総合出力490psの2モーター式AWDに4WS機構を搭載
世界で導入実績のあるEV消防車の日本導入に期待
【THE 視点】6月15日(木)~18日(日)まで「東京国際消防防災展2023」が東京ビッグサイト<東京都江東区>にて開催された。本年はEVの防災車両が展示されると聞いて訪れた。そこでひときわ存在感があったのが、オーストリアの「Rosenbauer(ローゼンバウアー)」(輸入元:帝国繊維)のEV消防車「RT」だ。ユニークな機構を備えていたので、この場にて紹介する。
「RT」のデザインは、ローゼンバウアーが手がけたオリジナルもので、無駄のない直線的なデザインは特殊車両ならではのものだが、日本のデザインにはない雰囲気がある。
ボディサイズは全長7,600×全幅2,350×全高2,900mm。最高出力180kW(245ps)のモーターを前後に搭載した全輪駆動で、電圧650V・最大容量132kWh(66kWh×2)のバッテリーを装備する。ちなみにパワーユニットはボルボ製だ。
車体は大柄だが、4WS(四輪操舵)機構を持つため小回りが効く。デジタルミラーも採用され先進的。ノンステップのドアのため、スピーディな乗降が可能だ。
なお、本車両はEVと発表されているが、実はバックアップ用として、最高出力225kW(306ps)のディーゼルエンジンの発電機を持つプラグイン式のシリーズ型HV(PHEV)である。緊急作業は長時間に及ぶこともあり、この巨体が電欠になってしまってはどうしようもない。他車からのバックアップを要するようでも、現場では混乱が生じるだろう。このパワートレインの採用は、むしろ必然と考える。
消火能力も十分で、水タンクの容量は 1,000L〜4,000L、泡タンクの容量は50L〜400L。通常ポンプと、常圧・高圧併用ポンプの両方が使用可能となっている。利用可能なすべてのポンプは、電気モーターを介してバッテリー電源のみで動作するのだが、特に長時間の動作の場合は、エネルギーバックアップシステムを介してディーゼルエンジンで動作することもできる。
メーカーの本国オーストリアのウイーンをはじめ世界各国で11台以上が稼働しているという「RT」。輸入元の帝国繊維では、日本への導入は検討中とのこと。ひときわ存在感のあるEV消防車だが、その力強い見た目通りの活躍を、日本でもしてくれるだろう。導入先があることを期待したい。
なお、「東京国際消防防災展2023」にはこの他にもEVの緊急車両の展示が多数あった。別途レポートを展開するので、ぜひご覧いただきたい。
(福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)
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デイリーEVヘッドライン[2023.06.19]