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マツダ新型ロータリー「8C」。発電機用としての進化の内情


TEXT:桃田 健史 PHOTO:桃田 健史
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「8C」と「13B」、ローターとエキセントリックシャフトの比較。筆者撮影

8C量産化の課題

前述のように、「8C」はローターの幅は「13B」に比べて薄くなったが、排気量が大きくなったことでローター自体は「13B」よりも大型化している。

そこでいくつかの課題を解決する必要があった。

ひとつ目は、ローターのバランス精度だ。基本設計と製造工程でバランス精度向上を目指した。

ローターの大型化では、従来比でバランス精度を75%改善が必要とされた。

二つ目は、ガスシールの精度だ。「8C」では排気量を大きくしたことで、燃料圧力が増加している。そのため、ローターとローターハウジングとの隙間を埋める、アペックスシール、サイドシール、そしてコーナーシールの精度を上げた。

各種シールの寸法・形状、そして取付精度で従来比50%改善が必要とされた。

これらの課題については、素材から加工、そして組立を一気通貫して行う取組みの中で対応した。

具体的には、ローター素材工程では、鋳造での製造工程での砂型造形において、中子の寸法精度を向上させた。

また、設計時点ではマツダの真骨頂であるMBD(モデルベース開発)によって鋳造過程で起こり得ることを解析し、また砂型の3Dスキャンにより曲面の寸法を管理した。これにより、素材の寸法交差は「13B」と比べて54%改善している。

最後は「匠」による人の感覚

次に、素材を加工する工程に移る。

「13B」では、多軸専用ラインで50の切削工程を経ていた。

これを「8C」では、高速1軸NC(数値制御)ラインで9工程まで一気に減らし、生産性を飛躍的に向上させた。

具体的には、従来は専用機で行っていたコーナーシールの穴加工や、旋盤による外郭加工と燃料室加工などを今回、汎用のNC機器で加工できるように工夫した。

こうした工程数の減少で、加工途中での移動(掴みかえ)を最小限としたことで、寸法精度が改善できた。

ローターのバランスを測定して修正量と位相を演算して、自動調整加工を実現したことが、ローターバランス精度が、前述にように「13B」と比べて75%改善された。

そして、エンジンの組立工程では、「匠」の技が光る。

「8C」の組立工程。筆者撮影。

各種シール部の組立と確認の作業では、「匠」の指先に伝わる感覚を重視。これは、自動化が進んでも機械では判別できない、ばねの反発を感じ取ることである。

また、サイドハウジングをアルミ化し、また溶射を行う高速フレーム溶噴技術を開発。

その結果、サイドハウジング重量は「13B」と比べて58%改善。エンジン単体で15kg以上の軽量化を実現している。

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