コラム
share:

電気自動車は儲からない……は過去の話! EVシフトを急速に推し進める「ボルボ」にみる「収益性の改善」


TEXT:高橋 優 PHOTO:EV NATIVE/THE EV TIMES
TAG:

いまやテスラ・モデルYに次ぐ人気を誇るボルボEX30

そして、それ以上に驚くべきは、その収益性という観点です。まずボルボについてはEVシフトを宣言していることから、全体の収益性だけではなく、バッテリーEVに絞った収益性も公開しています。

ボルボのBEVの収益性のグラフ

この四半期別の粗利益率の変遷を見てみると、このとおり2022年後半以降、急速に収益性が悪化しています。これはバッテリーの原材料であるリチウムなどが急騰したことが背景として存在するものの、他方で、2023年Q2を底として、バッテリーの原材料価格の高騰が落ち着きを見せ始めたことも相まって、収益性が急速に改善しています。

2023年Q4については13%にまで回復させることができているものの、バッテリーEV以外の収益性を見てみると26%と、まだまだ内燃機関車との収益性に差があるように見えます。

ボルボのBEVの収益性の表

※BEVとそれ以外の粗利益率の差は減少。BEVで稼ぐ力が高まっていることを示しています。

しかしながら、24年Q1に関しては、その収益性をさらに改善し、バッテリーEVでは16%もの粗利益率を実現。内燃機関車は25%の収益性であるものの、そのなかでもEX30のみの粗利益率については、Q1で15-20%を実現していると説明されています。したがって、生産体制が最適化されていくQ2以降については、EX30の収益性がさらに改善して、バッテリーEV全体の収益性がさらに改善する余地が残されています。

さらにその上、内燃機関車についてはXC90であったりV90など、高級車セグメントがすべて含まれているものの、バッテリーEVのラインアップについては、現在EX40、EC40、そしてEX30という、ボルボのなかでのエントリーモデルしかラインアップしていないことから、この2024年Q2以降に順次納車が進んでいく、中国市場におけるEM90、およびグローバル全体でラインアップされるEX90の存在によって、バッテリーEV事業全体の収益性は、さらに改善することは間違いありません。

ボルボEX90の真正面フロントスタイリング

※EX90

ちなみに、バッテリーEVのみを発売しているテスラについても、2024年Q1の粗利益率は15-20%の間で推移していることから、すでにボルボについてはテスラレベルの粗利を確保できているという意味で、じつはバッテリーEVシフトと収益性のバランスの確保をうまくコントロールしているといえるわけです。

そして、それを可能としている存在というのが、とくにジーリーグループ全体でEV専用プラットフォームを共通化しながら、さらに、中国の生産工場で兄弟車であるスマート#1であったりZeekr Xを同時生産しているという、EX30の存在であるわけです。

ボルボEX30のフロントスタイリング

また、ボルボの投資におけるタイムラインについて、現在まさに、完全EVシフトに向けた研究開発の真っ最中の期間であると指摘されています。具体的にはメガキャスティングであったり、新世代モーター、およびCell to Bodyといった最新テクノロジーであり、とくにその次世代テクノロジーがすべて盛り込まれる、2026年中に発売予定のXC60のEVバージョン、おそらくEX60と名付けられるミッドサイズSUVの発売を境に投資額は落ち着きを見せ始めて、営業利益という観点でも最大化を図ってくると説明されています。

ボルボのEV計画のグラフ

いずれにしても、2030年までの完全EVシフトに向けて、ボルボの収益性はかなりいい結果が出てきているように見えるわけです。

ボルボについては、日本国内でも発売をスタートしているEX30の人気がグローバル全体で好調であり、とくにお膝元である欧州市場においては、月間ベースでベストセラーEVであるモデルYに次いで人気のEVに君臨する勢いであることからも、Q2以降の販売台数には注目です。

ボルボEX30のインテリア

もちろん、私自身もおすすめしている通り、我々日本市場における販売動向については、そのコンパクトなサイズ感も含めて期待していきたいと思います。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
中国から地球上最強コスパの新星EV現る! IMモーターL6の驚くべきスペックとは
BYDの売り上げ鈍化に注目しても意味なし! むしろ心配すべきはテスラか? BYDは利益率も投資額も驚くべき水準だった
いすゞがピックアップトラック「D-MAX」にBEVを用意! バンコク国際モーターショーでワールドプレミア予定
more
ニュース
日産からセダンのEVが出るぞ! 中国向け車両「N7」を初公開
過酷なダカールラリーで排気量998㏄の「水素小型エンジン」を鍛える! HySEが2025年の参戦を発表
コレクターズアイテムになること間違いなし! 「FIAT × ルパン三世」のクリスマスコラボプレゼントを実施中
more
コラム
自宅で充電できないけどEVを買う人が増えている! ただしいまのインフラ状況だと「セカンドカー」で乗るのが正解
充電が無料でできる施設は税金のムダ遣い? 地方自治体の取り組みの是非を考える
EVの走りはむしろ好き! エンジン車も同時に所有! それでもEVライフを終了した理由をオーナーが激白
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】二度見必至の存在感は普通のコナとはまるで別モノ! イメージを大きく変えたヒョンデ・コナ「N Line」に乗って感じたマルとバツ
ボルボEX30で11時間超えの1000km走行チャレンジ! 課題は90kWまでしか受け入れない充電性能
EV専業の「テスラ」とEVに力を入れる従来の自動車メーカー「ヒョンデ」! モデルYとコナを乗り比べるとまったく違う「乗りもの」だった
more
イベント
外からもまる見えな全面ガラスドアも高齢化が進む地域のモビリティとして最適!? タジマの超低床グリーンスローモビリティ「NAO2」が斬新すぎた
EVはレアメタルが詰まった都市鉱山! CEATEC2024でBASC展示が提唱するサーキュラーエコノミーというバッテリーとは
畳めるバイク! 階段を上り下りできるカート! 自由な発想のEV小型モビリティが作る明るい未来を見た!!
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択