最高出力500ps超で、航続距離は600km
ボルボカーズは現地時間1月3日、北米最大の家電見本市、コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)において、7人乗りの新型電動SUV「EX90」を北米向けに初公開した。2023年後半より生産が開始され日本導入も見込まれるEX90について、その特徴を見ていこう。
まずはEX90の位置付けについて。同モデルは、既存のラインアップにあてはめると、「XC90」のEV版にあたるモデルだ。2ボックスの大柄なSUVボディに3列シートを搭載し、フラッグシップにふさわしい最先端の装備を搭載する。
欧州プレミアムSUVのライバルを見渡すと、ミドルクラス以上のセグメントではメルセデスのEQE SUVとEQS SUV(いずれも日本導入予定)や、BMWのiXなどが発表済みだが、EX90は3列シートSUVという点がファミリー層を中心に大きな訴求ポイントとなりそうだ。
ボルボは2030年までにラインアップのすべてをEVにすると公言し、現在のところコンパクトSUVの「XC40 Recharge」と、SUVクーペの「C40 Recharge」をラインアップ済み。その他のモデルについてもプラグインハイブリッド化、またはマイルドハイブリッド化が完了しており、今後はそれらが順次ピュアEVへと置き換わっていく予定だ。
EX90のパワーユニットについては、最初にツインモーターを搭載した全輪駆動モデルが登場し、こちらはシステム全体で最高出力380kW(517ps)、最大トルク910Nmを発生する。バッテリーは111kWhと大容量で、航続距離は最長600kmに達するとのことだ。
国内価格は1200万円程度か
これらのスペックを先のライバルと比べてみよう。メルセデスEQE SUV(価格未定)は、「EQE 350」が最高出力215kW(292ps)で航続距離は最長590km、高性能版の「EQE500」は300kW(408ps)/最長547kmだ。BMW iXには240kW(326ps)/450kmの「iX xDrive40」(1075万円)と、385kW(523ps)/650kmの「iX xDrive50」(1285万円)の2タイプがラインアップされる。これらのSUVに対してEX90は、性能面で遜色がないどころか、むしろ高性能な部類に入る。あと気になるのは、日本国内において車両価格がどの程度に設定されるかだろう。
この点について有力な情報として、ボルボはEX90の北米価格を8万ドル(日本円にして1076万円)以下に設定する見通しであることを今回のCESで示した。そこで日本と米国の価格差を既存モデルで比較すると、XC40 Rechargeの場合、米国でのスタート価格は5万3550ドル(同約720万円)で、日本国内での価格は639万円となっている。仕様が同一ではないとはいえ、ボルボの国内販売価格は米国に比べて12%ほど安く設定されているのである。この価格差を参考に算出してみると、EX90の国内価格は単純計算で1200万円程度になると期待できる。
走る高性能コンピューター
さて、次にEX90の技術的なハイライトをチェックしてみよう。注目したいのは、安全性を高めるセンシング技術が進化しているところ。EX90は、レーザーを使って対象物との距離を測定するLiDAR(ライダー)や、5つのレーザー、8つのカメラ、16台の超音波センサーを搭載する。これによりサッカー場(全長105m)ふたつ分に相当する遠方の小さな物体さえも検知可能という。しかも昼夜を問わず、高速道路上でもその検知できる能力を発揮するという。
また、室内においてもステアリングホイールからの情報や2台のカメラによる視線検知により、ドライバーの疲労や眠気、注意散漫な挙動を検知することができるという。LiDARによる走行状況分析と併せ、予防安全技術の飛躍的な向上が期待できそうだ。
さらにEX90では車両購入後も無線によるファームウェアアップデートが可能とのこと。テスラが先鞭をつけた技術だが、車両購入後も最新の安全機能を入手できるというのは大きなメリットとなるに違いない。
ボルボによればEX90は単なる新型車ではなく、“走る高性能コンピューター”であるとのこと。最新の機能・装備を積極的に取り入れ、安全性を高めようとする同社の企業姿勢は、電動化によりさらに弾みがつきそうだ。
なおEX90は北米市場では、2023年に予約受注が開始され、2024年初頭より順次デリバリーが開始予定とのこと。日本導入が待ち遠しい1台だ。