コラム
share:

知って役立つEV知識・基礎の基礎/御堀 直嗣 第8回:電気自動車の中身と型式のバリエーション


TEXT:御堀 直嗣
TAG:

バッテリーEVと燃料電池車

電気自動車は、永年「EV」と呼ばれてきた。しかし近年になって「BEV」との言い方が広がってきている。EVはエレクトリック・ヴィークルのアルファベット表記で、意味はまさしく電気自動車だ。BEVはバッテリー・エレクトリック・ヴィークルのアルファベット表記であり、電気自動車が車載のバッテリーでモーターを駆動していることを、改めて明確にした言い回しだ。

背景にあるのは、1990年代から燃料電池車が登場し、2015年にはトヨタから、翌年にはホンダから発売されるようになり、欧州ではメルセデス・ベンツが発売したことがある。韓国のヒョンデも販売しており、国内市場にNEXO(ネッソ)が導入されている。

燃料電池車は、FCV(フューエル・セル・ヴィークル)とアルファベット表記されるほか、FCEV(フューエル・セル・エレクトリック・ヴィークル)と表記される場合があり、この場合は燃料電池電気自動車の意味になる。

すなわち、EVという表記の付く車種が、バッテリーを車載する形態と、燃料電池を車載する形態の2通りとなって、どちらを指しているかをより明確にするため、これまでのEVをBEVといい、FCVやFCEVと区別する状況になっている。

BEVは、言葉通り車載のバッテリーにあらかじめ充電しておき、その電力でモーターを駆動して走る。その誕生は、19世紀末のガソリンエンジン車登場前といわれ、EVといえばBEVであることが当然とされてきた。

ちなみに、オーストリア・ハンガリー帝国生まれのフェルディナント・ポルシェ博士が最初に自分で設計したのは、1900年のローナー・ポルシェというEVだった。世界で最初に時速100kmを達成したのは、ベルギーのカミーユ・ジェナッツィが製作したラ・ジャメ・コンタントというEVで、1899年に記録している。EVは、エンジン車より先に高性能化の道を拓いた。

2009年の三菱i-MiEV発売以降、日産リーフや、BMW i3など、比較的小型のEVが発売されたが、今日ではメルセデス・ベンツEQSのような最上級高級車や、テスラ・モデルXやY、ジャガーI-PACE、BMW iXなどSUV(スポーツ多目的車)も加わり、BEVの選択肢は広がりつつある。

水素を利用するFCEV

FCEVで電力をモーターへ供給するのは燃料電池だ。この装置に水素と酸素を注入することで発電し、その電力でモーターを駆動して走る。あらかじめ充電する手間がない。ただし、ガソリンを給油するように、水素タンクに高圧水素ガスを充填する必要がある。水素ステーションへ出向き、高圧水素ガスを充填する手間は、ガソリン給油と同様の行動になる。

ちなみにFCEVも、ある程度の容量のバッテリーを車載している例が多い。理由は、燃料電池から供給される電力を一時的に貯めておくバッファー機能とともに、急加速などの際に、燃料電池での発電だけでは電力が不足する場面があるかもしれず、それを補うため、バッテリーに充電した電力を活用する。充電は走行中に減速するときの回生によるため、BEVのように駐車中にあらかじめ充電する必要はない。

以上のように、モーター駆動で走行するところは同じだが、モーターに供給する電力をどう確保するかで、BEVとFCEVは異なる。

FCEVは2015年にトヨタ・ミライが発売され、現在はその2代目へモデルチェンジしている。ホンダ・クラリティ・フューエルセルは2016年に発売されたが、2021年に販売を終えた。韓国のヒョンデNEXO(ネッソ)は、2018年に韓国で発売された。

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
日本は3年連続「日産サクラ」がトップ! じゃあ中国・欧州・アメリカで一番売れてるEVってなにか調べてみた
電気自動車って「お金的に」得? エンジン車と諸々の費用を比べてみた
リーフのバッテリーパックをバラして積むって意外に大変! 初代フィアット・パンダのEV化に挑戦してみた【その5】
more
ニュース
トヨタの新型モビリティでお台場周辺が一気に便利になる! 「eパレット」と「C+walk」が街全体の活性化にも貢献
ホンダがカーボンニュートラル実現に向け二輪の電動化を加速中! 欧州でネイキッドモデル「WN7」を発表
新車価格約3000万円も補助金を使えば半額で買える! トヨタのカワイイ新世代モビリティ「eパレット」の販売がスタート
more
コラム
世界に衝撃を与えたアイオニック5Nをさらに超える6Nが公開! その恐るべき実力とは?
EV時代にゴロゴロ出てくる新興メーカー! 魅力はあるけど老舗ブランドにはない「危険性」もある!!
リチウムが入手困難ならナトリウム! いま注目を集める「ナトリウムイオン電池」ってどんなもの?
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
more
イベント
マンションでもEVが身近になる! 官⺠連携で既存マンション全274駐⾞区画にEV充電コンセントを導⼊した事例リポート
公道レース「フォーミュラE東京」が帰って来る! チケットを持っていなくとも無料で1日遊び尽くせる2日間
災害に備えて未来を楽しむ! 「AWAJI EV MEET 2025」の参加はまだまだ受付中
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択