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急速充電器側のエラー問題が発生! 日産アリアNISMOで1000kmを走行してみた


TEXT:高橋 優 PHOTO:EV NATIVE/THE EV TIMES
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テスラとは大きな差がついた

4) 湾岸長島PA上り→浜松SA上り(150kW級急速充電器)

・走行距離:110.8km
・消費電力量:51%→14%
・平均電費:4.2km/kWh(238Wh/km)
・外気温:24℃→24℃
・充電セッション:14%→59%(25分)

浜松SAまでは雨の降り方が強まり、一部120km/h区間もあるため電費が悪化しています。ところが問題は、150kW級で充電エラーが発生してしまい、何度か接続をやり直すという状況が発生した点です。なんとか15分間のブーストを終えて再度充電セッションをやり直そうとすると、何度も充電エラー表示となり充電することができなくなりました。よって隣の90kW級である青いマルチで充電をする羽目になり、想定以上に充電時間を要してしまったわけです。

充電中の日産アリア

じつは充電器検索サイトの利用口コミを確認すると、私以外にも、この浜松SA上りのABB製150kW級では充電エラーが多数報告されているため、どうやらアリアNISMOの問題ではなさそうです。

5) 浜松SA上り→駿河湾沼津SA上り(150kW級急速充電器)

・走行距離:115.8km
・消費電力量:59%→12%
・平均電費:3.3km/kWh(303Wh/km)
・外気温:23℃→25℃
・充電セッション:12%→20%(4分)

最後の充電スポットは1000kmチャレンジ終了直前の駿河湾沼津SA上りの150kW級です。浜松で予期せぬ充電エラーによる充電セッションの途中切り上げを余儀なくされたことで、4分間だけ充電を行いました。ちなみにこのABB製150kW級急速充電器は充電エラーを起こしていた浜松SA上り線と同じ機種であることから、アリアNISMOとの相性問題ではなく、あくまでも浜松SA上り線のにあるABB製150kW級急速充電器特有の事象であることは間違いありません。

充電中の日産アリア

また、大雨と120km/h区間のみということもあり、行きよりも電費が悪化しています。

6) 駿河湾沼津SA上り→海老名SA上り(ゴール)

・走行距離:75.8km
・消費電力量:20%→0%
・平均電費:4.7km/kWh(212.8Wh/km)
・外気温:25℃→26℃

海老名SA直前で走行距離1000kmを達成しました。海老名SAには充電残量0%で到着。

日産アリアのモニター

この海老名SA到着時点での充電残量が少なければ少ないほど、最後の充電時間を短縮することができるわけですので、綿密な充電残量コントロールが求められるわけです。その意味においては完璧な充電残量コントロールを達成できたといえそうです。

スマホの表示

※海老名到着後OBD2経由でバッテリー状況を確認すると、充電残量2.86kWhの表示。アリアB9ではメーターSOC0%表示でも約4.5kWhほど残っているので、日産はアリアに対して安全マージンをかなり取っていることになります。

トータルの所要時間は11時間1分と、私がこれまで行ってきた1000kmチャレンジの検証のなかでは平凡な記録となりました。他方で注目するべきは、数カ月前に検証していたアリアB9 e-4ORCE Limitedが15分ほど早いタイムで到着していたという点です。

テスト結果

まず、全行程における平均電費が233Wh/kmと、Limitedの213Wh/kmと比較しても悪化しており、パフォーマンスタイヤの装着、および大雨の影響による転がり抵抗の悪化が要因として考えられます。充電性能では同じなものの、そのぶんだけ余分に充電しなければならないわけです。

また、競合車種であるテスラ・モデルYロングレンジは10時間1分を記録しています。この検証では、今回と同じく大雨だったこともあり、かなり似たようなコンディションでした。ところが電費の差が歴然であり、スーパーチャージャーの高性能さも相まって、充電時間で1時間以上もの差がついてしまっています。

そして、今回のアリアNISMOの検証を通して感じたのが、公共の急速充電ネットワークの不安定さです。というのも、現在設置されている150kW級(=350A級)の急速充電器のほとんどが、2台同時充電可能な仕様です。湾岸長島PA上り線のように、先客のEVがいた場合、もしくは後発のEVが充電を始めてしまった場合、最大でも90kW級(=200A)に制限されてしまいます。充電をスタートした段階では350Aを発揮していたのに、SAの施設内で休憩して充電器に戻ってみると、期待したとおりの充電ができていなかった、なんてケースが考えられるわけです。

さらに問題なのが充電料金でしょう。現在、eMPは時間制課金を採用しており、150kW級で充電しようが90kW級で充電しようが充電料金は同じです。コストを意識すれば、150kW級で充電したいのがユーザー心理というもの。途中で充電出力がシェアされるとコスパが悪くなり、ユーザーの不満が高まるのも無理はありません。

その上、浜松SA上りで発生した充電エラーも気になるところです。確かに浜松SAには合計7基の急速充電器が設置されているので、充電できないという心配は少ないでしょうが、充電エラーが発生した際に、eMP側がしっかりとデータを収集して、車両側の問題なのか、それとも充電器側の問題なのかを判断。仮に充電器側に問題があるのであれば、迅速にエラーを改善するというサイクルを進めていってほしいと感じます。

いずれにしても、今回の検証に使用したアリアNISMO B9 e-4ORCEはオプション込み込みで1000万円を優に超えてくる超高級車です。やはり超高級EVであれば、充電エラーなどを気にすることなく、快適な長距離走破性能を期待するのは当然のこと。その意味において、充電エラーや競合車種と比較した電費性能の低さについては、やや残念な結果に終わったと結論づけることができるでしょう。

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