車種別販売台数ではBYD車がトップを独走
つまり、中国市場における日産というのは、あくまでもシルフィ一本足打法であるといえるわけです。裏を返せば、このシルフィの販売台数を死守できなくなり始めることが、中国市場におけるシェア崩壊に直結。よって、複数の人気車種を有するトヨタやホンダと比較しても、日産は現在、中国で極めて危ない橋を渡っているといえるわけです。
そして、この日産に関して厳しい市場動向というのが、第二の懸念点でもあった、シルフィ一本足打法にイエロー信号が点り始めているという点です。そもそもシルフィの販売台数は、この5年間ほどの販売動向を追ってみても、徐々に販売規模が縮小傾向にありました。ところがこのシルフィは、現在断続的な値下げを行っている状況です。2024年5月の最新状況では、ガソリンモデルのエントリーグレードの場合、じつに3.88万元もの値引き措置を行い、日本円で154万円で発売されている状況です。これほどの値引き措置を行って、なんとか販売台数の減少スピードを抑えているといえます。
そして、その大幅値引き措置の決定に大きな影響を与えているのが、大衆セグメントの王者、BYDの大衆セダンQin Plusの存在でしょう。このQin Plusについては、2月からHonor Editionという2024年モデルを発売。EV航続距離46kmを実現するPHEVであるにもかかわらず、なんと8万元未満、日本円で176万円から発売されている状況です。
すでに車種別販売台数という観点では、Qin Plusがトップを独走中。また、日産シルフィのすぐ後を追う3番手に、Qin Plusの兄弟車であるDestroyer 05もランクイン。つまり、これまで大衆セダンの王者に君臨していたシルフィに関しては、Qin Plusに王者を奪われるだけではなく、Destroyer 05と挟み撃ちされてしまっている状況です。
わかりやすいように、それぞれの兄弟車、たとえばトヨタでいうところのカローラとレビン、ホンダでいうところのシビックとインテグラの販売台数を合計したグラフを見てみると、BYDが大衆セダンセグメントに与えている影響の大きさが見て取れるでしょう。
そして、いよいよ日産シルフィをはじめとする既存メーカーの大衆セダンにトドメを指す存在というのが、BYDの最新セダンであるQin L、および兄弟車であるSeal 06の存在です。第5世代のPHEVシステムを搭載したことによって、PHEVとしての完成度がさらに向上しています。
5月末から発売がスタートしているQin LとSeal 06が販売台数を伸ばしていくと、値引き措置で販売台数を維持していたシルフィが、さらに苦しい局面を迎えることは間違いないでしょう。シルフィ一本足打法のジリ貧の戦いの未来が目に見えているわけです。
日産は中期経営戦略上、2026年度までに中国国内の販売台数をむしろ増やすとしていますが、私は最新市場動向をまったく無視した、あまりにも楽観論であると感じます。
果たして、BYDのQin LとSeal 06の登場によって、日産シルフィの販売動向に何が起きるのか。シルフィ一本足打法の日産全体の販売動向に何が起きるのか。今回の中国国内の車両生産工場の閉鎖の流れに不安を抱かずにはいられません。