「The Arc」の実現はバッテリーの進化があってこそ
次に、そのPHEVを3車種も投入していく中国市場については、バッテリーEVも含めた新エネルギー車を合計8車種投入する方針です。いずれにしても、この3年間で8車種のバッテリーEVとPHEVを投入し、EVシフトを加速させるわけです。
そして、この中国市場の戦略について重要なのが、そのEVシフトを進めることで、現状の販売規模から20万台ほど販売規模を拡大し、2026年度における販売台数を100万台に増加させる目標を打ち出しながら、2025年中にも、中国国内で生産された車両の輸出をスタートし、年間10万台レベルを目指すという点です。いずれにしても、このレッドオーシャンと化している中国市場において、日産が販売台数を大きく伸ばそうとしているわけです。
また、日本市場については、5車種の新型車を投入する方針を表明しているものの、具体的にどの電動車を投入するのかという点は不明です。確定しているのは、そのうちの1車種がバッテリーEVである次期型リーフであるという点です。
投入予定車種のティザー映像において、軽自動車セグメントの車両とミニバンタイプの車両が確認可能です。さらに、おそらくアリアの存在も確認可能であることから、サクラとアリアのフルモデルチェンジバージョン、および新型ミニバン(エルグランド?)の4車種は確定なのではないかと推測可能です。
そして、これらの電動車をはじめとする30車種もの新型車を投入することによって、2023年度と比較して、2026年度でグローバル全体で100万台もの販売台数増加を目指そうとしてきています。
次に、EVシフトにおいて重要なバッテリーについて、まず2030年度までに、中国のCATLやAESC、SUNWODAなどと協業して、グローバル全体で135GWhというバッテリー生産能力を確保します。
そして、バッテリー開発についても、既存の三元系バッテリーに加えて、LFPと全固体電池という使い分け戦略を採用します。
まず、三元系バッテリーに関しては、アリアに搭載されるバッテリーと比較して、2024年度ではエネルギー密度と急速充電時間を10%ずつ改善しながら、2028年度までにそれぞれ50%ずつ改善することで、3列シートを搭載する新型EVから採用予定です。
さらに、日本国内で開発生産されるLFPについては、日産サクラと比較して30%ものコスト削減を可能とし、2028年度から軽自動車セグメントのEVに搭載予定です。
そして、全固体電池に関しては、これまでのタイムラインから変更することなく、2024年度中にパイロット生産ラインを稼働させ、2028年度中に新型EVに搭載する目標を堅持してきました。いずれにしても、既存の三元系を継続的に改良しながら、LFPと全固体電池を、それぞれの用途に合わせて使いわけるということになります。
バッテリーのコスト低減をはじめとして、3-in-1によるパワートレインの一体化、アライアンスを活用した開発効率の向上によって、2030年度までに生産する次世代EVについては、アリアと比較して30%もの生産コストを削減見込み。よって、内燃機関車と同等の生産コストを実現することで、コスト競争力の高いEVを、収益性を確保しながらラインアップ可能になると説明しています。
逆に裏を返すと、現在アリアの生産コストというのは、同セグメントの内燃機関車と比較しても3割ほど高止まりしてしまっている状況であるともいえそうです。