中国市場に合わせた装備を採用
EZ-6のEV性能を見ていきましょう。まず、BEVバージョンは68.8kWhのLFPバッテリーを搭載し、航続距離はCLTC基準で600kmを実現。充電性能も3C級の充電性能を実現し、15分間で300km分の航続距離を充電可能です。また、3.3kWものV2L機能にも対応しています。収納スペースも479リットルのハッチバックスタイルのトランクとともに、BEVバージョンの場合、ボンネット下に99リットルものトランクも確保しています。
さらに、Changan独自プラットフォームのEPAプラットフォームを採用しているため、最小回転半径も5.6mと、全長4900mm超えの車両としては十分な小まわり性能を実現。緊急回避性能を示すエルクテストでも時速80kmをクリアしており、これは高性能スポーツセダンに匹敵する操縦性です。
また、装備内容も中国市場に特化した装備を網羅しています。インテリアデザインで目を引くのは、車両中央に配置された14.6インチのタッチスクリーンとドライバー向けの50インチのARヘッドアップディスプレイです。そして、それらのインフォテインメントシステムを駆動するのが、中国市場における主流のQualcomm Snapdragon 8155プロセッサーです。
さらに、シートヒーター、シートクーラー、シートマッサージを完備しながら、ナッパレザーを採用することでプレミアムセグメント級の高級感を演出。そのうえで64色ものアンビエントライト、ソニー製の14スピーカーシステム、1.878平方メートルに達するサンシェード付きの巨大なガラスルーフも標準搭載。
運転支援も、5つのカメラ、5つのミリ波レーダー、12の超音波センサーを搭載。よって、レベル2ADASとともに、自動駐車機能など、中国の大衆セグメントにおいて必須となる運転支援を網羅しています。そして、中国市場で重要視されている安全性能について、ボディも高張力鋼の配合割合が86%に到達。エアバッグも9つと、ハイエンドセグメントに匹敵する充実の安全装備です。
肝心の価格設定について、BEVが15.98万元(日本円で342万円)からのスタートです。EV航続距離130kmを実現するEREVは13.98万元(日本円で299万円)。EV航続距離200kmの上級グレードの場合は14.98万元(日本円で320万円)と、競争力のある値段設定を実現してきました。
たとえば、日本勢のBEVセダンであるトヨタbZ3は、航続距離517kmのエントリーグレードが16.98万元(日本円で363万円)からのスタート。現状、日本円で100万円以上の大幅値下げを行っているものの、それでも競争力のある値段設定を実現しています。
そして現在、EVセダンのベンチマークであり、同じくBEVとPHEVを両方ラインアップするBYD HanのBEVは17.98万元から、PHEVも16.58万元からであり、とくにHanのPHEVはEV航続距離125kmと、装備内容を比較してみても、じつは今回のEZ-6はコスト競争力でもかなりいい勝負ができそうです。
このように、現在中国市場で極めて厳しい販売状況に追いやられているマツダ。その新型EVセダンEZ-6は、中国市場で現在ラインアップするべきEREVをラインアップしながら、安全性や快適装備にも抜かりがないことで、競合と比較しても競争力のある様子が見て取れます。
もしEZ-6の販売が低迷した場合は、間違いなくマツダの中国市場撤退論が現実を帯び始めるでしょう。マツダ6の後継モデルともいえるEZ-6が成功するかどうかこそ、中国市場におけるマツダの存亡を占うといえるのです。
果たしてEZ-6が成功を収めるのか、それともCX-30 EVのように不発に終わるのか。マツダの中国市場の運命を決定づける最重要モデルとして、販売動向には目が離せません。