実際に所有することでEVに対する不安がなくなる
筆者は戸建てに住んでいたときに普通充電用コンセントを設置して、初代リーフを月間500kmペースで乗っていたことがあります。遠出したときには急速充電も利用していますので、500km分のすべてを自宅の普通充電でまかなったわけではありませんが、電気代が爆上がりして後悔したことはありませんでした。むしろ冬季にエアコンで暖房を入れたときに電気代が目に見えて上がったくらいの印象があります。
個人的な話を続ければ、リーフの前に所有していたハイブリッドカー、ホンダ・インサイトで同じように月間500km走ったときのガソリン消費量は25リットルくらいでした。当時の感覚でいうと3500~4000円くらいのガソリン代を使っていたことになります。
EVを運用することで上がった電気代は2000円くらいのイメージですから、EVはハイブリッドカーよりも経済性で優るというのが個人の感想です。おそらく、多くのEVユーザーはこの感覚に共感いただけるのではないでしょうか?
つまり、EVに乗り換えると、それなりに電気代は上がるものの、驚くほどではなく、まして同じような走行距離ならばガソリン代を超えることなど考えづらいのです。
もうひとつの航続距離についてですが、これも自宅まで帰り着くことができれば翌朝にはそれなりに充電量が回復することが日常になると、不安はなくなるでしょう。コンセントにケーブルをつなぐタイプの3kW普通充電の理論値は10時間で30kWh、専用ユニットを使う6kW普通充電であれば同じく10時間で60kWhの充電が可能だからです。
たとえば日産サクラや三菱eKクロスEVのような軽EVのバッテリー総電力量は20kWhですから、かなりカラカラな状態で帰宅したとしても3kW普通充電で6~7時間もあれば満充電まで回復します。日産アリア(66kWh/91kWh)やレクサスRZ(71.4kWh)といったSUVタイプのEVであっても、6kW普通充電につなげば一晩で十分に回復できることがわかります。
そうした経験を重ねていくと航続距離と充電の回復度合いに慣れてきますし、帰路のどこかでガソリンスタンドに立ち寄って給油しなくて済むという利便性のほうが価値を高めてくるものです。
このように電気代と普通充電で十分に運用できるということを肌感覚で身に着けたEVユーザーが、「次の愛車もEVにしよう」となるのは自然なことです。逆にいえば、オーナーになって経験すれば、すぐに解消するような心配を必要以上に大事と捉えているエンジン車ユーザーが多いことが日本におけるEV普及のスピードを遅くしているのかもしれません。
もちろん、基本的には自己所有の戸建てでなければ普通充電の設備を用意しづらいという状況はあります。かくいう筆者も賃貸の集合住宅に引っ越したことでEVを手放すことになりました。自宅について持ち家(所有)と賃貸のどちらがいいのかは議論になるところですし、持ち家にしてもマンション(集合住宅)と戸建てのどちらがいいのかは永遠のテーマといえます。
前述したように、EVを不安なく活用できる条件としては、基礎充電となる普通充電の設備を用意できることが重要です。そうなると現実的には戸建ての持ち家という人がEVユーザー候補となります。それ以外のユーザーではEVの不安を解消しきれず、「EVなんて不便なだけだ」という認識は変わらないのかもしれません。