曽宮 岳大 記事一覧

TEXT:曽宮 岳大
マツダ、CX-90を米で世界初公開。日本向けのCX-80に継承される技術とは

マツダの北米法人は現地時間1月31日、フラッグシップモデルとなる3列シートSUV「CX-90」を初披露した。CX-90は、日本への導入予定はないものの、これよりもボディ寸法を抑えた3列シートSUV「CX-80」の導入を予定している。そこでCX-90の内容をチェックしつつ、そこから日本向けのCX-80に生かされそうな技術やポイントについても探っていきたい。 デザインにおけるCX-90とCX-80の共通項 CX-90やCX-80は、マツダのラージ商品群に位置付けられるモデルで、CX-90は北米向け、CX-80は日本ならびに欧州が主要マーケットとなる。いずれも3列シートを備え、多人数乗車を可能とする点は共通する。ラージ商品群は、2022年6月に投入された「CX-60」が第一弾で、CX-90やCX-80はそれに続くモデルとなる。 マツダのデザインは、CX-60からそのテイストに変化が見られるようになった。従来からマツダが標榜するデザインテーマ「魂動」を継承しつつ、新たに「引き算の美学」という言語が用いられるようになった。これは、従来モデルよりもシンプルな形状としつつ、存在感あるスタイリングの実現を図ったもの。この引き算の方程式はCX-90にも生かされている。同様のデザインテイストはCX-80も用いられるだろう。

TEXT:曽宮 岳大
BYDオートジャパン、日本第一弾のe-SUV「ATTO3」(アット3)を発売。価格は440万円

バッテリーEVに新顔が登場した。その名は「BYD ATTO3」(アット3)。中国のシリコンバレーと呼ばれる深圳を拠点に、バッテリー・メーカーとして産声をあげ、現在はグローバルにEVを展開しているBYD。その日本向け第一弾がクロスオーバーSUVの「アット3」だ。どんなクルマなのかさっそくチェックしていこう。 日産リーフに比べて80万円以上安価な価格設定 BYDオートジャパンは1月31日、日本向け第一弾となる電気自動車「BYDアット3」の販売を開始した。全長4455mm×全幅1875mm×全高1615mmの「アット3」は、人気の高いCセグメントに属するSUVで、サイズ的には「日産リーフ」(全長4480mm)に近い。クロスオーバーカテゴリーでは、「日産アリア」(全長4590mm)や「テスラ・モデルY」(全長4751mm)よりもややコンパクトなサイズ感だ。 そしてアット3の強みとなるのは、リーズナブルな価格設定だ。バッテリー容量58.56kWh、航続距離485kmを誇る一方、車両価格は440万円と、このクラスのバッテリーEVとしてはちょっとライバルが見当たらない。航続距離が近い日産リーフの60kWh仕様(航続距離450km/価格525万3600円〜)に比べると、85万円も安価な設定だ。なお、アット3は2022年2月に中国で発売されて以降、オーストラリアやタイでも販売されており、グローバルで累計20万台以上を販売するなど、人気を伸ばしている。 それではクルマの特徴を細かく見ていこう。まずBYDについてだが、同社は中国・深圳を拠点とするメーカー。1995年にバッテリー・メーカーとして創業し、現在は自動車のほかエネルギー関連やモノレール事業などを展開。その自動車分野の日本法人として設立されたのがBYDオートジャパンだ。 アット3は、BYDが独自開発したブレードバッテリー(リン酸鉄リチウムイオン・バッテリー)を搭載したEV専用のe-プラットフォームを採用する。同社はブレードバッテリーの特徴として、優れた航続距離や強度、長寿命を挙げている。公表された航続距離(WLTCモード)は、前述のように日産リーフを凌ぐ。ちなみに車重はアット3が1750kg、リーフ(60kWh)は1670kgである。 モーター出力は150kW(204ps)、最大トルクは310Nmで、リーフ60kWh(最高出力160kW[218ps]、最大トルク340Nm)をやや下回る。なお駆動方式は前輪駆動のみ。 充実した標準装備、給電機能も完備 なお、アット3は給電機能に対応している。駆動用バッテリーから電気を取り出して利用できる「V2L」や、自宅など建物に給電を行える「V2H」に対応しており、災害時やキャンプなどで活躍する。なおV2Lアダプター(AC充電口)はオプション扱い。 アット3の主な標準装備は、LEDヘッドライトをはじめ、ハイビームアシスト、車両の周囲の障害物の有無などをモニター上で確認できるBYDアラウンドビュー、テールゲート電動オープン/クローズ機能、12.8インチタッチスクリーン(GPSナビゲーション、Apple CarPlay、Android Auto対応)、シートヒーターなど、このクラスとしては充実している。 先進安全機能についても、自動緊急ブレーキはもちろん、アダプティブクルーズコントロール、車線中央の走行をサポートするレーンセンタリングコントロール、死角の安全確認に寄与するブラインドスポットインフォメーション、リアクロストラフィックアラートなど、欲しいものは揃っている。 店舗販売で展開、2025年末までに100店舗目指す このほかBYDオートジャパンの販売面における特徴として、国内における販売ネットワークを拡充させる計画を進めている。アット3の発売日の1月31日に合わせて全国20拠点に商談や試乗が可能な開業準備室の営業を開始し、今後はショールームも拡充させていく。2月2日には日本1号店となる「BYDオート東名横浜」が、2月23日には「BYDート堺」がオープンし、2月以降さらに全国12拠点に開業準備室をオープン予定という。2025年末までには100を超えるショールーム付きの店舗を作ることを目標に掲げるなど野心的だ。BYDオートジャパンはあくまで対面販売を中心に展開する予定で、このあたりはインターネットを通じて販売するテスラと戦略が大きく異なるところである。各店舗には50kW級の急速充電器を設置する予定で、急速充電はCHAdeMO対応だ。 中国の近代都市、深圳生まれのBYD。今後人気が上昇するであろうコンパクトSUVを第一弾にひっさげ、そのスペックと価格は既存のEVを脅かす内容だ。なお、BYDオートジャパンでは今後の展開として、2023年中頃にEVコンパクトカーの「DOLPHIN(ドルフィン)」を、2023年下半期に電動セダンの「SEAL」の日本での展開を予定している。今後の展開も楽しみだ。

TAG: #BYD #アット3
TEXT:曽宮 岳大
米フォード、「マスタング・マッハ-E」の販売価格を最大77万円値下げ。併せて増産を発表

米フォードは、同ブランドの電動SUV「マスタング・マッハ-E」の販売価格を引き下げると発表した。また、世界的な半導体不足で納期が長期化しているなか、同モデルの増産を発表し、納期の短縮を図る構えを見せた。 名門マスタングを名乗るEV専用モデル マスタング・マッハ-Eは、フォードが2020年に米国で販売を開始したバッテリーEV。“マスタング”を名乗ってはいるが、ガソリン・スポーツクーペ/カブリオレのマスタングとは出立ちが異なり、マスタング・マッハ-Eは、e-SUV専用モデルとなる。その上で、後輪駆動を基本とするパッケージング(AWDも設定あり)や、高出力モデルの設定、マッチョなボディ、垂直方向の3本ラインを基調とするテールライトなど、本家に共通する特徴が随所に散りばめられている。 マスタング・マッハ-Eの値下げ前の車両価格は、4万6895ドル(日本円で約608万円/1ドル129.6円で換算)から6万9895ドル(同906万円)。2022年は北米のEV乗用車販売台数でナンバー3を誇った。ちなみにナンバー1は、テスラ・モデルY、ナンバー2はテスラ・モデル3だった。 値下げ後は、新価格は後輪駆動のベースモデルの「Select RWD」で従来の900ドル安の4万5995ドル(約596万円)、最上級モデル「GTエクステンデッドレンジ」では5900ドル安の6万3995ドル(約829万円)に設定され、最大で5900ドル(約77万円)の引き下げを実現した。

TAG: #フォード
TEXT:曽宮岳大
次なるフェーズへ歩むGS。エネオスが「マルチモビリティステーション」を東京・駒沢に開設。電動キックボードなど小型モビリティのシェアリングを展開

電動キックボードに代表される新しい電動モビリティの普及に併せ、その貸出し・返却を行うステーション/ポートが増えつつある。この度、石油大手のENEOS(エネオス)は、さまざまなマイクロモビリティのシェアリング拠点となる「マルチモビリティステーション」の開設を発表した。それは一体、人々の生活にどんな影響を与え、どのような可能性を秘めているのか。 「駅近」という発想に変化を及ぼす次世代ステーション ガソリンスタンド(GS)の数が減っている一方、EVにスポットをあてたサービスが増加している。石油大手のエネオスは、EV充電サービス「エネオスチャージプラス」を展開すると共に、EVのリースやカーシェアを展開するなど、マイカーユーザーだけでなく、新たなモビリティユーザーに向けたサービスを広げている。そして今回エネオスは、マイクロモビリティと呼ばれる超小型な電気の乗り物をシェアリングする「マルチモビリティステーション」を、2023年2月に東京・駒沢に開設すると発表した。 マイクロモビリティとは、電動キックボード、電動スクーター、軽自動車よりさらに小型な電動小型自動車など、短距離の移動で活躍する取り回しに優れた電動の乗り物のこと。エネオスでは「ラストワンマイルの移動」、つまり電車の駅から目的地までの移動や、これまでバスで移動していた区間など、短距離の移動を快適にするサービスの提供を目指し、「マルチモビリティステーション」を開設する。これはパイロット事業的な側面もあり、利用状況によっては今後の充実が見込めそうだ。 マイクロモビリティを貸し出すシェアリングサービスの便利な点は、乗り捨てが可能なこと。この事業でエネオスとのパートナーとして名を連ねているのは、電動キックボードのシェアリングサービスで実績のあるLUUP(ループ)と、同じく電動アシスト自転車や電動スクーター、電動小型自動車など多彩なマイクロモビリティのシェアリングサービスを行なっているHELLO MOBILITY(ハローモビリティ)。いずれも会員登録をすればスマホのアプリ上から利用手続きから決済までを実現でき、ステーション間の移動(別ステーションでの返却)を可能としている。 すでにLUUPは東京・大阪・横浜・京都に展開エリアを拡大しており、都内には相当数のポート(LUUP専用駐車場)を配備している。これらのマイクロモビリティをうまく利用すれば、目的地まで短時間で効率よく快適に移動することができる。ステーションが電車駅の近くにあれば目的地までの利便性がグッと高まるが、自宅と勤務地の近くにポート/ステーションがあれば、駅自体を利用する必要がなくなるユーザーもいるだろう。その利用を前提とした生活設計が可能になり、住居選びの際、ステーションが近くにあることを望む人が増えると予想される。マイクロモビリティの普及は、従来の「駅近」という発想に変化を起こす可能性を秘めている。 道交法改正により新時代を迎えるマイクロモビリティ こうしたマイクロモビリティの普及を後押しする要素が他にもある。道路交通法の改正案が可決され、特定小型原動機付自転車という区分が新設されることだ。2023年7月とされる規制緩和以降は、16歳以上であれば電動キックボードに免許不要、ヘルメット不要(努力義務)で乗れるようになる。安全面を考えれば、電動キックボード乗車時にヘルメットを着用するに越したことはないが、努力義務となれば自転車同様に、気軽に乗れる乗り物として普及が進む可能性があるだろう。 エネオスが展開する「マルチモビリティステーション」は、こうしたマイクロモビリティを利用するユーザーのライフスタイルに、さまざまな変化を起こす可能性を秘めている。 場所は、駒沢駅の近くで、国道246号線から1本入った道沿いに位置する。このステーションの場合は、すでに周辺が栄えているが、今後このようなステーションが増え、人が集えば、カフェができたり、周辺が活性化したり、街にさまざまな変化が起きるかもしれない。 ENEOSマルチモビリティステーション 東京都世田谷区駒沢2-3-1

TAG: #ENEOS
TEXT:曽宮 岳大
レクサス、EVの楽しみの幅を広げるコンセプトカー「RZスポーツ・コンセプト」や、アウトドア向けコンセプトカー群を披露

脚光を浴びるバッテリーEVの高性能化 レクサスは「東京オートサロン2023」で、同ブランド初のバッテリーEV専用モデル「RZ」をベースにカスタマイズを施し、走りの楽しさや所有感を高めたコンセプトカー「RZスポーツ・コンセプト」を展示。このほか、“クルマ×アウトドア”の新たなコンセプトを訴求する出展も行なった。 レクサスは2020年に初のバッテリーEV「UX300e」を発売し、2021年12月には大規模なバッテリーEV戦略を発表。翌2022年4月にバッテリーEV専用モデルとなる「RZ」の導入を発表するなど、バッテリーEVのラインアップを強化中だ。またこれと並行して、バッテリーEVの楽しさを高めるモデルの企画・開発も進行している。今回の「RZスポーツ・コンセプト」も、カーボンニュートラルの実現を目指しつつ、走りやカスタマイズの楽しみを高め、クルマ本来の魅力を訴えるモデルに仕上がっている。 モーターは前後に150kWの高出力モーターを搭載する。ベースとなるRZではフロントが150kW、リアは80kWで、これに対してリアモーターの出力を大幅に強化したかたちだ。 さらに専用エアロパーツや35mmの車高ダウン、295/35R21というワイドタイヤの採用のほか、ボディ自体も全幅が90mmワイド化されるなど、レーシーな佇まいに仕上げられている。室内には4座バケットシートも採用している。開発にはSUPER GTやスーパー耐久で活躍し、RZの開発にも携わった佐々木雅弘選手が関わったとのことだ。

TAG: #アウトドア #レクサス
TEXT:曽宮 岳大
トヨタ車体、小型EVの参考出展車やランクルのカスタムカーをオートサロンで発表

年に一度のカスタムカーの祭典、「東京オートサロン2023」が1月13日(金)、幕を開けた。東京オートサロンでは、市販車をベースとしたカスタムカーのほか、往年の名車のレストア車や、市販化を視野に入れたコンセプトカーならびに参考出展車も顔を並べる。ここで紹介するトヨタ車体の出展車も、いわゆるチューニング系のカスタムカーではなく、メーカーが将来の商品企画を示唆するものとして、あるいは技術発表の場として展示する参考出展車だ。 トヨタ車体は、トヨタ自動車の系列会社。企画から生産までを手掛ける完成車両メーカーで、タフさで定評のある「ランドクルーザー」や「ハイエース」も同社の工場から生まれている。 オートサロンでは、ランドクルーザーの祖先であり、ジープのような古典的な佇まいで定評のある「40系」のボディと、現代の技術でタフネスに磨きがかけられたオフロードモデル「70系」のシャシーを組み合わせた参考出展車「ランドクルーザー40×ランドクルーザー70」を出展。いずれもマニア垂涎の名車だが、諸寸法の異なる両車を完全にマッチングさせたその完成度の高さは、生みの親ならではの仕事ぶりを感じさせるところ。 今回の作例では、現代技術が生んだ70系の耐久性・走破性の高さと、過去の秀作「40系」のスタイリングを蘇らせた。メーカーの技術がこうした分野に発揮されれば、カスタマイズの可能性が広がるのは間違いない。そんな期待を抱かせる参考出展車だ。

TAG: #トヨタ車体 #東京オートサロン2023
TEXT:曽宮 岳大
新車価格高騰のなかテスラが大幅値下げを発表 「モデル3」と「モデルY」で最大82万円のプライスダウンも

テスラモーターズは1月6日、売れ筋モデルである「モデル3」と「モデルY」の値下げを発表した。従来との価格差はモデル3で最大79万円、モデルYでは82万4000円となり、昨今、新車価格の高騰が嘆かれているなか、大きな注目を集める話題となりそうだ。 今回の値下げについて、テスラから公式な理由については述べられていないが、背景にはEVの競争の激化が挙げられる。最大の市場である中国において、テスラは圧倒的な人気を誇っているものの、中国・深圳のBYDをはじめ、その他の新興メーカーが急速に追い上げている状況だ。 またEVを推進している中国以外の国や市場では、昨今の脱炭素化の風潮や、それに伴う代替エネルギー車を優遇するインセンティブはテスラにとって大きな追い風となる。値下げによりここで一気に台数の増加、ひいてはEV普及を図ろうとする狙いもあるだろう。 今回の値下げは日本だけのものではなく、中国、韓国、オーストラリアなどでも同様に行われる。世界的な半導体不足で新車供給がひっ迫するなか、EVの普及ペースを保ちたいテスラが本腰を入れてきたわけだ。しかもラインアップにおける高価格モデルでなく、普及モデルである「モデル3」や、「モデルY」の価格を引き下げてきたところも、需要の喚起に大きなインパクトを与えそうだ。 「モデル3」は、従来のセダン「モデルS」やSUV「モデルX」よりもコンパクトな4ドアモデル。一方、「モデルY」は、「モデルX」に続くテスラ第2のSUV。ボディサイズは「モデル3」より大きくミッドサイズに属し、SUVの機能性とクーペライクなフォルムを特徴とする。

TEXT:曽宮 岳大
ボルボ、米CESで7人乗りの新型電動SUV「EX90」を北米プレミア 2023年後半に生産開始

最高出力500ps超で、航続距離は600km ボルボカーズは現地時間1月3日、北米最大の家電見本市、コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)において、7人乗りの新型電動SUV「EX90」を北米向けに初公開した。2023年後半より生産が開始され日本導入も見込まれるEX90について、その特徴を見ていこう。 まずはEX90の位置付けについて。同モデルは、既存のラインアップにあてはめると、「XC90」のEV版にあたるモデルだ。2ボックスの大柄なSUVボディに3列シートを搭載し、フラッグシップにふさわしい最先端の装備を搭載する。 欧州プレミアムSUVのライバルを見渡すと、ミドルクラス以上のセグメントではメルセデスのEQE SUVとEQS SUV(いずれも日本導入予定)や、BMWのiXなどが発表済みだが、EX90は3列シートSUVという点がファミリー層を中心に大きな訴求ポイントとなりそうだ。 ボルボは2030年までにラインアップのすべてをEVにすると公言し、現在のところコンパクトSUVの「XC40 Recharge」と、SUVクーペの「C40 Recharge」をラインアップ済み。その他のモデルについてもプラグインハイブリッド化、またはマイルドハイブリッド化が完了しており、今後はそれらが順次ピュアEVへと置き換わっていく予定だ。 EX90のパワーユニットについては、最初にツインモーターを搭載した全輪駆動モデルが登場し、こちらはシステム全体で最高出力380kW(517ps)、最大トルク910Nmを発生する。バッテリーは111kWhと大容量で、航続距離は最長600kmに達するとのことだ。 国内価格は1200万円程度か これらのスペックを先のライバルと比べてみよう。メルセデスEQE SUV(価格未定)は、「EQE 350」が最高出力215kW(292ps)で航続距離は最長590km、高性能版の「EQE500」は300kW(408ps)/最長547kmだ。BMW iXには240kW(326ps)/450kmの「iX xDrive40」(1075万円)と、385kW(523ps)/650kmの「iX xDrive50」(1285万円)の2タイプがラインアップされる。これらのSUVに対してEX90は、性能面で遜色がないどころか、むしろ高性能な部類に入る。あと気になるのは、日本国内において車両価格がどの程度に設定されるかだろう。 この点について有力な情報として、ボルボはEX90の北米価格を8万ドル(日本円にして1076万円)以下に設定する見通しであることを今回のCESで示した。そこで日本と米国の価格差を既存モデルで比較すると、XC40 Rechargeの場合、米国でのスタート価格は5万3550ドル(同約720万円)で、日本国内での価格は639万円となっている。仕様が同一ではないとはいえ、ボルボの国内販売価格は米国に比べて12%ほど安く設定されているのである。この価格差を参考に算出してみると、EX90の国内価格は単純計算で1200万円程度になると期待できる。 走る高性能コンピューター さて、次にEX90の技術的なハイライトをチェックしてみよう。注目したいのは、安全性を高めるセンシング技術が進化しているところ。EX90は、レーザーを使って対象物との距離を測定するLiDAR(ライダー)や、5つのレーザー、8つのカメラ、16台の超音波センサーを搭載する。これによりサッカー場(全長105m)ふたつ分に相当する遠方の小さな物体さえも検知可能という。しかも昼夜を問わず、高速道路上でもその検知できる能力を発揮するという。 また、室内においてもステアリングホイールからの情報や2台のカメラによる視線検知により、ドライバーの疲労や眠気、注意散漫な挙動を検知することができるという。LiDARによる走行状況分析と併せ、予防安全技術の飛躍的な向上が期待できそうだ。 さらにEX90では車両購入後も無線によるファームウェアアップデートが可能とのこと。テスラが先鞭をつけた技術だが、車両購入後も最新の安全機能を入手できるというのは大きなメリットとなるに違いない。 ボルボによればEX90は単なる新型車ではなく、“走る高性能コンピューター”であるとのこと。最新の機能・装備を積極的に取り入れ、安全性を高めようとする同社の企業姿勢は、電動化によりさらに弾みがつきそうだ。 なおEX90は北米市場では、2023年に予約受注が開始され、2024年初頭より順次デリバリーが開始予定とのこと。日本導入が待ち遠しい1台だ。

TEXT:曽宮 岳大
「テスラセンター千葉稲毛」国内最大規模。試乗・納車・修理・急速充電機能まで備えたファクトリーに潜入した

テスラ国内初の総合サービス施設 低く構えた個性的なデザインやEVとしては長い航続距離、そしてなにより時代の先を進んでいる先進的なブランドという雰囲気を放ち、ユーザー数を着々と伸ばしているテスラ。自動車産業が発展し、自国生産車に乗るユーザー比率が高い独特のマーケットである日本においても、その数は日に日に増えており、街で見かける頻度も増している。背景には、充電設備やサービス工場の拡充といった企業努力があり、ユーザー側としてもビジネスが軌道に乗っている安心感を持てる部分はあるだろう。そんな上り調子な勢いをさらに加速させそうな大規模な施設が千葉に登場した。「テスラセンター千葉稲毛」がそれだ。 東関東自動車道の千葉北ICから5分という立地にある同センターは、車両の見学や試乗ができる「ストア」、修理やメンテナンスを行う「サービスセンター」、納車場所となる「デリバリー」、そしてテスラの特徴である独自の充電設備「スーパーチャージャー」という4つの機能を併せ持つ。実はこの4つの機能を集約した施設というのは国内初で、これまでは機能が限定された比較的小規模な施設が多かった。 「テスラセンター千葉稲毛」は、約850坪の敷地面積、最大充電出力250kWを誇る8基のスーパーチャージャーを持つ国内随一の規模であり、サービス工場は千葉県初、関東では横浜・東名川崎・板橋・東雲に続く5拠点目となる。これだけの規模と設備を持つ総合型サービスセンターが都心に程近い場所にできたことは、ユーザーにとって大きな利便性と安心感の向上につながりそうだ。 EVゆえのクリーンなサービススペース この「テスラセンター千葉稲毛」のプレオープンを記念に、普段は公開されていないセンター内を見学させてもらうことができたので紹介したい。なお、同センターは11月12日(土)にオープンしたものの、一部のサービスは順次開始予定となっているのでテスラユーザーの方は注意いただきたい(スーパーチャージャーは2022年末頃、デリバリーは2023年初旬より稼働予定)。 サービス工場の中は、白い床と白い壁に覆われ、見るからにクリーンな雰囲気。排ガスが発生しない電気自動車専用の工場であることが建物のデザインにも反映されているようだ。ちなみにお客さんは、この工場の入り口でクルマを受け渡し、その場でできる軽作業の場合には、カスタマーラウンジでくつろいで待つことができる。 サービス工場の中には、アライメントテスターやリフトが備わり、車検や重整備を含む、ひと通りの作業を行えるようになっている。また印象的だったのは、それ以外の何もない空間が広く、がらんとしているのだ。 聞けば、そもそもテスラの場合、エンジンを搭載していないため、下回りから行う作業自体が少ないという。通常のクルマであれば、オイル交換を行う排液口や、マフラー周りの部品など、リフトアップでの作業を前提とした造りになっているが、テスラはさにあらず。床下がフラットでツルンとしている。見るからに空力性能も良さそうだが、下回りの部品が少ないこともこうした構造に関係しているようだ。それゆえサービス工場もフレキシブルに対応できるように自由スペースを多く残しているのだろう。 EV専業ならではの出張メンテナンス「モバイルサービス」 またテスラでは、「モバイルサービス」と呼ぶ、いわゆる出張修理サービスを展開している。その車両も見させてもらったが、中型セダン「モデルS」のラゲッジルームと後席部分にメンテナンスツールがぎっしりと積み込まれ、出張修理に万全に備えている。現在モバイルサービスは20台ほど稼働しており、全体の修理の約6割を担っているという。これも部品点数が少なく、リフトアップの必要性が少ないテスラならではのアフターサービス形態といえるだろう。 ちなみにサービスの予約は、スマホのアプリから可能で、日時や利用するサービスセンターの指定までを同アプリ上でできるようになっている。その予約リクエストを受けて、モバイルサービスでの対応が可能な場合は、別途テスラの方から連絡が入るという。そうしたコミュニケーションは、すべてアプリのチャットボックスを介して行われ、見積りなどもアプリ上で完結するという。 利便性の高い「スーパーチャージャー」 独自の急速充電システム「スーパーチャージャー」についても紹介しておこう。テスラの充電サービスは、充電速度(時間ではない)に応じて料金が変わるシステムを採用している。これは電気自動車の場合、バッテリー残量に応じて充電速度が変わるから。バッテリーが空に近い状態では、早い充電が可能な一方、満充電に近くなると充電速度が落ちてしまう。同じ時間充電しても充電量に差が出てしまうことを避け、フェアに対応するため、テスラでは4段階の速度に応じた料金体系で展開しているのだ。 目安としては、250kWのスーパーチャージャーを使用した場合、15分から20分程の充電で約270km走行できるとのこと。充電料金は、〜60kWまでが25円/分、61〜100kWが50円/分、101-180kWが85円/分、181-250kWが140円/分。搭載バッテリーサイズにより異なるものの、10%から80%ぐらいの充電の場合、約1600円で充電できるという。 「テスラセンター千葉稲毛」ではこの高出力スーパーチャージャーを24時間解放し、顧客に快適な充電サービスを提供する。現状、スーパーチャージャーは全国に53箇所ほどあり、そのうち12箇所が今年新設されたもの。月に1箇所ほどのペースで増えている計算となり、今後も全国規模に充電環境を整えていきたいとしている。 着々と環境整備が進むテスラのネットワーク。そのエンブレムを見る機会は今後ますます増えそうな気配だ。

連載企画 一覧
VOL.15
本当に日本はEVで「立ち遅れた」のか:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第15回

ジャパン・モビリティ・ショー開催でにわかに沸き立つ日本のEVマーケット。しかし現実の販売状況は日本において大きく立ち遅れている。技術では先導してきたはずの日本メーカーは、なぜEVで世界をリードできていないのか。この分野のベテランジャーナリストである御堀 直嗣が解説する。 日本の低いEV市場占有率 日本は、世界に先駆けて電気自動車(EV)の市販に踏み切った。2009年に三菱自動車工業が、軽自動車EVの「i-MiEV」を法人向けにリース販売しはじめ、翌10年には一般消費者向けへの販売も開始した。同年には、日産自動車も小型EVの「リーフ」を発売した。この2社によって、EVの量産市販が実現し、ことにリーフは海外への販売も行われ、「i-MiEV」はフランスの当時PSA社にOEM供給された。リーフの販売は世界で累計65万台に達し、その他EVを含めると、日産は世界で100万台のEV販売の実績を持つ。そのうち、日本国内は累計23万台である。 ちなみに、米国テスラは2022年では年間で約130万台、中国のBYDは同年に約90万台規模へ成長している。 同時にまた、世界共通の充電規格であるCHAdeMO(チャデモ)も準備され、リーフが販売される世界の各地域にCHAdeMO充電器の設置が動き出した。 それらを背景に、経済産業省は2012年度補正予算で1,005億円の補助金を計上し、全国に約10万基の充電器を整備するとした。この補助金は全額支給でないため、トヨタ/日産/ホンダ/三菱自の4社が資金を拠出し、補助金で賄いきれない残額を補填することに合意した。 しかし、現在の充電器の数は、急速充電と普通充電を合わせて約2万基である。 国内の新車販売において、EVが占める割合は1%以下という状況が長く続いた。昨2022年、「日産サクラ」と「三菱eKクロスEV」が発売となり、1年で5万台以上を販売することで2%ほどの占有率になろうかという状況にある。 一方、世界全体では、EVの市場占有率が13%になる。米国は5.8%、欧州は12%、中国は21%となっており、日本がいかに低水準であるかがみえてくる。 日本でEV普及が進まなかった理由 EVの先駆者であった日本が、なぜ欧米や中国の後塵を拝するようになったのか。 最大の要因は、せっかく1,005億円という充電基盤整備に対する経済産業省の支援があったにもかかわらず、急速充電器の整備にばかり世間の目が行き、EV利用の基本である基礎充電、すなわち自宅での普通充電(200V)の重要性が広がらなかったからである。ことに、マンションなど集合住宅の駐車場と、月極駐車場への普通充電設置がほぼできなかったことが原因であった。 EVの充電は、普通充電で8~10時間、あるいはそれ以上かかるとされ、これが単純にガソリンスタンドでの給油時間と比較されて、使い勝手が悪いとさまざまな媒体を通じて流布された。いまでもそうした論調が消えていない。しかし、自宅で普通充電できれば、寝ている間に満充電になるので、翌朝出かけるときは満充電で出発できる。 戸建て住宅に住む人はそれができた。ところが、戸建て住宅でも自宅に車庫がなく月極駐車場を利用する人は、近隣の急速充電器を利用しなければならなくなった。 集合住宅に住む人は、敷地内に駐車場が併設されていても、管理組合の同意が得られず普通充電ができない状態に陥った。無知がもたらした悲劇だ。EVを買う意思があっても、手に入れにくい状況があった。 集合住宅の管理組合で賛同が得られない最大の理由は、幹事がEV時代を予測できず、また自分には関係ないとして無視され続けたことにある。設置の経費は、ことに当初は補助金と自動車メーカー4社による補填があったので、ほぼゼロであった。現在でも、施工業者が残金を負担するなどのやりくりで、集合住宅側の負担が軽く済む仕組みが出てきている。それでもなお、管理組合で合意を得るのが難しい状況は払拭できていない。 基礎充電の普及を目指す業者の間でも、さらに難しいとされるのが月極駐車場への普通充電の設置だ。月極駐車場を管理する不動産業者の理解を得にくいという。

VOL.1
リッター200円にもう限界……給油の“枷”をぶっちぎれ!【モデルサードインパクト vol.1】

ガソリン高い、燃費も悪い、限界だ! かつてないほどの猛暑に喘いだであろう今夏。「もういいよ」「もう下がってくれ」と、気温に対して誰もが感じていたと思うが、自動車ユーザーはガソリン価格に対しても同じことを思っていたのではないだろうか。 リッターあたり170円、180円、190円、そして200円の大台を突破……給油をするたびに、誰もが憂鬱な気分になったはずだ。小生はドイツの某オープンスポーツカーに乗っているのだが、リッターあたり平均10kmでハイオク仕様。愛車にガソリンを入れるたび、顔が青ざめていた。 「高額給油という枷から解放されたい……」 EVの購入を決意した所感である。クルマを走らせることは、本来喜びのはず。給油のたびに落ち込むのは本望ではない。 小生は、THE EV TIMES(TET)の編集スタッフを務めています。この9月、「テスラ・モデル3・パフォーマンス」を購入しました。新たな愛車と共に進むEVライフを「モデル・サードインパクト」と銘打ち、連載で紹介していこうと思います。 EVは便利だと実感した「日産リーフ」 小生が初めて体験したEVは「日産リーフ」(2代目)である。遡ること2017年、「リーフ」が2代目になった頃、日産が全国で試乗キャラバンを開催し、小生はその試乗アテンダントを担当していた。そこで「リーフ」を存分に運転することができたのだ。 それゆえ、EVの利便性の高さを実感することになった。スポーツモデル顔負けの力強くスムーズな加速にまず驚いたのだが、給油という枷から外れて自由に走り回れることが大変な魅力に感じた。アイドリング状態でエアコンを入れっぱなしでもガソリン代を気にせずに済む。車内でPCを開けば、そのままオフィスになる。車の用途が無限大に広がると感じた。 充電時間も特別長いとは感じなかった。充電残量が50%くらいになったら、急速充電を使用してあっという間に80%まで回復できる。ちなみに100%まで充電した場合、280kmを走れる表示が出ていたと記憶している(当時は寒い季節で暖房を使用した)。ちょっとした遠出も十分に対応可能。「EVなんて不便」という印象は全く抱かなかった。そこで薄々と「将来はEVもアリだな」と思ったのだ。

VOL.20
VW「ID.4」オーナーはアウトバーンを時速何キロで走る? [ID.4をチャージせよ!:その20]

9月上旬、スイスで開催された「ID.TREFFEN」(ID.ミーティング)を取材した際に、参加していた「ID.4」オーナーに、そのクルマを選んだ理由などを聞きました。 フォルクスワーゲン一筋 鮮やかな“キングズレッドメタリック”のID.4で登場したのは、ドイツのハノーファーからはるばるスイスに駆けつけたデュブラック・マルクスさん。「フォルクスワーゲンT3」のTシャツを着ているくらいですから、かなりのフォルクスワーゲン好きと見ましたが、予想は的中! 「18歳で免許を取ってからこれまで30年間、フォルクスワーゲンしか買ったことがないんですよ」という、まさにフォルクスワーゲン一筋の御仁でした。 彼の愛車はID.4のなかでももっともハイパフォーマンスな「ID.4 GTX」。日本未導入のこのグレードは、2モーターの4WD仕様で、最高出力220kW(299PS)を発揮するというスポーツモデル。こんなクルマに乗れるなんて、なんともうらやましいかぎりです。 そんなマルクスさんにID.4 GTXを購入した理由を尋ねると、「これからはEVの時代だと思ったので!」と明確な答えが返ってきました。とはいえ、ID.ファミリーのトップバッターである「ID.3」が登場した時点ではすぐに動き出すことはありませんでした。「1年半くらい前にID.4 GTXを試乗する機会があって、踏んだ瞬間から力強くダッシュするID.4 GTXのパンチ力にすっかり惚れ込んでしまい、即決でしたよ(笑)」。

VOL.14
欧州メーカーはなぜ電気自動車に走ったのか?:知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第14回

EVの知識を、最新情報から「いまさらこんなこと聞いていいの?」というベーシックな疑問まで、ベテラン・ジャーナリストが答えていく連載。今回は欧州メーカーの特集です。 日本市場参入が遅かった欧州製EV 日本市場では、欧州からの電気自動車(EV)攻勢が活発に見える。ドイツの「BMW i3」が発売されたのは2013年秋で、日本市場へは2014年春に導入された。 日本の自動車メーカーがEVを市販したのは、2009年の「三菱i-MiEV」の法人向けリースが最初で、翌2010年には「i-MiEV」も一般消費者への販売を開始し、同年に「日産リーフ」が発売された。「i3」の発売は、それより数年後になってからのことだ。 ほかに、フォルクスワーゲン(VW)は、「up!」と「ゴルフ」のエンジン車をEVに改造した「e-up!」と「e-ゴルフ」を2015年から日本で発売すると2014年に発表した。だが、急速充電システムのCHAdeMOとの整合性をとることができず、断念している。その後、VWは「e-ゴルフ」を2017年秋に販売を開始した。EV専用車種となる「ID.4」を日本に導入したのは、2022年のことだ。フランスのプジョーが、「e-208」を日本で発売したのは2020年である。 以上のように、欧州全体としては、EVへの関心が高まってきたのは比較的最近のことといえる。 くじかれたディーゼル重視路線 欧州は、クルマの環境対策として、自動車メーカーごとの二酸化炭素(CO2)排出量規制を中心に動いてきた。そして2021年から、1km走行当たりの排出量を企業平均で95gとする対処方法を考えてきた。EU規制は、販売する車種ごとのCO2排出量を問うのではなく、販売するすべての車種の平均値で95gを下回らなければならないという厳しさだ。 対策の基本となったのは、ディーゼルターボ・エンジンを使った排気量の削減と、出力の低下を補う過給器との組み合わせを主体としつつ、ハイブリッドによるさらなる燃費の向上である。 既存のディーゼルターボ・エンジンをできるだけ活用しようとする考えは、欧州メーカーが補機用バッテリーの電圧を世界的な12ボルトから、36ボルトや48ボルトに変更することによるマイルドハイブリッド化に注目してきた様子からもうかがえる。 ところが、2015年にVWが米国市場でディーゼル車の排出ガス規制を偽装していたことが明らかにされた。公的機関での測定では規制値を満たすものの、実走行で急加速などした際に基準を上回る有害物質が排出され、それによって力強い加速を得られるようにした制御が発覚したのである。その影響は、VW車だけでなく、アウディなどVWグループ内に広く影響を及ぼした。

VOL.3
ボルボは新型EVの「EX30」でインテリアに新たな価値を与え、空間を最大限、利用する!

ボルボはEX30の室内で多くの新たなチャレンジを行なっていると謳う。その詳細を小川フミオ氏が訊いていく。連載1回目はこちら、2回目はこちら。 冷たさの排除し素材を“素直”に使う EX30のインテリアが、他車と決定的に違うのは、金属的な表面処理がほとんど見当たらないこと。それは意図的にそうしたのだと、インテリアデザインを統括するリサ・リーブス氏は言う。 「心したのは、冷たさの排除です。使う素材はオネスト、つまり木に見えるものは木であり、また同時に、リサイクル素材を人間にやさしいかたちで使用しました」 インテリアは「ブリーズ」(やさしい風)をはじめ「ミスト」(もや)、「パイン」(松)それに「インディゴ」と4種類(日本はそのうち「ブリーズ」と「ミスト」を導入)。 「ブリーズを例にとると、デザインインスピレーションはサマーデイズ。シート表皮の素材はピクセルニットとノルディコ、ダッシュボードの飾り材はパーティクル、そして空気吹き出し口のカラーはブルーです」 リーブス氏は説明してくれる。 「ピクセルニットはPETボトルをリサイクルしたもの。それを3Dニッティング(立体編み)プロセスでシート用素材にしています。組み合わせるノルディコは、PETボトルなどのリサイクル素材、北欧で計画的に伐採された木から採取された素材、リサイクルされたワインコルクなどで作られたテキスタイルです」 ダッシュボード用のパーティクルは、窓枠やシャッターを中心に工業廃棄物であるプラスチックを粉砕したものだし、フロアマットは漁網をリサイクルしたという。 「リサイクル材とともに、インテリアは雰囲気を統一したので、私たちは“ルーム”という名を与えています。インディゴの場合、デザインインスピレーションは”夜のはじまり”で、デニムをリサイクルしたときに余る糸を使った素材をシート表皮に使っています」 シートじたいは「スニーカーにインスパイアされた形状」(メイヤー氏)だそうだ。

VOL.2
ボルボの新型電気自動車「EX30」にはスターウォーズのデザインが取り入れられている!?

エンジンの回転の盛り上がりには、時に人間的な表現が用いられる。しかしBEV(バッテリー電気自動車)はエンジンもなく無音なため、より無機質な、機械的な印象が強くなる。ボルボはそんなBEVに人間的な要素を入れたと主張する。連載1回目はこちら。 どことなく楽しい感じの表情 ボルボEX30は、いってみれば、二面性のあるモデルだ。ひとつは、地球環境保全(サステナビリティ)を重視したコンセプト。もうひとつは、大トルクの電気モーターの特性を活かしたスポーツ性。 デザイナーは「いずれにしても、BEVと一目でわかってもらうデザインが重要と考えました」(エクステリアデザイン統括のTジョン・メイヤー氏)と言う。 「もちろん、昨今ではICE(エンジン車)かBEVか、デザインをするときあえて差別化をしないのが世界的な流れです。ただし、私たちとしては、スカンジナビアデザインの原則を守りつつデザインしました」 メイヤー氏の言葉を借りて、この場合のスカンジナビアデザインの肝要を説明すると「形態は機能に従う」となる。 「そこで、上部に開口部とグリルはもたせないようにしようと。ただし(インバーターなどのために)空気を採り入れる必要はあるので、下にインレットは設けています」 ボルボ車のデザインアイディンティティである「トール(神の)ハンマー」なる形状のヘッドランプも採用。ただし、カバーで覆った一体型でなく、四角いLEDのマトリックスが独立しているような形状があたらしい。 「そうやって出来上がったのがこのデザインです。顔になっていて、そこには眼があって、鼻があって、口があるんです。どことなく楽しいかんじで、これまで以上に人間的な表情を実現しました」 暴力的でもなければ、ロボット的でもない。メイヤー氏はそこを強調した。

VOL.1
ボルボの新型電気自動車「EX30」は、相反する2面性を合わせ持つ文武両道なクルマ

ボルボの新たなBEV(バッテリー電気自動車)として、ついに10月2日から「サブスク」モデルの申し込みが始まるEX30。この「ボルボ史上最小のBEV」はどのように開発されたのか。ミラノで行われたワールドプレミアに参加した小川フミオ氏が関係者の声とともに振り返る。 スカンディナビアン+デジタル 2023年6月に登場したEX30は、コアコンピューティングテクノロジーを大胆に採用する、ボルボの新世代BEV。 内容にとどまらず、同時に、デザイン面でもさまざまな大胆な試みがなされているのも特徴だ。 いってみれば、伝統的ともいえるスカンディナビアンテイストに、デジタライゼーションの融合。 「私たちのデザイン的価値のすべてを小さなフォーマットで具現」したモデルと、ボルボ・カーズはプレスリリース内で謳う。 「非常に電気自動車的なデザインで(中略)閉じられたシールド(フロントグリルの開口部のこと)とデジタル表現を用いたトールハンマーヘッドライト」がフロント部の特徴とされる。 さらに新世代BEVとしてボルボが狙ったものはなんだろう。ミラノでの発表会において出合った担当デザイナー(たち)に、デザインの見どころと背景にあるコンセプトを取材した。

VOL.5
「BMW iX xDrive50」の高速電費は我慢不要! ロングドライブにうってつけのEV

[THE EV TIMES流・電費ガチ計測] THE EV TIMES(TET)流電費計測の5回目を、8月に「BMW iX xDrive50」で実施した。車高の高いSUVにもかかわらず、高速巡航時に電費が低下しにくいのが特徴だ。その詳細をお伝えする。 ※計測方法などについてはこちら、試乗記はこちらをご覧ください。 100km/h巡航でどんどん行こう iX xDrive50のカタログに記載された「一充電走行距離」は650km(WLTC)で、電池容量は111.5kWhだ。650kmを実現するには、電費が5.83km/kWh(以後、目標電費)を上回る必要がある。 各区間の計測結果は下記表の通り。5.83km/kWhを上回った場合、赤字にしている。 これまでのTETによる電費計測で初めてA区間の往路と平均で目標電費を超えた。A区間のように標高差が少ない場所では同じ状況になり得る、つまり100km/h巡航で一充電走行距離の650km近くを走破できる可能性がある。   100km/h巡航でも600kmは走れそう 各巡航速度の平均電費は下表の通りだ。「航続可能距離」は電費にバッテリー総容量をかけたもの、「一充電走行距離との比率」は650kmに対して、どれほど良いのか、悪いかだ。 iXのエクステリアは、大きなキドニーグリルが特徴的だ。ざっくり言えば全長5m、全幅2m、全高1.7m、車重2.5トンの堂々としたボディだが、Cd値が0.25と優れている。 100km/h巡航におけるiXの電費は、5.71km/kWhであった。絶対的な数値としては決して高くないが、一充電走行距離との比率を計算すると98%と、これまでにTETが計測したデータの中で最高の結果を記録した。120km/h巡航でもこの数字は78%であった。 つまり、iXは高速巡航でも電費の低下が少ないEVだといえる。 ちなみに、過去に計測したメルセデス「EQE 350+」は、この100km/h巡航時の比率が90%だった。EQEはセダンボディで背が低く、Cd値0.22で、高速巡航には有利であることを考えても、iXの98%という数字の凄さが分かる。 この結果は、空力性能の良好さと高効率なパワートレインの賜物ではないかと思う。BMWが「テクノロジー・フラッグシップ」「次世代を見据え、長距離走行が可能な革新的な次世代電気自動車」と謳っているだけのことはある。これらの記録を塗り替えるクルマが現れるのか、今後の計測が楽しみだ。   各巡航速度ごとの比率は以下の通り。80km/hから100km/hに速度を上げると21%電費が悪くなる。120km/hから80km/hに下げると1.6倍の航続距離の伸長が期待できる。

VOL.19
ぐっとパワフルな2024年モデルのフォルクスワーゲン「ID.4」をミュンヘンで緊急試乗! [ID.4をチャージせよ!:その19]

コンパクトSUVタイプの電気自動車「ID.4」が2024年モデルにアップデート。この最新版をドイツ・ミュンヘンでさっそく試乗しました。 モーターのパワーは60kW増し 「ID.4」が2024年モデルにアップデートし、コックピットのデザインが様変わりしたことは、前回のコラムで述べました。さらに今回の仕様変更では、走りにかかわる部分にも手が加えられています。 一番の変更が、新開発のモーターが搭載されたこと。フォルクスワーゲンでは、ID.ファミリーのプレミアムセダンである「ID.7」に、新たに開発した「APP550」型の電気モーターを採用しました。最高出力は210kW(286PS)と実にパワフルです。これが2024年モデルの「ID.4プロ」にも搭載されることになりました。これまでの「ID.4プロ」の最高出力が150kWですので、出力は60kW、4割増しという計算。最大トルクも従来の310Nmから545Nmとなり、こちらは75%の大幅アップです。 バッテリー容量は77kWhで変更はありませんが、2024年モデルからはバッテリーの“プレコンディショニング機能”を搭載し、冬の寒い時期、充電前にバッテリー温度を高めておくことで充電量の低下を抑えることができます。これはうれしい! 他にも、可変ダンピングシステムのDCC(ダイナミックシャシーコントロール)の改良なども行われ、果たしてどんな走りを見せてくれるのか、興味津々です。 早く乗ってみたいなぁ……と思っていたら、なんとうれしいことに、発表されたばかりの2024年式ID.4 プロ・パフォーマンスを、ドイツ・ミュンヘンで試乗するチャンスに恵まれました。試乗時間は約20分と超ショートですが、わが愛車のID.4 プロ・ローンチエディションと比較するには十分な時間です。

VOL.18
ミュンヘンで「ID.4」の2024年モデルに遭遇! [ID.4をチャージせよ!:その18]

ミュンヘンモーターショー(IAA)のメイン会場近くで、フォルクスワーゲンがメディア向けイベントを開催。そこで、2024年モデルの「ID.4」に遭遇しました。 見た目は同じ イベントスペースのパーキングに待機していたのは、“コスタアズールメタリック”のボディが爽やかな「ID.4 プロ・パフォーマンス」。日本のラインアップにはないボディカラーに目を奪われますが、エクステリアデザインはこれまでと同じで、私の愛車の「ID.4 プロ・ローンチエディション」との違いは1インチアップの21インチホイールが装着されていることくらいです。 ところが運転席に座ると、コックピットの眺めに違和感が! マイナーチェンジでもないのに、コックピットのデザインが私のID.4 プロ・ローンチエディションと大きく変わっていました。 ご存じのとおり、フォルクスワーゲンなど多くの輸入ブランドでは“イヤーモデル制”を採用していて、毎年のように細かい仕様変更を実施。エクステリアデザインは一緒でもパワートレインや装備が変わるというのはよくあること。この2024年モデルでは、インテリアのデザインまで様変わりしていたのです。 真っ先に気づいたのが、ダッシュボード中央にあるタッチパネルがリニューアルされていること。2022年モデルのID.4 プロ・ローンチエディションでは12インチのタッチパネルが搭載されていますが、この2024年モデルでは12.9インチにサイズアップが図られたのに加えて、デザインも一新され、明らかに使い勝手が向上していました。

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