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アメリカの関税で苦しみ中国市場で困難極まるマツダはどうなる? EVの欧州展開で活路は見いだせるか


TEXT:高橋 優 PHOTO:EV NATIVE/THE EV TIMES
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ひとクラス上の高級感を備えるEZ-60に期待

そして、値段設定について、ノルウェー市場において日本円で約543万円からのスタートと、想像以上に競争力のある値段設定を実現しています。

この表は、EV販売競争の激しいノルウェー市場における、競合のEVセダンとのEV性能を比較したものです。ベンチマークであるテスラモデル3と比較すると、わずかに割高感があるのは否めないものの、優れたエクステリアデザインを含めて、一定の競争力のある様子が見て取れます。

ちなみに欧州市場に新投入された中国MGのミッドサイズセダンIM5は、マツダ6eと近しい値段設定を実現しながら、さらにプレミアムなインテリア、4WSなどの最新テクノロジーを搭載しており、モデル3や2025年後半から納車がスタートするメルセデス・ベンツCLA EVの競合となり得ます。ノルウェーだけでなく欧州全体で、中国製マツダEVセダンがどれほどの販売台数を達成できるのかには注目です。

※MG IM5は中国SAICのプレミアムEVブランドIM MotorのL6。欧州でブランド力のあるMGブランドで展開

さらに、マツダの最新EV動向について、EZ-6に続く新型EVの発売が近づいているという点も重要です。マツダはミッドサイズSUVであるEZ-60を上海オートショーにおいて初公開しながら、実際の発売スタートを9月とアナウンスしてきました。EZ-60は、EZ-6と同じくChanganのDeepal S7をベースとして設計開発されています。全長4850mm、全幅1935mm、全高1620mm、ホイールベースが2902mmというミッドサイズセグメントのSUVです。

EZ-6と同じく、BEVとともにEREVをラインアップ。BEVモデルのバッテリー容量は78kWhであり、航続距離がCLTC基準で600kmを実現しています。

このEZ-60で期待しているのが、その先進的なインテリアデザインです。物理ボタンが徹底的に排除されたミニマリスティックなデザイン言語とともに、ソフトマテリアルが多用されています。実際に上海オートショーで実車をチェックした際にも、インテリア全体が乗員を包み込むような感覚があり、セグメントがひとつ上のプレミアムSUVであると感じました。

さらに、車両中央には26.45インチの横長の5Kセンターディスプレイを採用。助手席向けのエンタメスクリーンとしても機能します。さらに、23スピーカーシステムを採用するなどという高級機能を装備することで、EZ-6よりもプレミアムなセグメントで勝負を挑もうとしてきているのです。

他方で、EZ-60が戦うことになるプレミアム電動SUVセグメントは、2025年後半にかけて競争が激化するレッドオーシャンでもあります。とくにテスラモデルYやシャオミYU7を筆頭として、EZ-60と同等の値段設定となるであろう20万元級(日本円で約400万円)にもXpeng G7やBYDシーライオン07、Onvo L60などの強力な車種が複数存在することから一筋縄ではいかないはずです。

このように、トランプ関税によって主力マーケットのアメリカ市場の収益性で問題を抱えるマツダは、中国市場でも絶体絶命という販売低迷状況です。頼みの綱だったEZ-6も、当初の期待とは裏腹に、月間1000台未満と販売台数は伸び悩んでいます。よって、EZ-6をマツダ6eとして欧州などに海外展開することで、中国国内の生産ラインの稼働率を向上させ、一台でも販売台数を伸ばすことが必須なわけです。

また、中国市場では、本格EV第二弾であるEZ-60の投入が控えており、EZ-6を上まわる高級感を含めて、非常に魅力的なEVに仕上げてきているものの、このプレミアムSUVセグメントは近年稀に見える超激戦セグメントであり、一筋縄ではいかないはずです。トランプ関税に揺れるマツダの、中国や欧州というそれ以外の市場の最新動向やEV動向には今後も注目です。

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