#全固体電池
小型実証設備第1プラント(photo=出光興産)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
出光、全固体電池用電解質の生産を増強……自動車メーカーへの安定供給を目指す[2023.06.21]

「小型実証設備第2プラント」を7月より稼働し安定生産体制を強化 脱炭素のなか生き残りをかけて事業を再構築する石油企業 【THE 視点】出光興産(以下、出光)は6月19日、全固体リチウムイオン二次電池(以下、全固体電池)の普及・拡大へ向け、固体電解質の「小型実証設備第1プラント」の生産能力を増強すると発表した。2024年度内の完工を計画している。 加えて本年7月より、「小型実証設備第2プラント」の稼働も開始し、自動車メーカーやバッテリー・メーカーなどへの供給体制を強化する。全固体電池およびそれを搭載したEVの実用化に必要不可欠な固体電解質の性能向上と、量産技術の開発を加速させ、全固体電池の普及・拡大に貢献する構えだ。 全固体電池は、EVの航続距離の拡大・充電時間の短縮・安全性向上が期待されている。自動車メーカーやバッテリー・メーカーは、全固体電池を次世代型バッテリーの主力と位置付けて開発を加速しており、材料のニーズが一層高まっている。 先日トヨタが、全固体電池搭載型EVを2027年頃に実用化するとアナウンスした。日産も同時期に全固体電池EVの実用化を目指している。両社の開発競争は熾烈な状況であろう。 ということは、今が全固体電池の固体電解質の開発が一番活発な時期のはずだ。そのニーズを逃がさないために、出光は供給能力の増強を決定したのではないだろうか。安定供給体制が構築できれば、出光製の材料のニーズが安定するので、供給体制の構築を急いだのだと考えられる。もちろん、今後縮小するであろう化石燃料事業の穴埋めを見込んでの決定と思われる。 出光は、EV事業においてもタジマモーターコーポレーションと超小型EV「イデタ」の試作車を開発し、系列サービスステーションを通じ7月1日から実証走行に入るとも発表している。全固体電池材料や自社製EVの開発・展開することで、生き残りをかけるものと思われる。他の石油会社も他人事ではない。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★スズキ、空飛ぶクルマ事業に参画……スカイドライブと基本合意書を締結、スズキの工場を活用し、2024年春からeVTOL機(垂直離陸式EV航空機)を生産[詳細はこちら<click>] ★★九州電力とヤナセ、EVの普及に向けて業務提携……集合住宅向けのEVインフラ構築などを目指す ★★グリーンチャージ、無会員登録・従量課金型の急速充電器(最高出力50kW)を6月19日に国内初稼働……花川運動公園<静岡県浜松市中区>にて、クレジットカードまたはQRコードで決済 ★自動運転EVバスのボードリー、運行管理システムに安全管理の新機能を搭載……走行中の乗客の立ち歩きを検知し、遠隔監視者に通知 ★テスラ、「イオンモール幕張新都心」<千葉市美浜区>にて特別展示を開催……「モデル Y」「モデル 3」を展示、6月24日(土)・25日(日)の2日間 ★半導体のローム、ヴィテスコ・テクノロジーズと協業契約……SiC(炭化ケイ素)パワーデバイスの長期供給契約、EV関連の開発パートナーシップの一環 ★スギノマシン、EV用部品加工に適した工作機械「ギガフィーダ」を開発……比較的小型の機械ながらも、EVに多用される大型アルミダイカスト部品の切削加工が可能 ★リマック、EVスーパースポーツ「ネヴェーラ」の納車を継続……米国の顧客へ2台目を引き渡し、淡いブルーのカラーリングが特徴 ★ボルボ、建材の世界大手ハイデルベルク・マテリアルと提携……積載や運搬などにEVを活用、CO2の排出量削減を目指す デイリーEVヘッドライン[2023.06.21]

TAG: #THE視点 #全固体電池 #出光興産
TEXT:TET 編集部
全固体電池だけじゃなかった。“バッテリーのフルラインアップ化”を目指すトヨタが見せた底力

トヨタ自動車は6月13日、バッテリー電気自動車(BEV)に革新を起こす可能性を秘めた「全固体電池」について、開発の目処をつけ、2027年にも全固体電池を搭載した新型BEVを発売する見通しであると明らかにした。また、その他のバッテリー技術についても並行して開発を進め、“バッテリーのフルラインアップ化”を目指す考えを強調。クルマの特徴に合わせた複数のバッテリー開発を続け、BEVラインアップの性能向上とラインアップ拡充を実現していく。 2026年頃に航続距離1,000kmも可能に 今回トヨタが明らかにした計画によると、BEVの肝となるバッテリーについて、価格を重視した普及版から、画期的な全固体型電池まで、全部で4タイプを用意する。   “普及版”は「アクア」や「クラウン」などハイブリッドカーに搭載されているバイポーラ構造のバッテリーをBEV向けに最適化するもので、航続距離は現行「bZ4X」(WLTCモードで最長559km)の20%増を目指し、2026~2027年の実用化を目指す。 トヨタはこの普及版バッテリーを「良品廉価」と表現するが、航続距離は単純計算すると約670kmとなり、テスラ「モデル3 ロングレンジ」の689kmに迫る。これだけでも驚きだが、トヨタではさらに生産コストをbZ4Xから40%低減し、急速充電(充電量10%→80%)に要する時間も30分以下を目指すとのことだ。 次に、性能にこだわった“パフォーマンス版”では、航続距離1,000kmを実現し、コストはbZ4Xの20%減、急速充電20分以下を目指す。普及版のさらに上を行く性能となるが、トヨタではこのパフォーマンス版バッテリーを搭載した次世代BEVを一足早く2026年に市場投入する予定だ。 ちなみに、BEVの価格のかなりの部分はバッテリー代が占め、そのコストがbZ4Xの20%減なら、次世代BEVは税込600万円というbZ4Xの価格を数十万円下回ってくる可能性もある。3年後に航続距離1,000kmのBEVが補助金込みで400万円台で買える時代が来るかもしれない。 >>>次ページ 全固体電池により航続距離1,200km、急速充電10分以下に

TAG: #ニューモデル #パルチパスウェイ #全固体電池
全固体電池(photo=トヨタ自動車)
TEXT:福田 雅敏、ABT werke
EV後進国の巻き返しとなるか、トヨタが全固体電池式EVを2027年をめどに実用化[2023.06.14]

2027年の実用化を目指し開発を加速 航続距離1,500km級の高性能版も開発中 【THE 視点】トヨタ自動車は6月13日、全固体電池(バッテリー中の電解質に固体を用いる電池)の開発と実用化を明言した。 同社の東富士研究所(静岡県裾野市)にて「トヨタテクニカルワークショップ2023」を開催し、次世代電池についての発表を行った。その中で、2026年に導入予定の次世代EVに搭載される次世代電池(高性能版/以下、ハイパフォーマンス版)に加え、新しいバイポーラ構造を持つ次世代電池(汎用版)、そしてパフォーマンスの向上と低コスト化を両立したバイポーラ型リチウムイオン・バッテリーが発表された。 パフォーマンス版は、2026年に導入予定の次世代EVに搭載する。航続距離1,000kmを実現しつつ、コストは現行「bZ4X」比で20%減、急速充電は20分以下(10%〜80%の充電)を目指すという。 しかし今回の発表で興味を引いたのは、全固体電池について触れたことだ。 全固体電池の課題であった電池の耐久性を克服する開発に成功したことで、ハイブリッド車(HEV)用から予定を切り替え、EV用のバッテリーとして開発を加速するという。現在は量産技術を開発中で2027〜2028年中の実用化に挑戦するとのこと。 先に述べたパフォーマンス版のバッテリーと比べて航続距離は20%向上・急速充電は10分以下(10%〜80%)となる見込み。つまるところ、航続距離1,200km、10分の充電で800km以上の走行が可能。早ければ2027年に誕生することになる。 また、もう一段レベルアップした仕様も同時に研究開発中。こちらはパフォーマンス版と比べて航続距離50%向上を目指すというから、一充電で1,500kmの航続距離となることを意味する。 これまでトヨタは、全固体電池の2022年の実用化を目指してきた。東京五輪用EVに搭載し公道走行までは漕ぎ着けたものの、実用化時期は見直した。 先にも触れたが、その後HEV用でまずは実用化を目指すはずであった。ところが今回の発表で一気に風向きが変わった。 日産も全固体電池を開発しており、2028年の実用化を目標としている。トヨタの開発が遅れたがために、日産が国内初となると見ていたが、これにてどちらが先か予想が立たなくなった。両社の開発陣はおそらく、1時間でも早い開発完了を目指してしのぎを削っていることだろう。 ともあれ、2027〜2028年は全固体電池EVの元年となりそうである。EV後進国である日本が、巻き返しを図るチャンスでもある。 (福田雅敏-EV開発エンジニア、THE EV TIMES エグゼクティブ・アドバイザー) ★★トヨタ、次世代のEVを2026年に投入……航続距離1,000km・20分で80%の急速充電が可能、多様な電動車に対応できる「マルチパスウェイプラットフォーム」も開発中[詳細はこちら<click>] ★★フォード、ドイツ・ケルンにてEV専用工場を開設……2026年末までに年間200万台/年が目標[詳細はこちら<click>] ★★メルセデス・ベンツ、長距離対応のトラクター・ヘッド「eアクトロス 600」を2023年10月に初公開へ……中間充電なしで500kmの走行が可能 ★アウディ、「Q4 e-tron」に再生ガラスを採用……フロントウインドウに最大30%のリサイクル素材を使用、2023年秋から標準採用 ★ユビ電、ソーラー事業のリフェコと協業……EV導入希望の顧客向けに補助金申請支援や機器設置工事等の独自サービスを展開 ★ブレイズ、改正道交法対応の電動キックボード「キックボードEV」を発表……「ライトモデル」と椅子付きの「ベーシックモデル」の2種類を用意[詳細はこちら<click>] ★次世代スマートモビリティの運用が「東京ミッドタウン」(東京都港区)にて開始……小型電動モビリティ「ロデム」を使用し、八重洲・日本橋エリアを周遊(有料) デイリーEVヘッドライン[2023.06.14]

TAG: #THE視点 #テクノロジー #全固体電池

NEWS TOPICS

EVヘッドライン
日本は3年連続「日産サクラ」がトップ! じゃあ中国・欧州・アメリカで一番売れてるEVってなにか調べてみた
電気自動車って「お金的に」得? エンジン車と諸々の費用を比べてみた
リーフのバッテリーパックをバラして積むって意外に大変! 初代フィアット・パンダのEV化に挑戦してみた【その5】
more
ニュース
エンジンサウンドが聞こえてシフトショックも感じられるEVが超進化! ヒョンデ「IONIQ 5 N」がマイナーチェンジ
ポルシェ史上最高出力の市販車は911でも水平対向6気筒でもない!? 新型カイエンにEVの「エレクトリック」と「ターボ・エレクトリック」が登場
ジープもフィアットもテスラのスーパーチャージャーで充電できる! ステランティスの傘下14ブランドがNACS規格採用で大きく変わる充電規格の勢力争い
more
コラム
日本に何が起こった? BEVが売れない……ハズが2025年10月は電気自動車が売れまくっていた
60年もの不動車がバッテリー交換だけで走り出した! EVの長期保管はエンジン車よりも簡単!!
EVならカタログ数値超えの電費も夢じゃない……のにみんな出せないのはなぜ? 大切なのはエンジン車の乗り方を捨てたEV特有の操作だった
more
インタビュー
電動化でもジーリー傘下でも「ロータスらしさ」は消えない? アジア太平洋地区CEOが語るロータスの現在と未来
「EX30」に組み込まれたBEVの動的性能とは。テクニカルリーダーが語る「ボルボらしさ」
「EX30」には、さまざまな可能性を。ボルボのテクニカルリーダーが話す、初の小型BEVにあるもの
more
試乗
【試乗】いい意味で「EVを強調しない」乗り味! 本格4WDモデルも用意される期待のニューモデル「スズキeビターラ」に最速試乗
【試乗】5台の輸入EVに一気乗り! エンジン車に勝るとも劣らない「個性」が爆発していた
【試乗】CR-Vに中身を乗っけただけのプロトなのにもう凄い! ホンダの次世代BEV「0シリーズ」に期待しかない
more
イベント
見どころはスーパーワンプロトタイプだけじゃない! 全メーカー中でもっともモビリティショーしていたホンダは陸・海・空に加えて宇宙にも進出か【ジャパンモビリティショー2025】
スーパーオートバックスかしわ沼南に90台のEVとオーナーが集合してゆる〜く懇親! 「EV MEET 2025 AUTUMN」を開催
EVらしさをなるべく廃したスタイリングで乗り換えを自然に! スズキが軽EVコンセプトカー「Vision e-Sky」で考えたのはEVであることを気づかれないことだった【ジャパンモビリティショー2025】
more

PIC UP CONTENTS

デイリーランキング

過去記事一覧

月を選択