リチウムイオンバッテリーはレアメタルの塊
電気自動車(EV)を支える重要部品のひとつが、リチウムイオンバッテリーである。その正極には、レアメタルが使われている。
レアメタルとは、言葉通り「稀な」という意味があり、地球に存在する量が極めて限られ、鉱物などからの抽出が難しかったり、安定的な確保が難しかったりする、非鉄金属をさす。
希少さという意味では、貴金属もある。これは、数が限られるのはもちろん、腐食に耐える性質を備えた金属をさす。たとえば、金、銀、白金、パラジウムなど8つの元素がある。白金やパラジウムは、エンジン車の排気触媒で使われている。
そして、ベースメタルと呼ばれるのが、鉄、銅、アルミニウム、鉛、亜鉛など、生産量の多い金属だ。鉄やアルミニウムはクルマの車体で使われたり、銅は配線、鉛は鉛酸バッテリーで使われたりしている。
リチウムイオンバッテリーで使われているレアメタルは、多くが、リチウム、ニッケル、コバルト、マンガンなどで、一般に三元系とよばれるリチウムイオンバッテリーは、ニッケルとコバルトとマンガンを組み合わせた合金による電極を使う。そして、リチウムのイオンが正負極の間を移動することで充放電が行われ、まさにリチウムイオンバッテリーはレアメタルの塊だ。
レアメタルは、それぞれに産地が異なる。リチウムは南米の塩湖、オーストラリアの鉱石などから得られる。ニッケルはフィリピンやロシアなど、コバルトはアフリカのコンゴ、マンガンは南アフリカや中国などで、いずれも、日本はもちろん欧米も輸入に頼らなければならない。
中国のEVが、リン酸鉄を正極に使う背景は、普及を目指した原価の低減にある。リンも鉄も、レアメタルやレアアースではないので、安価に入手しやすい。一方、電池性能は高くないとされてきたが、セルの工夫などで三元系と競争力をもてる仕様になってきている。