイヤ) ・空気圧:2.5/2,9(前輪/後輪)(適正値2.5/2.9) *航続距離テスト まず、航続距離テストの前提条件は以下のとおりです。 ・GPSスピードの平均車速が時速100kmになるように調整 ・途中ノンストップ ・充電残量100%付近までサービスエリア下り線で充電したあと、途中のインターで折り返して、同じサービスエリア上り線まで戻ってくる。充電残量は10%程度以下まで減らし切る ・車内の空調システムは基本的に21℃オート。一部車種で温度調整あり(今回のシールAWDの場合は24℃オートに設定) ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のシールAWD・19インチスタッドレスタイヤ装着の場合はGPS距離との乖離なし) 結果:蓮田SA下り→白河IC→蓮田SA上り ・走行距離:306.4km ・消費電力量:100%→10.6% ・平均電費:4.32km/kWh(231.7Wh/km) ・外気温:1〜7℃ よって、航続距離テストの結果から、充電残量100%状態からSOC0%になるまで、344kmを走破可能であることが確認できました。 *ハイスピードテスト 次に、ハイスピードテストの前提条件は以下のとおりです。 ・GPSスピードの平均車速が時速120kmになるように調整 ・途中ノンストップ ・車内の空調システムは基本的に21℃オート。一部車種で温度調整あり(今回のシールAWDの場合は24℃オートに設定) ・車種それぞれのオドメーターとGPS上の距離を補正(今回のシールAWD・19インチスタッドレスタイヤ装着の場合はGPS距離との乖離なし) 結果:蓮田SA下り→佐野藤岡IC→蓮田SA上り ・走行距離:76.7km ・消費電力量:80.6%→54.1% ・平均電費:3.49km/kWh(286.8Wh/km) ・外気温:3〜5℃ よって、ハイスピードテストの結果から、充電残量100%状態から空になるまで、289.5kmを走破可能であることが確認できました。 *充電性能テスト ・使用充電器:150kW級急速充電器(ABB製/ブーストモード/空冷ケーブル) ・SOC10%〜80%充電時間:39分 ・最大充電出力(SOC):105kW(63%) ・30分回復航続距離(外気温平均4℃での航続距離テストベース):185km

TAG: #充電 #長距離
TEXT:山本晋也
「EVはラジエターがないからグリルレス」→「つまり冷却が必要ない」は間違い! 電気自動車はアチコチが冷却との闘いだった

冷やすべき主要パーツは3つ 「EV(電気自動車)は冷却が不要だからグリルレスのスタイルにできる」という声がある。たしかに、最新EVの象徴的ブランドであるテスラの各モデルは、グリルのないフロントマスクで統一することでEVらしい顔つきと認識させているが、はたしてEVは冷却不要なのだろうか? 結論からいえば、EVにおいても冷却(温度管理)は重要だ。 空調システムを除き、駆動系に限っても冷却を考慮すべき対象は大きく3つある。それは、バッテリー/インバーター/モーターだ。 ご存じのように、バッテリーの充電や放電は化学反応であり、その際に発熱を伴ってしまう。とくに急速充電や大パワーを発生するときに発熱量が増える。高温状態が続くと熱暴走してしまうこともあるので、バッテリーの温度管理は重要だ。また、バッテリーは低温すぎても十分に性能を発揮できないという特性がある。冬季などにはバッテリーを温める機能を用意しておくことも重要となる。 そうした冷やしたり温めたりというニーズから、バッテリーの温度管理を重要視しているモデルでは水冷式を採用していることが多い。水冷式であれば、ヒーターを使って温めることもコントロールしやすいからだ。同類の仕組みとしてエアコンの冷媒を利用して温度管理するタイプもある。 水冷式にするとコストがかかってしまう。そのため、発熱量が少ないと判断される場合にはブロワーで空気を送り込むだけの空冷式とすることもある。ハイブリッドカーのなかには後席の脇に小さな空気取り入れ口が設けられていることもあるが、あれはバッテリーに室内の空気を送り込んで冷やすためのものである。

TAG: #冷却 #温度管理
TEXT:高橋 優
北海道から埼玉まで1350kmを中国のEV「BYDシール」で走破! EVが苦手な極寒のなかで性能はどうなる?

BYDシールで片道で約1350kmの超長距離走行! 1月末から2月上旬にかけて、BYDシールAWDを使用して真冬の北海道のEV性能や北海道の充電インフラを調査する「北海道遠征」。今回は復路として北海道の札幌までの充電や電費などについて徹底リポートします。 まず、今回北海道に上陸するにあたって、茨城県からフェリーに乗る(苫小牧港へ)という選択肢を使わずに、基本的に陸路を走行。青森市の青森港から函館港はフェリーに乗せて、函館から日本最北端・宗谷岬を目指すという行程を設定しました。 スタートの埼玉から青森港まではおよそ700km、函館から宗谷岬も650km程度、全行程は片道で約1350kmという、日本国内で考えられうる超長距離走行の限界に挑みます。しかも1月末の真冬の環境下ということもあり、EVにとっては非常に厳しい走行条件となることから、電費性能がどれだけ低下してしまうのか、さらには冬場における充電スピードの低下などのリアルをリポートしたいと思います。 *装着タイヤ ・235/45R19 ・Nokian Hakkapeliitta R5(スタッドレスタイヤ) ・空気圧:2.5/2,9(前輪/後輪)(適正値2.5/2.9) *走行の前提条件 ・追い越しを含めて制限速度の最大10%までを許容 ・暖房は23℃オート ・走行モードはノーマルモード、積雪路面のみスノーモード使用 【走行1】札幌市街→函館市街(90kW充電器) ・走行距離:347.7km ・消費電力量:98.5%→2.7% ・平均電費:220.4Wh/km(4.54km/kWh) ・外気温(札幌→函館):-4℃→-6℃(最低-11℃) 札幌市街から函館市街まで350kmを無充電で走破することができました。さらに、函館には2本出し90kW級急速充電器がコンビニに設置されているので、24時間365日開放されていることは当然として、さらに雪国における除雪の問題も心配ありません。フェリーの出航まで時間があるのでここでしっかり充電することができました。 ちなみに今回のシールにかかわらず、冬場にEVで長距離移動を行う際は、車両を長時間駐車する前に急速充電することをオススメします。というのも、車種にかかわらず低温環境下に放置するとバッテリー温度が低下して、急速充電性能が低下してしまいます。 よって、たとえば宿泊先に普通充電がなく、翌日も長距離を走行する場合は、宿泊施設に到着する前の電池が冷える前に急速充電を行う方がベターなのです。もちろん宿泊施設に普通充電があるのがベストではあります。 【走行2】青森市街→紫波SA(90kW充電器) ・走行距離:195.6km ・消費電力量:77.6%→4.1% ・平均電費:300.6Wh/km(3.33km/kWh) ・外気温(青森→紫波SA):-2℃→-3℃(最低-9℃) 東北自動車道最北に位置する90kW充電器に到着しました。盛岡市内に入るまでは断続的に降雪があり、路面状況は圧雪ですので電費に悪影響を与えています。最低気温もマイナス10℃近くまで低下しているものの、やはり昨年検証したテスラ・モデルYパフォーマンスと比較してもかなり電費が悪いように感じます。 この紫波SAの上下線には1月末に90kW充電器が新設されたので、これまで設置されていた50kW級と比較すると充電にかかる時間を大幅に節約できています。じつは北海道遠征の往路では紫波SA下り線にはまだ90kW級充電器の設置工事が行われており、その往路との比較という観点でも90kW級以上の急速充電器の重要性を痛感できました。

TAG: #長距離 #電費
TEXT:渡辺陽一郎
充電中は「車内で待つ」がベスト! EVで急速充電器トラブルを避ける最低限のマナーとは

充電中は車内にいるようにしたい EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド/充電の可能なハイブリッド)を使っていると、自宅だけでなく、高速道路のサービスエリアなどで急速充電する機会もある。このときに大切なのが利用するときのマナーだ。 充電しているときのケーブルは、歩行者が車両の付近を通っても足が引っかからないように、なるべく車両側に寄せておきたい。乱雑にならないように注意する。 そして充電中は、なるべく車内にいるようにしたい。充電時間を利用して食事をするなら、サービスエリアのレストランには入らず、売店で弁当を買ってきて車内で食べる。レストランに入ると、注文してから食事を始めるまでに予想以上の時間がかかり、充電が終了しているのに車両を放置する心配も生じるからだ。充電を終えたあとの放置は、充電を待つ後続車のユーザーに迷惑をかける重大なマナー違反だから避けたい。 その点で車内にいれば、後続車両が来たときも、挨拶をしたり残りの時間を伝えられる。なお急速充電設備が混雑しているときは、充電時間は最長30分で切り上げるなどの配慮が必要だ。スマートフォンなどで検索して、なるべく空いている充電設備を選ぶことも考えたい。 そして充電が終了したら、ケーブルは正しい位置に格納する。路上に放置したりすると、歩行者の足に引っ掛かったり、後続の充電車両がタイヤで踏んでしまうなどのトラブルを引き起こす。充電を終えたあとの対処も重要だ。 充電に限らずマナーの基本は、自分が嫌なことは他人にもしない、自分が心地よいことを他人に対しても心がける点にある。そうすれば急速充電器を気もちよく使える。

TAG: #充電 #急速充電
TEXT:桃田健史
「これがジャガー?」ポップな丸文字ロゴに昔からのファンはビックリ! 英国の伝統「ジャガー」が新たに目指すものとは?

ジャガーの存在意義を再定義 英国JAGUAR(以下、ジャガー)は2024年11月、次世代に向けた新しいロゴを公開した。ジャガーの新しいロゴには大きく4つの表現方法がある。 ひとつ目は、デバイスマーク。幾何学的なフォルム、大文字と小文字をシームレスに表現した。 ふたつ目は、ストライクスルー。直線的グラフィックでの表現。 3つ目は、活気あふれる豊かな色彩(Exuberant Colors)は、イエロー、レッド、ブルーを基調として表現。 そして4つ目が、メーカーズマーク。ジャガーの起源を表現する。 なぜいま、変革が必要だったのか。 ジャガーランドローバーの事業戦略を振り返れば、EVシフトに向けた準備と見るのは当然のことだろう。同社は2021年2月、オンラインでグローバル戦略「REIMAGINE」を発表。そのなかで、2030年までにジャガーとランドローバーの全モデルをEV化するとした。 この時期は、ボルボも2030年までに完全EVシフトを宣言し、またホンダも三部新体制になったタイミングで2040年にEV(FCEV)シフトを目指すと発表するなど、世のなかが本格的にEV普及に入るといったイメージを多くの人がもった時期だ。 その上で、ジャガーランドローバーは「REIMAGINE」に従い、2023年4月にはEVシフトに向けた大規模な投資計画も公開した。その時点から5年間で、総額150億ポンド(1ポンド=193円換算で2兆8950億円)を投じるとした。 こうした部品調達から製造拠点まで、ハードウェアやソフトウェアの開発が進むなかで、 重要性が増したのはブランドの再構築だ。ICE(内燃機関)からハイブリッド、そしてEVへシフトするというパワートレインの変革だけではなく、「社会におけるジャガーの存在意義」を再定義する必要があったといえる。 その後、欧州グリーンディール政策の軌道修正や、中国EV市場での変化、さらには第2次トランプ政権によるEV政策の変化など、EVシフトに対する不安定要素によって、ジャガーランドローバーとしては事業戦略の一部見直しがあるものの、大筋としてはEVシフトを推進する方向性に変わりはない。 そうしたなかで、ブランドを象徴するロゴの表現が極めて大事なのだ。自動車に限らず、ブランドに対するイメージは、国や地域それぞれで違い、また消費者それぞれでも違う。 たとえば、日本人がジャガーと聞いて、何を想像するのか? 一般的には、王家、紳士淑女、ブリティッシュグリーンだろうか。 クルマ好きとしては、EタイプやXJといったモデル記号、または近年ではフォーミュラEでの活躍を連想するかもしれない。 「Copy Nothing」(なにもののコピーではない)。 これこそ、ジャガー創業者ウィリアム・ライオンズ卿のジャガーブランドに対する信念だ。新たなるロゴ表現によりいま、新生ジャガーが走り出したといえる。

TAG: #エンブレム #ロゴ
TEXT:琴條孝詩
毎日そんなに長距離乗るか? 根拠なきEVへの「航続距離の不安」は正しい知識で見直すべき

EVオーナーの1日の走行距離の中央値は20km前後 電気自動車(EV)を選ぶ際、必ず話題に上るのが「航続可能走行距離」だ。欧米でも「レンジ不安(range anxiety)」として依然として関心を集めている。 カタログスペックを比較したり、実際の使用状況をSNSで調べたりと、多くの人がその数字に注目する。しかし、冷静に考えてみてほしい。日常的に数百kmも移動する人が、果たしてどれだけいるだろうか? 大多数のドライバーは、通勤や買い物といった近距離での利用がメインではないだろうか。それにもかかわらず、なぜここまでEVの航続可能距離に不安を感じるのだろうか? MapFanを提供するジオテクノロジーズが2023年に実施した調査で、軽EVオーナーも普通車EVオーナーも、1日の走行距離の中央値は、EVの航続可能距離にかかわらず20km前後であることが明らかになった。具体的には、航続可能距離100〜200kmのEVで約20.4km、200〜300kmのEVで約16.3km、301km以上のEVで約18.1kmとなっている。これは、現在の多くのEVの航続可能距離が300km以上であることを考えると、日常的な使用には十分すぎる距離である。 さらに興味深いのは、EVの航続可能距離と実際の走行距離に相関関係が見られないことだ。つまり、より長い航続可能距離を持つEVを所有しているからといって、必ずしも長距離を走行しているわけではないのである。これは、多くのEVユーザーが日常的な短距離移動にEVを使用していることを示唆している。 <日常利用では十分な航続可能距離、それでも消えない不安> 現在のEVの航続可能距離は、ひと昔前と比べて飛躍的に向上している。最新モデルのなかには、500km以上走行可能な車種も珍しくない。これは、東京から大阪までを休憩なしで走破できる距離に匹敵する。一般的な使い方であれば、数日に1度の充電で十分だろう。 にもかかわらず、多くの人が航続可能距離に不安を抱くのは、以下の要因が考えられる。 まず、内燃機関(ICE)車との比較だ。ICE車は数分で給油が完了し、多くの場合、航続可能距離もEVより長い。この手軽さと安心感が、長年培われてきたICE車への信頼に繋がっている。EVの場合、充電に時間がかかること、充電スポットの場所や混雑状況を考慮する必要があることが、心理的な負担となるのだ。 次に、走行環境による航続可能距離の変化が挙げられる。EVの航続可能距離は、気温、運転方法、エアコンの使用状況など、さまざまな要因によって大きく変動する。とくに山道の上り坂では航続可能距離が極端に短くなるので心理的ストレスが増長する。また、冬場はバッテリー能力が落ちるため電力を大きく消費する暖房使用時は、航続可能距離が大幅に短くなる可能性がある。 こうした変動要因の多さが、計画的な移動を困難にし、不安感を増幅させる。数百kmにおよぶ長旅では、事前に周到な充電計画が必要になることなどICE車に比べて面倒であることも否めない。

TAG: #充電 #航続距離
TEXT:御堀直嗣
エンジン車と違ってEVはFFだのFRだのにあまり意味はなかった! 重要なのは「駆動輪」がどこかだけ

モーターの配置や駆動輪が関係 FR(フロントエンジン・リヤドライブ)やFF(フロントエンジン・フロントドライブ)の表現を、電気自動車(EV)では、何がどう配置されていることによって判断すればよいのだろうか。 ひとつの考え方は、エンジンに替わるモーターの配置と駆動輪の関係で、FRやFFなどということができるのではないだろうか。 それでも、たとえばボルボがEX40で当初の前輪駆動から後輪駆動へ、同じ車種で駆動方式を変更したように、モーターにはエンジンのような補器(排気管など)がないので、フレーム構造が許せば容易に車載位置を変更することができる。 モーターの車載という点で、インホイールモーターが端的にEVらしさを表しており、タイヤのホイールの内側にモーターを組み付けることで、車体側に搭載しない選択肢もある。こうなると、FRやFFといった表現はそぐわない。 したがって、単に前輪駆動、後輪駆動、あるいは4輪駆動(全輪駆動)ということになっていくのではないか。 EVは、駆動用バッテリーという重量物を、平たく床下に車載するのが一般的で、それによって前後の重量配分もほぼ決まる。したがって、エンジン車のようにFFだと前輪側が非常に重くなるといった不均衡は生じにくい。モーターよりバッテリー重量のほうが前後重量配分への影響が大きいからだ。 EV専用設計になれば、駆動輪の近くにモーターを車載するほうが設計の合理性は高まる。もし、前輪側にモーターを配置し、駆動は後輪という配置にすれば、モーターから後輪側へプロペラシャフトを通さなければならず、それによって室内の床にエンジン車と同じようなトンネルの出っ張りができ、居住性に影響を及ぼす。なおかつ、車体床下には平らにしたバッテリーを敷き詰めたいので、その間をプロペラシャフトが通り抜けるような設計は、車載バッテリー容量の確保にも障害をもたらす。よいことはひとつもない。 後輪駆動なら、後輪側にモーターを搭載するのが適切で、この場合は、エンジン車でいうRR(リヤエンジン・リヤドライブ)といえなくもない。ただし、エンジン車でのRRは、後輪の車軸より後ろにエンジンが載っていることをいう。フォルクスワーゲンのID.4は、後ろにモーターがあり、後輪駆動だが、モーターを後輪車軸の前側に搭載するので、ミッドシップといえなくもないと語っている。モーター位置が車軸の前か後か、その配置次第で言葉どおりといえなくもないが、もはやエンジンのときのような意味はそれほどない。 結論として、EVでFRやFF、RRといった呼び方は、必ずしも間違いではないかもしれないが、もはやあまり意味をなさなくなっており、単に後輪駆動(RWD)、前輪駆動(FWD)、4輪駆動(4WDまたは全輪駆動AWD)と表現したほうがいいのではないか。 そのうえで、FRやFFといった表現が残るとしたら、それはエンジン車やハイブリッド車(HV)などと共通の車体を使うEVに限られていくのではないだろうか。

TAG: #FF #FR
TEXT:山本晋也
レシプロ・ロータリーみたいに全然違う! EVで使われるモーターにもさまざまな種類が存在した

もっとも多いのは「永久磁石型同期モーター」 エンジンに2サイクルガソリン、4サイクルガソリン、ディーゼル、ロータリー(ヴァンケル)……とさまざまな種類があるように、じつは駆動用モーターも複数のタイプが存在、実際に市販車に搭載されている。諸元表ではモーターではなく「電動機」と表記されているが、ここではモーター表記で進めていこう。 基本的な分類としてはAC(交流)モーターが大多数で、いわゆる四輪のEVでは三相交流が主流となっている。構造の違いにより同期モーターと誘導モーターが二大派閥状態で、同期モーターは永久磁石型と巻線界磁型に分類することができる。 それぞれのモーターには、どのような特徴があるのだろうか。 もっとも多数派となっているのが「永久磁石型同期モーター(PM:Permanent Magnet Synchronous Motor)」だ。 その構造は、いわゆるモーターと聞いて思い出すものに近い。回転する部分(ローター)に永久磁石を置き、そのまわりを囲む部分(ステーター)に交流電流を流すことで生まれる反作用を利用して、ローターを回転させるという仕組みになっている。 日産アリアなど採用例の少ない「巻線界磁型同期モーター(EESM:Electrically Excited Synchronous Motor)」は、上記PMモーターの永久磁石を電磁石に置き換えたものと捉えると理解しやすい。 特性上のメリットは、高回転・高出力時の効率にある。また、永久磁石を使わないということは、資源リスクの面からもメリットといえる。 高性能な永久磁石にレアアースが欠かせないことはいうまでないだろう。レアアースについては、採掘環境が非常に劣悪ということが社会問題になることもあるし、その調達にカントリーリスクが存在する面もある。永久磁石を使わないことは時代の要請ともいえる。

TAG: #モーター #種類
TEXT:渡辺陽一郎
EVで得する人は「自宅充電可&セカンドカー」! そうじゃなければ燃費のいいハイブリッドのほうが経済的にはメリットあり

充電は自宅で行うのが割安 いまは急速充電器が普及している。駆動用電池の温度管理も入念に行っているから、急速充電器の利用だけでEVを使うことも可能だ。しかし、基本的には充電は自宅で行い、急速充電器は緊急用と考えたい。駆動用電池の負荷を考えると、理想は従来と同じく普通充電になり、急速充電器は施設の都合で廃止されることもあるからだ。 また、日産は急速充電器を利用できるゼロ・エミッション・プログラム3を提供しているが、利用料金を考えると割安とはいえない。たとえばプレミアム200のプランは、月々6600円で急速充電器を200分、普通充電器を600分利用できる。 リーフGの場合、急速充電器を200分使って走れる距離はWLTCモードで約850kmだ。普通充電の600分では約400kmになる。両方合わせて1250kmだ。 一方、レギュラーガソリン価格が1リッター当たり170円として、6600円分を給油すれば39リッターになる。1リッター当たり30kmを走行可能な燃費の優れたハイブリッド車なら、39リッターで1170kmを走行可能だ。レギュラーガソリン価格が以前のように1リッター当たり140円まで下がれば、6600円で1400kmを走行できる。 しかも外出先での普通充電は使い勝手が悪いから、急速充電に頼ると、850kmで6600円を支払うことになって割高感が強まる。このように考えると、充電は自宅で行うのが割安だ。 また、EVは1回の充電で走行できる距離がエンジンを搭載するクルマに比べて短い。これを伸ばそうとすれば、大型のリチウムイオン電池が必要でボディも重くなり、モーターは大型化する。拡大の悪循環に陥ってしまう。 そうなるとEVは、自宅に充電器を設置できる一戸建てのユーザーが、買い物などの短距離移動に使うセカンドカーに適する。長距離移動にはファーストカーを使うから、EVのセカンドカーが長い距離を走れる必要はない。 このニーズに応えて、サクラはEVの国内販売ナンバーワンになった。毎月のEVの販売状況を見ると、国内で売られるEVの40%近くをサクラが占めることもある。サクラのリチウムイオン電池は20kWhと小さく、1回の充電で走行できる距離も180kmと短いが、セカンドカーとして使うなら不都合はない。軽自動車だからボディはコンパクトで、街なかの移動でも使いやすく、Xは実用装備を充実させて価格を259万9300円に抑えた。国から交付される補助金の55万円を差し引くと、実質価格は200万円少々だから購入しやすい。 以上のようにEVライフは、自宅に充電設備を設置できるユーザーが、セカンドカーとして利用するのにピッタリだ。

TAG: #充電 #所有
TEXT:琴條孝詩
クルマで儲けないでソフトで稼ぐ! EVメーカーが狙う「新たな」クルマのあり方とは!!

さまざまな施策は新たなビジネスモデルへの布石 近年、EV(電気自動車)の販売競争は世界的に激化している。とくに中国メーカーの台頭が目立ち、価格競争が熾烈を極めるなか、テスラやBYDなどの大手EVメーカーは、大幅値引きや金利0%キャンペーンを実施し、シェア拡大を狙っている。これらの施策は単なる販売促進策ではなく、新たなビジネスモデルへの布石といえるだろう。 <ハードウェアからソフトウェアへの価値転換> テスラが2024年6月まで実施した0%金利キャンペーンでは、Model 3 RWDの購入に際し、金利負担をなくすことや補助金の活用により、総額80万円以上の恩恵を受けられた。現在は、3月末までに納車されるModel Yの在庫車とModel 3を購入すると5年間スーパーチャージャーでの充電料金が無料になるというキャンペーンをやっている。 BYDも本体価格を割安に設定し、CEV補助金を活用して手に入れやすい価格戦略を打ち出している。これらの積極的な価格攻勢は、第一義的には単に販売台数を増やすためだけでなく、顧客基盤を早期に確保する意図がある。 また、従来のICE(内燃機関)車とは異なり、EVはハードウェアよりもソフトウェアで収益を上げるビジネスモデルへと移行しつつある。クルマ本体の販売価格を抑えることで、より多くの顧客を獲得し、アフターサービスやサブスクリプション型のサービスで継続的な収益を得ることを目指しているのだ。 そのほかEVメーカーにとって、販売台数を増やすことは単なる収益向上だけではなく、クルマを通じて得られる膨大な運転データや利用者情報を収集し、活用することが重要な目的となっている。 これらのデータを分析することで、ユーザーのニーズや嗜好を深く理解し、より魅力的な製品やサービスの開発につなげることができるのだ。加えて、自動運転技術の向上やMaaS(Mobility as a Service)の実現にも欠かせない要素となっている。

TAG: #メーカー #販売促進
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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