2024年11月
TEXT:遠藤正賢
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない

「Honda 0シリーズ」の最新技術を覗いた 2024年1月のCES 2024で世界初公開され、2026年より世界各国での市販化が予定されている、ホンダの新たなBEV「Honda 0(ホンダ・ゼロ)」シリーズ。 同シリーズで掲げられている開発アプローチ「Thin, Light, and Wise」(薄い、軽い、賢い)を具現化する技術の数々が10月初旬、ホンダの四輪/BEV開発センター栃木および隣接する四輪生産本部で開催された技術説明会「Honda 0 Tech MTG 2024」で公開された。 そのなかで、新型CR-Vの内外装に「0」シリーズの技術を組み合わせた試作車に試乗することができたので、インプレッションをお届けしたい。 さて、「Thin, Light, and Wise」の具現化技術は、今回公開されただけでも極めて多岐にわたるため、かいつまんで説明すると、「thick and heavy」=「厚くて重い」というBEVの制約を根本から覆すものといえる。その要となるのは、やはりバッテリーだ。 そんなバッテリーを「薄く軽く」作るため、ホンダは型締め力6000tクラスの「メガキャスト」(大型鋳造機)と、「3D FSW」(三次元摩擦攪拌接合)を導入。これによりバッテリーケースの部品点数を従来の60点以上から5点へと大幅に減らすとともに、ウォータージャケットを薄型化して、バッテリーパック全体の高さを従来より約6%、実寸法にして約8mm下げることに成功した。 また、側面衝突時の荷重をより効率よく分散する構造とすることで、バッテリーの搭載効率を約6%アップ。加えて約500万台に及ぶ電動車の市場ビッグデータをもとにバッテリー劣化モデルを構築、診断・予測技術を確立することで、製造10年後のバッテリー劣化率10%以下を目指すとしている。 パワーユニットに関しては、モーター、ギヤボックス、インバーターを一体化させたeAxleを、メインユニットとなる180kWタイプと、サブユニットとなる50kWタイプの2種類設定。かつインバーターを他社比で40%小型化し、eAxleの上ではなく横への配置を可能とすることで、eAxle全体の高さを下げ、室内空間を30mm拡大することに成功した。 これはボディ骨格にも良い影響を与えている。eAxleの小型化により前後の衝突ストロークが拡大するうえ、とくにフロントではサイドメンバー上部中央に板状の部材を追加できるようになった。 これにより、スモールオーバーラップ衝突時の入力を回転方向に変え、横方向に逃がすことで、キャビンへの入力を低減。他社比で10%のオーバーハング短縮と合わせて軽量化も図っている。 さらに、引っ張り強度が2.0GPa(ギガパスカル)級と極めて高いホットスタンプ(熱間成形)材を、ホイールベース間のフロア骨格に用いることで、衝突時にキャビンやバッテリーの変形を抑えるとともに、断面高さを28mmにまで下げ、全高1400mm以下の低全高パッケージに対応しつつ、乗降性の改善も図っている。 そして、旋回時に外輪を押すようボディを敢えてしならせることで、外輪タイヤの接地荷重を高め、軽量化と軽快な走りを両立させることを目指すという、「操安剛性マネジメント」を導入。これによりストラットタワーバーのようなサスペンション取付部などへの補剛部材を不要し、従来のホンダ車に対し約10%の軽量化を実現するとしている。 シャシーにおいてはステア・バイ・ワイヤを採用し、サスペンションやブレーキなどほかのバイワイヤデバイスとも統合制御。さらに、3次元ジャイロセンサーを用いた姿勢推定&安定化制御、モーターならではの緻密なトルク制御を組み合わせることで、荒れた路面でも舵角や挙動が乱れにくく、またタイトなコーナーでも少ない舵角で旋回することを可能にしている。 なお、展示されていたベアシャシーのサスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーン式で、リヤがマルチリンク式。前後ともエアサスペンションとなっていたが、市販モデルではコイルスプリングと電子制御式油圧ダンパーとの組み合わせも計画されているようだ。

TAG: #Honda 0 series #コンセプトカー #先進技術
TEXT:高橋 優
EV普及の鍵を握るのは「充電速度」! ニッポンもついに規制緩和で「超急速充電」が可能になるも対応している国産EVがない!!

規制緩和でEVライフはどう変わる? 日本国内における急速充電器設置に関する規制が緩和され、ついに800V級の急速充電器を容易に設置することが可能となりました。これにより、今後150kWを超える超急速充電器の普及が進む可能性を解説します。 現在、日本国内では150kW級の急速充電器の設置がようやくスタートしているものの、海外を見渡すと350kW級であったり、中国では1MW(1000kW)級という超急速充電器の設置がスタートしています。それではなぜ、これまで日本国内で超急速充電器が設置されてこなかったのかといえば、高電圧対応ができなかったことが理由として挙げられます。 というのも、日本国内で450V以上の電圧に対応する急速充電器を設置する場合、保安要件が例示されていなかったことで、充電器を設置する事業者側が自主的に設置を行わなかったという背景が存在します。 ところが、今回ついに、経済産業省が電気自動車用の急速充電器の保安要件をアップデート。結論としては、1500V以下の急速充電器に対する保安要件が追加されたことで、事業者が不安なく450V以上の急速充電器を設置、運用することが可能となったわけです。 そして、今回の急速充電器設置の要件緩和によって、大きくふたつの意味で間違いなく日本国内の電気自動車シフトの転換点となると考えられます。第一に、当然ながら、いよいよ800V級の超急速充電器が日本国内でも設置、運用がスタートすることになるという点です。 じつは、いくつかの充電サービスプロバイダーがすでに設置している急速充電器は、最大1000Vに対応する冗長性を備えており、システムのアップデートを行うだけで、既設の充電器でも高電圧充電を行うことが可能です。 とくにテンフィールズファクトリーの急速充電器FLASHは、チャデモ規格では750V、テスラのNACS規格では1000Vでの充電が可能となっています。よって、もしチャデモ規格において800V程度の電圧で充電できるEVが登場した場合、理論上、750Vと最大電流値の400Aをかけあわせた300kW程度という充電出力でも充電が可能。NACS規格では、1000Vと最大電流値の600Aをかけあわせた、600kW級での充電が理論上可能となります。 さらに、イーモビリティパワー、通称eMPも、2025年に設置を予定する次世代急速充電器では、最大電圧1000V、最大電流値350A、最大出力350kWを発揮可能な急速充電器の設置、運用をスタートするとアナウンス済みです。 とくにeMPは今後、一般の乗用車だけではなく商用車のEVシフトも見据える必要があり、大容量バッテリーを搭載する商用EVでは1000V級の超急速充電はマストです。海外では最大1000kW(1MW)以上というメガワット充電の運用も間もなくスタートしていくことから、今後は商用EV向けに、350kWを超える超急速充電器も開発されることになるでしょう。 そして重要なポイントは、これまで450V以上の急速充電器の設置を自主規制してきたことによって、日本の充電器メーカーの国際競争力が低下してしまっていたという点でしょう。海外では800V級の急速充電器が設置できるのは当然であったため、充電器メーカーは高電圧充電器を開発して大量生産化。現在はABBやTritium、シーメンスや台湾のPhihongなど、多くの充電器メーカーが開発競争を続けています。 ところが日本では、独自の450V自主規制が存在したことによって、日本の急速充電メーカーは、800Vの急速充電器を開発したとしても主要マーケットである日本国内の充電プロバイダーには商品を売ることができず、800V級の高電圧急速充電器を開発するメリットがなかったわけです。こうなると、超急速充電器の開発競争においてガラパゴスとなってしまい、海外に売れる急速充電器を開発する競争力が失われてしまっていたわけです。

TAG: #急速充電器 #規制緩和
TEXT:御堀直嗣
とりあえず余裕のあるやつ買っとけば……は損! EVのバッテリーは「大は小を兼ねない」

駆動用バッテリーの重さは大人数名分 「大は小を兼ねる」ということわざがある。それは、電気自動車(EV)に車載される駆動用バッテリーについてもいえるだろうか。大容量のバッテリーを車載するEVのほうが、より長距離を充電せずに走れるからだ。 しかし、日常的あるいは頻繁に長距離をクルマで移動している人以外は、考え物だといえそうだ。 EVの駆動用バッテリーは、小さな容量でも数百キログラム(kg)の重さがある。乗車人数に換算すると、3~4人に相当するだろう。そもそも軽自動車のEVでさえ、複数人数で乗車して移動しているくらいのバッテリー重量になっている。まして、一充電で長距離を走り切れるEVになれば、7~8人がつねに乗って移動しているのと同じといえるのではないか。 エンジン車でも、燃費を改善するには、余計な荷物を積まずに使うほうがよいといわれる。余計な荷物さえ降ろしたほうがいいくらいなのだから、大容量バッテリーのEVは、それ以上の重さを常に抱えながらの走りになっているといえる。 バッテリー容量と一充電走行距離の相関関係を、改めて検証してみる。 日産サクラのリチウムイオンバッテリー容量は20kWh(キロ・ワット・アワー)だ。登録車のリーフは、標準車で40kWh、e+(イー・プラス)で60kWhのリチウムイオンバッテリーを車載している。ちなみに、アリアは最大(B9)で91kWhだ。 それらバッテリー容量によって、サクラは一充電走行距離が180km、リーフの標準車は322kmで、リーフe+になると458km、アリアは2輪駆動車で640km走れる。 サクラと比べれば、リーフの標準車は2倍のバッテリー容量、リーフe+は3倍、アリアは4.5倍のバッテリー容量だ。ではその増量分に対し、延長された走行距離は何倍になっているか。リーフの標準車は1.78倍、リーフe+は2.54倍、アリアは3.55倍で、バッテリー容量の倍増分に比べ、走行距離の伸びは少なくなっているのがわかる。 つまり、バッテリー容量が増えれば増えるほど絶対的走行距離はたしかに伸びるが、伸びしろという効率でみれば、バッテリーを倍増させたぶんそのまま遠くへ行けるわけではないのである。

TAG: #バッテリー #容量
TEXT:桃田健史
乗用車への採用はいまのところ期待薄! 充電待ちから解放される夢のバッテリー交換式EVの行方

最大の課題は電池パックや交換作業等の標準化 ENEOSホールディングス、アメリカのスタートアップ「Ample」、そしてタクシー大手のエムケイホールディングスは、京都でEV向けバッテリー全自動交換ステーションの実証実験で協力している。 バッテリーを交換するというアイディア自体は、以前から存在する。 時計の針を少し戻すと、日産リーフが世に出て間もない2000年代後半から2010年代前半にかけて、中東イスラエルとの関係が深いアメリカのスタートアップ「ベタープレイス」の存在が注目された。 同社は、日本政府からの事業支援を受けて、都内や横浜市内でEVタクシー向けの全自動交換ステーション実証を行ったことがある。筆者は当時、同社幹部らに事業計画について詳しく取材したが、同社はその後しばらくして事業を解散している。 中国では2000年代の北京オリンピック開催のタイミングで、市内中心部を走行するEVバスで交換式バッテリーを社会実装した。 2010年代に入ってからも、中国では乗用EV向けのバッテリー全自動交換ステーションの実用化を進めるさまざまな動きがあったが、ステーション導入におけるコスト、ステーション数の伸び悩み、そしてユーザーに対する安定したサービス体制維持に対する不備などがあり、一気に普及したとはいい切れなかった。 話を現在に戻すと、自動車産業界は2050年までにグローバルでカーボンニュートラルを目指すという大義のもと、少なくとも2030年代には本格的なEVシフトが始まるという予測を立てながら、2020年代を「EV普及に向けた移行期」と捉えているところだ。 そうなると、今一度、EV普及に向けた根本的な課題を注視する必要が出てきた。 EVが普及するための三大要素は、電池コスト、航続距離、そして充電時間といわれて久しい。バッテリー交換型EVになれば、充電時間は電池交換時間となるので短くできる。 また、電池パックの容量を大きくしたり、バッテリー交換ステーションの設置場所が増えれば航続距離についての不安も少なくなるだろう。 さらに、ユーザーが電池パックを所有するのではなく、充電サービスの一環として捉えるならば、EV本体のコスト削減にもつながる。 このように、バッテリー交換型EVは「いいことずくめ」に思える。だが、最大の課題は電池パックや交換作業等の標準化だ。少なくとも、乗用EVについてはこの分野での議論が活発に進んでいるとはいえない。 他方、トラックなど商用車におけるバッテリー交換式EVについては、国土交通省が1月、「国際基準の策定をオールジャパンで目指す」という方針を発表している。 こうした国の議論と京都でのEVタクシー実証が上手く連動することを期待したい。

TAG: #バッテリー #バッテリー交換型EV
TEXT:山本晋也
余った土地に「ヨシ! 急速充電器を設置するか」は現実的? 個人がEVの充電サービスで儲けられるか考えてみた

現状では儲かるビジネスとはなり得ない EV(電気自動車)の普及に急速充電インフラの整備は必須条件である、と思っている自動車ユーザーは多いだろう。現実的には、たまに利用する急速充電より、自宅や職場など長時間駐車している環境における普通充電(基礎充電)を確保することが利便性につながると理解できるのだが、それでも急速充電インフラが不要という意味ではない。 急速充電インフラが整備されればEVの運用にとってプラスしかないのも事実だ。 では、個人(自営や副業レベル)で急速充電インフラの整備に貢献することはできるのだろうか。具体的にいえば、自宅の敷地などに不特定多数が利用できる急速充電器を設置することは可能なのだろうか。 結論からいえば、個人が独立した急速充電器を使ってビジネス化することは非常に難しく、非現実的といえる。そこにはいくつもの理由が考えられる。 まずは、急速充電器を設置するためにクリアすべき規制や条件のハードルが高いことが挙げられる。いま日本で50kW級以上の急速充電器を設置するには高圧受電設備(キュービクル)の設置が必要で、建屋とキュービクルの間は3m以上の空間が必要となっている。高速道路のPAや、観光地の道の駅などで急速充電器がポツンと置かれているのには、こうした規制が影響している。 キュービクルの設備コストは最低でも200万円、高圧電力の引き込みにも同等のコストが必要とされている。加えて、急速充電器本体と設置工事のコストもかかる。そのため、初期費用の合計はおおむね600万円あたりが目安とされている。引き込みコストがかかるシチュエーションなどでは1000万円オーバーとなることもあり得るだろう。 仮に600万円の初期費用だとして、それで終わりではない。年間で100万円はくだらないであろう電気代は所有者の負担になるし、機器のメンテナンスコストもかかる。 また、規制的な話をすれば、電気を売ることができる売電業者は非常に限られている。そのため、個人レベルでの急速充電ビジネスは施設利用料として徴収するカタチになるという点も見逃せないポイントだ。

TAG: #インフラ #ビジネス #急速充電器
TEXT:TET 編集部
世界最速のEVハイパーカーは日本発! 「アスパーク・アウルSP600」の最高速438.7km/hがギネス世界記録に認定

EVハイパーカー史上最高速をマーク 大阪に本社を構え、技技術開発・研究開発のエンジニアリングアウトソーシング事業を軸に、電気自動車開発事業・アプリ開発事業など多種多様なサービスを提供しているアスパーク。同社は2014年から電気自動車の開発を開始し、2020年にEVハイパーカー「OWL(アウル)」を完成させ、0-100Km/h加速が1.72秒という驚愕のスペックで世界中の度肝を抜いた。 そして2024年6月、アウルを最高速度に特化させるかたちで進化させたモデル「アウルSP600」は、ドイツのパーペンブルグ自動車試験場(ATP)で行われたテスト走行において最高速度438.7km/hという数値を叩き出した。 今回、その記録が正式に世界最速の電動ハイパーカーとしてギネス世界記録に認定されたと発表された。 じつは、アスパーク・アウルがEVにまつわる世界記録の歴史に名を刻むのは今回が初めてのことではない。2023年5月には、「停止状態から200メートル」「停止状態から400メートル」時点での平均速度においてそれぞれ309.02km/h、318.85km/hをマークし、ギネス世界記録に認定されている。 これを受けて、アスパークの吉田眞教CEOは次のようにコメントしている。 「私たちがハイパーカー・アウルの開発を始めてから約10年が経ちました。私たちは世界最速の加速性能を持つクルマを目指し、そして今日、アウルSP600で世界最高速度記録に挑戦し、達成しました。この技術力は、関係者全員に個人の卓越性を鼓舞し、将来に向けて飛躍的な挑戦と成長を促すでしょう」 アスパークにとっては、今回の世界記録は通過点にすぎないというわけだ。常にEVハイパーカーに革新をもたらしつづけると豪語するアスパークから、今後も目が離せない。

TAG: #EVハイパーカー #アスパーク #ハイパーカー
TEXT:高橋 優
メルセデス・ベンツは中国市場の「高級EV」で苦戦! EクラスやSクラスの顧客がファーウェイに奪われている

高級車セグメントの販売が減少 メルセデス・ベンツの最新の決算内容とEVシフトの進捗動向が判明し、販売台数、収益性、EVシフトという観点で減速が目立つ厳しい動向が判明しました。 まずメルセデス・ベンツは、2024年初めに、当初掲げていた2030年までの完全バッテリーEVシフトの目標を取り下げており、今後どのようなEV戦略を採用するのかに注目が集まっていました。そして、そのような背景のなかで、2024年第三四半期の決算内容が発表されました。まず、メルセデス・ベンツの乗用車セグメントとバンセグメントを合計した、グループ全体のグローバル販売台数は59万4673台を達成。ところが前年同期比で3.4%のマイナス成長と、やはり2024年の後半に突入しても販売ボリュームの減少トレンドが続いています。 さらに問題であるのが、グループ全体の売り上げが第三四半期単体で345億2800万ユーロと、前年同期比で7.2%のマイナス成長に留まっている点です。つまり、販売台数以上に売り上げが減少しており、販売単価の減少が推測可能です。 実際に、Q3でもっとも販売に苦労したのがSクラスやGクラス、AMG、そしてマイバッハが該当する高級車セグメントです。販売台数も6.2万台弱と、前年同期比で12%のマイナスです。さらに、2024年通しの9カ月間で見ると、前年同期比で19%のマイナス成長。2024年に突入してから、メルセデスの収益性を支える高級車の販売状況が芳しくない様子が見て取れます。 次に、メルセデス・ベンツの収益性を詳細に見ていきましょう。まず直近のQ3の粗利益率は17.99%と、2021年以降で最低の四半期となりました。2022年Q3は23.28%、2023年Q3は21.6%、そして今回の18%弱と断続的に粗利が低下しています。おそらく粗利を稼ぎやすい高級車の販売台数が減少していることが影響していると推測できます。 また、販売管理費や研究開発費を除いた営業利益という観点も、Q3は7.29%と、2022年Q3は13.78%、2023年Q3が13.02%であり、急速に収益性が悪化しています。 この営業利益に影響する研究開発費について、売り上げに占める研究開発比率がQ3は4.87%と、この数年間で最高水準を計上しています。他方で、9カ月間通しの研究開発費と比率は、前年と比べて横ばいであり、研究開発費が大幅に増加したことが営業利益を圧迫したとはいえません。 また、販管費はこの9カ月間でわずかに低下しており、これは人件費の削減が理由であると説明されています。つまり、何がいえるのかといえば、今回、なぜ収益性で大きく落ち込んでしまっているのかというと、研究開発費や販管費が大きく増加したことが要因ではなく、やはり販売台数の減少、とくに高級車という利幅の大きいモデルの販売が落ち込んでしまったことが原因なのです。

TAG: #決算 #販売
TEXT:御堀直嗣
まだ多くの日本人が知らないEVの「走る以外」のメリット! 東京都なら実質約3万円で設置できる「VtoH」とは

VtoHは災害のときなどに役立つ 電気自動車(EV)を買うとき、よい機会なのでVtoH(ブイ・トゥ・エイチ)も同時に導入したいという人もいるだろう。 たとえば、日産サクラ/三菱eKクロスEVのような軽自動車でも、車載のリチウムイオンバッテリーは20kWhの容量がある。一般的な家庭で日々使う電力は、およそ10kWhなので、2日分の電力を車載していることになる。 ちなみに、太陽光発電を自宅の屋根に設置し、そのためのバッテリーを併設する際の容量は、およそ10kWhなので、その2倍の電力をもつともいえる。 さらに、登録車の日産リーフなら、標準車種で40kWhのリチウムイオンバッテリーを車載するので、家庭で使う4日分の電力量に相当する。 大地震のような災害でなくても、大型台風の上陸や、線状降水帯をともなう豪雨などが身近になり、それらによる停電もまれなことではなくなりつつある。その際、EVを所有し、VtoHを設置していれば、ただ電灯をともせるだけでなく、スマートフォンの充電はもとより、冷蔵庫の冷凍食品を無駄にすることなく、またシャワーなどの湯沸かし器でも電気でスイッチが入る仕組みであったりするので、家で電気が使えることの有り難みは計り知れない。 では、VtoHの導入は、どれくらいの費用がかかるのか? 設置台数で高い実績を持つ日本のニチコンを例にすると、家庭用のパワー・ステーションは、128万円である。これまで、その機器は家庭用空調の室外機ほどの大きさがあったが、現在では大幅に小型化され、取り付け場所をあまり選ばなくなっている。また、自宅に設置した太陽光発電との連携もできるようになっている。

TAG: #VtoH #自宅充電 #費用
TEXT:TET 編集部
悲願の「全固体電池」が実現間近! ホンダが2020年代後半の量産開始を目標にしたパイロットラインを初公開

夢のようなバッテリー「全固体電池」が現実になろうとしている 「EVの普及には全固体電池の実現なくしてはありえない」という意見を目にしたことはないだろうか。 全固体電池には従来のバッテリーに内蔵されているような液体電解液が無い。代わりに正極(+)と負極(ー)の間には固体電解質が挟み込まれるように設置されることにより、それがセパレーターの役割を担って従来のバッテリーよりも高い温度域での安定性に優れる。さらに、高いエネルギー密度による省スペース化や大容量化が期待できることから、EVの航続距離や充電時間に対する抜本的改善策として、早期の実用化が期待されているからだ。 よって、全固体電池の実用化、そして量産化が、真の意味でのEV普及を後押しすると考えられ、自動車メーカー各社がいま鎬を削るようにして開発を進めている。 ホンダが量産前に製造工程を確認するパイロットラインを初公開 その全固体電池の量産化に向けて独自に研究開発を進めているホンダが、先ごろ栃木県さくら市の本田技術研究所(栃木Sakura)の敷地内に建設したパイロットラインを初公開した。 このパイロットラインは、量産で必要な一連の生産工程を再現したもの。延床面積は約2万7400平方メートルの広大なもので、投資額は約430億円にのぼるという。電極材の秤量・混練から、塗工、ロールプレス、セルの組み立て、化成、モジュールの組み立てまでの各工程の検証が可能な設備を備えている。 ラインは2025年1月から稼働を開始し、バッテリーセルの仕様開発と並行しながら、各工程の量産技術や量産コストなどの検証を行うことが発表された。 本田技術研究所の代表取締役社長である大津氏は「全固体電池は、EV時代におけるゲームチェンジャーとなる革新的な技術です。これまでクルマの進化を支えてきたエンジンに代わり、電動化のキーファクターとなるのがバッテリーであり、その進化こそがHondaの変革のドライバーになると考えています」と全固体電池の重要性を説く。 続けて、「全固体電池パイロットラインの稼働にめどがついたことは、日本およびHondaにとって重要なマイルストーンであるといえます。Hondaは、全固体電池を搭載したモビリティを早期に世に出し新たな価値をお客さまに提供するべく、引き続きチャレンジを続けていきます」と、このパイロットラインが自社だけでなく日本の自動車産業にとって大きな一歩であることを強調している。 効率性とコスト競争力を追求した生産プロセス ホンダがパイロットラインで行う全固体電池の生産プロセスは次の通りだ。 従来の液体リチウムイオン電池の製造プロセスをベースにしながら、全固体電池特有の工程となる固体電解質層の緻密化に寄与し、連続加工が可能なロールプレス方式を採用する。これにより電極界面との密着性を高め、生産性の向上を目指すとしている。 さらに、正極と負極の一体化を含む一連の組み立てプロセスを集約し、高速化を図ることにより、1セルあたりの製造時間の大幅な短縮も並行して進められる。また、作業の安全性や電池性能の確保に必要な、低露点環境を最小化する生産管理技術を構築するなど、使用電力をはじめとした間接コストの低減にも取り組んでいるという。これらにより、高効率な生産プロセスを構築することで、コスト競争力を高めるとしている。 また、ホンダの場合は全固体電池を四輪車に用いるだけでなく、二輪車や航空機など自社が手がけるさまざまなモビリティに適用を広げることで、そのスケールメリットを生かしたさらなるコストの低減が期待できる。すなわち、高効率かつ安全性の高い全固体電池を搭載したモビリティを、現実的な価格帯で我々が享受できる可能性が高まるということだ。 ホンダはこのパイロットラインで量産に向けた製造検証を重ね、2020年代後半の量産開始を目指すとしている。そう聞くとあと数年内に本当に夢のバッテリーともいわれた全固体電池が、そのような短期間で生産プロセスまで確立できるのかと疑いたくもなる。 しかし、ホンダは電池の材料や仕様を決定する以前から生産技術部門が開発に参画することで、車両への搭載に適した構造や材料、製造方法などを定め、スピーディかつ効率的に意思決定がなされているという。これにより、早期にパイロットラインの立ち上げを実現できたほか、材料の選定などを効率的に進めているのだ。それには、これまでにも太陽電池や燃料電池など、新たな技術を量産につなげてきた知見と実績が活きているのだとか。 それならば、2020年代後半の量産開始も実現可能な目標と思えてくる。なにしろホンダは2040年までにEVとFCEVの販売比率をグローバルで100%としたうえで、2050年までにすべての製品と企業活動を通じてカーボンニュートラルの実現を目指しているのだから、待ったなしで速度感のある開発が求められている。 ホンダ自身がいう通り、この全固体電池の量産に向けたパイロットラインの稼働開始は、変革中の自動車産業にあって大きな意味を持つマイルストーンだ。トヨタや日産も2027~28年頃の量産開始を目標として、こうした設備を設置していることがすでに明らかにされているが、ホンダも公開したことでいよいよ全固体電池の量産化が目前にまで迫ってきたと感じられる。 今後ますます全固体電池の実現に向けた動きから目が離せない。

TAG: #ホンダ #全固体電池 #本田技術研究所
TEXT:山本晋也
「タイヤの摩耗が早い」「買い取り価格は期待できない」EVにまつわる巷のウワサ6つの真実

EVのタイヤにかかる負荷は大きい 中国では新車販売におけるEV(電気自動車)の比率は30%前後となっている。つまり、EVは珍しいものではなく、ユーザーも正しくEVの機能や性能を認識し、使い方についての経験値も高まっていると想像できる。一方、日本におけるEVのシェアは3%前後であり、EVとのカーライフを肌感で認知しているユーザーは圧倒的に少数派だ。 そうした状況だからなのか、日本ではEVに対してさまざまなウワサが流されていると感じる。はたして、それは真実なのだろうか。ここでは、以下に記す6個のウワサについて考察していこう。 1)EVは暑い・寒いと充電ができない? エンジン車とEVにおける最大の違いとなるのは、EVは走るために充電が必要という点だろう。日常的に利用する充電としては、自宅や職場で行う基礎充電(大半が普通充電)と道中で電気を足す経路充電(急速充電を想定)に大別されるだろうが、とくに後者の急速充電については多くの誤解があると感じる。 残念ながら急速充電器と車両の相性という問題もあるし、バッテリーの状態(充電量や温度)によって電気の入り方が異なるという特性もある。そうした特徴を単純に表現すべく、「暑くても、寒くても、期待どおりに充電できない」というウワサが広まっているようだ。 このウワサについては、大筋ではイエスといえる。たしかに、バッテリーがベストの充電性能を発揮するには外気温の影響は無視できない。適温の範囲はモデルによって異なるが、暑すぎても、寒すぎても充電が進みづらい傾向が出てくるのは事実だ。ほかにも連続走行の直後にはバッテリーが熱くなりがちで、高速道路のSAなどで急速充電器につないでも期待通りの充電性能が出ないこともある。 ただし、最近のEVでは水冷などによりバッテリー温度を適温にコントロールする機能が備わっていることが多く、そうした機能を持たない初期のEVで起きたような外気温の影響を受けづらくなっているのも、また事実だ。 2) タイヤの減りがエンジン車より早い EVはタイヤの消耗が早く、数か月で交換するハメになる……というウワサはアメリカのメディアによって広まったと記憶している。たしかに、テスラの上級グレードなどハイパフォーマンスをウリにしているEVで、その加速性能を味わっていれば、タイヤの減りは早い傾向にあるだろう。ただし、エンジン車であっても、ハイパフォーマンスカーで全開加速を楽しみすぎれば同様にタイヤの減りは早くなるわけで、EVに限定した話とするのは疑問もある。 一方、EVは多量のバッテリーを搭載するため、同じ車格であれば重量増になりがちで、そのウエイトがタイヤ消耗を早めているという指摘も目にするところだ。たとえば、日産の軽自動車EV「サクラ」の重量は1070〜1080kgで、タイヤサイズは155/65R14。同じく日産の軽自動車でボディ形状が似ている「デイズ」の重量は840〜880kg(FF)、タイヤサイズは155/65R14と165/55R15が設定されている。車重が25%程度重く、それでいて同等サイズのタイヤを履いているのだからタイヤに対する負担は大きく、消耗が早くなるという指摘は妥当といえる。 もっとも、軽自動車というカテゴリーにおいて全開加速を楽しむようなユーザーは少数派であろう。エンジン車に対してEVのほうがタイヤは消耗しやすい傾向にあるだろうが、数カ月でスリップサインが出てしまう、というウワサは現実味を欠いていると感じる。 3) 急速充電をしまくるとバッテリーは劣化する 現在、市販されているEVの多くはリチウムイオン電池を使っている。EV用に限らずリチウムイオン電池には充電回数によって劣化が進む特性がある。また、同じ充電であっても、急速充電のほうが普通充電よりバッテリーに負担をかけ、劣化を進めてしまうというのも否定できない事実だ。 そのため、経路充電を多用するとバッテリーは傷みがちとなる。古くからのEVオーナーからは、基礎充電をメインで運用すべきというアドバイスを聞くこともあるが、性能維持を考えれば、先人の知恵は素直に聞き入れるべきだろう。

TAG: #カーライフ #所有

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試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
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イベント
公道レース「フォーミュラE東京」が帰って来る! チケットを持っていなくとも無料で1日遊び尽くせる2日間
災害に備えて未来を楽しむ! 「AWAJI EV MEET 2025」の参加はまだまだ受付中
災害時にも活躍できるEVの可能性を淡路島で体験! 「AWAJI EV MEET 2025 from OUTDOOR FEELS」開催決定
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