bZ4Xとの違い
道中で少し試したハンドリングは、さすがにスバルらしく中立付近から手ごたえがあって、ステアリングフィールはとてもしっかりしているけれども、やっぱりまぁフロントが重いんだな、というのをはっきり意識させる水準ではある。ちょっと切り込んでいくと一瞬、上屋だけがぐっとロールして、重たいリアがなかなかついて来ないシーンもある。
ほんの少し、トヨタbZ4Xにも乗せてもらったのだが、聞くところによるとトヨタとスバルではダンパーとパワーステアリングのセッティングが異なるらしく、スバルのほうがより重みがあって操舵に対する追従性の高さを優先している一方、トヨタは軽快に切れば瞬時に反応して曲がる軽快なレスポンスを演出しようとしている気がする。
今回は都心で満充電にし、途中ひとりピックアップして軽井沢へ向かい買い物のあとホテルに向かったのだが、道中の上り坂における電池の減り具合から考えて一往復を無充電でこなすのは難しいように思われた。途中10分間、およそ50kWの急速充電でバッテリー残量が43%から52%まで回復したが、こういう休憩はできることなら避けたいものだし、ホテルで普通充電する際にも母屋から駐車場の隅っこまで移動させられて、従業員がいちいち鍵を開けに行かなければならないなど、まだまだ課題が少なくないように思えた。
EV作りの難しさ
短くない人生の中で、しかもその都度違うクルマに乗って移動することをしばしば経験する立場にあって、「あそこに行ったのはあのクルマだったよね!」と、走らせた車両と経験が切り離せないことは多々ある。
400km程度の旅をともにした今回のスバル・ソルテラは、全体としてはとても良いクルマだなと思った。
けれども、仮に自分が学生のように若く、クルマに乗せられて思い出を積み重ねていく立場だったとして、ソルテラがいったいどう良いクルマだったのか、どういう特徴があってどうだったという印象が、ほとんど残らないことは否定しない。乗り心地、加速、サウンド、などあらゆる面でとても中庸に感じられるとも言い換えられるからだ。
自動車というのは、自主自立の「自」に動物の「動」が加わり、それが「車」に載っているものだと私は思う。700万円もする、消費者が能動的な選択の末に買うミドルクラスSUVであればなおのこと、そうした自由な意思が備わっているべきだ。放っておけば勝手に動き出すような躍動感、それがたとえばヤリスクロスには感じるけれどもソルテラからは得られにくい。そんな表現がわかってもらえるか確信はないのだが、むしろEVの時代においては、高級車であるほどそれが伝わりにくくなっていくかもしれない。