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TEXT:小川フミオ
「EQE SUV」が日本発表! 取り回し良し、使い勝手良し、スタイリング良しのBEV SUV

スタイリングはいい意味で“フツウ” メルセデス・ベンツが手がける「EQE SUV」は、余裕あるサイズのSUVタイプのBEV。2023年8月25日に日本で発表・発売された。 特徴について「リアアクスルステアリングによって、最小回転半径は4.8メートルと、よりコンパクトなクルマなみの扱いやすさ。日本の道路事情によく合ったサイズです」 発表会場で登壇した、メルセデス・ベンツ日本営業企画部の上野麻海部長は、上記のように述べて、このモデルへの期待をにじませた。 印象的だったのは、スタイリングだ。いい意味で“フツウ”。奇をてらわないデザインだ。 「メルセデスの革新的な美しさと、伝統的なSUVデザインをみごとに融合したエクステリアには、新世代のダイナミズムとメルセデスならではのエレガンスが息づいています」 上野部長は、同時にお披露目された「EQE350 4MATIC SUV」と、高性能の「メルセデスAMG EQE53 4MATIC+ SUV」の前に立ち、デザイン的な特徴について簡潔にまとめた。 メルセデス・ベンツが「ブラックパネルユニット」と名付けた、ICEならフロントグリルに相当する、独自の黒色のパネルがユニークだ。マスクのようにも見えるパネルの裏にはカメラをはじめセンシングユニットが収められている。 上記2モデルは、フロントマスクも差異化されている。 「AMGライン」エクステリアが標準となるEQE350 SUV のフロントバンパーは、「Aウイング・デザイン」とメーカーから呼ばれるテーマが採用されている。左右エアインテークとフリックを拡大。さらに下部にクロームトリムをアクセントに配したのが特徴だ。 EQE53 4MATIC+ SUVは、よりスポーティ。左右一文字のLEDによる「ライトバンド」がまず目をひく。ブラックパネルは、AMGバッジをもつ専用縦型。Aウイングは、ハイグロスブラックタイプとなる。 電気自動車専用プラットフォームならではのインテリア 室内は、デジタライゼーションがあらゆるところにほどこされている。代表的な装備は「MBUXハイパースクリーン」。コックピットディスプレイ、有機ELメディアディスプレイ、助手席用有機ELフロントディスプレイあをわせて3枚の高精細パネルを1枚のガラスで覆った「ワイドスクリーン」採用だ。 おもしろいのは、センターコンソールのデザイン。前部はダッシュボードにつながって、いっぽう下側は宙に浮いたような形状としている。 「これは、電気自動車専用プラットフォームの採用により、従来のようなセンタートンネルが必要なくなったことを視覚的に示しています」と、プレス向け資料ではBEVの要素がデザインに取り込まれたと説明している。 もうひとつのデジタライゼーションは、メーターディスプレイ。走行モードなどで変更可能だ。 EQE 350 SUV では、「スポーティ」「クラシック」「ジェントル」「ナビゲーション」「アシスト」「サービス」「Offroad」の7 つ。 EQE53 4MATIC+ SUVのばあい「TRACK PAC」「Supersport」「クラシック」「ジェントル」「ナビゲーション」「アシスト」「サービス」「Offroad」の8つとなる。 上記といちぶが重なるドライブトレインの設定(EQE 350 SUVでは、「Comfort 」「Sports」「ECO」「Individual 」「Offroad」)で、パワートレイン、ESP、サスペンション、ステアリングの特性変更が選べる。 日本ではまず「ローンチエディション」が発売される。 「EQE 350 SUVローンチエディション」は、1369万7000円で、デリバリーは発表日と同日から。「EQE53 4MATIC+ SUVローンチエディション」は1707万円で、デリバリーは10月からと、メルセデス・ベンツ日本ではしている。 <了>

TAG: #EQE SUV #SUV #メルセデス・ベンツ
TEXT:烏山 大輔
発売前のEV「ヒョンデ・コナ」を代官山T-SITEで展示開始 「ボルボEX30」「BYDドルフィン」などライバルも強敵!

ヒョンデは9月1日から28日まで、代官山T-SITEで年内に発売する「コナ」を展示する。同車は日本で発売する2台目のBEV(バッテリー電気自動車)だ。同時期に発売されるライバルとも比較してみる。 ナンバープレートの「0927」 今年の6月に行われた会見では「コナを秋頃に導入予定」とヒョンデ関係者から聞いた。 そして今回の発表と同時に公開された写真に注目すると、ナンバープレートは「0927」だ。 この数字は発売日を示しているのか、それとも9月27日に、発売に関する次なる情報発信を予定しているのだろうか。 いつの間にか四面楚歌 ヒョンデは今年3月の時点で、コナを日本に導入すると発表していた。そしてこの半年の間にボルボから「EX30」という強力なライバルが出現した。 ボルボは、EX30だけで年内に2,000台を受注するという目標を掲げており、同車のワールドプレミアからわずか2ヶ月で日本での発表にこぎつけた。ヒョンデもうかうかしていられない。 この2台の代表的なスペックは下記の通りだ。 コナ(ロングレンジ) 全長:4,355mm、全幅:1,825mm、全高:1,575mm、一充電走行距離:490km(EU仕様基準)、最高出力:160kW(218ps)、最大トルク:255Nm、バッテリー総電力量:65.4kWh EX30 Ultra Single Motor Extended Range 全長:4,235mm、全幅:1,835mm、全高:1,550mm、一充電走行距離:480km(欧州参考値)、最高出力:200kW(272ps)、最大トルク:343Nm、バッテリー総電力量:69kWh、車両本体価格:559万円 全長は120mmコナの方が長いが、全幅と全高、航続距離、バッテリー容量の差はわずかで、EX30の方がパワフルだ。 コナの価格は、兄貴分のアイオニック5が479万円からであることを考えると、400万円台前半からのスタートは間違いないだろう。ロングレンジのベースグレードでも500万円に達しなければ、EX30に対して価格面では明確なアドバンテージになる。※コナにはバッテリー総電力量が48.4kWhのスタンダードもある。 そしてアジアのライバルであるBYDも9月20日に「ドルフィン」の発売を予定している。スペックは下記の通り。 ドルフィン(ロングレンジ) 全長:4,290mm、全幅:1,770mm、全高:1,550mm、一充電走行距離:476km(WLTC)、最高出力:150kW(204ps)、最大トルク:310Nm、バッテリー総電力量:58.56kWh 現時点で価格は発表されていないが、300万円台に入ってきて、補助金によって支払いを200万円台まで減らせれば、こちらもとても強力なライバルだ。 コナの弱点は、多くの立体駐車場(高さ制限1,550mm)に入庫できない1,575mmの全高だ。あと25mmなのでとても惜しい。この点はヒョンデ関係者にも直接確認したが、この高さのまま発売するとの回答だった。 これまでBEVは、価格の3〜5割を占めるとされるバッテリーコストの影響もあり、それを“隠しやすい”高価格帯のクルマのリリースが多かったが、ここにきてBEV軽自動車との溝を埋める値段のモデルが一気に発売される。 年末にかけて上記3車を街中で見る機会も増えるだろう。 この戦いに日本メーカーが参戦していないのは少し残念だが、全速力でのキャッチアップを期待して、長い目で今後の戦況を見守っていきたい。

TAG: #EX30 #コナ #ドルフィン #ヒョンデ
TEXT:小川フミオ
メルセデス・ベンツ「EQE SUV」を発売!BEV7車種目は、日本の道路事情に合ったサイズとAMGモデルを設定

メルセデス・ベンツ日本は、8月25日にSUVタイプのBEV「EQE SUV」を発売した。「EQE350 4MATIC SUV」「メルセデスAMG EQE53 4MATIC+ SUV」の2モデルを投入。 EQE SUVにはAMGモデルを設定 メルセデス・ベンツが手がけるSUVタイプのBEV「EQE SUV」が、2023年8月25日に国内発売された。500キロを超える巡航距離、AMGモデルの設定、V2H給電システムの採用と、特徴の多いモデルだ。 これで、BEVは7台目になるので、たいしたいきおいだ。「日本市場の可能性は大きい」と、東京都内の大きなホテルの発表会の席上で、来日したメルセデス・ベンツ・グループのオラ・ケレニアス取締役会会長は語っている。 日本に導入されるEQE SUVは、2モデル。「EQE350 4MATIC SUV」と、高性能版の「メルセデスAMG EQE53 4MATIC+ SUV」だ。 EQE SUVは、2022年9月に日本導入されたBEVのセダン「EQE」と基本プラットフォームを共用。さらにセグメントではより上級のEQS SUVとも同じプラットフォームを使う。 EQS SUVとの差異は、サイズと走行距離。EQS450 4MATIC SUVと比較した場合、全長4,880ミリのEQE SUVはマイナス250ミリとなる。 航続距離では、528キロのEQE SUVはマイナス65キロというぐあい。いっぽう、メルセデスAMGによる高性能モデルの設定はEQEのみだ。 ボディサイズは、EQE350 4MATIC SUVの場合、全長4,880ミリ、全幅2,030ミリ。さきにEQS SUVよりコンパクトとしたが、それでもじゅうぶん余裕あるサイズだ。   シームレスデザインでCD値0.25 EQE SUVにおけるパワートレインのレイアウトは、メルセデス・ベンツ仕様も、メルセデスAMG仕様もともに、2基のモーターを使い、全輪駆動と共通。 前後アクスルに「eATS」なる電動パワートレインを搭載。三相の巻線を2つ備える六相式により「きわめて強力」(メルセデス・ベンツ)と謳われる電気モーターには永久磁石同期モーター(PSM)を採用。ACモーターのローターに永久磁石を採用しているため、ローターに通電の必要がないというのも特徴といえる。 ユニークなのは、ICEでいえば燃料消費率に相当する一充電あたりの走行距離を長くするための工夫。 前記「eATS」にディスコネクトユニットなる機構を組み込んでいる。低負荷時にフロントモーターをクラッチを用いて切り離すことで、走行抵抗を低減するというもの。 CD値0.25という極端に低い空気抵抗値のボディデザインも”省エネ”対策といえる。ボディは各パネル間のギャップを可能なかぎり埋めるという凝った設計で、格納式ドアハンドルなどとともに、質感と空力に大きな影響をもたらしているはず。 EQE350 4MATIC SUVは、システム最高出力215kW、システム最大トルク765Nm。駆動用バッテリーは、リチウムイオンタイプで、容量は89kWhと大きい。 メルセデスAMG EQE53 4MATIC+ SUVは、よりスポーティだ。駆動用リチウムイオンバッテリーの容量は90.6kWhに上がる。が、8月25日の発表段階では、「まだ認証がおりていない」と、日本仕様における最高出力と最大トルク、それに走行距離は未発表。 サスペンション形式は、フロントが4リンク、リアがマルチリンク式。連続可変ダンパーとエアサスを組み合わせた「AIRMATIC」が標準装備となる。 AMG EQE53 4MATIC+ SUVでは、さらに専用装備として、前後にアンチロールバーをそなえ、さらに、走行状況に応じて結合あるいは切り離しを電子制御する「AMGアクティブライドコントロール」が組み合わせられる。     […]

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Japan Mobility Show2023の全体イメージ図。出典:日本自動車工業会
TEXT:桃田 健史
4年ぶり開催でフルモデルチェンジ!2023年10月開催、新生「Japan Mobility Show」は大化けするか!?水素で発電する有料エンタメエリアも登場決定!

コロナ禍での東京モーターショー中止を含めて4年ぶりの開催となる、自動車に係わる東京での大規模イベント。新たなる名称「Japan Mobility Show2023」の概要が発表された。その内容とはいったいどのようなものなのか? 参加企業数はすでに倍増 日本自動車工業会(以下、自工会)は2023年8月30日、オンラインで記者会見を開き「Japan Mobility Show 2023」(一般公開:2023年10月28日~11月5日、於:東京ビッグサイト)の開催概要を公開した。 それによると、全体としては「自動業界の枠を超えて、他産業やスタートアップ、来場されるお客様を含め、日本の未来を新しい仲間と一緒に創っていくショー」と定義した。 参加企業数は、今回の発表時点で400社以上となっており、これは2019年に開催した東京モーターショーでの192社をすでに大きく超えている。 ショーの具体的な中身は、東京の未来を来場者が体感する「Tokyo Future Tour(東京フューチャーツアー)」がショーの中核となる。 ツアーの始まりは、大型モニターで東京の未来へと導く映像を数分間体験。これは、大手エンターテインメント施設や万博などでも用いられる手法だ。 その先には、4つのテーマをエリア別として、実際にモビリティを含めた空間を味わる。 ひとつ目は、「ライフ×モビリティ」。コロナ禍を経て、日本人のライフスタイルは大きく変化してきたが、近未来東京のライフスタイルの中で、モビリティはどんな存在になっているのかを、様々な企業が提案する形だ。ここでは、いわゆる「空飛ぶクルマ」も登場しそうだ。 二つ目は「エマージェンシー×モビリティ」。様々な災害にどのように備えるべきか、また実際に災害が発生した場合、モビリティはどのような活躍の可能性があるのか等を提案するエリアとなる。  三つ目は「プレイ×モビリティ」とし、スポーツや遊びとの関連性を強調する。 そして四つ目には「フード×モビリティ」として農作物の生産、食の調理や配膳まで、モビリティとの関連性を具現化する。

TAG: #Japan Mobility Show 2023 #テクノロジー #ニューモデル #発売前モデル
TEXT:御堀 直嗣
上限85万円の補助金を受けられる電気自動車はどのモデル?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第13回

型式指定が関わる国のEV補助金 電気自動車(EV)の新車を購入する際に適用される補助金は、今年、令和5年度4月1日以降の支給金額が確定している。一般社団法人次世代自動車振興センターによって、車種ごとの補助金額が公開されている。 現在の補助金支給額は上限が85万円となっており、各車種の支給金額の判定には条件が設けられている。 ひとつは、型式指定された車種であるかどうか。もうひとつは、給電機能を持つかどうかである。 型式指定について、日本では、新車を販売するに際し、あらかじめ保安基準に適合していることを国土交通省へ申請し、審査を受ける必要がある。そのうえで、新車登録の際に現物のクルマを1台ずつ検査しなくても同一の品質を備えていると認めることを、型式指定制度という。型式指定された新車を販売し、登録する際に、書類上の手続きで済ませることができる。大量生産されるクルマが対象だ。さらに、新型届け出制度と呼ばれる仕組みがあり、これは仕様が多様な大型トラックやバスなどに適用される。 そして前者の型式指定制度を受けたEVが補助金対象になる。 給電機能とは、ヴィークル・トゥ・ホーム(VtoH、以下V2H)によるEVから自宅への給電機能を備えているかどうか。あるいは、100Vのコンセントを車内に設置してあり、車外の家電製品などへ電気を供給できるようになっていれば、こちらも対象になる。 上記2つの条件の如何によって、補助金額に差が出ている。 V2Hの有無が生み出した補助金の差 日本車は、型式指定を受けて国内で販売されるし、CHAdeMOによる充電を前提として、車両側にV2H機能を持たせている場合が多いため、補助金額は登録車の場合85万円の最高額が設定されている例が多い。 一方、輸入車の場合は、そもそもV2Hへの対応をしていないEVが多く、たとえば2200万円以上となる「ポルシェ・タイカン」の「ターボS」でも42.6万円の支給額だ。一方、1000万円を超えるメルセデス・ベンツの「EQS」や「EQE」もV2Hに対応しているので、68万円の支給額となっている。高額車両についてはV2Hあり:68万円、V2Hなし:52万円となる。ちなみに、V2Hを当初より設定しながら、これまで65万円の支給額だった中国製の「BYDアット3」は、型式認定を受けたことによって上限の85万円の支給対象になった。 軽自動車のEVについて、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」は、55万円の支給額である。軽商用バンの「三菱ミニキャブミーブ」は、41~49万円だ。 欧米市場では、充電方式について欧州のCCS(コンバインド・チャージング・システム)の普及や、米国のテスラ方式へのGMやフォードの追従といった情報が流れている。それらの充電方式ではV2Hへの対応が進んでおらず、単にEVへの充電効率だけを追求する欧米の姿勢は、今後いずれかの段階で見直しが行われるかもしれない。ちなみに中国は、CHAdeMOを基にしたGB/T方式を採っている。 充電方式の違いに話がそれたが…、日本のEV補助金制度は、EVを地域の蓄電池として、統合的な電力運用や災害対応などへも役立てていきたいという広範な視点に立った普及制度にもなっていることを知っていて欲しい。

TAG: #EV知識・基礎の基礎 #御堀 直嗣 #補助金
TEXT:小川フミオ
「小さなボルボ」は本当に安全? プロダクト責任者が語るボルボ独自の取り組み

ボルボが長年培ってきた安全性を、コンパクトBEVの分野へどのように投じたのか。プロダクト責任者が語る小ささに込めた安全設計。 「安全のボルボ」を、コンパクトなBEVへ EX30とともに本社から来日した、ヨアキム・ヘルマンソン氏へのインタビュー第2弾。 2023年中に日本で発売される予定の、コンパクトサイズのバッテリー駆動のSUVであるEX30。日本でも大きな成功が期待されている。 そこで、開発の舞台裏を、プロダクト全体の責任者であるヘルマンソン氏に訊ねてみた。 −−ボルボがいかに安全性について長年の経験を謳っても、EX30と、大型SUVであるEX90は、どちらもBEVですから、従来のICE車とは違うむずかしさもあったのでは、と想像しました。 「そうです。たとえば、ボディはさまざまな高張力鋼板を使って、スチールケージ構造にしました。EX30には、従来のICEと違い、大型のバッテリーというあらたな“乗員”もいます。衝突においてはこれを守らなくてはなりません。最新のコンセプトに基づいてアルミニウムによるハニカム構造の、バッテリープロテクションも採用しています」 −−バッテリー搭載のシャシーと、ボディとは分離した設計が採用されていますか? たとえば、フォルクスワーゲンがいま使っているMEBプラットフォームのように、バッテリーを敷き詰めたシャシーのうえにキャビンを置くようなイメージのアーキテクチャーでしょうか。 「そうです。いわゆるプラットフォームというバッテリーを敷き詰めた部分と、キャビンを含めたボディとは分離したかたちの設計です。私たちはエレクトリックアーキテクチャーと呼んでいますが、いわゆるプラットフォームには、バッテリーとモーターを搭載しています」 行き交う人々へも。都市ならではのリスクを回避する −−安全性についてもういちど、教えてもらいたいことがあります。衝突時の安全性、いわゆるパッシブセーフティについて、そうとう研究を重ねた模様ですが、事故を回避するアクティブセーフティについてはどんなことを実現しましたか。 「EX30は全長4,235ミリしかない、小さなパッケージでありながら、ボルボ独自の安全基準を満たしています。とくにここで強調したいのは、都市部で走る際の安全機能です。たとえば、通行中の自転車や電動キックボードなど他の交通利用者の前でドアを開けようとすると、音と視覚で警告する『ドア・オープニング・アラート』をすべての前後左右のドアに搭載。最先端の技術により、都市部を走行する際の安全性を、さらに、次のレベルにまで引き上げています」 −−すりぬけ時に、歩行者をはじめ、自転車やバイクと接触事故が起きる、というのは、都市部でありがちな事故ですね。 「前方を他の車両が不意に横切った際、自動ブレーキで車を停止させ、衝突の回避や軽減をサポートする新たな機能が加わった「インターセクション・サポート」も搭載。ドライバーサポートの面では、DAC(ドライバー・アラート・コントロール)なる安全装備も搭載しました。ボルボ独自のアルゴリズムで作動する特別なセンサーを使い、 1 秒間に約 13 回、ドライバーの眼や顔の動きを検知し、注意散漫や眠気などが認められたばあい、それについて警告するのがDACです」 <Vol.3へ続く>

TAG: #EX30 #SUV #ボルボ
TEXT:烏山 大輔
「ボルボ EX30」のデザインに、テスラの影がちらつく

8月24日にいよいよ日本で発表されたEX30のデザインを観察すると、テスラのような合理化が見えてきた。良い意味でのコストダウンにもなっているこのデザインの考え方のほとんどに賛成だ。 ある意味テスラ超えの部分も 「テスラ モデルY」の物理スイッチは、ステアリングホイールのスポークにある二つと頭上のハザードスイッチ、ドアにはパワーウィンドウスイッチとドアオープナースイッチくらいだ。 そして今回のEX30は、ドアにスイッチはない。あるのはインナーハンドルだけだ。それではパワーウィンドウのスイッチはというと、フロント用のそれはアームレストの先端にあり、リア用はセンターコンソールの後端にある。 こうすることでドアのスイッチを無くし、コストダウンとともにすっきりしたデザインと物入れスペースを実現した。ドアからスピーカーをなくし、ダッシュボード上部の左右に広がるそれに置き換えたのも、「ドアからなるべく電装品を取り除くため」と考えると合点がいく。BEV(バッテリー電気自動車)はICE(内燃機関)車と異なり、車体前部のダッシュボード空間に余裕があるし、ドアから電装品を取り除くことは余分な配線をなくし軽量化につながるからだ。 ドアのロック/アンロックスイッチは、フロントのアームレスト先端にまとめられている。ドアミラーの角度調整や格納は、センターディスプレイでの操作になっているのだろう。テスラでさえ物理スイッチとして残していたハザードスイッチもディスプレイの右下に“収納”された。 このスイッチの統合は良いと思う。しかし実際の使用を想定すると、一つだけ難点なのは後席乗員が窓を開閉する際に、上体を前に倒しスイッチまで手を伸ばさなければならないことだ。 フタ付きのアイデアが新しいセンターコンソールのデザイン ICE車とは異なり、BEVではプロペラシャフトやマフラーを通すことを考える必要がなくなり、自由度が格段に向上したセンターコンソールをどうするかが、デザイナーの腕の見せ所ではないかと思っている。 EX30の場合は、2台のスマホ置き場がある。無線充電ができて、画面はきちんと見えやすい角度に作られており、かつスマホを差し込む部分が柔らかいゴム製のレバーのような構造で、スマホが動きにくい設計になっている。   さらにその手前のバッグなどが置けるスペースは、実は観音開きのフタになっていて、ここを開けるとUSB-C端子が2つ備わる収納スペースが現れる。使用頻度が少ないものや車から離れる際に、人目につかないようにしておきたいものをしまうのに重宝するだろう。 そんなセンターコンソールの上に位置するアームレストには、可動式の2つ分のカップホルダーがある。この可動部にはダンパーがついていてゆっくり前に出てくる、かつしっかりした作りで全く「ちゃちさ」を感じさせない。こういうふうに、コストをかけるところとコストをかけずともデザインでカバーできるところを、しっかり分けているのが素晴らしい。 デザインにコストをかけているところをもう一つ。筆者が体験した最近のクルマには、多数の色の中から1色を選択できるアンビエントライト機能を備えるモデルがあった。EX30では、5つのテーマを持つ同機能が装備されているのだが、それはただ1色で光るだけではなく、グラデーションするのだ。 例えばスウェーデンブランドらしいノーザンライト(オーロラ)モードでは、緑から青や紫へと色が変わっていく。夜間に高速道路のサービスエリアで充電中に、この優しい光と、それぞれのテーマに合ったアンビエントサウンドの流れる車内にいたら、とてもリフレッシュできるのではないかと思う。光り方が気になる方はボルボのウェブサイトを確認して欲しい。

TAG: #EX30 #SUV #ボルボ
Terra Chargeに関する出展。日本自動車輸入組合(JAIA)・輸入電動車普及促進イベント in 大阪にて筆者撮影
TEXT:桃田 健史
BEVインフラで「テラチャージ」躍進!自治体向け、法人向け、新築マンション向けなど、各種事業を続々導入

独自の電動化ビジネスを国内外で展開する、Terra Motorsが手がける充電インフラサービス「Terra Charge(テラチャージ)」の事業が徐々に拡大している。様々な事業者や地方公共団体等に向けたパッケージを提供。その概要について同社資料を基に紹介する。 国のGX政策が後押し 近年、日本国内の事業者や地方公共団体などで、BEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)向けの充電インフラへの関心が高まっている。 背景にあるのは、菅政権が立ち上げた「グリーン成長戦略」だ。岸田政権では、それを継承しGX(グリーントランスフォーメーション)という枠組みとし、近い将来に日本での新規ビジネスの創造を加速させたい考えだ。 こうしたGX事業については、欧州連合(EU)、アメリカ、そして中国など、世界の主要国がESG投資を拡大することを目的として、BEV普及とそれに伴う充電インフラ整備を加速させているところだ。ESG投資とは、従来のような財務情報だけではなく、環境、ソーシャル(社会性)、ガバナンス(企業統治)を重視した投資のこと。 こうした時代の流れを受けて、これまで日本国内で電動バイク、また南アジアで電動リキシャ(小型電動タクシー)、そして事業用ドローンサービスなどを手がけてきた、Terra Motors(本社:東京都港区/代表取締役:徳重徹氏)はBEV充電インフラサービス事業「Terra Charge」を2022年4月から開始した。

TAG: #テラチャージ #テラモーターズ #充電インフラ
TEXT:生方 聡
続・お得な充電カードを探せ [ID.4をチャージせよ!:その17]

ID.4 プロ・ローンチエディションの無料充電特典がまもなく終わるということで、次に加入する充電カードを再検討してみることにしました。 e-Mobility PowerとZESP3を比較 私が愛用するID.4 プロ・ローンチエディションには、「フォルクスワーゲン充電カード 普通・急速充電器併用プラン」(以下VW充電カード)の月会費、「プレミアムチャージングアライアンス(PCA)」の月会費、さらにフォルクスワーゲンディーラーでの60分までの急速充電がすべて1年間無料になる特典がついています。 このうち、VW充電カードは「e-Mobility Power」(以下e-MP)ネットワークの充電ステーションがカードをかざすだけで利用できるだけに、自宅に充電器のない私には頼みの綱ともいえるサービスです。ただ、無料特典がなくなる2023年12月以降は、VW充電カードは割高なうえに、2024年12月末でVW充電カードのサービス自体が終了することに。そこで、e-MPネットワークが利用できる充電カードのプランを、最新の情報をもとに比較してみることにしました。 比較するのは、e-MPが自前で用意している「急速・普通併用プラン」と、2023年9月に値上げが実施される「日産ゼロ・エミッションサポートプログラム3(ZESP3)」。ここで注意しなければならないのが、ZESP3はこれまで日産車オーナー以外でも加入が可能でしたが、2023年9月からは日産車オーナーしか加入できなくなることです。

TAG: #ID.4 #VW
勝浦の市街地の様子。元旦と水曜日を除き、午前6時半頃~11時頃まで朝市を開催。筆者撮影
TEXT:桃田 健史
「#100年猛暑日知らずの街」千葉県勝浦市で電動キックボードシェアリング「Bird」利用進む

アメリカの電動キックボード・シェアリング大手Bird事業を日本で展開するBRJが、各地での実証試験を段階的に拡大している。その中で、今回は関東周辺で夏でも気温があまり上がらない海岸部として名高い千葉県勝浦市の事例を視察した。 猛暑日がない勝浦に電動キックボード 千葉県勝浦市公式の移住・定住ポータルサイトには、「#100年猛暑知らずの街」という記載がある。 勝浦は、房総半島の太平洋側である外房の中でも、入り組んだ海外線によってできた大きな入り江のような勝浦湾に面した地域。この周辺は陸地に近い場所から海底が深いこと等の影響で、海からの風が涼しくなり夏でも気温が上昇しにくい。 そうした話がネット上で広がったり、テレビの情報番組などで取り挙げられることで、東京都心や関東各所で酷暑が続くなか、改めて勝浦が注目されている。 また、ご当地グルメイベント等で注目された「勝浦タンタンメン」や、約3万体の雛人形を飾る「かつうらビッグひな祭り」など、新しい観光資源が開発されているところだ。 その勝浦で2023年1月、電動キックボードを使ったシェアリング実証試験が始まった。 アメリカの電動キックボード・シェアリング大手のBirdを日本で展開するBRJが手がける事業だ。 今回、勝浦市を訪れて電動キックボードの設置場所などを視察した。

TAG: #Bird #特定原付 #電動キックボード
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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