「EVバスはインフラもセットで真価を発揮する」
現場に最適化したインフラ設計まで一手に担う新組織
【THE 視点】ダイムラートラックは6月5日、EVバスのインフラ整備専門の子会社「Daimler Buses Solutions GmbH」(以下DBS)を設立したと発表した。
EVバスの潜在能力を最大限に引き出すためには、緻密に設計されたシステムに組み込む必要があると、ダイムラーはとらえており、今回の専門子会社を設立した模様。
グループ内の専門知識を持つ人材を集め、スタートアップ企業と同等の意思決定の素早さを持ち、短期間での成長を見込める組織を目指しているようだ。
一口にEVバスとは言っても、使用する現場の環境と状況は様々。EVバスに求められる装備・仕様も、交通機関により異なる。DBSは、そのような事情に完全に対応・最適化できるよう、企業ごとにカスタムされたEVバスをはじめ、EVバス専用の電源・充電器・充電管理まで、EVバスの導入から管理全てをサポートするという。
将来的には、水素燃料電池(FCEV)バスやレンジ・エクステンダーを備えたバスの導入・運用にも対応する予定だという。
ダイムラートラックには、「エボバス」というバス専門の子会社があり、ダイムラーがメルセデス・ベンツ・ブランドで販売しているEVバス「eシターロ」は、エボバス内の専門チームが開発したものである。DBSがエボバスとどのように関わるかは明言されていないが、インフラ整備を専門組織化するということは、それだけ急務という状況なのだろう。
そして忘れてはならないのが、ダイムラートラック傘下に日本のブランドである三菱ふそうもいるということ。ダイムラー/ふそう組は、先日トヨタ/日野組との統合も発表されたばかり。今回のダイムラーの発表は、日本市場と無関係ではないと捉えている。
考えてみれば、EVバスを導入すると簡単に言っても、日本の南北の地域や都市部・山間部には、それに合わせたEVバス車両の最適化や運用形態が求められる。街を走るバスは、企業ごとのカスタム仕様車なのだ。
それにEVのバッテリーの効率は気温などにも影響を受けるため、エンジン式のように買ったあとに現場に丸投げでは、正しい運用はできない。日本の悪しき伝統とも言える上位下達では、上が満足するだけで、現場ではEVバスを持て余してしまう危険性もある。
DBSのようなスピーディかつ統合的にEVバスの導入をサポートする組織は、チグハグなEVバス運営などを解決するのに必要と言える組織だ。DBSのノウハウが、将来的には日本でのEVバスの運用に使われることを願う。
(福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー)
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デイリーEVヘッドライン[2023.06.07]