試乗
share:

[ヒョンデ IONIQ5 試乗記]いつの間に!? ヒョンデの高い実力 その4


TEXT:嶋田 智之 PHOTO:小河原 認
TAG:

EVならではの滑らかな加減速

が、やっぱり最も大きな要因は、モーター駆動であるということだろう。ゼロスタートの段階から350Nmというたっぷりしたトルクの恩恵にあずかることができていっさいの力不足を感じないし、そのトルクのコントロールをドライバー自身がしやすいから、思ったとおりにクルマが走ってくれる感覚になれるのだ。

しかも、制御が緻密で加減速がすばらしく滑らかだから、何だか自分のドライビングが巧くなったような気さえしてくる。また回生ブレーキの効きをパドル操作で段階的に切り換えられ、いわゆるワンペダルドライブで発進から停止までまかなうこともできるから、右足の精度の高いドライバーはそれを多用して安楽さと楽しさを享受したくなることだろう。それらはすべて、モーター駆動の強みである。

高速道路にすべり込んでも、そのあたりの印象は変わらない。フル加速をしても途方もなく速いというほどではないが、スムーズに素早くスピードを上げていくさまは掛け値なしに気持ちいいといえるほど。EVの宿命で伸び感はゆっくり少しずつ穏やかになっていくが、そのときにはすでに結構な速度域に入っているはずだ。過剰な刺激を求めでもしない限り、まず不満を感じることはないだろう。

もう一方の四輪駆動のモデルも、街中での印象は後輪駆動と較べてちょっと力強いかも、という程度でそれほど極端な違いは感じられなかった。が、フル加速を試みたり高速道路での中間加速を味わってみたりすると、数値の違いをはっきり体感できる。

明らかに速い。0-100km/h加速は5.2秒で、あまり意味のある比較とはいえないが、それはポルシェ・ケイマンよりたった0.3秒遅く、BMW Z4 sDrive30iより0.2秒速い数値だ。605Nmのトルクは伊達じゃない。しかもその605Nmがフルに掛かっていると思われる状況でも、クルマの動きが乱れることはまったくない。フロントモーターの存在を感じる瞬間だ。パフォーマンス的には不満を感じることがないどころか、しっかり満足のゆくレベルである。

なかなか優秀な移動体

乗り心地に関しては、基本的には良好で快適といって差し支えないだろう。とりわけ高速域ではフラットと表現していいフィーリングを味わえる。ただし、だ。後輪駆動、四輪駆動ともに、路面の荒れた場所やちょっとした段差を乗り越えたときには、ちょっとバタつきを感じることがある。おそらくそれは後輪駆動で235/55R19、四輪駆動で255/45R20というバネ下の重い大径タイヤに起因するものなんじゃないかと思う。ものすごく気になるというほどでもないのだが、アイオニック5に乗っていてちょっと気になったのがそこだけだったので、逆に印象に残ってしまったかたちだ。

車室内は高速走行に入っても風切り音やロードノイズが耳に障るわけでもなく、実に静か。あまりの静寂をいいことに、その日に一緒に移動していた人がインスタライブをはじめたのだが、視聴者の方が驚いていたくらいだった。

移動体として、なかなか優秀なのである。

Hyundai IONIQ5 Lounge AWD スペック

全長:4,635mm
全幅:1,890mm
全高:1,645mm
ホイールベース:3,000mm
車両重量:2,100kg
前後重量配分:前1,060kg、後1,040kg
乗車定員:5名
交流電力量消費率:142.4Wh/km(WLTCモード)
一充電走行距離:577km(WLTCモード)
最高出力:225kW(305ps)/2,800-8,600rpm
最大トルク:605Nm(61.7kgm)/0-4,000rpm
バッテリー総電力量:72.6kWh
トランスミッション:1段固定式
フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット式
リアサスペンション:マルチリンク式
フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク
リアブレーキ:ソリッドディスク
タイヤサイズ:前255/45R20、後255/45R20
最小回転半径:5.99m
荷室容量:後527L、前24L
車両本体価格:5,890,000円

その5 「まとめ」に続く

TAG:

PHOTO GALLERY

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
いすゞがピックアップトラック「D-MAX」にBEVを用意! バンコク国際モーターショーでワールドプレミア予定
BEV大国の中国で販売が失速! ここ数年でPHEVのシェアが伸びていた
中国市場でファーウェイのEVが爆発的人気! ライバルを凌ぐ激安っぷりと超豪華内装のAITO M9とは
more
ニュース
70.5kWhの高電圧バッテリー搭載で一充電走行距離は591kmに延長! メルセデス・ベンツが新型EQAを発売
ファン待望のコンパクトモデルが「二刀流」で帰ってきた! アルファロメオ「ミラノ」改め「ジュニア」を名乗るHEV/BEVモデルを発表
日産がフォーミュラEサウンドをモチーフにしたサウンドトラック「エレクトリック・レガシィ」を公開
more
コラム
固体電池を早くも実用化! 中国のEVセダンは競争激化で「価格も航続距離も性能も」驚異的な世界に突入していた
日産が発表した中期経営戦略! 2026年に100万台の販売増加を打ち出した「The Arc」に立ちはだかるハードル
日産は電動車シフトに突き進む! 中期経営戦略「The Arc」の中身
more
インタビュー
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
災害に強いクルマは「PHEV+SUV+4WD」! 特務機関NERVがアウトランダーPHEVを選ぶ当然の理由
more
試乗
EV専業の「テスラ」とEVに力を入れる従来の自動車メーカー「ヒョンデ」! モデルYとコナを乗り比べるとまったく違う「乗りもの」だった
誰もが感じる「ポルシェに乗っている」という感覚! ポルシェはBEVでもやっぱりスポーツカーだった
佐川急便とASFが共同開発した軽商用EV「ASF2.0」に乗った! 走りは要改善も将来性を感じる中身
more
イベント
レース前に特別に潜入! フォーミュラEに参戦する日産チームのテント内は驚きと発見が詰まっていた
日産がフォーミュラE「Tokyo E-Prix」開催前スペシャルイベントを開催! 六本木ヒルズアリーナに1夜限りのサーキットが出現
全国約30カ所を巡る! BYDが展示&試乗イベント「Hello! BYD Caravan」を開催
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択