#ミニバン
TEXT:石橋 寛
話題のフォルクスワーゲンID.Buzzは50年の準備期間の末に登場ってマジ? EVバスは一日にして成らず!!

たくさんの雛形を経てID.Buzzは市販化された ついに日本に導入されたID.Buzzですが、これまで何台ものコンセプトカーが発表されてきたことご承知のとおりです。ブリー・コンセプトやBudd-eなどなど、そりゃもうたくさんあったのですが、フォルクスワーゲンはおよそ50年前からID.Buzz、すなわちワーゲンバスの電動化を目論んでいたことはさほど知られていません。それだけ長期間にわたって研究していれば、トライ&エラーも増えるというもの。ID.Buzzに辿りつくまでの紆余曲折をざっくりご紹介しましょう。 T2(1972) 1970年、VWは電気駆動システムを備えたクルマを設計する「フューチャー リサーチ」開発部門を設立しました。先見の明というよりも、ドイツは第二次大戦中から電気駆動の開発に取り組んでおり、自国産エネルギーの乏しさを補うことが主目的だったかと。 そこで生まれたのが、ワーゲンバスをベースに880kgものバッテリーを荷台に積んだT2でした。発売当時の1972年はバッテリーの性能も低く、これだけ積んでも航続距離は85kmとわずかなもの。しかも、充電ステーションなどは存在しないため、VWは充電済みバッテリーと積み替えるシステムを考案。およそ5分で交換できたといいますが、やはり荷室を占拠する大型バッテリーは実用的とはいえず、数台を市販したのみでT2プロジェクトは終了しています。 この苦い経験がのちのMEB(モジュラー・エレクトリック・ドライブキット)と呼ばれるEV専用プラットフォームの開発につながったことはいうまでもないでしょう。 マイクロバス・コンセプト(2001) 連綿と続いていた電動Bulli(ブリ:T1バスの愛称、ドイツ語でブルドッグや剛健さの意味)プロジェクトは2000年代初頭、突如としてマイクロバス・コンセプトを発表。ちょうど北米にミニバンブームが訪れていた時期で、VWとしては往年のブリを意識したスタイリングで人気を勝ち取ろうと考えたのでしょう。 ただし、中身はEVでなくV6エンジンを搭載することが予定されていました。時代を考えればプリウスが発売されて間もなく、市場はEVどころかハイブリッドさえスタートしたばかり。もしかすると、1970年代の失敗がEVとして発表することを躊躇わせたのかもしれません。 とはいえ、カリフォルニアのスタジオでデザインされたボディは、数あるコンセプトモデルのなかでも生産型Buzzにほど近いもの。デトロイトショーでの評判も上々で、2002年には量産も計画されたものの、ミニバン市場のヒートアップに輸入車のVWは分が悪いと判断。2004年にあっけなく生産計画の中止が発表されました。 ブリー・コンセプト(2011) ID.Buzzの生産より10年前、早くもEVコンセプトカーとして登場していたのがブリー・コンセプト。スタイルの流れとしてはマイクロバス・コンセプトを受け継ぐものながら、VWの汎用プラットフォーム「MQB」を採用するなど、文脈はまったく違うといっていいでしょう。また、EVとしてお披露目したのも現実性を担保するもので、この翌年にはVWからEVへの大規模投資がほのめかされています。 MQBを使用したためか、マイクロバス・コンセプトよりもコンパクトになりつつ、スペースユーティリティも最適化されています。これには、バッテリーの搭載位置などが奏功しており、T2時代からの研究成果が現れているはず。当時としては破格といっていい40kWhのリチウムイオン電池を積み、航続距離は300kmをベンチマークとしていました。

TAG: #コンセプトカー #ミニバン #輸入車
TEXT:渡辺陽一郎
ドル箱のミニバンやスーパーハイト軽のEVはなぜない? 本格普及を狙うなら必要なハズも立ちはだかるハードルとは

ミニバンやスーパーハイトワゴンがない理由 2025年上半期(1〜6月)における国内販売状況を見ると、乗用車に占める電気自動車の販売比率はわずか1.4%だった。ハイブリッド(マイルドタイプを含む)の販売比率は52.7%と高いのに、エンジンを搭載しない電気自動車は、ほとんど売られていない。 電気自動車が売れない背景には複数の理由があるが、決定的な事情は車種の不足だ。小型/普通車市場で約半数のシェアをもつトヨタも、トヨタブランドの電気自動車はbZ4Xのみになる。ホンダはHonda eを廃止したから、N-ONE e:の発売を控えるものの、2025年8月時点で用意される電気自動車は軽商用車のN-VAN e:だけだ。スズキはeビターラを2026年3月までに国内導入するが、これが最初の量販電気自動車だから、現時点では販売していない。 このように電気自動車がほしいと思っても、車種が少なすぎて実質的に購入できない。電気自動車が売れないのは当たり前だ。 その結果、2025年上半期に日本で売られた電気自動車の内、軽自動車の日産サクラが32%を占めた。以前はサクラが40%を超えた時期もある。電気自動車にほしい車種が見当たらず、需要が運転しやすくて価格も割安なサクラに集中した。 いい換えると、電気自動車の売れ行きを増やすなら、人気の高いカテゴリーに設定すればいい。ホンダN-BOXやスズキスペーシアのような全高が1700mmを超えるボディにスライドドアを備えた軽自動車のスーパーハイトワゴン、トヨタ・シエンタやホンダ・フリードなどのコンパクトミニバンに電気自動車があれば、売れ行きも増える。 それなのにコンパクトミニバンのSUVは用意されず、軽自動車のサクラは前述のとおり人気車だが、スライドドアは装着されない。 ではなぜミニバンやスーパーハイトワゴンの電気自動車が用意されないのか。 その理由のひとつは床面構造だ。電気自動車では床下に駆動用リチウムイオン電池を搭載する必要があるが、スライドレールや電動開閉機能を加えると、電池の床下搭載が難しくなる。サクラの開発者は「ルークスのようなスライドドアを備えた電気自動車があれば、好調に売れると思うが、実際に開発するのは難しい」と述べた。 ふたつ目の理由は市場の確保だ。電気自動車は、エンジンを搭載する車両に比べて大量に売るのが難しい。そうなると複数の国や地域で販売したいから、軽自動車やミニバンは成立させにくい。サクラも国内で好調に売る必要があり、三菱ブランドのeKクロスEVも用意した。それでも商品化は一種の賭けになる。 これらの事情により、電気自動車にはSUVが多い。天井が高いから、床下に駆動用リチウムイオン電池を搭載しても、室内高を十分に確保できる。またSUVは日本と海外の両市場で人気が高く、販売台数を増やしやすい。 それでも今後は、軽自動車のスーパーハイトワゴンの電気自動車が登場してくる。ホンダの開発者は「N-VAN e:がある以上、N-BOXの電気自動車も技術的には開発できる」という。他社でも電動スライドドアに使われるモーターの取付位置をボディの下側から中央付近に移すなど、電気自動車仕様の開発に向けた準備を進めている。 売れ筋カテゴリーとされる軽自動車のスーパーハイトワゴン、5ナンバーサイズのコンパクトミニバンやコンパクトカーの電気自動車が豊富に開発されると、日本でもEVの普及が進む可能性が高い。

TAG: #スライドドア #ミニバン #新車
TEXT:高橋 優
BYDの脅威はBEVだけにあらず! PHEVミニバン「Xia」の豪華すぎる装備も燃費も驚きのレベルだった

BYD XiaはPHEVのみの設定 BYDがミニバンPHEVのXiaの正式発売をスタートしました。ますます需要の高まるミニバンセグメントの大本命として、トヨタ、ホンダ、GMなどという既存メーカーのシェアをさらに奪うポテンシャルを解説します。 ミニバンセグメントについては、BYDはすでに高級ブランドのDenzaから、2022年末にD9というミニバンEVを発売済みです。
D9は瞬く間に販売台数を伸ばして、2023年シーズン、ミニバンセグメントでトップの販売台数を達成しました。 DenzaはD9の大規模なモデルチェンジを2024年末に実施。とくに高級車セグメントにおいて重要性が高まっているハイエンドADASを搭載しながら、売れ筋のPHEVモデルに対しては第5世代のPHEVシステムを導入することで燃費性能を向上。その上で、装備内容などを充実させることによって12月単体の販売台数は、半年ぶりに月間1万台の大台に復活させています。 そして、BYDブランドから投入されたのがXiaと名付けられたミニバンの存在です。XiaはDenza D9とは異なり、BEVをラインアップせずにPHEVのみで一本化しています。Denza D9の販売内訳を見ると、約95%程度の販売がPHEVで成り立っており、現時点で中国人はBEVミニバンをチョイスすることはないと判断してきたものと思われます。 Xiaは全長5145mm、全幅1970 mm、全高1805 mm、ホイールベースが3045mmという中大型セグメントのミニバンです。兄弟車であるDenza D9はひとまわり大きく、さらに中国市場でDenza D9を上まわる高級ミニバンEVとしてスマッシュヒットを記録しているVoyah Dreamer EVは、全長5315 mm、全幅1985 mm、ホイールベースが3200 mmという大型ミニバンセグメントであり、中国市場でのミニバンはかなりの大きさが求められています。 今回のXiaの性能で注目するべきは、何といっても熱効率45.3%を実現する第5世代のPHEVシステムを搭載してきたことで、WLTCモードにおける燃費性能が6.4L/100kmと、ミニバンPHEVとして非常に優れた燃費性能を実現している点です。また、36.6kWhという大容量バッテリーを搭載することによって、EV航続距離もWLTCモードで145kmを確保しています。 たとえばトヨタ・アルファードのHEVモデルはWLTCモードで6.3L/100kmと、大容量バッテリーを搭載するPHEVであるという点、およびアルファードよりもひとまわり大きいというという点を考慮に入れると、トヨタのハイブリッドと同等以上の燃費性能を実現している様子が見て取れるでしょう。 また、Xiaは急速充電にも対応しており、PHEVとしては高性能な2C充電に対応。よって、SOC30%から80%まで18分間で充電を完了させることが可能です。さらに最大6kWのV2L機能にも対応しています。 また、全長5145 mmの中大型ミニバンであるにもかかわらず、最小回転半径は5.7mと取りまわしで優れており、これはアルファードの5.9mすらも凌駕しています。

TAG: #PHEV #Xia #ミニバン
TEXT:高橋 優
爆速充電と超豪華な内装を引っ提げたミニバン「MEGA」が爆誕! 驚きの中身とひしめくライバルとの比較

EVの常識を変えかねないLi AutoのMEGA 中国のLi Autoが初のバッテリーEVとなるミニバンのMEGAを正式発売しました。最大充電出力520kW、充電時間12分という地球上最速級の充電スピードを実現しながら、ミニバンの究極の利便性を追求することによって、中国市場に新たなEVブームを引き起こす可能性を秘めた、2024年にもっとも注目に値する新型EVの最新動向についてを解説します。 今回取り上げていきたいのが、2014年に立ち上がった中国のEVスタートアップであるLi Autoです。すでに4種種ものEVを発売することによって、2023年12月単体における中国国内の販売台数は5万台オーバーを実現しました。 そして、2024年シーズンについては、年間で80万台という販売台数目標を掲げてきており、この販売台数は、日本のマツダやスバルなどに近づく規模感であり、まさに現在、中国EVスタートアップとしてはもっとも成長著しい自動車メーカーとなります。 他方で、このLi Autoについてはこれまで、レンジエクステンダーEVのみをラインアップ。あくまでも、Li Autoの販売の中心であるファミリーの富裕層に対しては、現状のバッテリーEVの性能では、航続距離や充電時間という観点で、まだ満足させることができないとして、バッテリーEVの販売をあえて遅らせていたという背景が存在します。 そして、そのLi Autoがついに満を持して正式発売をスタートさせてきたのが、初のバッテリーEVであるMEGAです。 MEGAは、全長5350mm、全幅1965mm、全高1850mm、ホイールベースが3300mmという巨大なミニバンです。 これまで中国市場においては、ミニバンはそこまで大きなセグメントではなかったものの、Zeekr 009やDenza D9など、ミニバンEVがスマッシュヒットを記録。現在、電気自動車によって、ミニバンセグメントが盛り上がりを見せ始めている状況です。 そしてLi Autoのメインターゲット層である裕福なファミリー層に対して、このMEGAであれば、バッテリーEVならではの静粛性や振動のなさによる快適な移動空間という、新たなライフスタイルを提案することができるわけであり、初のバッテリーEVについては、高級ミニバンセグメントで勝負を挑んできた格好です。 それでは、今回正式発売がスタートしたMEGAについて、とくに気になるEV性能を、競合のバッテリーEVのミニバンである、Xpeng X9、Denza D9、Zeekr 009、さらに現在Li Autoの最大のライバルとなっているファーウェイAITOのフラグシップSUVであるM9とをそれぞれ比較していきましょう。 まず初めに、MEGAはAWDのMaxグレードのみという、すべての装備内容をコミコミにしたワングレード設定です。そして、102.7kWhの中国CATL製のQilin Batteryを搭載することによって、その満充電あたりの航続距離は710kmと、空力性能で不利となるミニバンとしては、かなり長い航続距離を確保することに成功しています。 この航続距離の長さを実現している要因というのが、空力性能のよさを示すCd値で、それは0.215とミニバンとしてはありえないレベルの空力を達成しています。それこそポルシェタイカンのCd値が0.22であることから、あのスポーツセダンであるタイカンよりも空力性能が高いとイメージしてみれば、その凄さが見て取れると思います。 さらに、もうひとつ重要な充電性能という観点についても、そのQilin Batteryによる高性能な熱マネージメントのおかげによって、最大充電出力は520kWに到達しています。よって、充電残量10%から80%まで充電するのにかかる時間も12分間と、現在地球上で発売されているほとんどすべてのEVのなかで最速の充電時間を実現しています。 充電残量が80%の段階でも、まだ300kW程度の充電出力を流すことができるという信じられないほどのフラットな充電カーブも相まって、12分間の充電時間でミニバンEVの500km分の航続距離を回復可能となったわけです。 そして、Li Autoについては、その最大520kWという充電出力を発揮可能な超急速充電ステーションの建設を急ピッチで進め、2024年末の段階でその設置数を2000ステーションと大幅拡充する方針を表明しています。

TAG: #ミニバン #中国
TEXT:烏山 大輔
「EM90」はボルボが送り出す最高級の移動空間! 航続距離738kmの6人乗りEVミニバン

ボルボが「電動プレミアムMPV(Multi Purpose Vehicle)」と呼ぶ電気自動車の「EM90」を発表した。まず中国に導入される。一体どんなクルマなのだろうか。 走るリビングルーム 今回、ボルボから発表された「EM90」のプレスリリースと動画をみる限り、ボルボが本気で最高級の快適性を備えた「走るリビングルーム」を作ろうとしているのかが分かる。 ジム・ローワンCEOの「古くからの決まり文句ですが、自宅ほどくつろげる場所はありません。大切な人とつながり、自分らしくいられる場所。新型EM90にインスピレーションを与えたのは、この自宅という感覚です」という言葉からもそれが伝わってくる。 YouTubeで閲覧可能な6分18秒の動画の中では、同車のエクステリアが映るのは、最後のたった10秒だけに限られる。それだけインテリアに重点を置いたと伝えたいということだろう。 このクルマは「プレミアムな6人乗り」と謳われているように、2列目も3列目も2人乗り仕様だ。 特に2列目には、シートヒーター、ビルトイン・テーブルやカップホルダーなどに加えて、マッサージやベンチレーション機能も備わっている。 標準装備の空気清浄テクノロジーにより、どこへ行こうとも車内の空気は外気よりもきれいで、PM2.5微粒子も最大95%除去できるとのこと。 運転席の目の前のディスプレイに加え、ダッシュボード中央には15.4インチのインフォテインメント・スクリーンが装備される。フラッグシップSUVの「EX90」や「EX30」では縦型だったが、EM90では横型を採用している。 さらに、ルーフに設置された高解像度の15.6インチの折り畳み式スクリーンは、動画視聴やビデオ会議、モバイル画面の投影なども可能だ。 外装色は4色(ゴールド、シルバー、ホワイト、ブラック)が用意されている。中国での価格(818,000元)を日本円にすると約1650万円だ。

TAG: #EM90 #ボルボ #ミニバン

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