カーボンフリー燃料の輸送をエコに実施してこそCO2削減に効果
見た目からはわからぬ最新鋭のハイ・テクノロジーを搭載
【THE 視点】三菱重工は7月7日、新型のEV輸送船「あすか」が竣工したと発表した。三菱重工グループの三菱造船およびe5ラボが普及を目指す「内航標準ハイブリッドEV船」のデザインを採用した総トン数499トンのバイオマス燃料輸送船で、建造造船所の本田重工業から旭タンカーに引き渡された。
「あすか」のパワーユニットは、スクリューを回すための機構は完全電動で、電力供給用のバッテリーと発電機・制御ソフトをモジュール化して搭載している。
また、三菱造船が開発し、Marindowsを通じて内航海運への普及を目指すポータブル運航支援システム「ナビコ」も搭載。今後パイロット試験を経て2024年春からの販売を計画しているという。
見た目からは分かりづらいが、三菱造船製の高性能ツインスケグ船型を採用し、推進馬力を従来船より20%以上削減した。これによりCO2の削減に貢献でき、荷役・離着桟・入出港など港湾でのゼロエミッション・オペレーションを実現する。
また、騒音・振動の低減による船内快適性向上、高度な知識と経験を要するディーゼルエンジンの整備作業の削減、操船性向上による離着桟オペレーションの負荷低減などのメリットもあり、総じて船員の作業負荷を低減できる。
駆動するモーターは最高出力360kW(490ps)のものが2基搭載され、最高出力500kW(680ps)の発電機が2基、バッテリーは最大容量221kWhの仕様が2基で合計の容量は442kWhとなる。40kWhのバッテリーを積むEVに換算すると11台分の容量になり、ハイブリッド車の場合は40〜50台分に相当する。EVとは比べ物にならないほどの大容量である。
「あすか」のパワートレインは、自動車で言うシリーズ・ハイブリッド方式に相当する。外観からは気付かないが、CASE(コネクティッド・自動化・シェアリング・電動化)に近い技術が用いられており、公開された資料によれば、「ナビコ」とは映画で見るような巨大なパネルを備えたようなものではなく、小型のタブレット端末にて操作するようだ。電動化に関連する産業構造改革は船舶業界でも起きている。
船舶においてもCO2削減は待ったなしの状態で、EVではないが推進力に風を用いる「帆船」を現代版としてアレンジした推進技術も開発されている。
「あすか」の用途はバイオマス燃料の輸送というが、その輸送に化石燃料を使用しているようでは無意味。運ぶ船も含めてカーボンフリー化して初めてエコと言えるだろう。この問題は自動車用の水素燃料の輸送にも当てはめることができる。
このような取り組みは、乗り物業界全体に増えていくだろう。
(福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)
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デイリーEVヘッドライン[2023.07.12]