かつてのコンセプトとデザインをEVになっても完全踏襲
原付一種は電動化により便利な新モビリティに生まれ変わる
【THE 視点】スズキは、「ジャパン・モビリティ・ショー2023」<東京ビッグサイト(東京都江東区)/10月26日〜11月05日>への出展概要を発表した。四輪・二輪の各分野でEVを展示し、特に二輪においては、かつて格安原付として販売した「チョイノリ」をEV化した「e-チョイノリ」の展示が予告された。
出展テーマは「世界中に、ワクワクの、アンサーを」とし、「将来のカーボンニュートラルにむけたスズキの多様な取り組みを、スズキらしいモビリティやサービスでお客様にお届けする」というもの。ブース内では、四輪・二輪車のコンセプトモデルをはじめ、次世代モビリティや船外機なども出展・提案する。
出展車両のなかで特に気になったのは、かつて低価格で人気のあったスクーター「チョイノリ」のEV版である「e-choinori(イーチョイノリ)」だ。
「チョイノリ」は2003年1月に発表され、国内生産にも関わらず5万9,800円という圧倒的低価格を実現した原付一種(50cc)のスクーターだ。廉価な分、ボディパネルといった装備類は最小限に抑えられたため、パイプフレームが剥き出しのスタイルだったのだが、それがかえって個性を際立たせていた。
「e-チョイノリ」は、アシスト自転車の電動ユニットを採用するなど、販売実現時には低価格を期待出来るモデルだ。パナソニックサイクルテックの電動アシスト自転車のバッテリーと駆動ユニットを使用し、原付一種相当のパッケージに仕上げた。
実は9月15日、スズキは、パナソニックサイクルテックと新モビリティの共同開発を発表していた。その答えの一つがこの「e-チョイノリ」というわけである。
さらに嬉しいのはデザインの完全踏襲である。個性的なカウルや車体構造を大きく変えることなく踏襲。当時のコンセプトもそのまま、誰でも気軽に近距離移動ができるモビリティとして提案される。ちなみにバッテリーも電動アシスト自転車のバッテリーが採用されているので、取り外しや交換が可能と予想している。
第一種原動機付自転車(原付一種)は、排ガス対策などで、どんどんラインアップが削られ高価格となり、さらに原付二種(125cc)に主導権を譲るような構図になっている。しかしEV化でモーター特有の高トルク性能が活かされるため、原付一種でも日常の足として耐える性能とコストパフォーマンスを持つものに仕上がっていると期待できる。「e-チョイノリ」は是非とも市販化してほしいものである。
スズキのはこのほかにも、「e-チョイノリ」と同様にパナソニックサイクルテックと共同開発した折り畳み式電動モペッド「e-PO(イーポ)」(原付一種相当)、交換式バッテリーシェアリングサービスの「ガチャコ」を採用し実証実験中の原付二種の電動スクーター「e-BURGMAN(イーバーグマン)」、市販モデル「バ―グマン400 ABS」に高圧70MPaの水素タンクと水素エンジンを搭載した「バーグマン」、湖西工場での水素燃料電池荷役運搬車実証のパネル展示を行なう。
さらに、電動の船外機「スモール・e-アウトボード・コンセプト」や電動パーソナル/マルチユースモビリティ「スズ-ライド/スズ-カーゴ」、電動新モビリティ「スズキ・ゴー!」、ラストマイル配送ロボット「LM-A」、そしてスカイドライブと共同開発している「空飛ぶクルマ」も持ち込む。
四輪車は、今年1月にインドで開催された「オート・エキスポ2023」で発表した「eXV」、軽ワゴンEVの「eWX」、そして軽商用EVバン「eエブリィ・コンセプト」を出展する。
「ジャパン・モビリティ・ショー」でのスズキのブースは四輪・二輪ともに、魅力が満載である。
(福田 雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)
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デイリーEVヘッドライン[2023.10.05]