1000万円超のEVを2時間で1万台以上販売
さらに注目すべきは、高級を再定義するようなインテリアの充実装備内容です。インテリアにクリスタルを散りばめるという従来の高級感も取り入れながら、まずはEVならではの車内空間の広さを確保、1列目、2列目、そして3列目についても例外なく、競合の内燃機関車を上まわる広さを確保しながら、2列目を極限までリクライニングさせ、さらに1列目を完全に折り畳むことによって、2列目の空間は最大1995mmにまで拡大。
これはトヨタ・アルファードの1613mmをはるかに上まわる広さを確保しており、まさにミニバンを上まわる車内スペースとなっているわけです。
ちなみに、1列目の両座席を完全に折りたたむことによって車中泊にも対応可能であり、2列目用の32インチもの巨大なシアタースクリーンも搭載されていることで、大画面で映画を鑑賞しながらくつろぐことすら可能です。
さらに、全座席に対してディスプレイを搭載することで好みのエンタメを個別に楽しむことが可能です。しかも全座席、それぞれ音声認識に対応させていることからどの座席の人が話しかけているかを認識し、ディスプレイの表示変更やエアコンの調整などをそれぞれ個別でコントロールすることすら可能となります。
そしてなんといっても、これらのインフォテインメントシステムをHarmony OS上で起動させることで、ファーウェイのスマートフォンとのシームレスな連携が可能です。それこそスマホで見ていたエンタメであったりネットの検索をスワイプすることで、車両のディスプレイ上に共有できます。このHarmony OSを採用しているという点も、M9の大きな訴求ポイントになっています。
さらに、このM9について特筆すべきは自動運転システムです。ファーウェイの独自システムであるHuawei ADS2.0を搭載することで、高速道路上における追い越しや分岐を含めた完全な自動運転支援を可能にしながら、市街地における、信号、右左折、ラウンドアバウトなどをすべて含めた、あらゆる走行シチュエーションにおける自動運転支援にすら対応可能です。
何よりもこのADS2.0については、高精度マップに依存しないシステムであることも相まって、2023年末時点で中国のすべての地域において、高速・市街地関係なく利用可能になっているという、実用性の観点でも現状中国最強との呼び声が高いわけです。
そして、このM9の登場によって、まさに顔面蒼白となっているのがドイツ御三家たちです。とくにAITO M9のガチンコの強豪となる、BMW iX、およびメルセデス・ベンツEQS SUVとというドイツ御三家のフラグシップEVは、電費性能で負け越しているうえ、充電性能についてもいまだにドイツ勢は800Vシステムを採用できずに大きな差がついてしまっています。
そしてM9については、バッテリーEVバージョンで1017万円からのスタート、レンジエクステンダーの場合は937万円からのスタートとなっています。一方、iX xDrive50は1690万円、メルセデス・ベンツEQS SUV 450 4MATICは1817万円からで、コスト競争力でもまったく勝負になっていません。
もっとも問題なのは、このiXやEQS SUVなどは月間数百台という販売台数に低迷してしまっていることで、iXについては450万円以上、EQS SUVについては550万円以上という驚きの値下げを断行している状況でもあります。よって、すでに実質的にはM9と同じような値段設定であるにも関わらず、それでも販売台数が伸びてこないというピンチを迎えているわけです。
実際にM9の正式発売後については、M9が展示されているファーウェイストアが、その見学のために人でごった返す様子がSNS上で拡散されており、発売開始2時間の段階で、なんと1万台の確定注文が入ってしまっているという状況でもあります。1000万円もする高級EVが2時間で1万台以上売れているという信じがたいことが起こり、ファーウェイの台頭を象徴的なものとしているわけです。
いずれにしても、今回発表されたファーウェイの新型フラグシップEVであるAITO M9については、中国を代表するフラグシップとして完成されていることが判明したわけです。2024年もっとも注目するべきEVの1台であることは間違いありません。
これが中国製EVの最前線であり、これに追いつくことができなければ、ドイツ御三家やレクサスも、想定よりもずっと早くに販売シェアを落としていくこととなりかねません。
ファーウェイについては、このAITO以外にもLuxeedなど別ブランドも同時に立ち上げていることから、2024年の中国EV動向を俯瞰するうえで、その動向にはますます注目せざるを得ないと思います。