V2H対応機器もセットで導入するのがベスト
<能登でも実証された「走る蓄電池」の実力>
2024年1月の能登半島地震では、日産が「アリア」「リーフ」などのEVを石川県内の避難所に無償貸与し、スマートフォンや医療機器の充電に役立てた。急速充電インフラを運営するe-Mobility Powerも、石川県内の充電スポット11カ所を無償開放した。

EVは、ガソリン車のように発電のためにエンジンを始動させる必要がなく、密閉空間での一酸化炭素中毒のリスクもない。また、一般に電力インフラはガス・水道より復旧が早い傾向がある。地中埋設管の補修に比べ電線の復旧工事は迅速に進むことが多く、電力が復旧するまでの停電期間に備えた「補助電源」としてEVは機能し得る。
<EVが本当に困るのはこういうシナリオだ>
では、EVが明確に不利なのはどんな状況か。道路が寸断され、充電インフラも壊滅し、電力の復旧見通しも立たない孤立地区では、バッテリーが空になった時点でEVは文字どおり「動かない箱」になる。ガソリン車は燃料を補給できれば走行を継続できる。この点は正直に認めなければならない。ただ、ガソリン車はEVほど効率よく家庭へ給電することはできない。EVのバッテリーは前述のとおり家庭の電源として活用できる。この点において、V2LやV2Hを備えた環境では、EVが災害対応力で優位になる場面が多い。

もうひとつ見落とされがちなのが、V2Hは「EVを買えば自動的に使える」ものではないという点だ。専用の双方向充放電器の設置が別途必要で、導入費用は機種や工事内容によって異なるが、本体と工事を合わせると80〜150万円程度が一般的だ。国や自治体の補助金を利用できる場合もあるが、それでも一定の費用負担は避けられない。準備なしに停電を迎えると、せっかくのバッテリー容量を生かせないまま終わる。

とはいえ、太陽光発電とV2Hを組み合わせれば非常に強力な災害対策になる。屋根に太陽光パネルがある家庭なら、日中に発電した電気でEVを充電し、夜間や悪天候時はEVから家へ給電するという循環が成立する。晴天が続き十分な発電量を確保できれば、エネルギーを自給できる可能性がある。これはガソリン車には真似のできない芸当である。
結論として、EVが災害に強いか弱いかは、車両単体ではなくV2Hや太陽光といった周辺設備とセットで決まる。だからこそEVを選ぶなら、少なくともV2L対応車を選び、可能ならV2Hも導入する。そして日常的な満充電習慣を維持し、大型台風など災害の発生が予想される場合には必ず満充電で備える——それだけで、EVは災害時の心強い備えになり得る。
災害への備えとしてEVを検討するなら、クルマ本体だけでなく「電気を取り出し、生み出す仕組み」まで含めて考えることが肝心だ。

















































