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TEXT:岡崎 宏司
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第16回:新型「プジョー E-208」の印象

新型へ、気持ち揺れ動く 去る7月6日、ステランティスは、欧州でプジョー208のマイナーチェンジを発表した。 エクステリアが中心のマイナーチェンジだが、強いインパクトがある。僕は現行E-208のオーナーだが、新しいデザインにひと目で惹かれた。 現行プジョーE-208はデビューして3年だが、生産台数はすでに100万台を突破。2021年と2022年には、欧州でのベストセラー車になっている。 長年独占し続けてきたVWゴルフの王座を奪ったということだから、これは「ちょっとしたニュース!」と言えるだろう。 僕は2021年1月から、BEVの「E-208GT」を愛用しているが、とても気に入っている。Bセグメントのサイズもいいし、フランス生まれならではの粋なルックス、そして素直で心地よい走り味にも……。 だから、車検を受けて乗り続けようと思っていた……のだが、新型E-208の写真を見たとたん、気持ちは揺れ動いた。 際立つ印象に、惹き込まれる 現行モデルでも旧さはまるで感じず、まだまだ時代を先取りしていると思っていた。ところが……マイナーチェンジされた新型は、そんな僕の気持ちをぐらつかせたのだ。 デザインのイメージは同一線上にあるし、奇をてらっているわけでもない。現行モデルとマイナーチェンジしたモデルが、「プジョー208」であることは誰もがひと目でわかる。 現行モデルの顔を初めて見た時の印象は鮮烈だった。一瞬で惹き込まれた。そして今、僕は新たな顔に再び鮮烈な印象を受け、強い引力で惹き込まれていることになる。 女性に例えるなら、目と頬と唇の化粧を、よりインパクトのある、より個性の際立つものにしたとでも言えばいいのか。 現行208も際立った個性をもつ顔立ちだが、新型208はさらに際立っている。エキゾチックで美しい顔立ちを持つ女性アスリートを目の前にしたようだ。 迫力ある口、小さいながら爛々とした目、そして3本の鋭い爪は、より個性を増し、洗練を増したライオンのエンブレムに相応しい。 鋭さと洗練という点ではテールランプも軌を一にしている。このテールランプにも僕は一目惚れした。 そして、17インチホイールのデザインもまた、「さすがプジョー!」と言えるアートライクな姿に進化している。 新型208のイメージカラーは「アゲダ イエロー」と呼ばれる明るい黄緑色。これがまたいい。僕は今まで、イエローもグリーンも着たことがない。 でも、さらに華やかなアゲダ イエローにはなぜか強く惹かれている。思い切って「着てみようかな!」と思い始めている。 「これに上等なコーティング仕上げを加えたら、絶対に素敵だよな!!」……と、楽しい妄想を巡らせている。

TAG: #208 #e-208 #EVは楽しい! #プジョー #岡﨑 宏司
TEXT:桃田 健史
日産創業の地・横浜工場で次世代に向けて進化を準備。エンジン累計4000万基突破取材会で明らかになったこととは?

日産の横浜工場で製造されたエンジン総数が2023年6月に累計4000万基を超えた。それに伴い、「エクストレイル e-POWER」等に搭載するVC-ターボの製造工程を公開。さらに、横浜工場の次世代化について方向性を示した。 1933年創業からDNAを継承 京浜工業地帯の一角にある、日産自動車横浜工場は、1933年に日産(当時:自動車製造株式会社)が創業した地である。1935年には、日本初の自動車一貫製造工場として稼働した。生産したのは、ダットサン14型だった。 その後、1965年に神奈川県内の座間工場完成に伴い、横浜工場はエンジンやサスペンション等のユニット生産工場に特化し、現在に至っている。2010年には、「リーフ」対応の電気モーター、また2019年にはe-POWER用モーターの生産も開始した。 日産横浜工場長の和田民世氏は「ここは、生産技術開発部門と協働し、圧倒的なものづくり力で量産条件をグローバルで展開する、グローバルパイロットプラントだ」と、日産にとっての横浜工場の立ち位置を表現する。 VC-ターボの生産技術詳細を初公開 日産は今回、横浜工場での生産累計4000万基突破に伴い、量産エンジンとして世界初となる圧縮比を可変できるターボチャージャー付エンジン「バリアブル・コンプレッション・レシオ・ターボ(略称VC-ターボ)の生産技術をメディア向けに初公開した。  理論上、ガソリンエンジンにおいて、圧縮比を上げるほど理論熱効率も比例して上がる。だが、あまりに高い圧縮比では、シリンダー内で混合気が自然着火するノッキングなどが発生する。そうしたガソリンエンジンの基本特性を踏まえた上で、エンジンの運転中に圧縮比を可変することがガソリンエンジンの理想の形であると、長年に渡り言われてきた。 実際、「(一時期、日産と技術連携していた)メルセデス・ベンツも、圧縮比が可変するエンジンを試作したが量産が難しく実現していない」(日産エンジニア)という。日産では、こうした技術難関を、高強度部品の製造技術、高精度部品の加工技術、高精度部品のバラツキをコントロールする組立技術、さらに新材料と新工法にチャレンジすることで実現した。 技術的には、ピストンの上下運動を、U(アッパー)リンク、Lリンク(ローワーリンク)、Cリンク(コントロールリンク)の3部品の動きを、VCRアクチュエーターを介して作動させることで、圧縮比の可変を行っている。 そうした設計図の上での理論を、横浜工場における「匠」の技術を自動化した生産技術によって、リアルワールドでのパワートレインとして量産しているのだ。

TAG: #全個体電池 #工場 #日産
TEXT:烏山 大輔
電費もちょうどいい感じ!BMW iX1 xDrive30 M Sport THE EV TIMES流・電費ガチ計測

エアコンは23℃で常時オン、定速走行によるTHE EV TIMES流電費計測を、6月某日にBMW iX1 xDrive30 M Sport(以下、iX1)で実施したので、その詳細を報告したい。試乗記でもお伝えしたように、取り回しや居住性、動力性能などを高次元でバランスさせたiX1は電費もほど良い結果を残した。 ※計測方法などについてはこちらをご覧ください。 100km/hでも420km走行できそう iX1の一充電走行距離は465km(WLTC)で、電池容量は66.5kWhだ。一充電走行距離の465kmを実現するには、電費が6.99km/kWh(目標電費)を上回る必要がある。 ※電費についてはテスラなどで表示されるWh/km単位の数値も併記している。 各区間の計測結果は下記表の通り。6.99km/kWhを上回った場合、赤字にしている。全ての区間で勾配の登りよりも下りの方が良い電費が出て、勾配に素直な結果となった。 80km/h巡航のBとC区間は両方とも復路が下り勾配で、特にC区間の復路は20.4km/kWhと20の大台を超えた。しかし347mを登る往路が足を引っ張り、区間平均ではより平坦なB区間(9.06)に届かなかったが、目標電費を超える8.54km/kWhを記録した。 標高差が25mとわずかなA区間(100km/h巡航)は、往路と復路の差も少なく平均では6.55km/kWhと目標電費にわずかに届かなかった。 同じ100km/h巡航で316mもの標高差があるD区間では、勾配を下る往路で14.5km/kWhと目標を大きく超えたが、復路が4.0km/kWhとなんと120km/h区間よりも悪くなり、区間平均も6.27km/kWhとA区間よりも悪くなった。やはりなるべく平坦な方が電費は良くなるようだ。 120km/h巡航のE区間は標高差こそ67mと比較的小さいが、速度上昇により電費が悪化した。下り勾配の往路が復路より0.2km/kWh良い電費だったが、平均では5.10km/kWhだった。 80km/h巡航なら東京から兵庫県や岩手県に到達できそうだ 各巡航速度の平均電費は下記の表の通りとなる。「航続可能距離」は電費にバッテリー容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は465kmに対して、どれほど良いのか、悪いのかだ。80km/h巡航のみが一充電走行距離を超える結果となった ※電費は小数点第二位を四捨五入して表示しているため、実際の計算とは多少のずれが生じる。 80km/h巡航は、一充電走行距離(カタログ値)の1.24倍となる578kmを走行できる計算になる。これは東名高速道路の東京IC(東京都世田谷区)を出発した場合、大阪府を通りすぎ、兵庫県南西部に位置する山陽自動車道の龍野IC(568km、兵庫県たつの市)に数字上は辿り着ける。東北自動車道の場合は、川口JCT(埼玉県川口市)から岩手県北西部の安代IC(565km、岩手県八幡平市)までの走行が望めるレベルだ。 100km/h巡航の場合は、一充電走行距離(カタログ値)を8%だけ割り込み、426kmとなった。東京ICからだと愛知県と三重県を通り越して、琵琶湖のほとりの名神高速道路、瀬田東IC(423km、滋賀県大津市)まで走行できそうだ。東北自動車道の場合は、宮城県を通過し、岩手県に入った最初のICである一関IC(422km、岩手県一関市)に到達できる見込みだ。 80km/hでも100km/hでもクルマよりも人間の方が先にトイレや食事などの休憩が必要になるであろうから、そのタイミングで充電が可能であれば、上記のようなロングドライブも十分可能だろうと考える。 120km/h巡航でも339km走行できる。現在、制限速度120km/h区間は新東名高速道路の静岡県内(御殿場JCTー浜松いなさJCT)が最長の145kmなので、十分な能力を持っている。 急ぎの場合は途中で充電しても飛ばした方が早く着く 各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると26%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.71倍の航続距離の伸長が期待できる。 仮に80km/h巡航で充電無しで走行できる587kmを100km/hや120km/hで走行した場合、途中で充電しても早く到着できるのかを計算してみると以下の結果となった。 80km/h 7時間14分 100km/h 6時間12分(80km/hより1時間2分早い、25分の充電※1を含む) 120km/h 5時間34分(80km/hより1時間40分早い、40分の充電※1を含む) ※現状、日本では120km/hでこれほどの長距離を走行できるところはないのであくまで仮定の話です。

TAG: #BMW #iX1 #電費計測
TEXT:生方 聡
夏にご用心! 充電が厳しいのは冬だけじゃなかった [ID.4をチャージせよ!:その15]

ここ東京でも最高気温が30℃を超える日が続いていますが、この暑さがこたえているのは人間だけではなく、ウチのID.4にも猛暑の影響が出ています。 90kW急速充電は要注意 日本に導入されている「ID.4」は最高94kWの急速充電(CHAdeMO)に対応しています。実際、90kW急速充電器では74kW程度、150kW急速充電器では90kW強の電力で充電できることを確認しています。 ただし、はじめて過ごした冬には、90kW急速充電器を使っても、条件によっては充電電力が40kW止まりということも少なくなく、気温やバッテリー温度が急速充電に大きく影響していることがわかりました。一方、50kW急速充電器では、ほぼ40kW台で充電を行うことができ、90kW器に比べて気温の影響は受けにくいようでした。 春になると、90kW急速充電器で70kW台が安定して出るようになり、充電に対する不安はすっかり薄らいでいました。ところが、気温34℃という炎天下のもと、常磐自動車道の友部サービスエリア下りにある“マルチタイプ急速充電器”にID.4 Proをつないで充電を始めたところ、充電電力は40kW台前半から上がりませんでした。 このマルチタイプ急速充電器では、充電開始から15分までは「ブースト機能」が働き90kW、その後は50kWで急速充電ができます。いつもなら30分で30kWh近く充電できるのですが、この日は23.4kWhと少なめ。これだと、50kW急速充電器を使うのとあまり変わりません。

TAG: #ID.4 #VW
フェラーリ SF90 XX スパイダーのフロントビュー
TEXT:小川フミオ
SF90 XXが示すフェラーリ流の「電気の使い方」。跳ね馬の最新PHEVを徹底解説

フェラーリの最新プラグインハイブリッド車「SF90 XX(エックスエックス)」は、サーキットも公道でも使える最新のスペチアーレだ。V8ツインターボエンジンにトリプルモーターを備えたSF90 XXは、2025年にも登場すると噂されている同社初のピュアEVモデルへの架け橋となるのか。自動車ジャーナリスト・小川フミオが発表会の現場から詳報をお届けする。 ランボルギーニもほぼ同時期にPHEVを発表 フェラーリが2023年6月29日に、「公道を走れるレーシングカー(フェラーリ的にいうと「XX」モデル)」であるプラグインハイブリッド「SF90 XX(エックスエックス)」を発表。 このとき、ほぼ同じタイミングで、ランボルギーニがやはりプラグインハイブリッドの「レヴェルト」を東京で公開した(本国での発表は2023年3月)。 おもしろいのは、ランボルギーニもこのクルマの特徴として「ハイブリッド化は、パフォーマンスとドライビングエモーションを、前代未聞のレベルにまで引き上げます」としていること。 電動化をもって、フェラーリSF90 XXが「パフォーマンスとドライビングエモーションとデザイン(フェラーリは「デザイン」もつけ加えた)を従来の枠を超えてはるか先まで推し進めました」(マーケティング担当重役のガリエラ氏)としているのと、よく似ているではないか。 電動化は、従来カーボンフットプリントのため、つまり温暖化をまねく二酸化炭素の排出量を下げるための技術であることを、メーカーにとっての金科玉条(きんかぎょくじょう)のごとく前面に押しだしてきた。 実際、フェラーリにおけるプラグインハイブリッドのオリジンともいえる「ラ・フェラーリ」(2013年)を発表した際は、排出ガス低減も謳われていた。 当時、ラ・フェラーリのCO2排出量は220g/km。いっぽう、今回のSF90 XXをみると、ベースになったSF90ストラダーレのそれは154g/km。 12気筒のラ・フェラーリとは、エンジンを含めたすべてのシステムが違う。なので正確な比較はできないながら、年を追って、エミッションコントロールも、ちゃんと“進化”しているといえる。 SF90 XXの場合、エミッションの数値は未発表(申請中)だが、160g程度に落ち着くのではないだろうか。

TAG: #PHEV #SF90 XX #フェラーリ
TEXT:桃田 健史
水力発電99.6%で暮らす「屋久島」。アウディBEVフルラインナップで島めぐり

今年、世界遺産登録30周年を迎える鹿児島県屋久島。年間降雨量が多いことから水力発電が街の電気の主流となっている。屋久島の電力の要となっている水力発電の設備や、アウディの支援によって実現した学生向けのレクチャー、町の関係者や高校生を交えた「未来共創ミーティング」についてレポートする。 恒例となったサスティナブル・フューチャー・ツアーとは? アウディジャパンが「アウディ・サスティナブル・フューチャー・ツアー」を鹿児島県屋久島で実施した。 屋久島空港に到着すると、「e-tron GT」「e-tron」「Q4 e-tron」などアウディのBEVフルラインナップが出迎えてくれた。 各モデルを乗り比べながら、屋久島の自然、文化、そして地域産業を実感する旅である。 アウディといえば、2026年以降にグローバルで導入する全てのモデルをBEV化し、2033年にはガソリンやディーゼルなどの内燃機関を搭載するモデルの生産を終了することを宣言する、BEV化に積極的なブランドとして知られている。 モデル戦略のみならず、BEV化が進む社会とは具体的にどのような形になることが人々にとって有意義であり幸せなのか、という大きな命題に対してアウディは真正面から捉えようとしている。そうした議論の場として、「アウディ・サスティナブル・フューチャー・ツアー」が日本国内で企画された。 2022年度は、岡山県真庭市でバイオマス発電について、また岩手県八幡平市では地熱発電について、メディア関係者、学術関係者、そして地元の自治体関係者と対話する場を設けてきた。 3回目となる今回は、舞台を鹿児島県屋久島に移しての実施である。

TAG: #アウディ #屋久島 #水力発電
港区芝公園付近に設置した急速充電器
TEXT:烏山 大輔
利用回数は3倍に増加!東京都が進める公道への急速充電器設置について担当者へインタビュー

2050年に「CO2排出実質ゼロ」の目標を掲げる東京都。その東京における運輸部門のCO2排出量は全体の2割、そしてその8割を自動車が占めているため、運輸部門のゼロエミッション化には車そのものの脱炭素化が必要だ。その実現に向けて東京都は電気自動車などの購入に補助金を出すなどの取り組みに加え、公道への急速充電器の設置事業も進めている。今回はこの事業を担当する方々に話をうかがうことができた。 日本初、パーキングチケット区画への急速充電器の設置 東京都が2023年3月24日から運用を開始した港区芝公園付近(港区芝公園4-6-8)と渋谷区代官山付近(渋谷区猿楽町29-6)の各1基の急速充電器(50kW)は、日本初のパーキングチケット区画への設置となった。 「設置から3ヵ月が経ち、運用開始した初めの1ヵ月と直近の1ヵ月では、利用回数が3倍に伸びていて、とても手応えを感じています」と教えてくれたのは、東京都 産業労働局 産業・エネルギー政策部 ZEV推進担当課長の坂井彰洋さんだ。この日は坂井さんに加えて産業労働局 産業・エネルギー政策部 事業者エネルギー推進課 課長代理の菱沼滋夫さんと同課主事の黒川 鷹さんからも丁寧な説明を頂いた。 2022年度末から検討が始まったこの事業は、都道を管理する建設局や安全性の面では警視庁と1年近く協議を重ね実現に至った。 新たに6月22日からは信濃町駅付近(新宿区南元町9番地)にも50kWの急速充電器を設置した。前述の2箇所と合わせたこの3箇所への急速充電器の設置は、都が急速充電器の公道への設置を推進するためe-Mobility Powerを連携事業者とする協定を締結、国土交通省の「令和4年度道路に関する新たな取り組みの現地実証実験(社会実験)」に位置付けられている。 2021年3月時点で都内に326基の公共用急速充電器があったが、都はこれを2030年までに1,000基に増やす目標を立てている。 今回の3箇所が設置場所として選定された理由は、周辺に公共の充電器がなく、需要があると予測したため、かつ東京としてのシンボリックな場所だったからだ。また充電器のスペックは、設置場所の周辺住民の理解、歩道の幅の確保、電線の引き込み、道路の使用許可などを考慮し、e-Mobility Powerと検討の上、50kWに決定している。 90kWや150kWなどのスペックとなると、特に夜間の充電器の発する音対策や充電器本体とは別にキュービクル(変圧・配電するための設備)を設置するスペースも必要になってくるため、よりハードルが上がるが、それらの条件を満たす場所があれば設置を検討していきたいとのことだった。 利用者のアンケートには、こういった取り組みがもっと広まって欲しいという声が多く寄せられているそうだ。 公道に設置するということで安全性にも配慮し、充電コネクターを充電器本体ではなく、充電器の横にある専用のスタンドに戻すことで充電ケーブルが車道にはみ出してしまうことを防いでいる。また、充電ケーブルには蛍光テープを貼り、夜間に他の車やバイクの運転手からの被視認性を高め、安全性の向上を図っている。 ケーブルを車道に出しっぱなしにすることや、充電が終わった後も駐車し続けるなどの行為は、充電設備の普及の妨げになりかねない。利用者のマナーもインフラ事業、さらには乗用車の脱炭素化を進める重要な要素であることを改めて認識したい。

TAG: #公道 #急速充電器 #東京都
フェラーリ SF90 XX ストラダーレの俯瞰目ビュー
TEXT:小川フミオ
フェラーリ SF90 XXは公道もサーキットも走れるスペチアーレ。跳ね馬の最新PHEVを徹底解説

フェラーリの最新モデル「SF90 XX(エックスエックス)」は、公道もサーキットも走れる先進のプラグインハイブリッド車。頼もしいモーターのパワーをフェラーリらしいパフォーマンスの実現のために活用している一方で、電気だけで走れるモードも備えるエコな一面をもちあわせている。フィオラノが送り出す新しいPHEVはどんなクルマなのか。自動車ジャーナリスト・小川フミオが解説する。 SF90以上のパワーとダウンフォース フェラーリが2023年6月29日に発表したプラグインハイブリッド「SF90 XX(エックスエックス)」。 特徴をひとことでいうと「公道も走れる初のXX」(フェラーリのスポークスパースン的役割も務めるマーケティング統括のエンリコ・ガリエラ氏)。 SF90 ストラダーレをベースに(4L V8に3つのモーターというドライブトレインや基本シャシーは共通)、パワーをアップしつつ、ダウンフォースを中心に空力を徹底的に見直している。 「XX」とは、フェラーリのサーキット専用車プログラム。XXの名をもった限定モデルを販売し、コルセ・クリエンティと呼ばれる専任部門が、サーキット走行のノウハウを伝授する。 これまでに「FXX」(2005年)、「FXX エボルツィオーネ」(2008年)、「599XX」(2009年)および「599XXエボ」(2011年)、「FXX K」(2014年)、それに「FXX K エボ」(2017年)と、高性能モデルがごく少数作られてきた。 SF90 XXの場合は、パワーをSF90 ストラダーレの735kWから797kWに引き上げると同時に、車体の空力を徹底的に見直し、「1ミリも空力的に無駄なデザインはない」(エンジニアリング担当のジャンマリア・フルジェンツィ氏)というほど。 空力の主目的はダウンフォースの増大。ノーズ、側面、そしてリアのウィングとシャットオフ・ガーニーにいたるまで徹底的に磨きあげ、結果、「SF90 ストラダーレに対して最大値で2倍」(フェラーリのプレスリリース)にまで増大させている。 高速において車体と車輪を路面に強く押しつけるダウンフォース増大によって、「車輪のグリップを強めるとともに、ラップタイムでより速くなっている」(プレスリリース)とする。

TAG: #PHEV #SF90 XX #フェラーリ
フェラーリ SF90 XX ストラダーレのフロントビュー
TEXT:小川フミオ
フェラーリ SF90 XXはピュアEVへの架け橋となるか。跳ね馬の最新PHEVを徹底解説

フェラーリが最新モデル「SF90 XX(エックスエックス)」をワールドプレミアした。V8ツインターボと3つのモーター、そして7.9kWhのバッテリーを搭載するプラグインハイブリッド車だが、いかにも彼ららしい電動システムの活かし方は、明らかに「フェラーリが作るピュアEVの姿」を予想させる。その全容を、発表会の現場から自動車ジャーナリスト・小川フミオがレポートする。 公道とサーキットの両方で使えるクルマ フェラーリがプラグインハイブリッドの新型車「SF90 XX(エックスエックス)」を、2023年6月29日に発表。 それに先立ち、ジャーナリストを集めての記者会見を、28日にイタリアの本社ちかく、ピスタ・ディ・フィオラノで開催した。 発表の瞬間まで、集まったジャーナリストにも車名も内容も伏せられていた。「こんなクルマってうわさがあるけど」と水を向けても、広報担当者はニヤニヤして首を橫にふるばかり。 最終的に午前10時を回って、フェラーリのマーケティング担当重役、エンリコ・ガリエラ氏の合図で、クルマがスポットライトとともに登場したのだった。 このクルマ、車名から、ひょっとしてクルマに詳しいかたならご賢察のとおり、2019年発表の「SF90 ストラダーレ」の発展形ともいえる。 「車名がこのクルマのコンセプトと技術的内容を物語っています」。ガリエラ氏は言う。 「公道とサーキット、どちらでも使えるクルマとして、開発したのです」

TAG: #PHEV #SF90 XX #フェラーリ
TEXT:桃田 健史
トヨタBEV戦略で新たな事実が判明!「テクニカルワークショップ2023」のフォローアップ。全固体電池に自信のワケ?

トヨタが2023年6月上旬に東富士研究所で開催した「トヨタテクニカルワークショップ2023」は、自動車産業のみならずグローバルの産業界に大きなインパクトが与えた。それから約1ヵ月、トヨタがオンラインでメディア向けにBEV戦略に関するフォローアップ会見を行った。 ギガキャストはいつ頃から、なぜ検討したのか? 「トヨタテクニカルワークショップ2023」では多様な次世代技術が世界初公開された。そのなかでもBEV(バッテリー電気自動車)に関する製造工程や電池技術にメディアの注目が集まった。 製造工程では従来の車体製造工程である、プレス機で切り出した部材を溶接ロボット等でつなぐことから一変。鋳造によって大きなボディの一部を一体成型する工法として、トヨタは「ギガキャスト」と呼ぶ。 ギガキャストに対応できる製造機器は海外で市販されており、トヨタは2018年に先行研究開発用として購入した。ただし、その時点では「BEVありき」という発想ではなく、鋳造技術を次世代車開発の手段のひとつとして捉え、新しいモノづくりに応用することを目的としていたという。 その上で、エンジンやトランスミッションでの鋳造の設計と生産のノウハウをギガキャストに活かすため現在、研究開発を進めている。 また、ギガキャストになっても、部品の共有性はTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)以上に部品の共有性が上がるとも考えている。 別の視点では、車両事故に対する修理のプロセスについて、ギガキャストになると車体のかなり大きな部分を丸ごと交換する必要性があるように思われる。この点については、車体の構造は従来車と同様にクラッシャブルゾーンの領域をしっかり分ける考え方を継承するため、ユーザーにとって大きな課題にならないという判断だ。 >>>次ページ BEVハーフが目指す意味は?

TAG: #BEVハーフ #トヨタ #全固体電池
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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