EVならではの滑らかな加減速
が、やっぱり最も大きな要因は、モーター駆動であるということだろう。ゼロスタートの段階から350Nmというたっぷりしたトルクの恩恵にあずかることができていっさいの力不足を感じないし、そのトルクのコントロールをドライバー自身がしやすいから、思ったとおりにクルマが走ってくれる感覚になれるのだ。
しかも、制御が緻密で加減速がすばらしく滑らかだから、何だか自分のドライビングが巧くなったような気さえしてくる。また回生ブレーキの効きをパドル操作で段階的に切り換えられ、いわゆるワンペダルドライブで発進から停止までまかなうこともできるから、右足の精度の高いドライバーはそれを多用して安楽さと楽しさを享受したくなることだろう。それらはすべて、モーター駆動の強みである。
高速道路にすべり込んでも、そのあたりの印象は変わらない。フル加速をしても途方もなく速いというほどではないが、スムーズに素早くスピードを上げていくさまは掛け値なしに気持ちいいといえるほど。EVの宿命で伸び感はゆっくり少しずつ穏やかになっていくが、そのときにはすでに結構な速度域に入っているはずだ。過剰な刺激を求めでもしない限り、まず不満を感じることはないだろう。
もう一方の四輪駆動のモデルも、街中での印象は後輪駆動と較べてちょっと力強いかも、という程度でそれほど極端な違いは感じられなかった。が、フル加速を試みたり高速道路での中間加速を味わってみたりすると、数値の違いをはっきり体感できる。
明らかに速い。0-100km/h加速は5.2秒で、あまり意味のある比較とはいえないが、それはポルシェ・ケイマンよりたった0.3秒遅く、BMW Z4 sDrive30iより0.2秒速い数値だ。605Nmのトルクは伊達じゃない。しかもその605Nmがフルに掛かっていると思われる状況でも、クルマの動きが乱れることはまったくない。フロントモーターの存在を感じる瞬間だ。パフォーマンス的には不満を感じることがないどころか、しっかり満足のゆくレベルである。
なかなか優秀な移動体
乗り心地に関しては、基本的には良好で快適といって差し支えないだろう。とりわけ高速域ではフラットと表現していいフィーリングを味わえる。ただし、だ。後輪駆動、四輪駆動ともに、路面の荒れた場所やちょっとした段差を乗り越えたときには、ちょっとバタつきを感じることがある。おそらくそれは後輪駆動で235/55R19、四輪駆動で255/45R20というバネ下の重い大径タイヤに起因するものなんじゃないかと思う。ものすごく気になるというほどでもないのだが、アイオニック5に乗っていてちょっと気になったのがそこだけだったので、逆に印象に残ってしまったかたちだ。
車室内は高速走行に入っても風切り音やロードノイズが耳に障るわけでもなく、実に静か。あまりの静寂をいいことに、その日に一緒に移動していた人がインスタライブをはじめたのだが、視聴者の方が驚いていたくらいだった。
移動体として、なかなか優秀なのである。
Hyundai IONIQ5 Lounge AWD スペック
全長:4,635mm
全幅:1,890mm
全高:1,645mm
ホイールベース:3,000mm
車両重量:2,100kg
前後重量配分:前1,060kg、後1,040kg
乗車定員:5名
交流電力量消費率:142.4Wh/km(WLTCモード)
一充電走行距離:577km(WLTCモード)
最高出力:225kW(305ps)/2,800-8,600rpm
最大トルク:605Nm(61.7kgm)/0-4,000rpm
バッテリー総電力量:72.6kWh
トランスミッション:1段固定式
フロントサスペンション:マクファーソン・ストラット式
リアサスペンション:マルチリンク式
フロントブレーキ:ベンチレーテッドディスク
リアブレーキ:ソリッドディスク
タイヤサイズ:前255/45R20、後255/45R20
最小回転半径:5.99m
荷室容量:後527L、前24L
車両本体価格:5,890,000円
その5 「まとめ」に続く