バッテリーの劣化は想像以上に少ない
ともかく、EVのリセールバリューが低いと思いがちなのは、EVのキモであるバッテリーが走行や充電によって劣化してしまい、徐々に航続可能距離が短くなるという特性が嫌気され、それが悪印象につながっているからだろう。
しかし、バッテリー劣化による航続性能ダウンについての心配は無用になりつつある。
国産EVで主流となっているNMC(三元系の正極材を使うタイプ)リチウムイオンバッテリーは、初期のEVと比べると圧倒的に耐久性を上げている。充電サイクルを重ねても性能劣化が少ないLFP(リン酸鉄の正極材を使うタイプ)リチウムイオンバッテリーを搭載するEVも増えてきている。
今後の自動車を変えるテクノロジーと評判の「SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)」もEVの航続距離を伸ばす要因となり得る。SDVとはソフトウェアによって機能を向上させることを設計から盛り込んだクルマという意味だ。そして、バッテリー制御やモーター制御といったソフトウェア領域を、実際の走行データに合わせてアップデートすることにより航続距離を伸ばすというアプローチがあり、多くの自動車メーカーに広がる可能性は高い。
ソフトウェアの進化によってEVの性能が向上することが当たり前の時代になれば、「バッテリーの劣化により航続距離が短くなるから、中古のEVは価値が下がる」という認識を改める必要となりそうだ。
もしかすると、数年後には「昔のEVは古くなるとすごく安価に買えたんだ。いい時代だったなあ」と振り返る日が来るのかもしれない。SDVとして設計されたEVがすでに誕生している今日このごろ、それが現実となる可能性は高い。
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