2025年5月
TEXT:御堀直嗣
ガチのあるある話! 電欠寸前で急速充電器にたどり着いたら故障してた……どうするのが正解?

急速充電器には緊急連絡先が記されている 電気自動車(EV)で遠出をする際の命綱は、経路充電での急速充電器だろう。 たとえば、私が乗る日産サクラの場合、充電量が20%を切ると、「最寄りの充電施設を検索しますか?」と案内される。充電残量が20%を切ったら、そろそろ充電のことを考えはじめるのが無難だろう。 それでも、何らかの事情によって、充電残量がもっと少なくなるまで走ってしまう状況がないとはいえない。さらに、ギリギリで到達した充電器が故障などで使えなかったら、どうすればいいのか? エンジン車でも、ガス欠となった経験のある人はいるはずだ。そういう私も、運転免許証を取得して間もないころ、夜中にガス欠となった経験がある。当時乗っていた中古車の燃料計がずれていて、まだ表示では残っているはずが、じつは燃料切れになっていたのであった。 夜中に一緒に遊びまわっていた友人の知り合いがガソリンスタンドでアルバイトをしているというので連絡し、携行缶にガソリンを入れてもって来てもらい、ことなきを得た。 EVでも、電欠ぎりぎりで充電器にようやく到達するといった場面は、絶対にないとはいい切れない。しかも、頼みの綱の充電器が壊れていたら、どうすればいいのか? 以下は、私の経験ではなく、知人の体験談からである。 それによれば、急速充電器には緊急連絡先の電話番号が記されているので、そこに電話をし、急速充電器が壊れていることを告げると、遠隔操作で再起動できる場合があるとのことだ。そうすれば、通常どおり充電することができる。 ほかに、NEXCO東日本のWEBサイトのQ&Aには、急速充電器に併設している非常用コンセントを使うことができるとある。ただし、この場合は200ボルト(V)での普通充電になると思われ、なおかつ充電ケーブルは自分で用意する必要があるだろう。したがって、充電ケーブルを携行していなければ利用できない懸念は残る。 自宅での基礎充電で充電ケーブルの付いた機器を設置している場合、携行できる充電ケーブルを所持していないこともありえる。 そのうえで、充電ケーブルを携行していても、急速充電を期待していたのに、普通充電での充電ではどれほど時間がかかるかわからない。そこで、多少でも充電できたところで、最寄りの急速充電器を検索し、そこへ移動して残りの充電を行うという二段構えの充電をすればよい。もちろん、二度手間ではあるが、高速道路や有料道路上での充電にこだわらず、一旦、一般道へ降りることを厭わなければ、急速充電器は数キロメートル圏内にみつかるのではないか。

TAG: #急速充電 #急速充電器
TEXT:渡辺陽一郎
競争力抜群の価格で登場したヒョンデ・インスターは果たして売れるか? 気になる点をチェック!!

一番のセールスポイントは価格 ヒョンデは韓国の大手自動車メーカーで、日本では電気自動車と燃料電池車を輸入販売している。そのなかで、もっともコンパクトで価格の安い車種が、2025年4月に発売された電気自動車のインスターだ。 インスターのボディサイズは、全長が3830mm、全幅は1610mmと小さい。とくに全幅は、軽自動車をベースに開発されたジムニーシエラの1645mmを下まわる。最小回転半径も5.3mだから運転しやすい。その一方で、全高は1615mmだからカローラクロスと同等だ。フェンダーにはホイールアーチの樹脂パーツも装着され、SUVらしさを強めた。 モーターの動力性能は、ベーシックなカジュアルの最高出力は71kW(97馬力)、最大トルクは147Nm(15.0kg-m)になる。中級のボヤージュと上級のラウンジは、最大トルクは147Nm(15.0kg-m)でカジュアルと共通だが、最高出力は85kW(115馬力)に向上する。 駆動用リチウムイオン電池の総電力量は、カジュアルは42kWhだ。1回の充電で走れる距離は、2025年5月上旬時点では未定になる。ボヤージュとラウンジは、49kWhを搭載して、WLTCモードにより458kmを走行できる。 インスターの1番のセールスポイントは価格だ。カジュアルは後方の並走車両を検知する安全装備などが装着されず、ヘッドライトもハロゲンになる。駆動用リチウムイオン電池の容量も前述の42kWhと小さいが、価格も284万9000円に収まる。国から交付される補助金は、インスターの全グレードが56万2000円だから、カジュアルの実質価格は228万7000円だ。

TAG: #インスター #コンパクトカー
TEXT:TET編集部
日本初のEVマイクロバスとEV大型観光バスがついに姿を見せた! EVモーターズ・ジャパン「V8-Micro Bus」と「F8-Coach」がバステクで初公開

ついに一般公開された2種類のEVバス 福岡県北九州市に本社を構え、自社で電気自動車(EV)の開発を行なっているEVモーターズ・ジャパン。昨年10月に開発完了を公表していた国内初のEVマイクロバス(全長6.99m)と大型観光EVバス(全長12m)の2車種を、神戸で開催された「2025 バステクフォーラム」の会場でついに一般向けに初公開した。 EVマイクロバス(全長6.99m) EVマイクロバスは厳密にいえばモデル名を「V8-Micro Bus」といい、全長5.99mと6.99mの2車種がラインアップされ、一般向け初公開となったのは後者の方だ。 この国内初のEVマイクロバスは、主にスクールバスやデマンドバス、送迎バスなどに利用されることが想定されており、バイワイヤ制御を標準搭載して快適性の向上と、安全な先進運転支援の提供を実現している。 全長5.99mのモデルはフロアがステップありの高床タイプ。一方の全長6.99mのモデルは低床ノンステップタイプも選択することができる。全長の違いはそのままホイールベースの長さにあてがわれ、乗車定員16名から補助席の利用を含む最大24名まで、利用規模に応じた車種選択を可能としている。 大型観光EVバス(全長12m) 初公開となったEVバスの2車種目は、全長12mの大型観光EVバスだ。こちらもマイクロバスと同様に大型観光バスとしては国内初のEVバスだ。 大容量の貫通式トランクルームを設置し、観光目的やエアポートバスなど、さまざまな用途を想定しており、乗車定員は52名となる。 初公開の場となった「2025 バステクフォーラム」で2台を試運転および試乗した来場者からは、「加減速の滑らかさとEVならではの静穏性に驚いた」「小型のEVマイクロバスを工場の送迎車両として活用したい」などといった声がEVモーターズ・ジャパンに寄せられたという。 同社はこれらのリアルな声を大切にし、さらなる製品改良とラインアップの拡充に努めていきたいとしている。

TAG: #EVバス #EVモーターズ・ジャパン #新型車情報
TEXT:高橋 優
日産の6700億円赤字はさほど問題なし! それよりも直近「ワクワクする」クルマの計画がないことが問題

車両生産工場を17から10へ 日産の2024年度の決算が発表され、販売台数、収益性ともに悪化するという苦しい現状が判明しました。日産が今後に巻き返しを図ることができるのか、競合の決算内容とも比較しながら分析します。 まずこのグラフは、主要な自動車グループやメーカーの年間販売台数の変遷を示したものです。オレンジで示された日産は、断続的に販売台数を落としており、2024年シーズンの販売台数は334万8687台と、前年比でわずかにマイナス成長に留まっています。また、決算発表では2025年度における販売台数予測を325万台に設定してきているものの、トランプ関税の影響なども含めて、計画の実現性にも懸念が残ります。 そして、日産に大きくプレッシャーをかけ始めているとメディアでいわれているのが、北米市場における電動車シフト、および中国市場におけるEVシフトです。 北米市場では現状、日産はe-POWERを1車種も投入することができておらず、その上で、初投入は2026年の新型ローグと、2025年に投入することはできません。とはいうものの、北米市場においてはマツダとスバルもハイブリッド車の割合は極めて低く、その上で日産の2024年度における北米の販売台数は+3.3%とむしろ成長しています。 しかしながら、北米市場における問題は、販売奨励金の大幅増加という点でしょう。台あたりの販売奨励金増加による減益影響が大きくなっており、とくに直近の2025年1月から3月のQ1で大幅に増加しています。つまり、販売の質が低下しており、車両の価値が価格に見合っていない状況なのです。要するに、ハイブリッド車やガソリン車にかかわらず、そもそも現在の日産は北米で魅力的な車種をラインアップできていないといえるわけです。 そして中国市場は、現状大衆セダンのシルフィ一本足打法という販売構成であり、このシェアもBYDやジーリーのPHEVに大きなプレッシャーをかけられています。 その一方、日産は4月末からEVセダン「N7」の発売をスタートしており、発売してすぐに1万台の受注を獲得するなど好調です。N7以降の新型EVとともに、そのシルフィ一本足打法からの転換が急務となっています。 そして、そのような背景において公開された2024年度決算について、まず日産の四半期販売台数は約87万台と、前年同期比でマイナス成長となりました。売り上げは3兆4900億円で前年比同等規模を維持しました。 また、日産への懸念が在庫車両の高止まりです。直近の25年Q1(2024年度第4四半期)では在庫が減少しているように見えるものの、これは北米の在庫車が多額のインセンティブによって一定数を捌けたと分析可能であり、やはり持続可能な状態ではないといえます。 いずれにしても、この1-2年、インセンティブを少なくすることで販売の質が向上したと説明されていたものの、その実態というのは、半導体不足の影響による生産制限によって在庫車両が減少していただけだったわけです。 次に、粗利益とマージンの変遷を見てみると、直近の四半期のマージンは12.15%と、Covid-19以降では最低の収益性に低迷しています。販売台数が低下していることで、工場の稼働率が上がっていないことが大きいと推測できます。 そして日産は、工場の稼働率を向上させるために、グローバル全体における車両生産工場を、現在の17拠点から10拠点へと大幅削減する方針を表明しました。これは、日本国内も対象であり、稼働率の低い湘南工場などが閉鎖される可能性があります。 さらに、販管費や研究開発費を差し引いた営業利益について、直近の四半期の営業利益率は0.17%と、前年同四半期の2.57%と比較しても急減速しています。日産の経理上におけるドル円は、前年同期比で4円の円安であり、その分収益性には50億円のプラス要因と説明されています。四半期単体の営業利益は58億円だったことから、円安でなければ利益がほとんど出ていないという水準です。

TAG: #EVシフト #決算
TEXT:小林敦志
世界中の自動車メーカーの工場が集結するメキシコ! ついに立ちあがった自国量産BEVブランド「サクア」とは?

メキシコでは日産車がもっとも多く売れている 同盟国なども巻き込みながら世界を混乱させている、アメリカ・トランプ政権の関税政策。いち早く追加関税が課されたのが、アメリカの隣国であるカナダとメキシコ。カナダは激しく反発しているが、メキシコも黙って受け入れているわけではない。 かつては北米自由貿易協定(NAFTA)を結び、いまではそれがアメリカ・メキシコ・カナダ協定(USMCA)となり、強固な経済的協力関係が続いていただけに、3カ国の関係が混乱してしまったのも頷ける。 メキシコは主にアメリカ国内向けとなるが、世界の大手自動車メーカーの生産拠点が多く存在する。JETRO(日本貿易振興機構)資料によると、2024歴年締めでのメキシコ国内での大型バスとトラックを除く年間自動車生産台数が398万9403台なのに対し、メキシコ国内での新車販売台数は149万6797台となり、生産台数に占める国内販売台数比率は約37%となっている。アメリカと国境を接する地域を中心にアメリカで使われていた中古車が大量に入ってきていることも、国内消費量が少なめに感じる背景にあるのかもしれない。 生産台数ではGM(ゼネラルモーターズ)がトップとなるものの、メキシコ国内での販売台数となると日産が25万6227台でトップとなっている。海外市場における日系ブランド車での販売ランキングでは、トヨタがトップとなることがほとんどといっていい状態なので、メキシコは意外なほど特殊な市場といえるのかもしれない。 筆者はアメリカ西海岸の街サンディエゴと国境を接するメキシコ側国境の街ティファナで、コレクティーボと呼ばれる乗り合いバスのような公共交通機関でキャラバンがよく使われているのを目撃している。一般的にはトヨタ・ハイエースが海外ではコレクティーボのような需要のほか、ホテルが用意するシャトルバスやチャーターバスなどになっていることが多いのだが、調べてみるとメキシコ国内ではハイエースのようなニーズはキャラバンが目立って担っている(ここ最近はメルセデスベンツ・スプリンターなどが進出しているが……)。 また、ティファナあたりのタクシーでは、アメリカで使い古されたシボレーやフォードのフルサイズセダンが定番だったが、そのうち日産セントラとなってきた。1993年に7代目日産サニーは日本国内での生産を終了したが、メキシコ国内ではその後も日産ツルとして2016年まで生産及び販売を続け、タクシーとしてもメキシコ国内で大活躍した。公共交通機関で日産車の需要が多いことで、これが消費者の支持を得てメキシコで強みを見せているようである。ちなみに新車販売台数全体の約4割が日系ブランド車となっている。

TAG: #EVシフト #メキシコ
TEXT:桃田健史
海外じゃけっこう聞く「EVの発火事故」! 日本で燃えたというニュースが出ない理由とは?

日本は安全意識が高い ネットニュースでは、海外でEVが燃えたことがときおり話題となる。充電中に白い煙が出てきてEVがあっという間に燃えたとか、走行中に車内が焦げ臭いと思って停車したらEVはあっさり燃えてしまったとか。 さまざまなニュースがある一方で、日本でEVが激しく燃えたというニュースを聞いたことがない。 これはいったい、どういうことなのか? そんな疑問をもつ人もいるだろう。 筆者は、1980年代から世界各地で定常的にEV関連の取材をしてきた。そのなかで、時代が大きく変わったと感じたのは、1990年にZEV(ゼロエミッション)規制が始まったときだ。 アメリカのカリフォルニア州環境局が大気汚染に関する会議体であるCARBを組織し、その一環としてZEV規制が生まれた。当時、日米からアメリカ市場向けにさまざまなEVが登場したが、燃焼という観点の話題はまだあまりなかった。 それが、2000年代半ばになると、リチウムイオン電池を大量に搭載するEVの発想が広がってきた。これに伴い、アメリカでは大型リチウムイオン電池に関するカンファレンスが定期的に開催されるようになり、筆者も参加してきた。 ここでは、アメリカDOE(連邦エネルギー省)直轄の研究所関係者らが講演する機会が多かったが、彼らは必ずといってよいほど、「リチウムイオン電池は正しく使わないと燃えることを大前提に考えるべき」という基本理念を強調した。 リチウムイオン電池の発火事故は、いわゆるパソコンの電池が燃焼した事例が取り上げられることが多く、「EVとして利用する場合のリスクをいかに下げるかが、当面の課題」という説明だった。リスクを下げるためには、電池の内部構造の設計、材料の選定方法、製造時の各工程における適格な作業と安全対策などが挙げられた。 また、台湾で小型電動車に関するカンファレンスに数度参加したが、その際には、中国における充電環境の悪さから発生した小型電動バイクの発火事故事例などが報告された。 その後、初代「フィスカー」の発火事例がアメリカで何度か発生し、アメリカDOT(運輸省)とDOE(エネルギー省)では原因調査を進めた。直近では、韓国でドイツ系メーカーのEVが燃焼した話題があるが、先日韓国で業界関係者に話を聞いたところ、当該事案の詳細はいまだに公開されていないという。 いずれにしても、2010年代半ば以降、グローバルでEVを製造するメーカーが一気に増えており、全体としてリチウムイオン電池の安全性は上がっている。 だが、メーカーによって、安全性の担保のレベルには当然違いがあり、また国や地域で充電環境にも違いがあるため、最悪のケースとしてEVが燃えることが起こり得る。国や地域によっては、国などによる情報統制によって、EV燃焼事案が表沙汰にならないことも考えられる。 その上で日本では、EVの企画、設計、製造、そして充電インフラへの安全性に対する意識が高いことで、EV燃焼事例がほぼ報告されていないのではないだろうか。 むろん、情報統制もないはずだ。 ただし、今後は海外からさらに多くの種類と量のEVが日本に輸入されることが予想されるほか、出力350kWの急速充電の普及が進むことを考慮すると、EVに対するさらなる安全性の確保が必須となる。

TAG: #日本 #海外
TEXT:御堀直嗣
EVで「大は小を兼ねる」の考えは損する可能性アリ! 航続距離2倍を求めるとバッテリー容量は2倍じゃ足りないワケ

一充電走行距離はモデルによって大きく異なる 電気自動車(EV)の性能を測る指標として、一充電走行距離が注目されている。メルセデス・ベンツEQS 450+はWLTCで759kmを達成している。テスラ・モデル3のロングレンジは706kmだ。 それらの数値は、一度の給油で1000km走れるようなディーゼルターボ車にはおよばないものの、700km前後走ると、東京から東へは青森県、西へは岡山県あたりまで行けるだろう。高速道路を時速100kmで走り続けたと仮定して、7時間の行程だ。 一方、現在もっとも一充電走行距離が短いのは、日産サクラ/三菱eKクロスEVの180kmである。メルセデス・ベンツEQS 450+の4分の1以下でしかない。 そのうえで、考えてみる。700kmもの一充電走行距離が、本当に必要かどうか? 一充電走行距離に関わるバッテリー容量は、大きすぎると電力消費の効率が悪化する。したがって、普段のクルマの使い方(どれくらいの距離を走ることが多いか)を、再確認するのがまず第一歩だ。 その答えのカギを握るのが、給油と充電の仕方の違いを理解することだ。 ディーゼルターボエンジンのクルマは、満タンから走れるとされる1000kmを走り切ったら、給油しなければならない。給油するにはガソリンスタンドを探し、そこへ行かなければならない。 EVで、満充電から走れる700km走ったあとは、それが目的地であろうと自宅に戻った場合であろうと、200ボルト(V)のコンセントから充電すればいいため、ガソリンスタンドのような専用施設を訪ねる必要がない。これが基本だ。 もちろん、まだ基礎充電(自宅や仕事場での充電)や目的地充電(行った先での充電)の整備が十分でないのも事実だ。本来、充電施設の整備は、基礎充電と目的地充電が優先されるべきだった。経路充電と位置付けられる急速充電は、それらを補完する設備であることへの理解が不足していた。それが主客転倒の事態を招いてしまった。このため、一充電走行距離の長いEVが必要との誤認を消費者に与えてしまった。 EVの充電基盤整備を、本来の姿で完成させていくことが、適正な走行距離選びに不可欠の条件になる。

TAG: #リチウムイオンバッテリー #一充電走行距離
TEXT:TET編集部
国際興業がいすゞエルガEVを埼玉県に初導入! パワーエックスとの提携で走行時CO2排出ゼロに取り組む

国産初のBEV大型路線バスは乗客にもメリット大 東京都北部と埼玉県川口市、さいたま市などを中心に、1日あたり約28万人もの利用者を抱える路線バス会社の国際興業。そこに新たなEVバスの導入が発表された。 導入されたのは全長約10.5m、乗車定員68人の国産初のBEV大型路線バス、いすゞ「エルガEV」だ。同社のさいまた東営業所に、埼玉県内では初導入となる1台が配備され、さいたま市内の各路線で営業運転を開始する予定だという。 エルガEVは、モーター走行による走行中のCO2排出量ゼロを達成しているだけでなく、モーターを後輪の左右に搭載することで、車内最前部から最後席まで床面がフルフラット化されていることが特徴。これにより車内の転倒事故防止や、幼児・高齢者の移動、離着席を容易にするなど利用者の快適性がエンジン車に比べて向上している。また、災害などの非常時には家庭用100V電源として、外部への給電が可能となっている。 国際興業とパワーエックスの提携が目指すもの 今回エルガEVの導入に合わせて、国際興業は充電システムメーカーのパワーエックスと提携したことを発表した。これにより、国際興業さいたま東営業所には、パワーエックスが開発した、EVバス専用としては初となる蓄電池型超急速EV充電器「Hypercharger Pro」が設置された。 大容量蓄電池を搭載したこの充電器は、営業所の電力ピークを抑制し、電気料金を削減しながら最大出力150kWの高出力で効率的な充電を可能にする。さらに、車庫屋上に設置されたオンサイト太陽光発電設備からの余剰電力も活用することで、運行に伴う温室効果ガスの排出削減も図るのだという。 両者の提携により、これらの導入および運用実績をもとにして、国際興業は今後の自社の運輸事業者向け商事機能を生かして、パワーエックスの「Hypercharger」と「Hypercharger Pro」の拡販、およびその運用ノウハウを他のバス事業者にも共有していく構えだ。 一方パワーエックスは、運用データとバス事業者からのフィードバックをもとに、蓄電池を活用した充電システムを、EVバスの導入にも対応可能な次世代のエネルギーマネジメントソリューションとして開発を進める。さらに、災害への備えとして「Hypercharger Pro」の蓄電システムを自立運転できるようにして、停電時でも車両充電や営業所のBCP電源として活用できる機能を提供していく予定だという。 EVと充電器の双方を蓄電池として機能させ、災害時の地域貢献に役立てる取り組みはまさに理想的なパッケージだ。今後、運用実績を積み重ねて、各地域にその成果と仕組みが普及していくことを願いたい。

TAG: #EVバス #いすゞ #エルガEV #パワーエックス #国際興業
TEXT:高橋 優
日本のEVシェアはたった1%台! この先続々投入される新型EVで停滞ムード解消なるか?

BEVとPHEVの販売台数は約6400台 日本国内における2025年4月のEV販売動向が判明しました。テスラ、BYD、ヒョンデそれぞれが新型モデルを投入することで販売を増加させた一方、日本メーカー勢は深刻なEV販売低迷が続いています。2025年シーズンの国内EVシフトの展望を含めて解説します。 まず、2025年4月のBEVとPHEVの合計販売台数は約6400台と、前年同月比でわずかなプラス成長を実現しました。商用軽EVの日産クリッパーEVとホンダN-VAN e:の販売台数は月末にならないと判明しないため、実際にはEV販売は少しプラスされます。前月である2025年3月の販売実績は1万1985台となりましたが、前年比−9.5%に留まりました。 次に、新車販売全体に占めるBEVとPHEVの合計販売台数の比率について、4月は2.01%となりました。ここにN-VAN e:などの販売台数が合わさると、おそらく前年同月のシェア率2.12%を超える見通しです。ちなみに確定した3月度のシェア率は2.62%であり、前年同月に記録していた3.17%から下落しています。 さらにBEV単体の販売動向について、白で示されている輸入EVは4月に1763台と、前年同月比+51.2%と販売が大幅増加したものの、ピンクで示されている日本メーカーの普通車セグメントのBEV販売台数は348台と、前年同月比で半減と落ち込みました。また、シェア率が確定した3月のBEVシェア率は1.56%であり、前年同月が1.89%だったことから、国内のBEVシフトが後退している様子が見て取れます。 また、現在の日本のBEV販売シェア率を世界の主要国と比較すると、日本はデータが確定した3月において1.56%と低迷しています。その一方で、3月の世界全体のBEVシェア率は17%に到達しており、2024年3月が13%だったことから着実にBEVシフトが進行中です。 日本は2025年の間に1%台というBEVシェア率の低迷を脱出できるのか、世界全体では2025年平均でBEVシェア率20%の大台にどこまで近づけるのかに注目でしょう。

TAG: #EVシフト #普及 #販売
TEXT:渡辺陽一郎
EVの急速充電器「50kWと150kW」だと同じ時間の充電量がまったく違う! 時間で料金を支払うなら充電器本体に出力を明記すべきじゃない?

運営側の判断で出力を調節することも 電気自動車やプラグインハイブリッドに充電する充電器には、さまざまな出力がある。充電に時間を要する普通充電の出力は、おおむね3kWから6kWだ。 高速道路のサービスエリアや公共施設に設置されている急速充電器は、50kW以上の出力があり、文字どおり充電時間を短縮できる。急速充電器にも複数の出力があり、現在日本にあるものは、50kW、60kW、90kW、100kW、120kW、150kW、180kWという具合にわかれる。出力が高ければ、短時間で大量の充電が可能だ。 ただ、注意したいのは、車種によって、急速充電の最大受入能力が異なること。たとえば日産アリアで急速充電器を使ったときの最大受入能力は130kWだ。1時間あたり最大で130kWの充電ができるから、90kWの急速充電器にも対応できる。 しかし、日産サクラの最大受入能力は30kWに留まる。従って1時間に30kWしか充電できず、90kWの急速充電器を使っても、50kWと比べて充電時間の短縮にならない。 つまり、急速充電器の実際の出力は、電気自動車の最大受入能力に左右されるが、ユーザーからは「急速充電器の本体に、何kWまで対応できるか表示してあるとうれしい」という話も聞かれる。たとえば最大受入能力が130kWの場合、50kWの急速充電器では30分間に20〜25kWの充電を行える。その出力が90kWに増えれば、同じ30分間で40kW前後に増える。電気自動車の性能に合った充電器を選べると便利だ。 急速充電器の設置場所がわかるホームページなどには、出力と充電可能な台数が表示されているが、設置場所ではわからないことも多い。急速充電器の出力を本体に表示すると親切ともいえるが、運営側の判断で、出力を調節する場合がある。充電料金を時間単位で決めるときの割安度を均一にするためだ。そうなると実際にはkWを表示した看板も掲げにくい。 それでも実際に充電を開始すると、ディスプレイには充電量がkWで示され、充電状況がわかる場合もある。急速充電器を効率良く便利に使うには、出力を分かりやすく表示するといいだろう。

TAG: #急速充電 #急速充電器

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
ブレーキダストを封じ込めて環境対策! メルセデス・ベンツが開発したEVならではの技術「インドライブ・ブレーキ」ってどんなもの?
ヒョンデの魅力を日本に伝える新たな拠点! 「ヒョンデ みなとみらい 本社ショールーム」がグランドオープン
中国から地球上最強コスパの新星EV現る! IMモーターL6の驚くべきスペックとは
more
ニュース
EVからEVに急速充電で可能性は無限大! 「V2V」を実現する移動式急速充電車「MESTA Pro」が誕生
日本初のEVマイクロバスとEV大型観光バスがついに姿を見せた! EVモーターズ・ジャパン「V8-Micro Bus」と「F8-Coach」がバステクで初公開
国際興業がいすゞエルガEVを埼玉県に初導入! パワーエックスとの提携で走行時CO2排出ゼロに取り組む
more
コラム
これがトヨタの本気だぜ! 新型bZ4Xの日本導入が待ち遠しい!!
EV時代は変速機が不要になるからトランスミッションメーカーが危ない……は間違い! EV時代に重要になる「精密な歯車」の技術
日産の起死回生の一撃がスゴイ! 「この中身でこんな安いの?」驚きしかない最新EVセダン「N7」
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
more
イベント
公道レース「フォーミュラE東京」が帰って来る! チケットを持っていなくとも無料で1日遊び尽くせる2日間
災害に備えて未来を楽しむ! 「AWAJI EV MEET 2025」の参加はまだまだ受付中
災害時にも活躍できるEVの可能性を淡路島で体験! 「AWAJI EV MEET 2025 from OUTDOOR FEELS」開催決定
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択