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FCEVは実用的だが一般普及はまだ早いか……現役EV開発エンジニアが「ホンダ・クラリティFUEL CELL」を愛用して実感した燃料電池の可能性(前編) [THE視点]


TEXT:福田 雅敏 PHOTO:福田 雅敏
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現在の水素価格でFCEVの燃費計算をすると……

水素の値段だが今年から値上げが相次いでいる。これまで1,100円(税込)/kg程度だったものが、運営会社にもよるが1.5倍程度になっている。高いステーションでは、1,760円(税込)/kgにもなる。

これがどの程度の価格と燃費にあたるのか、あまりピンとこないと思うので次のように考えてほしい。クラリティの水素タンクは141Lの容量だが、実際に入る水素の量は約5kgである。筆者の場合の「クラリティ」の燃費は87km/kg(高速道路の利用は多め)。この数字をもとに計算すると、航続距離は435kmとなる。筆者がよく利用するエネオス系列のステーションでの水素の値段は1,650円/kg。つまり8,250円をかけて400km強しか走らないのだ。

8,250円分をガソリン代と考えると、現在の時価相当と言える165円/Lに換算して50L分と計算できる。50Lのガソリンで400km強の走行距離ということはつまり、「クラリティ」の燃費は、残念ながらガソリン車換算の10km/L未満となってしまう。二酸化炭素を出すガソリンと出さない水素を単純比較するのはナンセンスだとは思うが、この数値では燃費が良いクルマとは言えない。「クラリティ」は二次バッテリーを積んだHVでもあるので、せめてこの倍ぐらいは走ってほしいものである。

燃費を上げるのがむずかしいのであれば、水素の価格をもっと低くしてほしいものであるが、逆に値上げされたのが現状だ。経済産業省は、水素の価格を2030年に従来比1/3(300円/kg台)にまで下げると言っていたのに、今年に入ってからの相次ぐ値上げで真逆に向かっているのである。

聞くところによれば、実は水素本来の価格は5,000円/kg程度のようである。現状、それを逆ざやで販売しているのだ。これらを考えると、FCEVのランニングコストは非常に高いのが実情と言える。

ここまでFCEVのウイークポイントばかりを書いてしまったが、もちろんそうではない。[後編]では、FCEVを取り巻く環境などの解決策などを考察してみたい。

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