コラム 記事一覧

コラム コラム
3つの車体モジュールで構成される次世代BEVの技術展示。出典:トヨタ
TEXT:桃田 健史
組み立て中のクルマが自動運転で走行!? トヨタ元町工場の「次世代BEV生産ライン」を見た

トヨタが豊田市の元町工場で次世代BEVのデモラインを初公開した。組立工程の中でクルマが自走する、国内自動車メーカーとして初めての試みを見た。どのような技術を用いているのか、トヨタ関係者から詳しい話を聞いた。 実用化に向けて着実に前進 トヨタが2023年9月中旬、地元豊田市とその周辺で一部報道陣向けに開催した「モノづくりワークショップ」。 その中で、元町工場内で研究開発が進んでいる、次世代BEVの組立工程に関するデモンストレーションラインを視察した。 まず、報道陣が注目したのが3分割された次世代BEVの車体構成だ。 展示されたモデルには、車体前部にモーターやインバータなどがあり、構成部品を見ると現行の生産方式であるプレス加工した部品を溶接した形だ。 車体中央部は駆動用の電池パック。近年量産されている一般的なBEVは、車体中央の床部に電池パックを搭載しているが、トヨタとしては当面、この方式を採用するようだ。 トヨタの次世代電池の研究開発は急ピッチで進んでおり、2028年までに合計5つの次世代電池の量産を目指すとしている。その上で、電池がかなり高いエネルギー密度を持ち、なおかつBEVの使用方法が上手くコントロールできる「サブスク」などのビジネスモデルが描ければ、電池パックの小型化が可能となり、BEVの車体中央部の構成部品や大きさも変わる可能性がある。 そして、車体後部は高圧鋳造のアルミダイキャストをさらに高圧化させた、いわゆるギガキャスト製法で一体成形した。 このように、現在のところ前・中央・後という三つの車体モジュールを想定し、これらを結合してクルマとして走れる状態とする。結合方法については様々な技術を研究開発中だという。

TAG: #bZ4X #トヨタ
トヨタ「モノづくりワークシップ」でプレゼンするCPO(チーフ・プロダクション・オフィサー)の新郷和晃氏。出典:トヨタ
TEXT:桃田 健史
トヨタが次世代電池の開発ラインを初公開。バイポーラ型LFP(リン酸鉄リチウム)の重要技術を見た

トヨタが、次世代BEVで重要な技術となる車載リチウムイオン電池について、その製造方法の一部を報道陣に公開した。その中で、トヨタが次世代電池普及版と称する、比較的価格を抑えることができるリン酸鉄リチウムを使った電池の製造工程の一部を見た。 最新モノづくり現場を紹介する異例イベント トヨタは2023年9月中旬、地元豊田市とその周辺で一部報道陣を対象とした「モノづくりワークショップ」を実施した。 2023年6月に静岡県裾野市にあるトヨタ東富士研究所で、先進技術を一挙公開した「テクニカルワークショップ」のフォローアップという位置付けだ。 モノづくりワークシップでは、テクニカルワークショップで見せた技術が実際、どのように考案され、議論され、そして生産技術に反映しているかを詳しく紹介するというわけだ。 これまでトヨタが報道陣を含めた外部関係者には非公開としてきた、貞宝工場や明知工場の内部を公開するなど、極めて珍しい内容であった。 CPO(チーフ・プロダクション・オフィサー)の新郷和晃氏は「人中心のモノづくりで、工場の景色を変え、クルマの未来を変えていく」と、トヨタの次世代事業における生産技術の重要性を強調した。

TAG: #トヨタ #リチウム電池
福井県永平寺町の自動運転レベル4で使用するヤマハ製EV。筆者撮影
TEXT:桃田 健史
福井県永平寺町の自動運転レベル4・EVが、岸田総理の視察を受けて全国から再注目

国は自動運転で、運転席に人がいない実質的な完全自動運転である自動運転レベル4の社会実装に向けた動きを加速させている。2023年9月中旬には、国が自動運転レベル4で高速道路での専用道の設定に加えて、一般道でも自動運転専用道を設置を検討していることについて報道があったばかりだ。そうした自動運転レベル4で先進的な試みを行っている福井県永平寺町を取材した。 遊歩道「参ロード」を使って走行 永平寺町の自動運転レベル4・EVが走行するのは、曹洞宗の大本山永平寺に近い2kmのコース。 ここは以前、鉄道が走っていたが現在では町の遊歩道「参ロード(まいろーど)」になっている場所だ。 参ロードの地中に電気を通す配線を埋設し、そこで発生する磁力を車体側が検知しながら走行する、電磁誘導線を使った自動運転システムである。 こうした自動運転はすでに、全国各地のゴルフ場で普及しており、永平寺町で使う自動運転EVもそうしたヤマハ製の市販品をベースに改良されたものだ。 走行機能に係わる車両スペックを見てみる。 まず、EVとしての駆動システムは鉛蓄電池を採用して後輪を動かす。充電は200V電源から行っている。 走行する様子は、まさにゴルフ場の自動カートであり、実際に試乗していてもゴルフ場カートと大きな違いは感じない。

TAG: #ヤマハ #レベル4 #福井県永平寺町 #自動運転
TEXT:烏山 大輔
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

TAG: #BMW #iX #電費計測
富士山の麓で行われた、三菱「スターキャンプ」。朝のヨガ体験の様子。筆者撮影
TEXT:桃田 健史
キャンプでPHEV・EVが大活躍! 給電機能で野外シアターやかき氷屋、車載1500W電源も

三菱自動車工業(以下、三菱)が主催するファンミーティング「スターキャンプ」が静岡県朝霧高原で今年も開催された。三菱の各モデル試乗体験のほか、スぺシャルライブ、モノづくりワークショップなど多彩なプログラムが用意されていた。PHEV(プラグインハイブリッド車)とBEV(バッテリー電気自動車)のアウトドア・ユースにおける可能性がそこには広がっていた。 富士山の麓に三菱ユーザー300組が終結 三菱が2023年9月9日~10日、富士山の麓に位置する朝霧高原で今年も「スターキャンプ」を開催した。 スターキャンプは、1991年に始まった三菱本社が主催するファンミーティングのひとつだ。 1997年で一旦終了するも、2007年に復活して現在に至っている。 近年は、三菱本社のほかに、全国各地の三菱販売店が主導するスターキャンプが並存するなど、三菱ユーザーから高い支持を得ているイベントだ。 今回のスターキャンプの参加者は、事前の抽選によって選ばれた300組が全国から朝霧高原にやってきた。 参加者のクルマを見ると、やはり多いのは「デリカD:5」。 本格的なオフロード走行ができるミニバンという、唯一無二の存在から長年に渡る人気車だ。往年の「パジェロ」が生産終了後、三菱のアウトドアイメージを牽引してきた、三菱にとって日本市場では欠かせない1台である。

TAG: #アウトランダーPHEV #三菱 #給電
「8C」初号に関する技術展示。筆者撮影
TEXT:桃田 健史
マツダ新型ロータリー「8C」。発電機用としての進化の内情

マツダ「MX-30 Rotary-EV」には、マツダの真骨頂であるロータリーエンジンが搭載された。シリーズハイブリッド用の発電機として専用設計された。その開発の内情について製造工程を見ながら関係者に詳しく話を聞いた。 13B RENESISとの比較 MX-30 Rotary-EVに搭載されたロータリーエンジン。 名称を「8C」とした。 マツダのロータリーエンジンは、今回の「8C」以前には「13B」が製造され、スポーツモデル「RX-8」に搭載されていた。 では、「13B」と「8C」は何が違うのか? まず、ローターの数が違う。「13B」は2ローターで、「8C」はシングルローターだ。 排気量は、「13B」が654cc×2であるのに対して、「8C」は830㏄×1となる。 ローターの幅はそれぞれ、80㎜と76mm。また、ローターが動く「創成半径」は105mmと120mm。 MX-30のBEVモデル、またマイルドハイブリッドモデルと同じ車体に搭載するため、 「8C」では「13B」より、エンジン全体としてはコンパクトにした。 シリーズハイブリッド用の発電機としての出力と燃費を前提に設計を検討したところ、 1ローターにおける排気量を拡大することになった。

TAG: #8C #マツダ #ロータリーエンジン
マツダ「MX-30 Rotary-EV」。広島市内で筆者撮影
TEXT:桃田 健史
マツダ「MX-30 Rotary-EV」が日本市場に登場!他に類のない「マツダらしい」技術が満載

マツダが新型「MX-30 Rotary-EV」の国内予約販売を2023年9月14日から始めた。発売は2023年11月初旬を予定している。マツダの真骨頂であるロータリーエンジンを発電機として使うシリーズハイブリッド車であり、プラグインハイブリッドでもある。今回、その実車に触れてみた。 ロータリーエンジンが復活 マツダのロータリーエンジンがついに復活した。 搭載するのは、SUV「MX-30 」をベースとした「MX-30 Rotary-EV」だ。ただし、ロータリーエンジンそのものによって駆動するのではない。 ロータリーエンジンを発電機として使う、シリーズハイブリッド車である。 シリーズハイブリッド車といえば、日本車では日産「e-POWER」やダイハツ「e-SMART HYBRID」がある。これは、ガソリンエンジンを発電機として使い、駆動はモーターで行う。 これらに対して、ロータリーエンジンのメリットはエンジン本体のコンパクトさだ。 MX-30 Rotary-EVが搭載するのは、新規開発したロータリーエンジン「8C」。 シングルローターで排気量は830cc、また最高出力は53kWである。 この「8C」を車体前部に搭載する高出力モーター(最高出力125kW)と薄型高出力ジェネレーターと同軸で結ぶ構造とした。 e-SKYACTIV R-EVの実力 「8C」では低燃費と低エミッション化を追求した。 まず、ガソリン燃料による混合気を点火プラグ近くに均一に分布させ、効率的な燃焼を実現した。また、微細化したガソリン燃料を低温時でも十分に気化させることで、余分な燃料噴射を抑制した。 また、燃料室の形状も最適化した。燃焼室内での高い流動性を持たせて急速かつ効率的な燃料を実現した。 こうした燃料に係わる技術は、マツダが2010年代前半から市場導入してきた、SKYACTIV技術によるガソリンエンジンやディーゼルエンジンで研究開発を進めてきた。今回登場した「8C」はまさに、新時代ロータリーエンジンである。 プラグインハイブリッドという選択 「MX-30 Rotary-EV」の、もうひとつの特長が、プラグインハイブリッドであることだ。 通常、シリーズハイブリッドであり、かつプラグインハイブリッドである事例はこれまでの自動車産業界においてコンセプトモデルを含めて極めて珍しい。 そもそも、「MX-30」日本仕様にはマイルドハイブリッドとBEVがすでに販売されている。 そこに、同じ車体でプラグインハイブリッドを投入するのだ。 充電方法は、交流による普通充電では、出力6kWで満充電まで約1時間50分。また、CHAdeMO規格の直流による急速充電にも対応する。充電器の出力が40kW以上の場合、満充電まで約25分とした。いずれも、SOC(ステート・オブ・チャージ)は20~80%を想定。 外部給電も可能でV2L(ヴィークル・トゥ・ロード)やV2H(ヴィークル・トゥ・ホーム)に対応する。 搭載するバッテリー量は17.8kWh。これで最大107kmをBEVで航続できる。 また、電池モジュールの高密度に搭載したことに加えて、冷却装置を薄型化したことで電池パックの厚みを抑制した。 燃料タンクは、無鉛ガソリン50リットルとした。

TAG: #MX-30 Rotary-EV #マツダ #ロータリー
TEXT:生方 聡
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

TAG: #ID.4 #VW
TEXT:岩尾 信哉
BMW 「ヴィジョン・ノイエクラッセ」は次期3シリーズの姿を占うデザイン・スタディだ!

ドイツ・ミュンヘンで開催された「IAAモビリティ2023」のプレイベントにおいて、BMWはかねてから発表を予告していた「ヴィジョン・ノイエクラッセ(ドイツ語で新たなクラスの意)」を公表。それが示すBMWの将来像について想いを巡らせてみた。 内外装に漂う近未来のBMWデザイン BMWのコンセプトカー「ヴィジョン・ノイエクラッセ」は、2025年以降に発売予定とはいえ、次期3シリーズのベースとなることが想定されるだけあって、注目を浴びて登場した。デザイン・スタディの段階であっても「ノイエクラッセ」の名が与えられて姿を現せば、いよいよ正式な量産化に向けた詳細が少しでも明らかになるのではと期待された。だが、残念ながら今回はスペックや販売される価格帯などは紹介されずじまいだった。 それでも今回、コンパクトセダンであること以上の追加情報はなくとも、「ヴィジョン・ノイエクラッセ」のスタイリングなどには、将来に繋がる部分もあったので、いくつかのポイントを追ってみたい。 BEVとして設計された「ヴィジョン・ノイエクラッセ」 主たるコンセプトとして「ヴィジョン・ノイエクラッセ」(以下、ノイエクラッセ)でBMWが掲げたのは、将来に向けたデジタル化、電動化、循環性などの将来に向けた開発テーマだ。あくまでデザイン・スタディゆえに詳細なスペックは明らかにされていないノイエクラッセでは、目標として「30%の航続距離増加、30%の充電時間短縮、25%の車両全体の高効率化」と示されても具体的なイメージが湧きにくい。 BMWが新たな取り組みとして明確に掲げているのはBEV(バッテリー式電気自動車)としての進化だ。BEVであるノイエクラッセでは第6世代の電動パワートレインが採用される。高効率の電気モーターと新開発の円形バッテリーセルは、従来の角形仕様よりもエネルギー密度が20%以上高められているという。 セダンのスタイリングとして先を行く斬新さ BMWグループのデザインを統括する、エイドリアン・ファン・ホーイドンクは、「ノイエクラッセのデザインはBMWらしさを備えつつ、モデルの世代の推移を超越するような斬新さを備えています」とコメントする。そのスタイリングはBMWの将来のコンパクトセダン像を映し出していることがわかる。 前傾したシャークノーズのフロント先端部や「ホフマイスター・キンク」として知られるCピラー付け根にある跳ね上げられたラインなどは、従来から見られるBMW独自の手法。キドニーグリル内にダブルヘッドライトやセンサー類を収めたカバー部には、デジタルアニメーションが照明効果によって表示され、周囲の人々や交通に向けて車両情報を提供する。リサイクル性に配慮したブラックのバンパーとサイドスカートもエクステリアのアクセントとなっている。 ボディサイドから見ると、セダンのデザインとしてエッジの効いたプロファイルが見て取れる。キャラクターラインを境に上下で明確に分割された面で構成されたドアパネルや、前後オーバーハングを切り詰めた引き締まったボディラインは、シャープなイメージを際立たせている。

TAG: #3シリーズ #BMW #ノイエクラッセ
TEXT:小川フミオ
IAAモビリティ開幕前夜に「VWグループ・メディアナイト」で語られたブランド戦略とは。

ミュンヘンで開催されたIAAモビリティを訪れた小川フミオは、フォルクスワーゲン・グループの動向を見れば、現在の自動車界を俯瞰できる、と考えていた。そのプレゼンテーションは、自動車界の未来を予見するものだった。 大きな存在感を示すフォルクスワーゲングループ ミュンヘンで「IAAモビリティ」と名づけられた自動車ショーが、2023年9月5日から10日にかけて開催。大きな特徴は、ほぼ電動化がテーマになっていたことだ。 クルマの電動化の尖兵ともいえるぐらい、今回、展示に力を入れていたのがフォルクスワーゲン・ブランドを筆頭にしたフォルクスワーゲングループだ。 この記事を読んでいるかたには、いまさら説明の必要もないだろうけれど、アウディ、ポルシェ、ランボルギーニ、ベントレーがグループ傘下に入っている。 加えて、シュコダ、セアト、クプラといった、日本への輸入がないけれど、欧州を中心にセールス好調なブランドも含まれる。 かつて大きな規模で世界中の自動車好きの注目を集めていたフランクフルトの自動車ショーに代わり、ミュンヘンで開催されるようになったIAA(Internationale Automobil-Ausstellung=国際自動車ショー)でも、大きな存在感を誇示した。 それが端的に表れていたのが、ショー開幕前夜にミュンヘン市内の特設会場を舞台に開催された「フォルクスワーゲングループ・メディアナイト」。 フランクフルトでショーが開催されていた時代から、フォルクスワーゲングループは、世界各地からジャーナリストを招いて、同グループが向かおうとしている方向など、紹介に向けての計画を発表してきた。 「私たちは環境への責任をたいへん強く受け止めています。地球環境保全は、これからの計画における核なのです」 ジャーナリストの前で登壇した、フォルクスワーゲングループのオリバー・ブルーメCEOは、そう語った。 ブルーメCEOは、グループ間でのプラットフォーム共用と、動力が電気になっても同様の戦略がとれるという。 じつはそれこそ、いまの自動車業界における共通の課題なのだ。あらゆる点でモデルごとに違いを出していく時代は終わり、共用と差異化のバランスこそが、市場で生き残っていくために重要ということだ。どのメーカーでも同様のことが言える。 電気時代のプラットフォーム、そしてキーコンセプト「サクセス・バイ・デザイン」 そこで、冒頭に記したように、この記事はIAAモビリティという自動車ショーについてのものなのだけれど、フォルクスワーゲンの考えを紹介することで、現在の自動車界を俯瞰できる。そう考え、もうすこし記述を続けたい。 「これまでフォルクスワーゲンは、MQBというフレキシブル・プラットフォームを開発。傘下ブランドの車両の多くは、この前輪駆動の内燃機関用プラットフォームを使って開発されてきました。このさきこれをMQBプラスへと発展させていきます」 同様の役割が期待されるのが、電気自動車用のMEBプラットフォーム、とブルーメCEOは言う。2019年に発表された全長4.2mの「ID.3」を皮切りに、「ID.4」、「ID.5」、「ID.BUZZ」など13車種で使われる。 「電気時代のプラットフォーム戦略の要(かなめ)になるもので、時代に合わせて常にアップデートしていきます。最新は、今回ショーでお披露目した「ID.7」で(5メートル近い車体にもかかわらず)698kmの走行可能距離を誇ります」 バッテリー戦略もやはり、競争力を核に、このさきの展開が考えられている。性能向上はもちろん、現時点での目標は専門企業の協力を得ながら、いわゆるドライセルバッテリーのギガファクトリーを、各地に建設することだ。 「もうひとつ、私たちがいまやるべきことがあります」。ブルーメCEOは続けた。 「それぞれのブランドとその製品に、より明確なキャラクター、アイデンティティ、そしてパフォーマンスを与えることです。ゆたかなヘリティッジを強調することで、このさきも市場でブランド力を確固たるものとしていけるのです」 そこでブルーメCEOが掲げたのが「サクセス・バイ・デザイン」なるキーコンセプト。成功のためデザインの重要性を上げる戦略で、デザインチームはこれまで以上に、CEOと密な関係で製品開発を行うそうだ。   「よいデザインはクライアントが喜んでくれる製品づくりのコアになるもの。エクステリア、インテリア、それにデジタルエクスペリエンスすべての領域で、フォルクスワーゲンはデザイン中心のブランドになります」

TAG: #IAA #VWグループ #戦略
連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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