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TET 編集部 記事一覧

Bobcat E10e(photo=福田 雅敏)
TEXT:福田 雅敏
EV建機のインフラ整備を急げ……「第5回 建設・測量生産性向上展」レポート、その2[THE視点]

第5回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO2023)が5月24日(水)~26日(金)まで「幕張メッセ」<千葉市美浜区>にて行われた。 「建設機械の展示会」である本イベントには、国内外から大手建機メーカーが出展しており、建機にも電動化の波が迫っていると、前編にて紹介した。今回も後編として、引き続き展示されていたEV建機を写真とともに紹介する。 ボブキャット……EVならではのミニショベル室内デモ Bobcatのブースでは、電動ミニショベル「E10e」のデモンストレーションを行なっていた。 室内でデモが出来るのは電動モデルならではのもの。0.025m3の標準バケット容量(バケット内に一度に入る土砂などの容量)に、10.52kWhのバッテリー容量をもつ。 ボルボ……EV小型ショベルを屋外でデモ ボルボのブースは屋外だったが、電動小型ショベル「ECR25 エレクトリック」のデモンストレーションを実施していた。 運転質量2,730kg、バケット容量0.12m3、最高出力30kW(41ps)のモーターに、最大容量20kWhのバッテリーを搭載し、最大4時間の稼働が可能。急速充電にも対応している。 CARRIER……キャタピラー式のEV運搬車 CARRIERのブースでは、業界初となる電動式不整地運搬車「MST20Cre」が展示されていた。 キャタピラー式のダンプで、運転質量2.3トンに最大積載量2トン、最大容量32.8kWhのバッテリーを搭載し最大4時間の稼働が可能。 西尾レントオール……充電器を車載する電動ミニショベル 西尾レントオールのブースには、タケウチの「TB20e電動ミニショベル」を展示。 運転質量1,930kgに最大容量24.7kWhのバッテリーを搭載、最大8時間の連続稼働が可能。充電は車載の普通充電と急速充電に対応している。また車載の普通充電器をケーブルでつないだままでの機械操作も可能だという。 そのほか、電動ランマー、電動ブレードコンパクター、充電式LED投光器などもラインナップする。 キャニコム……MPPとは違うホンダのバッテリーを採用したクローラー機 キャニコムのブースには、電動の生コン用クローラー「ジャスパー砂与」が展示。 バッテリーはホンダ製だが、「ホンダ・モバイル・パワー・パックe:(MPP)」とは異なるものを使用している。試作車とのことだった。 前田製作所……珍しい電動カニクレーン 前田製作所のブースには、ユニークな電動の蟹(カニ)クレーン「MC285CB-3」を展示。 走行時はクローラー(約2km/h)で動き、操作中はカニ状態になる。クレーン容量2.8トン、最大地上揚程8.7m。機械質量は約2トン。最大容量7.4kWhのバッテリーを搭載し、連続走行時間2時間15分で、クレーン操作時間9時間30分。ケーブルをつなげば連続運転も可能だ。 長野工業……日本初のクローラー式高所作業車 長野工業のブースには、日本初という電動クローラー式屈伸ブーム型高所作業車「NUL07E-7」が展示されていた。 最大作業床高さ6.8m、定格積載荷重150kg、機械質量2,740kg、許容路面傾斜角度5度の性能を持つ。6V×8個の鉛バッテリーで最大3日の稼働が可能とのこと。 酒井重工業……ホンダMPP採用のハンドガイドローラー 酒井重工業・電動ハンドガイドローラーのコンセプトモデル 酒井重工業のブースには、以前レポートした「ホンダ・モバイル・パワー・パックe:」を採用した電動ハンドガイドローラーのコンセプトモデルを展示。 MPPと専用充電器と共に展示されていた。 エクセン……階段も登れる荷物搬送車 エクセンのブースでは、電動荷物搬送車を展示。 クローラー式で最大500kgの荷物を積み最大40度の坂や階段を上る性能を持ち最大3時間の稼働が可能。10人分の仕事量をこの1台でこなすという。 ディンリーマシナリー日本……電動化が早かった室内用高所作業車 ディンリーマシナリー日本のブースには、展示されているもの全てが電動の高所作業車だった。主に室内用なので、古くから電動となっているとのこと。

TAG: #EV建機 #THE視点 #国内ビジネス
TEXT:TET 編集部
かわカッコ良さのヒントがここに。アバルト500eのデザインスケッチから知るデザイナーのこだわり

ステランティス・グループの伊アバルトは、電動ホットハッチ「アバルト500e」のデザインモチーフを公開した。アバルト500eは本国ではすでに実車が公開済みだが、このたび公にされたデザインイラストからは、アバルトのデザイナーが車体細部のデザインに込めた狙いを知ることができる。 ディテールに込められたブランドのアイコン 昨年世界初公開されたアバルト500eは、フィアットのコンパクトEV「500e」をベースに、モーターのパワーを引き上げ(118ps→155ps/87kW→114kW)、スポーティなスタイルを身にまとう、量産車初のホットハッチモデルと言われるモデルだ。今回公開されたスケッチでは、カーデザイナーがボディ細部の形状に込めた、その意図がわかるものとなっている。 例えばフロントのデザインスケッチによれば、特徴的なグリルの形状とホイールのスポークはサソリの両ハサミで構成される台形をイメージしており、確かに前者では下部が張り出したグリルサラウンドが台形になっているし、後者ではスポークによって作り出されるスペースが同じく台形を形作っている。また、フロントグリルはベースモデルより30mm延長され、空力性能もアップしているそうだ。 ホイールについては17インチと18インチのダイヤモンドカットバージョンの両方でこうしたサソリのモチーフが採用されているとのことだ。 もうひとつ、フロントグリルにはサソリのモチーフが隠されている。それは、一番下の開口部に配された4つの突起で、このディテールはサソリの4本の脚をイメージしたとのこと。 さらに、ヘッドライト上部のLEDエレメントは、よりスポーティな表情とするためにベースとなったフィアット500eからあえて取り除かれたが、そこにもサソリの脚をイメージした突起が3つ付与され、目力強化に寄与している。 >>>次ページ インテリアも随所にサソリが生息

TAG: #BEV #ホットハッチ #発売前モデル
シトロエン・アミ・フォー・オール(photo=ステランティス)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
シトロエン、小型EV「アミ」にバリアフリー対応車「AMI FOR ALL」を追加[2023.06.09]

取り回しが良くて手の内感覚の優しいEV “本当のバリアフリー車”のお手本のひとつ 【THE 視点】シトロエンは6月5日、「2023 パリ・オートノミック見本市」にて、小型EV「アミ」のバリアフリー対応モデル「アミ・フォー・オール」(以下、アミFA)を発表した。身体にハンディキャップがあるユーザー向けのモデルで、車いすを車内に収納できるのが特徴だ。 「アミFA」は、ハンディキャップを抱えたユーザーも容易に運転ができるよう、運転操作が簡単に行えることに加えて、ドライバー自ら車いすの収納が行えるよう工夫されている。開発は、バリアフリー車改造の専門企業「PIMAS」と共同で行ったようだ。 バリアフリー対応となった場所と機能は、「ドアの開口角の増加」「車いすからシートへ移動するためのサポート品(ボードと吊り革)」「アクセルとブレーキペダルを手で操作する補助装置とステアリング・ノブ」「車いすの車載アシスト装置」と多数におよぶ。 「アミFA」のベース車の「アミ」は、ヨーロッパの多くの国にて、16歳以上(フランスでは14歳以上)なら免許なしで乗ることができる「クワドリシクル」に分類されるEV。 車両区分は「L6e」となり、定格出力が4kW(5.4ps)・最高速度が45km/hに制限されているが、内燃エンジン車の侵入が禁止されている都市内でも走行可能というメリットがある。価格も日本円換算で100万円以内という非常に人気の高いモデルだ。 「東京オートサロン」にて展示され話題をさらったKGモータースの1人乗りのEV「ミニマム・モビリティ」をイメージするとわかりやすいだろう。 日本では軽自動車になってしまうヨーロッパの「L6e」は、日本の軽自動車や超小型モビリティに比べて、遥かに移動の自由度が高く手軽に所有できるカテゴリーである。 「アミFA」は、ハンディキャップを抱えるユーザーの移動をサポートすることを目的としているが、バリアフリー車両のお手本のひとつと言えるモデルであり、本当のバリアフリー対応車とは何かを考えさせてくれる。 日本でも、高齢者を含めた交通弱者の足となるのが本当のバリアフリー対応車ではないだろうか。是非とも国内にも「L6e」カテゴリーを設けてもらいたいものである。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★フォルクスワーゲン、「ID.Buzz」のアウトドア仕様「ID.Buzzアクセサリー・コンセプト」を公開……簡易キッチンなどを備えたキャンプ・車中泊対応のカスタム ★★出光興産、小型EV「イデタ」のモニタリングを7月1日から開始……タジマモータコーポレーションと共同開発、全国の系列店などと共同実施 ★パワーエックス、蓄電池型超急速EV充電器「ハイパーチャージャー」をニチガスより受注……最大容量358kWhのリチウムイオン・バッテリー、営業所7ヵ所に10月より納入開始 ★米トラックメーカーのケンワース、燃料電池車のトラクター・ヘッド「T680 FCEV」を受注……カナダの企業Loblawと5台を契約、トヨタ製のFCを搭載 ★ブレイズ、「三重アウトドアフェスティバル 2023」に出展……三重県・四日市市市民公園にて6月10日(土)・11日(日)、「ブレイズ・スマートEV」などを展示・販売 デイリーEVヘッドライン[2023.06.09]

TAG: #THE視点 #アミ #ニューモデル
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
新「水素基本戦略」を閣議決定、15兆円の投資はFCEV普及に活かせるか[2023.06.08]

水素価格は値上がりが続き現実と乖離する点も FCEVの普及には価格低下と総合水素ステーションの設置が必要 【THE 視点】内閣官房は6月6日、「再生可能エネルギー・水素等関係閣僚会議(第4回)」にて、「水素基本戦略」を改定した。官民合わせて、15年間で15兆円を、水素関連事業に投資する。 合わせて経済産業省傘下の資源エネルギー庁は同日、「令和4年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2023)」を公開した。その中において、水素価格の低下を目指すことを明言した。 白書には、「水素社会の実現に向けた取組の加速」の項目があり、「水素社会の実現を通じて、カーボンニュートラルを達成するためには、水素の供給コスト削減と、多様な分野における需要創出を一体的に進める必要がある」と書かれている。 具体的には、「一般的な水素ステーションにおいて、100円/Nm3(ノルマルリューベ:空気量を表す単位)で販売されている水素の供給コストを、2030年に30円/Nm3(CIF価格)、2050年には20円/Nm3(同)以下に低減し……(以下略)」とのこと。 水素ステーションで現在販売されている水素の価格は、1kg当たりの単価だ。1kgで11.14Nm3となることから、100/Nm3と報告される水素の価格は、1,114円/kgとなる。 しかし、昨年までは1,100円/kg(税込)程度であった水素の価格は、今年の初めから4月にかけておよそ1.5倍の1,650円/kgとなったところが多い。こうなると、2030年に現在の価格の3割程度(およそ1/3)とされる報告書の価格とつじつまが合わない。2030年の時点で、白書内にて2050年の目標としている1/5程度にしなければならないということになる。 また水素ステーションの数も、現在およそ170ヵ所とされているが、政府は2030年までに1,000ヵ所を目指すという。 しかし、今後増えるであろう商用FCEV(燃料電池車)の導入拡大を見据えた施策を加速させるためには、もう少し実際の現場を捉えなければいけない。 トヨタやホンダは、トラック・メーカーと協業して大型商用FCEVの開発・導入を加速させる方針を示している。しかし現在、大型車に対応した水素ステーションはまだまだ少ない。乗用車・大型車ともに利用できる大型の水素ステーションなどのインフラ整備を進めなければ、普及の加速は難しいだろう。 筆者は日頃の足としてFCEVに乗っている。現在値上がりしてしまった水素の価格では、ランニングコストで比較するとハイブリッド車には到底及ばす一昔前のガソリン車並みとなってしまっている。 今後の普及を考えると、2030年以前に水素価格を現状の価格の1/3以下にしなければ、エンジン式のクルマと比較してランニングコストが合わない。更に言えば、先に記述したとおり1/5程度まで下げないことには、FCEVが日常の足として日本に浸透するのは困難だ。 なお、水素エネルギーとFCEVに関して、当媒体の以下の記事でも述べているので、ぜひご一読いただきたい。 FCEVは実用的だが一般普及はまだ早いか……現役EV開発エンジニアが「ホンダ・クラリティFUEL CELL」を愛用して実感した燃料電池の可能性(前編) [THE視点] 水素燃料電池(FC)を世界に誇る先端技術に……現役EV開発エンジニアが「ホンダ・クラリティFUEL CELL」を愛用して実感した燃料電池の可能性(後編)[THE視点] (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★ボルボ、EVの新型コンパクトSUV「EX30」を欧州で発表……最高出力315kW(428ps)のAWDで、最大航続距離は480km[詳細はこちら<click>] ★★Jvolt、デジタル・サイネージ搭載のEV用充電器を発売……EV用充電器を広告映像などのPR掲示板に活用可能 ★★ホンダ、インドで中型SUV「エレベート」を発表……3年以内に「エレベート」ベースのEVを発売 ★アウディ、鹿児島県屋久島町にEV用充電器(最高出力8kW)を設置……屋久島の脱炭素化についての包括的提携の一環にて ★北海道、道内のFCEV導入事例を公表……2023年3月に、十勝総合振興局や胆振総合振興局に「トヨタ・ミライ」を計3台など ★テスラ、在庫車・認定中古車の購入キャンペーンを実施中……登録代行手数料(10万円)無料など ★フィアット、「アバルト500e」のデザイン・モチーフを紹介……「サソリ」のエンブレムをモチーフとした空力デザインなどをボディの随所に ★国土交通省、「ラストワンマイル・モビリティ/自動車DX・GXに関する検討会」(第5回)を開催……中央合同庁舎3号館<東京都千代田区>10階共用会議室にて、6月12日(月)13時〜15時 デイリーEVヘッドライン[2023.06.08]

TAG: #THE視点 #水素インフラ #燃料電池車(FCEV)
TEXT:TET 編集部
ボルボ、2023年5月のEVの販売台数は前年比3倍。欧州を中心に増勢し、1万826台を達成

ボルボは、2023年5月の電動車販売実績を発表した。それによると、バッテリー電気自動車(BEV)のグローバル販売台数は1万826台に達し、前年同月比で約3倍にも増加していることが明らかになった。 グローバルBEV販売の7割以上占める欧州市場 2030年までに世界の新車販売のすべてをBEVにするという野心的な目標を掲げ電動化を進めるボルボ。既に日本のラインナップにも、BEV、プラグインハイブリッド(PHEV)、48Vハイブリッド(HV)のいずれかの電動モデルを設定しているが、世界ではBEVが増勢を強めている。 今回の発表によると、5月のグローバル台数は6万398台で、前年同月の4万5,952台から31%増加となった。これは主に半導体不足等のサプライチェーン混乱が収束してきた影響と思われるが、BEVについては196%増の(昨年5月は3,652台)に達したとのことで、対前年比およそ3倍という数字は際立って強い。 市場別に見ると、やはりBEVが売れているのは欧州で、同地域における5月のBEV販売台数は7,655台(対前年同月比314%増)と、グローバルBEV販売の7割以上を占める。ちなみに、ブランド全体の販売台数に占める欧州のシェアは43%なので、いかに欧州でBEVの引きが強いかが分かるだろう。 次にボルボのBEVが売れているのは米国で、5月の販売台数は1,342台(対前年同月比66%増)となった。広い国土でBEVは不向きかと思われるが、カリフォルニア州など先進的な州では都市部住民を中心にBEVが相当売れているようだ。 >>>次ページ 新型車投入が日本におけるBEVの起爆剤となるか

TAG: #BEV #EX30 #ボルボ
TEXT:福田 雅敏
建設機械にもEVの波……「第5回 建設・測量生産性向上展」より写真レポート前編[THE視点]

第5回 建設・測量生産性向上展(CSPI-EXPO2023)が5月24日(水)~26日(金)まで「幕張メッセ」<千葉市美浜区>にて行われた。 本イベントを簡単に説明するならば「建設機械の展示会」である。建機はEV(電気自動車)と関係ないように思われるかもしれない。しかしいざ会場についてみると、建機にもEVの波がかなり押し寄せていることが分かった(以下、「EV建機」と表記)。前編(今回)と後編に分け、写真とともにEV建機の現在をレポートする。 自動車以上に進み先進的な建設機械のEV化 EV建機には、多くの人が知っているであろう大手各社から出展があった。そして測量については、水中用でも陸上用でも3D計測と5G通信が共通の認識となっているようだった。 EV建機で共通の認識となっているのが「ヨーロッパ市場」である。ヨーロッパでは、建機においてもカーボン・ニュートラルが待ったなしの状況で、建機メーカー各社が電動化への対応を急いでいる。そのため、本イベントに展示されていたEV建機も、必然的にヨーロッパ向けとなっていた。建設機械の電動化などは、我々が考えている以上に進んでいる。 クボタ……「チャデモ」に対応したEVバックホー クボタは、欧州市場向け電動バックホー「KX038-4e」を展示していた。 機械質量は3,870kgで17.8kWのモーター出力。稼働時間は、120分の急速充電を行うと4時間以上だという。 充電ポートには、日本の急速充電規格である「チャデモ」が採用されていて、ブースにはニチコン製の急速充電器も展示されていた。本機は欧州向けではあるが、日本での展開も見据えているのかもしれない。 住友建機……重量8tクラスの中型EVバックホー 住友建機は、中型バックホー「SH75E」を展示。現在開発中で、今回発表されていた仕様は、バケット容量0.28m3・機械質量8トンクラス・モーターの最高出力は50kW。こちらもヨーロッパ市場を見込んだ製品だという。 日立建機ティエラ……日本未導入のミニショベル 日立建機ティエラは、「ZAXIS ZX55U-6EBミニショベル」を展示。 すでにヨーロッパでは発売済みとのこと。重量5.5トンクラスに最高出力33kW(45ps)/最大トルク258Nm(26.3kgm)のモーターに、最大容量39.4kWhのバッテリーを搭載している。

TAG: #EV建機 #THE視点 #建設・測量生産性向上展
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
ダイムラー・トラック、EVバスのインフラ整備に特化した新規子会社を設立[2023.06.07]

「EVバスはインフラもセットで真価を発揮する」 現場に最適化したインフラ設計まで一手に担う新組織 【THE 視点】ダイムラートラックは6月5日、EVバスのインフラ整備専門の子会社「Daimler Buses Solutions GmbH」(以下DBS)を設立したと発表した。 EVバスの潜在能力を最大限に引き出すためには、緻密に設計されたシステムに組み込む必要があると、ダイムラーはとらえており、今回の専門子会社を設立した模様。 グループ内の専門知識を持つ人材を集め、スタートアップ企業と同等の意思決定の素早さを持ち、短期間での成長を見込める組織を目指しているようだ。 一口にEVバスとは言っても、使用する現場の環境と状況は様々。EVバスに求められる装備・仕様も、交通機関により異なる。DBSは、そのような事情に完全に対応・最適化できるよう、企業ごとにカスタムされたEVバスをはじめ、EVバス専用の電源・充電器・充電管理まで、EVバスの導入から管理全てをサポートするという。 将来的には、水素燃料電池(FCEV)バスやレンジ・エクステンダーを備えたバスの導入・運用にも対応する予定だという。 ダイムラートラックには、「エボバス」というバス専門の子会社があり、ダイムラーがメルセデス・ベンツ・ブランドで販売しているEVバス「eシターロ」は、エボバス内の専門チームが開発したものである。DBSがエボバスとどのように関わるかは明言されていないが、インフラ整備を専門組織化するということは、それだけ急務という状況なのだろう。 そして忘れてはならないのが、ダイムラートラック傘下に日本のブランドである三菱ふそうもいるということ。ダイムラー/ふそう組は、先日トヨタ/日野組との統合も発表されたばかり。今回のダイムラーの発表は、日本市場と無関係ではないと捉えている。 考えてみれば、EVバスを導入すると簡単に言っても、日本の南北の地域や都市部・山間部には、それに合わせたEVバス車両の最適化や運用形態が求められる。街を走るバスは、企業ごとのカスタム仕様車なのだ。 それにEVのバッテリーの効率は気温などにも影響を受けるため、エンジン式のように買ったあとに現場に丸投げでは、正しい運用はできない。日本の悪しき伝統とも言える上位下達では、上が満足するだけで、現場ではEVバスを持て余してしまう危険性もある。 DBSのようなスピーディかつ統合的にEVバスの導入をサポートする組織は、チグハグなEVバス運営などを解決するのに必要と言える組織だ。DBSのノウハウが、将来的には日本でのEVバスの運用に使われることを願う。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★シトロエン、小型EV「アミ」のバリアフリー・モデル「アミ・フォー・オール」を発表……車椅子使用者向けの設計、専用の収納スペースも確保 ★★メルセデス・ベンツ、「メルセデスAMG EQE 53 4MATIC+ SUV」の受注を本国で開始……129,662.40ユーロ(約1,900万円)から、エア・サスペンションを標準装備 ★★ニデック(旧日本電産)とルネサスエレクトリックが提携……イー・アクスルの半導体開発で協業、年内に初号機を開発予定 ★ステランティス傘下・カーシェア・サービスのフリー2ムーブ、「フィアット500e」の取り扱いを開始……ドイツ・ハンブルクにて、サブスクリプション専用モデルを導入 ★伊藤忠商事、カネカグループと共同で電力事業を開始……太陽光発電と商用EVのバッテリーをリユースした発蓄電所事業に参画、合弁会社「豊岡地域エネルギーサービス(同)」を設立 ★テラモーターズ、「マザー牧場」<千葉県富津市>にEV用充電器を設置……普通充電器を2基 ★ボグゾール、「コルサ・エレクトリック」と「モッカ・エレクトリック」の販売が好調……「コルサ」が1,752 台、「モッカ」が3,976台で、それぞれのセグメントで今年のベストセラーと発表 ★ボグゾール、ワンボックス型の商用EV「ヴィヴァーロ・エレクトリック」の販売が好調……英国内にて2023年1月〜5月に2,493台を販売、商用EVで3台に1台のペース ★経済産業省、「エネルギー白書2023」を閣議決定……2022年のレギュラーガソリンの最高平均価格(補助なし)は215.8円(2022年6月27日の数値) デイリーEVヘッドライン[2023.06.07]

TAG: #EVバス #THE視点 #海外ビジネス
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
フォルクスワーゲン、ロングホールベースの「ID.Buzz」を欧州と北米に導入[2023.06.06]

伝統と先進を融合させたネオ・クラシックEV ミニバン大国日本において先陣となる可能性あり 【THE 視点】フォルクスワーゲンは6月2日、EVのミニバン「ID.Buzz」に、ロング・ホイールベース(LWB)のモデルを追加したと発表した。欧州と北米に導入される。 今回のLWBモデルは、ベーシックからホイールベースが250mm延長され、全長は4,962mmに。3列目のシートが追加され、最大7名の乗車が可能で、積載容量も最大2,469Lとなった。 搭載されるバッテリーの容量も85kWhに拡大され、航続距離が延長。ヒートポンプを備えているため、冬場の電力効率も改善するという。 モーターの最高出力は210kW(286ps)で、0-100km/h加速は7.9秒。さらに最高250kW(340ps)のAWDグレード「GTX」の用意もあるという(2024年に発表予定)。このサイズのクルマとしては、かなりのハイパワー車である。 運転支援系もアップデートが行われ、ヘッドアップディスプレイ、次世代インフォテインメント・システム、スマートフォンによるリモートパーキングなどが装備されている。また、スマートガラスを採用したパノラマサンルーフも用意された。 日本で「ID.Buzz」は、フォルクスワーゲンのイベントにて展示・公開が行われ、2024年末の日本導入が発表された。しかし、その後の進展はアナウンスされていない。 日本においてのミニバンは、まだまだ内燃エンジン式の牙城かつドル箱市場である。純粋なEVミニバンの登場は、どの国内メーカーからも噂すら聞こえてこない。 「ID.Buzz」が予定通り2024年末に日本導入されれば、日本でのEVミニバンの先陣となるだろう。ある意味固着化してしまった日本のミニバン市場に、強いインパクトを与えてほしい。 なお、TETに寄稿しているモータージャーナリストの小川フミオ氏が海外にて「ID.Buzz」の試乗を終えている。そのインプレッションを公開予定なので、ご期待いただきたい。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★横浜ゴム、「トヨタbZ3」の純正タイヤに「ブルーアース-GT AE51」が採用……転がり抵抗などを低減したエコタイヤ ★★鈴与グループとレクシブ、EV事業で提携……EVのカーシェアリング事業を計画、レクシブが事業立ち上げを支援 ★ボルボ、2023年5月のEVの販売台数は1万826台……前年同月(3,652台)より大幅増加[詳細はこちら<click>] ★スマートソーラー、北海道釧路町役場駐車場にオンサイトPPA型のソーラーカーポートを設置……177kWの太陽光発電からEVを直接充電 ★テラモーターズ、アレップス(タウンのかんり)が運営する賃貸物件にEV用充電設備「テラチャージ」を導入 ★日産、山形県朝日町に「リーフ」の公用車を納車……EVの活用についても連携 ★国土交通省、車体前方の死角対策に国連基準を導入……6月5日より施行、子供などの存在を確認できるようミラーやモニターの装備を義務化 デイリーEVヘッドライン[2023.06.06]

TAG: #ID.Buzz #THE視点 #ニューモデル
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
ホンダ、「ジャイロ e:」などビジネス向けEVスクーターの一般販売を開始[2023.06.05]

ホンダのEVスクーターのバリエーションが増加 駆動ユニット上に積載する「ジャイロ・アップ」が事実上の復活 【THE 視点】本田技研工業(ホンダ)およびホンダモーターサイクルジャパンは6月1日、ビジネス向けEVスクーターの一般販売を同日から開始したと発表した。 これまで法人向けの販売となっていた「ベンリィ e:」「ベンリィ e: プロ」「ジャイロ e:」「ジャイロ・キャノピー e:」が一般でも購入可能になる。全国のHonda二輪EV取扱店にての取り扱いとなる。 ホンダは先日、着脱交換式バッテリー「ホンダ・モバイル・パワー・パック e:」(MPP)を採用したEVスクーター「EM1 e:」を8月に発売すると発表した。今回の発表も合わせて、ホンダの市販EVバイクのラインナップが一気に増えることとなる。 「ベンリィ e:」および「ベンリィ e: プロ」は、積載性を最上級に高めた配達業務向けスクーターだ。特に「プロ」は、スタンダードよりも大きな荷台と前カゴ、そしてナックルガードを装備し、新聞配達向けの最適化モデルと言えるものだ。価格は64万9,000円(税込・バッテリー込み/以下同)からの設定で、ガソリン車の50ccにあたる原付一種扱いの「Ⅰ」と、125ccの原付二種の「Ⅱ」を用意している。 「ジャイロ e:」(83万9,000円)および「ジャイロ・キャノピー e:」(100万1,000円)は、後輪がふたつ並んだ三輪のスクーターである。ちなみに両車とも原付一種扱い。 「ジャイロ e:」は、駆動ユニットの上部がそのまま荷台になっているのが特徴。対して「ジャイロ・キャノピー e:」は、大型のルーフを備えているのが特徴となる。 「ジャイロ e:」は、駆動ユニットの天板にそのまま荷物を乗せられるので、積載性と安定性が高い。対して「ジャイロ・キャノピー e:」は、荷台は運転席側のユニットに備え付けのため左右にスイングするが、雨などからライダーを守ってくれる快適仕様車だ。 ちなみに現行型のエンジン式の「ジャイロX」は、天板積載仕様ではなく、運転席型と一緒に左右にスイングする仕様となっている。しかしかつては、エンジンの駆動ユニットの天板をそのまま荷台にした「ジャイロ・アップ」というモデルがあった。「ジャイロ e:」の仕様がまさにそれで、「ジャイロ・アップ」の復刻と言えよう。 「EM1 e:」と、今回のビジネスモデルの大きな差は、「MPP」の搭載数の違いと言える。「EM1 e:」が「MPP」1個の搭載に対して、ビジネスモデルは、2個を搭載(直列接続)。強力な電圧(96V)に対応したEVシステムを採用したプロ仕様である。 「EM1 e:」の価格は29万9,000円とリーズナブル。ビジネスモデルの価格は、その倍以上となるが、信頼性の高さや長い航続距離(EM1 e:が53kmに対して、ベンリィ e:Ⅰが87km)が魅力的。バリエーションも豊富で選ぶ楽しみもある。軽トラックのように、経済的かつ便利な日常のアシとなってくれるのは間違いないし、何よりガソリン代とメインテナンス・コストが浮くのは大変にありがたい。 個人でもこれらのビジネスモデルを購入できるようになったのは、朗報だと感じた。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★フォルクスワーゲン、ロングホールベースの「ID.Buzz」を発表……ヨーロッパと北米に導入、「ワーゲンバス」としての北米導入は20年ぶり ★★メルセデス・ベンツ、アメリカにて「メルセデス・マイバッハEQS SUV」に限定車を設定……ダークカラーをまとったデザイン・パッケージ「ナイト・シリーズ」[詳細はこちら<click>] ★神奈川県、「令和5年度神奈川県燃料電池自動車導入費補助金」の申請先を変更……6月1日より「神奈川県環境農政局脱炭素戦略本部室」へ、12月28日(木)まで受付 ★GM、韓国のバッテリー企業ポスコと提携……カソード活性材料(CAM)などをEV36万台分/年、アメリカで生産 ※カソード:外部へ電流が流れ出す電極 ★マック・トラックス、EVトラックの「MDエレクトリック」が米カリフォルニア州でHVIPに認定……8万5,000ドル(約1,190万円)の購入補助 ※HVIP:トラック・バスの補助金制度 ★台湾のバッテリー企業プロロジアム、全固体電池の工場をフランスに建設……EVへの採用を見据え、52億ユーロ(約7,800億円)を投資 ★テスラ、「東名厚木スーパーチャージャー」<神奈川県厚木市>にて特別試乗会を開催……6月10日(土)、「モデルY」「モデル3」を用意 ★パナソニックエナジー、車載バッテリーのグローバル生産能力を増強……2030年度に200GWhへ ★警察庁、電動キックボードの安全を啓発……7月1日より新制度、公式WEBにてルールを紹介 ★フォーミュラE第10・11戦ジャカルタ、第10戦はパスカル・ウェーレイン(タグホイヤー・ポルシェ)、第11戦はマキシミリアン・ギュンター(マセラティMSG)が優勝……2連戦後のポイント・リーダーはパスカル・ウェーレイン デイリーEVヘッドライン[2023.06.05]

TAG: #EVバイク #THE視点 #ニューモデル
TEXT:TET 編集部
6月7日に公開予定のボルボの新型エントリーBEV「EX30」。内外装が部分公開

ボルボは5月31日(現地時間)、バッテリー電気自動車(BEV)の新型「EX30」を予告する新たな画像を公開した。 EX90にも通じる新世代ボルボ・フェイスを採用 2023年6月7日に世界初公開されることが発表されている「EX30」は、ボルボのエントリーBEVを担うコンパクトSUV。5月上旬にはリアコンビネーションライトやシート表皮などの一部ディテールが先行公開されていた。 今回追加公開されたイメージでは、ヘッドライトの点灯形状にボルボのアイデンティティであるトールハンマースタイルが採用されることが明らかになった。先に発表されたフラッグシップ電動SUV「EX90」と同じく、ピクセル状のLEDがグラフィックを構成しており、一見して新世代モデルとわかるデザインだ。 リアエンドは、リアコンビネーションランプがEX90と同様、上下に二分割されたデザインが採用されることが明確になった。一方、ドアハンドルはフラップタイプのEX90とは異なり、より一般的なグリップタイプになる模様だ。 インテリアについてはより多くの情報が明らかになった。まず、ダッシュボードセンターには、大型のインフォテインメントディスプレイを装備。モニターのサイズは12.3インチとなるようで、速度や充電レベルなど車両状態に関する情報に加え、Googleマップを使ったナビゲーションシステムを搭載する。通信は5G規格となり、ボルボとして初めてApple CarPlayのワイヤレス接続にも対応するようだ。 また、安全性を重んじるボルボらしく、運転中には重要な情報以外を排除して目を疲れさせない落ち着いた表示スタイルになるという。 >>>次ページ BEVならではのオーディオへのこだわり

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連載企画 一覧
VOL.13
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第13回:もし、ドイツやアメリカに住んでいたら

道路事情や駐車環境は国によって様々。プジョー 「e-208GT」は、日本ではジャストサイズで愛用される岡崎さんですが、時には「ドイツやアメリカだったら」と思いを巡らします。 日本ではコンパクト。ドイツやアメリカだったら……。 僕は常々「コンパクト系が好き!」と言っている。だが、これは、あくまでも日本でのこと。日本の道路や駐車場を中心にした使用環境下ではコンパクト系がいいということだ。 だから、僕がこれまでに所有したLクラス車は3台。テールフィン全盛期のアメリカン2ドアハードトップ……、「デソート・ファイアスイープ」、そして、5.3L V型12気筒を積んだ「デイムラー・ダブルシックス」が2台の、計3台だけだ。 それ以外は、数台のDセグメントを除けば、すべてCセグメント以下。でも、ドイツやアメリカに住んでいたら……車歴はまったく変わっていただろう。 僕の現在の愛車は、プジョー e-208GT。Bセグメントサイズの使い勝手の良さは、大いに気に入っている。 ドイツに住んでいたら、と思えば―e-tron GT ……が、もしも、サイズのことなど考えず、ストレートに「ほしいEV」を選んでいたとしたら……「アウディ e-tron GT」か、「GT RS」が愛車になっていたはず。 つまり、僕が、道路環境も駐車環境もいいドイツに住んでいたら、迷わず「いちばんほしいEVをゲット」していたということ。 アウディ e-tron GTでアウトバーンを……いったいどんな気分なのだろうか。 ヒューンという微かなモーターの唸り、抑制の効いたロードノイズと風音……「素晴らしく心地よくもインテリジェンスなハイスピード クルージング」……といったところが、僕の描くイメージだ。 さらに、ドイツは充電環境の整備も進んでいる。これも、大型で高性能なEVをゲットする垣根を低くする。 充電環境といえば、同じ欧州でも、イタリアなどは遅れている。かつて、ガソリンが無鉛化されたタイミングで、ミュンヘン~シエナを往復する家族旅行をしたが、イタリアでの無鉛ガソリンの供給遅れには困惑した。 ドイツで手に入れた「無鉛ガソリン供給スタンド マップ」では、イタリアでも難なく無鉛ガソリンは給油できるはずだった。だが、現実はまるで違った。多くの丸印付きスタンドでの給油は叶わなかったのだ。 クルマのレンタル先(ドイツ)に電話を入れ、有鉛ガソリン使用の許可を得て旅を続けることはできたが、冷や汗ものだった。

VOL.2
変速機付きイー・アクスル増加の予感……「人テク展」を写真で振り返る[THE視点]

5月24日〜26日まで開催された「人とくるまのテクノロジー展 2023 YOKOHAMA」<パシフィコ横浜(横浜市みなとみらい地区)>。 自動車メーカーとサプライヤーが最新技術を持ち寄るこの展示イベントは、今年は前回以上の来場者数と出展者数を記録した(来場6万3,810人/出展484社)。 前回[詳細はこちら<click>]のレポートはメーカーを中心に紹介したが、今回は中編として、サプライヤー系から昨今の注目パーツであるモーター一体型駆動装置(イー・アクスル)を紹介する。 TOP……小型EV対応のイー・アクスル TOP(タケフ・オリジナル・プロダクション)ブースには、小型EVとともに、イー・アクスル+減速機が展示されていた。 モーターは使用電圧48Vに対応した最高出力(定格)6.0kW(8.2ps)のもので、「モーターのみ」「モーター+インバーター」「モーター+インバーター+減速機」から選べるのが特徴。現在はGen1と呼ばれるものが主流だが、より小型化された、Gen2も展示されていた。 住友化学……軽量・高剛性の次世代プラスチック製イン・ホイール・モーターケース 住友化学のブースには、スーパーエンプラ(スーパー・エンジニアリング・プラスチックス)のPES(ポリ・エーテル・サルフォン)材を、イン・ホイール・モーターのケースに採用したものを展示。 アルミニウム製カバーに比べ約30%軽量化できるうえ、モーターに必要な放熱性も保持するという。 アイシン……電費が10%向上するイー・アクスル アイシンブースでは、イー・アクスルを展示。現在は第1世代のミディアムクラスの展示であったが、将来的(第2世代以降)には、スモール、ラージともラインナップを増やしていくという。このイー・アクスル化により、電費が10%向上するという。 デンソー……前・後輪搭載可能で電費が向上するインバーター(モックアップ) デンソーは、樹脂製のイー・アクスルのモックアップを展示し、その中にインバーターを組み込んだものを紹介していた。フロント用とリア用の2種類を展示。損失低減により、電費を向上、航続距離が延伸できるという。 マグナ・インターナショナル・ジャパン……商用車向けのイー・アクスル マグナでは、商用車向けイー・アクスルを展示。スペック等は明らかにされなかった。

VOL.13
悲報! 充電料金が大幅値上げに [ID.4をチャージせよ!:その13]

食料品や電気料金など物価上昇が止まらないなかで、ついに電気自動車の充電料金も値上げに。「ID.4 Pro」オーナーの私も、その影響をモロに受けそうです。 7月からe-Mobility Powerが値上げに ふだん私が利用しているのが、e-Mobility Power(イーモビリティパワー、以下eMP)ネットワークの急速充電器です。2023年3月現在、全国に約7,800口の急速充電器があり、日産や三菱、トヨタ、メルセデス・ベンツ、BMWといった自動車ディーラーをはじめ、高速道路のサービスエリア/パーキングエリア、道の駅、ショッピングモール、コンビニエンスストア、ガソリンスタンドなど、さまざまな場所にある急速充電器が、専用の充電カードをかざすだけで利用できます。 フォルクスワーゲン・ジャパンでも、ID.4や「eゴルフ」のオーナー向けに、eMPネットワークが利用できる「フォルクスワーゲン充電カード」(以下、VW充電カード)を用意しており、私も加入しています。 そのeMPが2023年7月1日から、eMP会員向けの料金改定を発表しました。「急速・普通併用プラン」の新旧料金は次のとおりです。   基本料金 急速充電料金 普通充電 旧 4,620円 16.5円/分 2.75円/分 新 4,180円 27.5円/分 3.85円/分 月額料金が4,620円から4,180円に値下がりする一方、充電時間に応じて支払う都度利用料金が大幅にアップ。急速充電では1分あたり16.5円から27.5円。67%の値上がりです。普通充電も1分あたり2.75円から3.85円と40%上昇します。30分急速充電した場合の料金は、これまでの495円が825円になりますから、今回の値上げ幅がかなり大きいことがわかります。

VOL.10
知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第10回:自由自在な電気自動車の駆動方式

歴史が語る駆動方式の変遷 駆動方式について、永年にわたり後輪で駆動し、前輪で操舵する方式が、素直だとの認識が広まっている。たとえば、馬車の時代の馬は、駈足(かけあし)をする際に後ろ脚から走り出す。 後輪駆動(RWD)は、世界初のガソリン車であるカール・ベンツの「パテント・モトール・ヴァーゲン」がそうだった。ただしそれは馬車のようなフレームの後ろ側にエンジンを搭載し、ベルト駆動で後輪を回す仕組みだった。ミッドシップ的でもあり、リアエンジン・リアドライブ(RR)の形態ともいえる。今日のフロントエンジン・リアドライブ(FR)に通じるRWDは、フランスのパナール・エ・ルバッソールによってもたらされ、ドイツのダイムラーのメルセデスが、この手法を世界的に広めた。 前輪駆動(FWD)の歴史は実は古く、18世紀に蒸気機関で走るフランスのキュニョーという大砲を車載した車両があった。エンジン車のFWD誕生について乗用車として有名なのは、フランスのシトロエンの「トラクシオン・アヴァン」ではないか。のちに英国で生まれたミニもFWDの代表的車種であり、ドイツ車ではフォルクスワーゲンの初代「ゴルフ」が誕生すると、FWDの象徴的存在となった。FWDの価値は、駆動系の機器や装置を車体の前寄りに集中させ、後ろの空間を客室や荷室に有効に利用できるところにある。 四輪駆動(4WD)は、1903年にオランダのスパイカーによって世に出された。これはレーシングカーだったが、実用的な4WDとしては、ゴットリープ・ダイムラーの息子のパウル・ダイムラーが軍用車に適用した。米国でも、第一次世界大戦には4WDのトラックが活躍するなど、悪路走破の威力が4WDには求められた。そして「ジープ」が名を馳せる。舗装路での有用性は、日本のスバルやドイツのアウディによって示され、今日に至る。 電気自動車(EV)も、駆動方式による走りの得手不得手は基本的に同様ではある。そのうえで、エンジン車で4WDとなると燃費の悪化はやむを得ないが、EVではエンジン車の4WDで不可欠なトランスファーやセンターディファレンシャルといった装置を省けるので、それらに使われる歯車がなくなり摩擦損失がない。このため、モーター追加による重量増はあるが、電力消費にそれほど大きな差が出ず、目的に応じて駆動方式を選びやすくなる。 駆動方式を自由に選べるEV EVのプラットフォームを改めて見てみると、床下のほぼ一面にバッテリーが搭載され、その前後に、駆動用のモーターと制御機器、充電器などが配置されている。エンジン車と大きく異なるのは、バッテリーからの電気を配線でつなげば、モーター駆動では、エンジン車のようなプロペラシャフトや前後へトルクを分配するトランスファーといった伝達系部品を省略できる。変速機も不要だ。したがって、どの駆動方式も比較的簡単に設定できることになる。 EV専用車として開発された米国テスラは、RWDと4WD(AWD:オール・ホイール・ドライブと表現されることもある)の車種構成で売り出された。 日本の三菱「i-MiEV」はRWDだが、日産「リーフ」はFWDでの発売となった。「i-MiEV」は、リアエンジン車の「i(アイ)」が先に発売され、そのコンバートEVであったため、自動的にRWDを採用した。リーフはEV専用とはいえ、エンジン車の小型車を基にした開発によってFWDとなった。 ドイツのBMW i3は、EV専用車としてRWDで登場した。フォルクスワーゲンの「ゴルフe」は、エンジン車からのコンバートだったのでFWDだが、EV専用車のID.4はRWDと4WDである。 生産するうえで部品点数が少なくなるEVは、プラットフォームにバッテリーを搭載したあとは、基本的に前後の空間にモーターを設置するだけなので、製造工程を簡素化できるだろう。

VOL.12
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第12回:EVは、軽自動車へステータスをあたえた!

軽EVのサクラとeKクロス EVには、軽乗用車の印象を変えるステータスのようなものを感じると岡崎さんは語ります。ミニマムで、仕立てよく、そしてEVの気持ちよさから期待大です。 海外エンジニアが評価する軽乗用車 軽EVの「日産サクラ」と「三菱eKクロス EV」は共に魅力的。前者は大人の雰囲気を、後者は若々しい雰囲気を纏う。基本は同じ両車だが、巧みな棲み分けをしている。 僕が試乗したのは日産サクラ。デビューしてすぐだったが、その姿を一目見て頷き、ちょっと走っただけで気に入った。直感的に「売れる!」と思った。 現在の軽はよくできているし、よく走りもする。限られたあれこれの中での、各メーカーの競い合いは素晴らしいのひとことだ。 少し前のことだが、欧州有力メーカーの技術系トップと食事をした。その時、僕は、「日本車でいちばん高く評価しているクルマはなにか?」と質問をした。 答えは「軽乗用車」。「厳しい条件下で、ユーザーの求めに、あれほど高いレベルで応えているクルマは他にない」との答えだった。 僕はハッとした。ずっと身近で発展成長してきた軽だけに、そうした視点での見方が甘かったことに気づかされたのだ。 この方はすでに引退されている。でも、軽EVにはきっとお乗りになっているはず。そして、間接的ではあろうが、後輩エンジニアに、あれこれ印象を、意見を、述べられているだろうと想像している。 「EV」は、付加価値があるもの 話をサクラに戻そう。 その走り味乗り味については、すでに多くの記事が出ているし、読まれているだろう。なので繰り返すことはやめる。 サクラに乗ったとき、「売れる!」と思ったことは上記の通りだが、売れ先として直感的に頭に浮かんだひとつが、旧い高級住宅街。 親しい友人が住んでいる、東横線沿線の伝統ある高級住宅街だ。 風格ある、あるいは瀟洒な佇まいの家が立ち並んでいる。……でも、その街を抜ける通りは狭い。駐車車両は明らかな障害になるし、Lクラスのクルマや、大型SUV辺りは明らかに過剰を感じる。 そう……そんな街に、「サクラはピッタリじゃないか!」と閃いたのだ。そして、試乗でも「旧い街」を走ってみた。それも、坂のある込み入った街を……。 軽は狭い道は得意だが、登り勾配は得意ではない。過給機付きでトルクのある軽はよく走る。……でも、タイトな角の先が上り坂といった条件ではスイスイとはいかない。 しかし、サクラは、そんな条件下でも、ほんとうに気持ちよく、文字通り「スイスイ」走り抜けてくれる。 とはいえ、「べつにEVでなくてもいいのでは?」という疑問も出るだろう。「気持ちよくスイスイとはいかなくても、実用には十分でしょ!」と……。答えは「その通り」だ。 しかし、高級住宅地に住むような豊かな人たちにとっては、たとえ便利でも、「普通の軽」に乗るのは抵抗があるかもしれない。 メルセデス、BMW、アウディ、ジャガー……といったクルマを愛車とする人たちのセカンドカーとしては、なにか、ステータスになるようなプラスアルファがほしい。 そう……サクラにはそれがあるということ。軽ではあっても、新しい時代を象徴するサンプルのひとつとも言える「EV=電気自動車」に乗っているというステータスだ。 日本ならではのEVに期待! それに、実際に運転しても、静かで、滑らかで、ピックアップがよくて……と、日々乗っているプレミアムセグメントのクルマとの、感覚的乖離が少ない。気持ちよく走れる。 上記した東横線沿線の高級住宅地に住む友人によると、僕の予測は「当たり!」らしい。 サクラはどんどん増えていて、同じ街に住む彼の妹さんも買ったという。そして、「日々の近場の買い物が、ほんとうに楽になった!」と喜んでいるそうだ。 加えて、「電気自動車がこんなに楽で、気持ちのいいものとは思わなかった。もう手放せないわ!」とも。道路の狭さに加えて、坂も多い街なので、とくにそう感じるのだろう。 日産サクラと三菱eKクロス EVのデビューは、軽の世界を大きく拡げてくれた。とともにEVの世界をも拡げてくれた。この2車への追従モデルがどんな形で、どんなレベルで出てくるのか……大いに楽しみだ。

VOL.
36分ならガマンできる!? 東京〜鈴鹿往復ドライブ [ID.4をチャージせよ!:その12]

愛車のID.4で東京〜鈴鹿のロングドライブに出かけました。途中の充電環境が様変わりしたおかげで、EVの旅が格段に便利になりました! “東名派”から“新東名派”へ 新東名の御殿場JCT~三ヶ日JCTが開通したのは2012年4月のこと。4年後の2016年2月には浜松いなさJCT~豊田東JCTが開通。さらに、2020年12月からは御殿場JCT~三ヶ日JCTの6車線化が完了し、この区間の最高速度が120km/hになりました。これにより、東京〜名古屋の移動が便利になったのはご存じのとおりです。 ただ、個人的には昔ながらの東名を好んで走っていました。というのも、新東名が開通したおかげで東名の交通量が減り、新東名よりもむしろ東名のほうが走りやすくなったからです。とくに週末などに、追い越し車線をマイペースで走り続けるマナー違反のクルマは新東名のほうが多く(個人の感想です)、気分良く走れるという理由からあえて東名を選んでいました。 そんな私でも、EVでドライブするのであれば、いまや新東名の一択です。駿河湾沼津SAと浜松SAの上下線に、150kW級急速充電器やマルチタイプ急速充電器が設置されたおかげで、一気に充電施設が充実したからです。とくに150kW級急速充電器が利用できるのは頼もしく、以前のレポート(新東名で150kW級急速充電器を巡る旅 [ID.4をチャージせよ!:その11])で報告したとおり、30分の急速充電で走行可能距離が220km増えたこともありました。 では、どれだけ便利になったのか? ちょうど良い機会なので、鈴鹿サーキットの取材にID.4で向かい、チェックしてみることにしました。

VOL.4
バイクのEV化に対する海外と日本の温度差、欧州のショーで年々敷地面積を拡大するEVバイク[EICMA(ミラノモーターサイクルショー)レポート:その4]

自動車と同様にバイクも多様な電動車は欧米や中国のメーカーから続々と発表されているようだ。EICMA(ミラノモーターサイクルショー)でそれらを目の当たりにしたモーターサイクルジャーナリストの小川 勤さんにユニークなバイク達の印象を語ってもらった。 オリジナリティは高いが不安になるスペックが乱立するEVバイクも…… こ、これはどうなのだろう……。このダヴィンチという中国メーカーのバイクのスペックを見て驚愕した。興味のある方はメーカーのサイトに飛んでいただきたいが、最高時速は200km/h、最高出力は100kW(135ps)とあるが、少なくとも僕はこのディメンションや細部の作り込みでこの速度を出す気にはならなかった。 説明によると1000個以上のチップや200個以上の高性能センサーを採用しており、スマートフォンが鍵にも、メーターにもなるらしい。足まわりは本格的で倒立フォークにブレンボ製のキャリパーを装備。電子制御はヒル・スタート・アシスト・コントロール(坂道発進をサポート)やリバースアシスト(バック機能)、コンバインド・ブレーキ(ABS機能)、トラクション・コントロールも搭載している。 しかし、スポーツバイクに必要なホールド性の高いポジションは考慮されておらず、趣味のバイクに必要な美しさや機能美もない。価格は2万7500ドル(1ドル=135円の場合、約370万円)とかなり高めで、すでにアメリカでは発売されているらしい。少なくとも僕にこのEVバイクを受け入れる感性はなかった。 https://global.davincimotor.com/ 一方で気になったのはスウェーデンのCAKE(ケイク)だ。EICMA 2022で『Sustainable Exhibitor Award(持続可能な出展者賞)を受賞し、日本ではゴールドウインが代理店となって販売を進めていくメーカーだ。 2016年よりスタートしたケイクは、「エキサイティングなモビリティ体験」と「環境への責任」の両立を目指し、ゼロエミッション社会への移行を加速させることを使命として活動している。ケイクが考える持続可能性とは、人と自然の共生をよりスマートで、環境に優しく、健康的かつ平和的に実現することにある。そのためにケイク社は年齢や性別、サイズ、スタイルを問わず、誰しもが敬意をもって自然と都市を冒険できる製品を生み出している。 ケイクで森の中を鳥のさえずりを聞きながら駆け抜ける喜びは想像に難しくないが、価格は高めでオフロードイメージのバイクである「カルク」は247万5000円から。その喜びを堪能するのはかなりハードルが高そうだ。 https://goldwin.ridecake.jp/

VOL.3
燃費と加速性能を両立するカワサキのハイブリッドバイク[EICMA(ミラノモーターサイクルショー)レポート:その3]

EICMA(ミラノモーターサイクルショー)で発表されたカワサキのハイブリッドバイクと水素エンジンバイクについて、カワサキ側の考えを聞いて、実車を見て、モーターサイクルジャーナリストの小川さんが思ったこととは? 距離を走ることと加速。これが趣味領域のバイクに大切なこと 『125cc以上=距離を走る趣味の領域』はハイブリッド。これがカワサキの出したカーボンニュートラル化のひとつの答えである。フルEVや水素ももちろん開発しているが、まずは燃費を良くすることにカワサキは注力する。 それがエンジンと電気のハイブリッドバイクであるHEV(ハイブリッド・エレクトリック・ビークル)モーターサイクルだ。数ある二輪メーカーの中でもハイブリッドに着目しているメーカーは少ないが、カワサキはその可能性を模索している。 「EVの開発を進めていると、125cc相当はEVの方が効率が良いことがわかってきました。しかしそれ以上になるとバッテリーも大きくなるし、コストもかかる。もちろん重たくもなります。でも、遠くには行きたい。街から出たいじゃないですか。ニンジャZX-10Rなどを開発しながら、頭の中でハイブリッドやりたいなとずっと燻っていました。 ガソリンエンジンのままではいつまでもカーボンニュートラルにならないけれど、ハイブリッドなら燃費をよくできます。四輪のハイブリッドは、燃費を良くすることにふっていますが、バイクだと燃費を狙うとファンの部分をつくるのが難しい。 だからカワサキのハイブリッドは、加速を楽しめるハイブリッドです」とカワサキの先進技術&カーボンニュートラルの総括部長である松田義基さん。 すでにテスト走行シーンも公開しているが、その加速性能はテストライダーも驚くほどなのだという。 「ゼロ・スタートからバンッといきます。加速感はまさしくエンジンとモーターを足した感じです。面白いのは間違いないんです」と語る松田さんの表情は自信に満ちている。 電動化の前に燃費を良くすることを考える いま、欧州のガソリン価格は国によって変わるけれど1L1.5ユーロ以上で、日本よりも高い。クルマやバイクでの移動はコスト的に楽ではないのだ。さらに今後ガソリンはもっと高くなるだろう。 世界的にカーボンニュートラル化の話が進めば、ガソリンにはより多くの税金がかけられるようになり、反対にe-fuel(※)は税金を少なく、補助金などを出しながら価格を下げていく流れになる可能性が高いからだ。もちろん国にもよるが先進国ではこの流れになっていくのが妥当だ。 ※二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を原材料として製造する石油代替燃料 そんな時、やはり好燃費のバイクの方が良い。カワサキのハイブリッドは、もちろんe-fuelになった社会でも、恩恵を受けられる。 「燃費と加速を両立するのがカワサキのハイブリッドです。e-fuelになっても燃費が良い方がいいじゃないですか。技術的には大変です。難しいところもたくさんあります」と松田さん。 排気量などの詳細は発表されていないが、車体を見るとエンジンは並列2気筒だ。油圧のクラッチシステムでエンジンとEVを切り替えられるパラレルハイブリッドで、EVのみの走行も可能となっている。車体を見るとシステムが大きくなるハイブリッドの懸念をすでに克服しているのがわかる。 細かいディテールを見るほどに、テストライダーも驚いたというその加速を早く体感してみたくなる。

VOL.
知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第9回:電気自動車がもたらすデザインの進化

EVでも生き残るラジエターグリル いうまでもなく自動車において、スタイリングなどのデザインは商品性として重要な要素に違いない。電気自動車(EV)の造形として象徴的なのが、米国のテスラだろう。同社は、EVしか開発・製造・販売していない。従来のクルマの形にとらわれることなく、新車を創造することができる。 クルマの姿形は、機能を覆う皮膚のように、その造形が発展してきた。エンジン車は、ガソリンを燃焼することで高温になるエンジンを冷やすため、ラジエターが不可欠だ。冷却を効率的に行うため、車体の先端にラジエターグリルが設けられている。ドイツのBMWは、“キドニーグリル”と呼んで、同社のクルマの外観的特徴としてラジエターグリルを位置づけている。その昔、空冷エンジンを使ったフォルクスワーゲンの「タイプ1」(通称“ビートル”)は、ラジエターを必要としなかった。そこでエンジン車にもかかわらず、グリルレスであることが外観の特徴になった。同様に、当初はビートルの部品を流用したスポーツカーのポルシェもグリルレスで、現在は水冷エンジンを使うが、グリルレス的な表現を継承している。 クルマの外観は、中身の機能によって影響を受ける。EVになれば、モーターやバッテリーがある程度の熱を持つが、エンジンほど高温ではないので、大きなラジエターは必要ない。テスラのようなグリルレスの顔つきは、機能を形で表現したひとつの姿といえる。 一方、永年にわたりエンジン車を販売してきた自動車メーカーは、キドニーグリルを特徴としてきたBMWのように、EV専用車種でもその造形を外観の特徴としていまは残している。メルセデス・ベンツの「EQS」や「EQE」、アウディの「e-tron」などもEV専用車種だが、メルセデスではマスコットの“スリーポインテッド・スター”を配したグリルや、近年のアウディを象徴してきた“シングルフレームグリル”は残したままだ。ただし、ラジエターグリルのように空気が通り抜ける機能はなく、蓋をしたようなつくりだ。 クルマの顔つきは、各社の象徴である。簡単に変更できないかもしれない。だが、この先ある時点で、EV時代にふさわしい顔つきがもっと広がっていくのではないか。テスラは、グリルレスとはいえ光の陰影を活かした顔つきを生み出した。 オーバーハングの短さはEVの特徴 EVらしさの表現は、ラジエターの有無などによる顔つきに留まらない。 背景にあるのは、機能をもたらす部品である。床下一面に駆動用バッテリーを敷き詰めるEVは、駆動系や充電系の機器をその前後に配置する。ここから、ホイールベースが長く、前後のオーバーハングは短い姿になる傾向にある。 英国ジャガーの初のEVである「I-ペイス」は、エンジン車のSUVと同様の姿に一見思えるが、オーバーハングがかなり短い。ラジエターが不要なだけでなく、駆動用モーターがエンジンに比べ小さいためにショートノーズだ。広々として見える客室の前方に鼻さきが少し出っ張るといった、独特の姿になっている。そうしたわずかな違いで、エンジン車と並べてみたときの存在感はずいぶん違う。 メルセデス・ベンツ「EQS」や「EQE」も、客室部分が長く見え、前後のオーバーハングは短い。車体全長はエンジン車の「Sクラス」とあまり変わらないが、長いホイールベースと短いオーバーハングによって、独特な存在感を備えている。 テスラの各車種が路上で目立つのも、グリルレスな顔つきだけでなく、短いオーバーハングやロングホイールベースが、個性を引き立たせているだろう。駆け抜けていくテスラは、一目でほかと違うことを意識させ、目を引く。

VOL.11
岡崎宏司の「EVは楽しい!」第11回:EVを身近に。e-208GTを愛用して思うこと

岡崎さんにとって、愛用するe-208GTをドライブして思うことのひとつに「EVの今と未来」があるそう。もっと身近になってほしい、とEVへ思いを馳せます。 電費は気にせずに 僕のEV使用環境についてはいろいろ話してきたが、辛いこと苦痛なことはなにもない。 中でも、もっとも有り難いのは、わが家にはガレージがあって充電器があること。 念の為、日産の充電ネットワークが使える会員になってはいるが、一度も使っていない。わが家のガレージの3kWh充電器に繋ぎ、安い夜間電力を使うやり方でこと足りている。 ちなみに、プジョーe-208GTの電費は、ヒーターをフルに使う冬場で4km/Whくらい。陽気のいい季節では6km/kWhといったところが平均値だと思う。 バッテリーは50kWh。心理的に安心感の持てる10kWhくらいの余裕を残すと……冬場は160km、陽気のいい季節は240kmといったところが一充電あたりの平均的走行可能距離ということになる。 運転のしかたでもけっこう差が出る。なので、あくまでも目安だが、「電費は気にしない。でも、基本、交通の流れに乗って走る」といった僕の使い方での電費である。 電費といえば、勾配の影響も大きい。箱根の経験では……登りを楽しんでしまったりすると、登り下りの電費差は5倍ほどにもなる。 幸い、箱根のお気に入りのホテルには充電設備がある。なので登りもガンガン行ける。楽しめる。そして寝ている間に充電できてしまうのだから、ほんとうに助かる。 水素FCEVのミライをそばにしてみると 話はそれるが、息子は水素FCEVのミライに乗っている。水素ステーションの普及はまだ遠いが、息子の住まいの近くには3ヵ所あるという。 加えて、一充填での走行距離が、グレードZで750km、グレードGで850km(カタログ値)と長いので、「まったく不安も不自由もない」とのこと。 これは僕の憶測だが……いくら航続距離が長くても、水素ステーションが近くになかったら、どうだっただろう。買わなかったかもしれない……。そんな気もする。 “ながら”充電ができるのが理想 まぁ、自宅で充電できなくても、勤務先やショッピングモール辺りで充電できれば問題はない。「ただ充電を待つ」のは苦痛だが、「なにかをしている間に充電できる環境」があれば、EVはグンと身近なものになる。 公共充電設備の整備ももちろん重要。世界でもっとも高密度な充電ネットワークを持つとされるオランダの場合は、道路延長100kmあたり平均47.5基の充電器が設置されているという。

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EVヘッドライン
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「らしさ」に溢れるフィアットの走りは健在![フィアット500e試乗記:その5(最終回)]
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Bobcat E10e(photo=福田 雅敏)
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