EV旅客船として小型船舶の検査に初合格
350Vのシステムの採用で自動車機器との共通化にも期待
【THE 視点】EV船販売株式会社は、350Vの高電圧リチウムイオン・バッテリーを搭載したEV船が、日本小型船舶検査機構の船舶検査に合格し、大阪市内に就航したと発表した。
同社はこれまでも、EV船を検査に合格させてきた実績があるが(今回を含めて5例)、小型船舶最大級(20トン未満)の旅客船として合格をさせたのは、今回が初めての例となる。
本船は観光旅客船扱いで、大まかな仕様は全長21.38m/幅5.00m/総トン数19トン/旅客定員70名となっており、このクラスでは最大級。建造も同社が行い、すでに船主に引き渡しを終えて旅客運航が始まっている。
搭載している電動システムは、ドイツのトルキード社製の「ディープブルー」というもの。容量44kWhのリチウムイオン・バッテリーおよび最高出力50kW(68ps)のモーターを1組とし、それを2組搭載しているのが特徴だ。
EV船販売株式会社といえば、先日筆者が取材した「ジャパンインターナショナルボートショー2023」に出展しており、今回のEV船についてもレポート内で触れている[詳細はこちら]。今回は、それからの進展ということになる。
港湾をはじめ、船舶の低炭素化が急務とされているが、なかなか進んでいないのが現状である。このように小型船であっても、電池電圧により縛りがあり許認可に時間が掛かるのだと改めて実感した。
筆者もEVの開発で、新しいものを製作した際の許認可のやり取りで苦労した経験が多々ある。なかには、それだけで1年もかかったものも。とにかく基準が定まっていないものに対しては、安全性の担保が厳しく求められるのだ。
今回のように、EVでは一般的な電圧の350Vで認可されたということは、今後船においてEV(自動車)用のパワーユニットが使えることになる。これで日本でのEV船の開発も進むものと思われる。今回のEV船販売のブレークスルーは、船舶業界はもちろん自動車業界にとってもインパクトのある明るいニュースと捉えている。
(福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)
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